転生したらドラクエ3の商人だった件   作:灰色海猫

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砂漠の王国イシスの猫

「商人と遊び人へ

 昨夜はありがとう。パーティーを組んでの旅の楽しさが分かった気がした・・・私は先に出発する。己をさらに鍛えるために・・・助けが必要になったら、遠慮なく私を頼りなさい。

 追伸 魔法のビキニを着てみたが、かなり面積が小さい・・・    」

 

 久しぶりの宿屋のベッドで目覚めた俺と遊び人は武闘家の置手紙を読んでいた。しまった!武闘家の魔法のビキニ試着シーンを見逃すとは!偶然に武闘家の部屋を訪れて、偶然に鍵が開いていて、偶然に試着シーンに遭遇するなんてよくある話なのに!恥ずかしそうに、ビキニを着ている姿が頭に浮かぶ・・・

 

「武闘家さん、先に行ってしまいましたね・・・って、商人さん!何ですか、朝からそのニヤケ顔は!ビキニ姿の武闘家さんを妄想して、あんなことやこんなことまでさせるなんて、この変態さん!」

 

「たしかにあのクールビューティーのビキニ姿を想像したが、まだあんなことやこんなことなんて想像してないからな!そもそも遊び人が考えている、あんなことそんなことって何!」

 

「やっぱり、妄想していたんですね・・・この変態さんめ・・・ボクが魔法のビキニを装備出来たら、良かったのに・・・問題がすべて解決したのに・・・」

 

 またしてもしまった!女性が男のスケベ心を察知して放つカマカケに引っ掛かった・・・遊び人は男だけど。

 

「さて、あまり宿屋に長居しても延長料金を取られてしまいますが・・・出発前に一緒にお風呂に行きません?朝の大浴場も気持ちいいですから!」

 

 ベッドの上でにっこり微笑みながら、美少女にしか見えない遊び人が混浴に誘ってくる。遊び人は男だから、混浴ではないけど。

 

「何を恥ずかしがっているんですか。ボクは男ですよ。一緒に旅するパーティー何ですから裸の付き合いなんて、当たり前のことです。取って食ったりしませんからね!さあさあ!」

 

 遊び人は男だから一緒のお風呂なんて当たり前のことだ。背徳感を感じてしまったら、それこそ俺の中に邪な気持ちがあるということだ。だから、一緒のお風呂は正しいことで、一緒に入らないことが間違っているのだ。俺は遊び人に手を引かれて、大浴場に向かった・・・大浴場は思いの外に気持ち良く、遊び人はやっぱり美人だった。

 

「商人さん、お風呂気持ちよかったですね!ごちそうさまでした!」

 

 宿屋のベッドとお風呂で英気を養った俺と遊び人は誘惑の町アッサラームを出発した。

 

「砂漠の国イシスといえば、地獄のハサミフライがとっても美味しいそうです!がそれに、砂漠は暑いので水浴びする人も多いそうです!水浴なんてしたら、今度こそ、ボクのポロリもあるかも!」

 

「なにがポロリするんだか・・・」

 

次の目的地である砂漠の国イシスへ向かう。

 

 

 

 

「商人さん、今度はキャットフライが3匹も現れました!」

 

「眠りの杖で眠らせろ」

 

「商人さん、今度はキャットフライが4匹も現れました!」

 

「眠りの杖で眠らせろ」

 

「商人さん、またキャットフライが4匹も現れました!」

 

「眠りの杖で眠らせろ」

 

「えっ・・・商人さん・・・」

 

「なんだ?転ぶとにっこり微笑む以外の新しい遊びでも覚えたか?」

 

「倒したキャットフライ達は、こんな物を持っていました!」

 

 遊び人が大量に転がっているキャットフライの死体の間から、ぬいぐるみを見つけてきた。ぬいぐるみは猫の着ぐるみでリアルで可愛い猫そのものだが、体用防具として装備可能だ。可愛さに反して、この時点の商人、遊び人が装備できる鎧では破格の性能で、鋼の鎧なみの高い防御力がある。俺は、遊び人からぬいぐるみを受け取り、装備中の鎧、鉄の前掛けを脱ぎ去って、ぬいぐるみに着替えた。もこもこの胴体部分は思ったよりも通気性が良く、灼熱の砂漠でも熱中症で倒れることはないだろう。胴体と頭部が分かれたタイプの着ぐるみなので、俺の主食である薬草を食べることにも困らないだろう。薬草を食べる度に中の人が見えてしまうが・・・

 

「商人さん、何ですか!この可愛らしさは!これは自分を抑えられません!モフらせて・・・」

 

「ゴロゴロゴロ・・・って、やめろ!くすぐったい!」

 

 猫のかわいらしさにうっとりとしている遊び人が、俺の喉の周りをワサワサと揉んできた!くすぐったいので身をよじってかわすと、今度は手を握って肉球をプニプニ始める。

 

「商人さんと猫の可愛さが悪いのです。ボクの商人さんがこんなに可愛いわけないのに・・・」

 

「俺は、まだ誰のものでもないからね!」

 

 猫の着ぐるみ姿になった俺は、イシス到着まで遊び人にモフられ続けた・・・

 

 

 

 

 砂漠の王国イシス。アッサラームの南西に広がる砂漠のオアシスに作られた王国。現在は女王によって統治されている。この女王は絶世の美女として知られ、国民はもとより、イシスを訪れる旅人や交易商たちを魅了し続けている。

 商人たちがイシスに到着した。日は沈み、暗闇に包まれた広大な砂漠の中で、町の光がひときわ美しくあたりを照らしていた。古代エジプトのような街並みを歩いていると、

 

「ついに勇者様たちがイシスに向かっているらしいぞ」

 

「勇者様は、一度はロマリアの王様になったが、短期間でアリアハンとの交易路を確保したり、軍隊を再編成したりで魔王軍との戦いで疲弊した国力を回復させたらしい」

 

「勇者様は魔物の巣窟になったピラミッドを魔物たちから解放してくださるそうだ」

 

「ママー!大きな猫ちゃんときれいなお姉ちゃんが歩いているよ。私もモフりたいな」

 

「見ちゃだめ!あれは猫ちゃんではないのよ」

 

(勇者はロマリアを出発したか・・・ピラミッド攻略、魔法の鍵入手を急がないと!しかし、俺は猫ちゃんではないし、遊び人もお姉ちゃんではない。遊び人は男だからな・・・)

 

 などと、イシスの町はロマリアを出発した勇者の話題で持ちきりだ。勇者は強いだけではなく、人々を救う為に必要なことを考え、行動しているようだ。さすがは勇者・・・超優秀だな・・・だが、イシスに先に先にたどり着いたのは、勇者一行ではなく、俺たちだ。その差は1日程度だが、次のキーアイテムである魔法の鍵は俺たち先に手に入れてやる!

 

「勇者様たちもイシスに向かっているんですね。では、ボクたちも今日は宿屋でゆっくり休んで明日のピラミッド攻略にそなえないといけませんね!寝る前には存分にモフらせてもらいますよ!」

 

「勇者が迫っているのに宿屋で寝ている時間なんてない。このまま、王宮に忍び込んで、その足でピラミッドに向かうぞ。それから、勇者より先に魔法の鍵を手に入れるまではモフらせんぞ!モフらせません、勝つまでは」

 

「観光もしないで、宿屋にも泊まらないで、すぐにピラミッドに向かうことは想定していましたが、王宮に忍び込むなんて聞いていませんし犯罪者まっしぐらですよ!」

 

「安心しろ。王宮に忍び込む方法は考えてある・・・名付けてキャット&プリンセス作戦だ」

 

 

 

 

 夜のイシスの王宮は静まり返っていた。俺と遊び人は門番もいない正門から中庭に入った。中庭の先にある宮殿まで300メートルはあるだろうか?目の前には遮蔽物が何もない広大な砂地が広がっている。

 

「・・・商人さん、本当に大丈夫なんですか?門番はいませんでしたが、巡回中の衛兵に見つかったら、牢屋まっしぐらですよ・・・わ、巡回の衛兵が宮殿からでてきましたよ。中庭には隠れる場所なんてないのに・・・」

 

 俺は2足歩行から4足歩行に変え、つまりは四つん這いになって進む。遊び人も俺の体に隠れるように四つん這いになった。

 

「にゃー、にゃー」

 

「なんだ、猫か」

 

 俺は衛兵に着ぐるみ姿の俺を本当の猫と錯覚させることに成功した!我ながら会心の鳴きまねだったな。

 

「ボクはこんなので誤魔化せるイシスの警備体制に不安を感じましたよ・・・」

 

 中庭を突破した俺たちは、迷路のような通路を通り地下に降りた。そして、最奥にあった宝箱から星降る腕輪を手に入れた。星降る腕輪は、素早さを2倍にするとんでもない効力がある装飾品だ。俺は星降る腕輪を身に着けた・・・唐突に世界が変わった。いや、変わったのは俺のほうだ。試しに軽くステップを踏んでみた。とんでもなく身軽になっている。今の俺なら、どんな敵の攻撃でもかわせる、どんな敵からでも逃げられるだろう・・・

 

「商人さん、宝箱を開けた時に骸骨があらわれて、何か言っていましたが、無視して良かったのでしょうか?勝手に星降る腕輪を持ち出してしまって、追いかけてこないでしょうか・・・」

 

「大丈夫だ。今の俺なら、どんな追ってからも逃げられるぜ!」

 

「骸骨が追いかけてくる可能性はあるってことですか!」

 

 地下通路から中庭に戻った俺たちは運悪く、衛兵と鉢合わせてしまった。

 

「この、怪しい・・・猫かな?と・・・女かな?・・・め!」

 

 俺は遊び人を抱き上げでお姫様抱っこの体制になると、星降る腕輪で倍増した素早さをフル活用して最大速度で逃げ出した!星降る腕輪、なんて効果だ!俺は今、砂漠を吹き抜ける風になって王宮の外に走り去った!

 

「キャット&プリンセス作戦・・・猫のまねで誤魔化して、お姫様抱っこで逃げる作戦ってことですよね・・・こんな、作戦が上手くいくなんて、やっぱりイシスの警備体制は問題山積みですが、今は全身で商人さんのモフモフを堪能することにします!」

 

 俺は星降る腕輪の効力で、夜の砂漠を吹き抜ける風になった俺たちはピラミッドに向かった。

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