転生したらドラクエ3の商人だった件   作:灰色海猫

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遊び人の力①

 勇者と仲間たちが訪れたレーベの村はお祭り騒ぎだ。アリアハン一の勇者オルテガが消息を絶ち16年がたった。世界は魔王バラモスと配下のモンスターに蹂躙され続けている。こんな絶望が続く世界を救う為に、オルテガの子が魔王討伐の旅に出た。今回は父の失敗を教訓にしてなのか、勇者一人旅ではなく旅の仲間をつれての旅だ。勇者はこの世界の人々の「今度こそ世界を!」の期待を一身に受けている。しかし、俺だって魔王バラモスを倒して世界を救う為に旅を始めたのだ。勇者に負ける気も、魔王討伐を譲る気も全くない!勇者パーティーに入りたかった気持ちも、全く衰えないけどね!なんで4人パーティーなんだ。神様、神龍様・・・俺を勇者パーティーの5人目にしてください・・・力を示さないものの願いを神龍が叶えるはずもなく、勇者中心のシナリオは進行していく。

 

「こんにちは。商人さん!って、何しているんですか!民家のドアを、借金取りのように強ノック連打しないでください!気は確かですか?ホイミしましょうか?」

 

 いつの間にかに、魔法の玉の爺さん家前にあらわれた僧侶ちゃんが慌てて俺の手を止めた。俺は考え事をしている間、魔法の玉の爺さんの家のドアを強ノック連打していたようだ。僧侶ちゃんは今日もセクシーで可愛いし優しいな!って、周りを見渡すと勇者とビキニアーマーの女戦士が剣を構えて、魔法使いが魔法の発動準備をしている。どうやら、勇者たちも魔法の玉を受け取りにきたようだ。しかし、みんな警戒感バリバリの戦闘態勢だ。狙われているのは・・・俺なの?

 

「おい、商人!この家のジジイに恨みでもあるのかよ。それとも、気が狂ったか!どちらにせよ、この場で楽にしてやる!」

 

 女戦士が一歩踏み出し、剣を振りかぶる。勇者は・・・勇者は今日も無口のようだ。無言で剣を抜き、凍えるような冷たい視線で俺を睨んでいる。俺は勇者と違って全滅時に教会で復活できるような神の加護はない。現在、単独行動中の俺は殺された時点でゲームオーバーだろう。

 

「まてまて、勇者パーティー俺は、この家に押し入ろうとしているわけではない。この家にロマリア地方に向かうための、アイテムがあると聞いて、ちょこっと借りにきただけだ。俺も遊び人とパーティーを組んで、魔王を倒す旅を始めたからな。ロマリアに向かう必要があるんだ」

 

「ちょこっとという割には、ドアを長時間、力一杯ノックしていたようですが・・・勇者様、女戦士さん、魔法使いさん・・・商人さんには敵意も害意もないようです。戦闘態勢を解いてください・・・」

 

 僧侶ちゃんの言葉に、勇者たちは戦闘態勢をといて武器をしまう。今日もありがとう、僧侶ちゃん!勇者パーティーの中で俺の味方は僧侶ちゃんだけだぜ!

 

「商人さん・・・この家のドアには不思議な鍵がかかっていて、力ずくで侵入はできません。ドアを開けるためには、盗賊バコタが作った「盗賊の鍵」が必要なのです。そして、私たちはそのカギを手に入れてここに来ました」

 

 僧侶ちゃんの手には一つの鍵が握られていた。この鍵が「盗賊の鍵」なんだろう。僧侶ちゃんが鍵を使うと、ガチャリと鍵が開いた。

 

「ロマリア地方に向かう道は、「盗賊の鍵」を手に入れた勇者様が切り開きます。私たちの目標は同じ、魔王バラモスを倒して平和な世界を取り戻すこと!パーティーは別ですが、同じ道を目指す仲間です。協力し合いながら、旅を続けましょうね・・・」

 

 勇者パーティーは、魔法の玉の爺さんの家に入って行った。これで、ロマリアに繋がる旅の扉が解放されるのは時間の問題だろう。それにしても勇者パーティーのシナリオ攻略スピードが早い。早すぎる。まだ、勇者の旅立ちから2日しかたっていないのだ。早く世界を救いたい思いが強いのか、RTA(リアルタイムアタック)でもしているようだ。俺は、この世界のメインシナリオに関われない寂しさを感じながら、遊び人を迎えに武器屋に向かった。

 

 

 

「商人さん、ボクも新しい装備に着替えてみました・・・どうでしょうか?」

 

「・・・ん。どこの美少女だ?俺にこんな美少女の友達はいないが・・・」

 

「イヤだなー。ボクですよ。遊び人のことを忘れてしまうなんて、ひどいです。見た目はこんな感じですが、ボクは男ですよ」

 

 武器屋の前には、水色の稽古着を身に着けた美少女がにっこり微笑んでいる。お風呂上がりの石鹸のいい匂いがする美少女は自分が遊び人だと言っている。

 

「まさかな・・・俺の遊び人がこんなに可愛いわけがない・・・」

 

「いつから、ボクが商人さんのものになったんですか!遊び人なボクですが、まだ誰のものでもないですよ」

 

 どうやらこの美少女は、お風呂でピエロメイクを落とした遊び人のようだ。美少女にしか見えないが、遊び人ということはこいつは男だ。だが、美少女にしか見えない・・・今も「ウフフ」と悪戯っぽく、にっこり微笑んでいる。きっと、夜の遊びの知識も豊富で色々な遊び経験があって、人生経験豊富な遊び人なら、色々な遊びを教えてもらえるかも!しかも、恋の火遊びって感じで!

 

「・・・こいつは美少女にしか見ない・・だが、男だ。しかし、この胸のときめきはいったい・・・」

 

「商人さん!何を物騒なこといっているんですか!ボクは男ですよ!ところで、そろそろお昼ですね。レーベの村の名物料理は、一角ウサギの薬草焼きでとても、とても美味しくて健康にも良いらしいですね!お金の余裕もありますし・・・」

 

「よーし、冗談はこれくらいにして、装備も整ったし、そろそろ出発するか!」

 

「えっ!出発って、昼食ではなくて?」

 

 俺は遊び人に薬草をポンと手渡し、

 

「行く場所なんて決まっているだろ。昼食は薬草で済ませて、銅の剣の試し切りをしながらレベリングだ」

 

 すでに勇者パーティーはロマリア地方に通じる旅の扉がある、いざないの洞窟に向かっただろう。俺たちだって、のんびりはしていられない。勇者が手に入れた魔法の玉で、勇者が解放した、いざいないの洞窟を通って、俺たちもロマリア地方に向かう・・・勇者の進めたストーリーに乗っかているだけの気もするが、俺たちだって魔王バラモスを倒す旅の途中なのだから。

 

「ちっきしょー!美少女力を全開にしてもダメか!旅の醍醐味である、名物料理も宿屋での安らぎも、得られないなんて・・・さすがは商人さん、ボクももっとレベルアップして美少女力を高めないと!」

 

 

 

「はっはっはっ!見ろ、遊び人!スライムが紙のように真っ二つだ!」

 

「ターバンのおかげで、大ガラスに頭を突かれても痛くありません!ボクの毛根が完璧に守られていますよ!装備って大切ですね。いままでは、素手に布の服だけの一般人の村人と同じ装備でしたからね!」

 

「ヒャッハー!サソリもアリクイも魔法使いも、この銅の剣でバラバラに切り裂くぜ。遊び人、返り血が心地いいな!」

 

「商人さん!昆虫や動物をバラバラにするのは良いとして、人型の魔法使いをバラバラにするのは、猟奇的すぎます!」

 

 レベリングを行い俺と遊び人もレベル10超えた。2人旅とは言えアリアハン地方の魔物に後れを取ることもないだろう。俺たちも、ついに勇者パーティーを追ってロマリア地方に向かう!

 

「・・・結局、アリアハン地方では、宿で疲れをとることもなく、名物料理を食べることもなかったですね・・・薬草の効果なのか、お肌はツヤツヤになりましたけど」

 

 遊び人はレーベの村でピエロメイクを落としてから以降、ピエロメイクを辞めている。「ピエロメイクを落としたら、商人さんの視線が痛いです」と言っているが、まんざらでもないようだ。と言っても、奴は男だが。

 

 2人の冒険の舞台もロマリア地方に移り変わる。

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