転生したらドラクエ3の商人だった件   作:灰色海猫

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遊び人の力②

 ロマリア。アリアハン地方から、旅の扉を通り最初に訪れる王国。北に向かえばノアニール、西に向かえばアッサラームを経由して、砂漠の国イシスに通じている。東にはポルトガ方面にもつながる関所もあり、この大陸の陸路の要所である。遊び、娯楽好きの国王の影響か、街にはモンスター格闘場があり、長きに渡って魔王と眷属の魔物たちに脅かされ続けている国民の数少ない娯楽となっていた。

 

「商人さん、ついにロマリアにたどり着きましたね。この街の名物料理は、アルミラージの薬草焼きです!とても美味しくて健康にも良いらしいですね!そして、この街には娯楽の殿堂である、モンスター格闘場がありますよ!アリアハンでのレベリングと、いざないの洞窟での戦闘で手に入れたお金もありますし、少しくらい遊んでも良いですよね・・・」

 

「そうだな・・・たまには息抜きも必要だとも!ウサギの丸焼き食べに行こうか!」

 

「そうですよね・・・今日もレベリングですよね、装備の更新もしたいし・・・って、ごはん食べて、良いですか?ただの薬草ではなくて、この街の名物料理アルミラージの薬草焼きを!」

 

「遊び人に食事しながら相談したいこともあるしね」

 

「急にごはん食べようとか、相談したいこととか嫌な予感しかしませんが、ウサギを食べたい欲求には勝てません。早速、食べに行きましょう!」

 

 

 

「おまちどうさまでーす。当店名物のアルミラージの薬草焼き2人前になりまーす」

 

 遊び人お勧めの店は、お昼時ということもあり、広い店内はほぼ満席だった。運良く並ばずにテーブルに案内された2人は、アルミラージの薬草焼きを注文して席についた。ウェイトレスによって運ばれてきたアルミラージの薬草焼きは、薬草の効果で臭みがなく、ジューシーで予想以上に柔らかい肉だ。アルミラージが戦闘中に繰り出す、体当たりや蹴りは、石の塊で殴られるように痛いが・・・

 

「久しぶりのまともな食事・・・美味しいですね!また、頑張る気力が沸々と湧いてきました!」

 

「遊び人の気力が高まったところで、今後の方針を相談しようと思う」

 

「今のボクなら、どんなお願いでも聞いちゃいますよ!例えば、このお店のウェイトレスが着ている際どいミニスカートだって履いちゃいますよ」

 

「ここの制服を遊び人が着たら・・・めちゃめちゃ可愛くなりそうだ!って、お前は男だからな!冗談はこれくらいにして今後の方針だが・・・」

 

 一足先にロマリアに到着した勇者パーティーは、ロマリア王の盗まれた王冠を取り戻しにシャンパーニの塔へ大盗賊カンダダ討伐に向かったようだ。勇者パーティー選ばれず、2人で魔王討伐の旅に出た。「2人で伝説を作ろうぜ!」と。しかし、盗賊の鍵の入手、アリアハンとロマリアに繋がる旅の扉の解放、全て勇者パーティーに先を越されている。これでは伝説になんてなれないだろう。今度は、勇者に先駆けて魔王討伐に繋がる重要アイテムを入手する。今まで以上に命がけの危険な旅になるだろう・・・それでも、俺と旅を続ける気はあるか?俺の問いかけに遊び人は、

 

「ボクは商人さんについていくと言ったはずですよ。魔王討伐が危険なのは当たり前のことですよ。それで、勇者パーティーより先に入手したいアイテムは何ですか?」

 

「魔法の鍵。イシスのピラミッドにある」

 

「ピラミッドに眠る魔法の鍵ですか。ボクは聞いたことないアイテムですね・・・だけど、商人さんを信じてついていきますよ。これから、イシスに向かいますか?」

 

「いや、アッサラーム周辺の魔物は強い、イシス周辺はもっと強い。だから、これからやるべきことは、レベリングと装備の強化だ。レベリングしながら、カザーブに向かう」

 

「・・・やることは、結局、レベリングなんですね・・・とりあえず、ウサギ食べちゃいましょう」

 

 

 

「ぎゃあ、商人さん、キャタピラーに噛まれました!」

 

「大丈夫だ。この薬草を食べろ」

 

「ぎゃあ、商人さん、ポイズントードに噛まれて毒に侵されました!」

 

「大丈夫だ。この毒消し草を食べろ」

 

「ぎゃあ、商人さん、キラービーに刺されて麻痺しました!」

 

「大丈夫だ。この満月草を食べろ」

 

「今日は食べっぱなしでボクのお腹はパンパンですよ!ぎゃあ、お腹がパンパンで動きが鈍くなったうえに、アニマルゾンビのボミオスでさらに素早さが低下しました!」

 

 俺たちは激戦を潜り抜け、なんだかんだでカザーブに到着した。ここは小さな村だが、商人、遊び人が装備できる武具が豊富にそろっている。

 

「商人さん、知っていますか?この村の名物料理は軍隊ガニ鍋です。お腹はパンパンですが、カニは別腹です。まだまだいけますよ!」

 

「よし、武器屋にいこう。この辺からは、腹が減る間もないくらいに薬草が食べられるぞ。ちょっと空腹くらいがちょうど良いよね」

 

「商人さんが通常運転に戻っている!お願いごとがない時に、ごはんなんて食べさせてくれないですよね。釣った魚に餌をあげないタイプです!」

 

 

 

「オヤジ、これとこれとこれをくれ!」

 

俺たちは武器屋で早速、買い物を始めた。魔物をグループ攻撃可能で商人と遊び人も装備可能な高性能武器チェーンクロスを2個、俺の盾として鉄の盾、遊び人用に鱗の盾。俺の防具として鉄の前掛けを購入した。

 

「また、商人さんとお揃いの武器ですね!商人さんのターバンに前掛けって専用装備感がハンパないです!」

 

そして、遊び人用の防具は身かわしの服を買いたいが1着2900ゴールドは高い気もする。金がないわけではないが、この先、鉄の斧や鋼ハリセンを購入するために出来るだけ節約したい。

 

「オヤジ、こんなにたくさん買って、さらに身かわしの服も買うから値引きしてくれ!」

 

「バカ言うな、兄ちゃんも商人なんだから素人じゃないだろ!身かわしの服は職人が1着1着、職人魂と回避のまじないを掛けて作っているんだ。この俺が職人の魂を安売り出来るわけないだろ!だが、この身かわしの服なら、3割引きの2000ゴールドにまけてやらんでもないぞ」

 

 武器屋のオヤジが指さした、薄緑色の身かわしの服は他の身かわしの服に比べて丈がかなり短い。通常の身かわしの服の丈は足首あるが、これは膝上までしかない。これは、けしからん身かわしの服だな。こんな服で戦闘したら、見えてしまうではないか!全くけしからん。そもそも、こんな短さで、防具としての効果は期待できるのか?

 

「兄ちゃん、この身かわしの服のデザインを見て、けしからんと思っただろう。だが、兄ちゃん違うんだ。これは違うんだ。昔な、伝説のお針子と呼ばれる婆さんがいた。その婆さんは病に侵され、残された命の時間を最後まで使い切った。しかし、運命の冷酷だった・・・婆さんの命の時間は、1着の身かわしの服を作りきるには足りなかった。そして、命の時間が足りなかった分だけ、少しだけ丈が短い身かわしの服ができあがったんだ。兄ちゃん、運命は残酷だが最後に一欠けらの希望を残した・・・安心しろ、丈は少し短いが、防具としての性能は、普通サイズと一緒なんだ!!」

 

「オヤジ、この身かわしの服を買わせてもらう!俺は伝説のお針子に尊敬の念を禁じえないぜ!じゃあ、遊び人着替えてみよう」

 

 

「うーん。色もデザインも可愛いけど、形がスカートみたいで恥ずかしいな、ボクは男なんだよ・・・」

 

遊び人は、ちょっと丈の短い身かわしの服に着替えた。恥ずかしそうに、丸見えの膝をもじもじとこすり合わせている。遊び人は上目遣いをしながら「似合いますか?」と聞いてくる。

 

「お嬢ちゃんか、きれいなお坊ちゃんか、おじさんにはもう訳が分からないが、最高に似合っているぞ!伝説のお針子に乾杯だな!」

 

 武器屋のオヤジは遊び人にメロメロになっているようだ。俺も遊び人を改めて確認する。恥ずかしそうにもじもじしながら、にっこり微笑む姿にはときめきを覚えないでもないが・・・遊び人は男だ。オヤジは、遊び人の着ていた水色の稽古着をそそくさとたたんで、

 

「お嬢ちゃん、この古着はおじさんが処分しておくよ・・・」

 

「オジさま!この稽古着は、商人さんがボクに初めて買ってくれた、大切な物なんです・・・だけど、ボクたちは魔王討伐の旅の途中、大切な思い出でも持ち歩く余裕はありません・・・だから、オジさま・・・ボクの稽古着とこの身かわしの服を取り換えっこしませんか?」

 

 オヤジの手をにぎにぎしながら、にっこり微笑む遊び人・・・

 

「魔王と戦う、お嬢ちゃんの為だからしょうがないー。取り換えっこオーケーだ。その身かわしの服が不要になったら、引き取るぜ!何せその服は、伝説のお針子が残した最後の1着だから、大切にしたいなーなんて」

 

 稽古着の定価が80ゴールドだから、25倍の装備と交換だね!だけど、オヤジ・・・遊び人は男だから!

 

勇者よ、もしも、カザーブの武器屋の宝箱やタンスをあさることがあっても、稽古着だけは残して欲しい。何に使うかは考えたくないが、これはオヤジの「大切な物」なのだから・・・




次回、商人はノアニールに向かうか、アッサラームに向かうかの選択を迫られることに・・・
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