東方茨木物語   作:青い灰

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幻想郷の賢者って何人いるんでしょうね。
ってことで勝手に想像して面白くしていきます。



1話「八雲紫、仏師の男」

 

それから2日。

鬼は男の元で療養を行い、

傷を完治するほどまでになっていた。

 

 

「もう休む必要もないな。

 腕は治らん、(やつがれ)の薬水でも無理だな」

 

「そうですか……」

 

「お前の鬼としての力を封印され

 落とされたんだろう、茨木童子が

 ここまで行儀良いわけがあるまい」

 

「…………」

 

「出ていこう、等とは考えるなよ?」

 

「え!?」

 

 

図星だったのか、鬼は目を丸くする。

だが、ここにいること事態がこの男に

迷惑がかかっている筈だ。

 

 

「何故………ですか?」

 

「阿呆め、言ったろう。外は雷獣も彷徨いている、

 それに里に鬼が出たことが分かったら

 殺されることくらい分からんのか、たわけ」

 

「私は鬼です、逃げるくらいは………」

 

 

瞬間、男が手を差し出す。

鬼はそれに疑問符を頭上に浮かべる。

 

 

「掴め」

 

「え、えぇ?」

 

 

鬼は困惑しながら男の手を握る。

そして────手が、握り潰される。

 

 

「あいたたたた!?」

 

「やはりな、鬼の角も飾りに過ぎんな」

 

「いたい、いたいですっ!?」

 

 

どこにこんな力が、と思いながら鬼は手を離す。

本当に潰されそうなほどの力だった。

だが、それと同時に。

自身が、無力になったことを感じた。

 

 

「鬼ならばこの程度は耐える。

 分かったのなら出るのは鬼の騒ぎが収まるか

 奴が来るまでは止めておけ、阿呆」

 

「騒ぎ………奴?」

 

「知らんのか………鬼の討伐が

 成されたと京では騒ぎが起こっている。

 酒呑童子、星熊童子、茨木童子、

 そして矜羯羅(こんがら)童子の4体を討伐したとな」

 

 

どうやら死ななかったようだがな、と

男は茶を啜る。

 

…………鬼は山の四天王と言われた三人を思い出す。

おそらく、彼女らも死んではいない。

 

 

「二つ目の奴だが………」

 

 

そう言いかけた瞬間、空間が割れる。

そして、そこから金髪の女性が現れる。

 

 

「あら、呼ばれた気がしたわ~♪」

 

「……………呼んだつもりはないがな」

 

「確か貴女は………」

 

 

男は心底嫌そうな顔をし、

鬼は見覚えのある顔に驚く。

 

 

「あら、久しぶりね?

 随分と………あぁ、鬼の討伐騒ぎの、ね………」

 

「それよりも紫、

 幻想郷とやらは完成したのか?」

 

「あー………えっと」

 

「ふん、妖怪と人の共存など無茶だと言ったろう」

 

 

男は溜め息をつく。

それを見た八雲 紫は頬を膨らませる。

 

 

「出来るわよ、そのうち」

 

「そのうち、などと

 言っているから計画が進まんのだ阿呆」

 

「しかも無茶、って言ったわよね?

 無理、無駄とは言ってないから本心では

 あなたも出来ると思ってるんでしょう?」

 

「戯言ではない程度にはなった、と、

 そう思っただけだ。調子に乗るな」

 

「うふふっ…………はぁ、あなたが

 来てくれれば楽に進むのだけれどね………」

 

 

紫は残念そうな顔をして男の顔を見る。

 

 

「興が乗らん。僕はただの仏彫りだぞ」

 

「嘘ね」「嘘ですよね」

 

「阿呆どもが」

 

 

絶対嘘だ。そんな顔で二人は男を睨む。

男は茶を飲み干す。

 

 

「大体300年以上も生きてる人間が

 そんなに若いわけないでしょう」

 

「さっ、300年!?」

 

「300年生きようが僕は()()()仏彫りだ」

 

「仏の彫りすぎよ。

 神格でも宿ったんじゃないかしら?」

 

「仏彫りが仏になる、か。

 はッ、面白い冗談だな………」

 

 

 


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