「商人さんはボクに可愛い服ばかり着せますが、ボクのことをどう思っているのでしょう・・・こんな恥ずかしい服まで着せて、ボクとのこと遊びだなんて言わないでくださいね」
「あたしもこんなことになっているなんて、思ってもいませんでした。完全に女の子いえ、男の娘になっています。こんな格好までさせて遊びだったら、どん引きです」
「ごめん!装備については、完全に遊びでした。100%遊びでした!」
「ど、どん引きです!」
「まあーボクも遊んでいるだけだけど、商人さんたまに、熱のこもった視線を向けてくるから、冗談が通じているか心配になったりして!」
「いえいえ、商人さんは女の子なら、誰彼無しに熱い視線を送っていますよ。あたしみたいな、チンチクリンにも例外無くです。遊び人さんは男ですけど・・・」
「男とはわかっているつもりだが・・・ときどき、遊び人の可愛さに、ときめきを感じていることは、そっと心の奥にしまって魔法の鍵をかけておこう」
「魔法の鍵って、これからピラミッド取りに行く鍵ですよね。すぐに開いてしまいそうですよ!ボクへのときめきなんて物騒な気持ちは、もっともっと心の奥底にしまって下さい!そうしてくれないとボクへの気持ちの鍵を開けたくなってしまいます!」
「そうと決まれば、あたしも頑張ってアバカムを覚えて、商人さんの中に溜まりに溜まっているどす黒い欲望の塊をこの世界に解き放ってみせます。その前に魔法の鍵は、あたしたち勇者パーティーが先に入手させていただきます」
「・・・ところで、勇者パーティーの魔法使いさんが、なんで俺と遊び人のときめきタイムに自然な感じで割り込んでいるんだ?」
カザーブの武器屋でウインウインの結果となった商談の後、村で安らぎのひと時を過ごしていた俺と遊び人にそっと近づき、会話に割り込んできたのは、とんがり帽子を被った魔法少女。勇者パーティーの魔法使いだった。
「実はですね。あたしは商人さんと遊び人さんがガザーブに到着してから、ずっと話しかける機会をうかがっていました。武器屋さんで何故かミニスカっぽい身かわしの服を遊び人さんに着せたり、随時ラブラブな、お二人に、なかなか話しかける機会がなかったのですが・・・ベストなタイミングで自然な感じで会話に加わってみました」
「いやいや!不自然極まりなかったよ。声もなく近寄ってきた、とんがり帽子の魔法少女が突然、会話に加わってきて自然な訳がないな!」
「不自然なんて、冷たいことを言わないで欲しいです。パーティーは違いますが、魔王バラモスを倒す同志なんですから。あたしたちは協力し合うべきだと考えています。協力と言えば、あたしはこれからノアニールに向かいますが一緒に行きませんか?」
「断る。残念だが俺と遊び人は、これからアッサラームに向かう。ノアニールには勇者パーティーと行けばいいだろ」
「一緒にノアニールに行きませんか?」
「断る・・・」
「一緒にノアニールに行きませんか?」
「断る・・・・・・」
「一緒にノアニールに行きませんか?」
「断る・・・・・・・・・」
「一緒にノアニールに行きませんか?」
会話が無限ループになっている!この世界では会話の無限ループはよくあることなのだろうか・・・女の子の願いを断る度に俺の心は傷ついていき、困った俺は遊び人に視線を向けて助けを求めた。
「商人さん、魔法使いさん、お話が煮詰まってしまったところで、ボクから提案があります。この村の名物軍隊ガニ鍋をつつきながら、お話しすれば名案が浮かぶかもしれません。もちろん、魔法使いさんのおごりで!」
「おまちどうさまでーす。当店名物の軍隊カニ鍋3人前になりまーす」
村に1軒しかない小さな食堂は、お昼時ということもあり、店内はほぼ満席だった。テーブルに案内された3人は、名物の軍隊カニ鍋を注文して席についた。ウェイトレスによって運ばれてきた軍隊ガニ鍋は、薄めの塩味がカニの味わいを引き立て、様々な野菜やキノコが鍋ならではの複雑で豊かな味わい楽しむことができた。
「カニは低カロリーで栄養豊富、とくにここの軍隊ガニは甘みが強くて独特のプリプリ触感!しかも、魔法使いさんの奢り!ただ飯はたまりませんね。気力が高まります!」
「遊び人、食リポご苦労。遊び人の気力が高まったところで、今後の方針を相談しようと思う。そもそも、何で魔法使いは俺たちとノアニールに行きたいんだ?」
軍隊ガニ鍋を夢中で突いていた魔法使いが箸を止めた。
「あの、理由なんて聞かないでください。あたしも、一応は女なんです・・・あたし、商人さんのことが以前からカッコイイナーとかイイカンジダナーって思っていまして・・・つまり、あたしは商人さんのことが好きです。だから一緒にいたいんです」
16年間の人生で初めて告白された!確かに俺は僧侶ちゃんが好きだが、魔法使いだって十分すぎるほど可愛いし、体型だって今はチンチクリンだが、将来性はまだまだ期待できるし、今のままでもそれはそれでよろしい。勇者パーティーのハーレム度はとんでもなく高いな・・・魔法使いは恥ずかしいのか視線を彼方に漂わせている。ここは俺も男らしく、
「そもそも、何で魔法使いは俺たちとノアニールに行きたいんだ?」
「・・・つまり、あたしは商人さんのことが好きです。だから一緒にいたいんです。あの、ここで無限ループは恥ずかしいです」
聞き間違いの可能性もあったのでもう一回言わせてみた。やはり、間違いや勘違いではなく、人生初の告白を受けているようだ。
「俺は、僧侶ちゃんが好きだ」
「はい、知っています」
「俺は、女戦士さんが好きだ」
「はい、知っています」
「俺は、遊び人が好きだ」
「はい、知っています。だけど遊び人さんは男です」
「俺は、ルイーダさんが好きだ」
「・・・はい、知っています。ちょっと、好きカテゴリーが薄くなってきた気がします」
「俺はロマリアの食堂のミニスカウエイトレスが好きだ」
「・・・はい、知っています。って、この人だれでしたっけ!」
「俺は、この世界が好きだ」
「・・・はい、知っています。って、ちょっとカッコイイ感じも挟んできました!」
「こんな、俺でも、魔法使いは好きって言ってくれるのか?」
「はい、私は商人さんが好きです。今のあたしは、商人さんにとって好きカテゴリーの一人かもしれませんが、いつか特別な一人になりたいと思っています」
「これは事情が変わってきたようだな。俺は俺のことが好きだと言ってくれる人が好きだ。それが女の子なら、なおのこと力になりたい。俺と一緒にいたいことは、わかったがどうしてノアニールに行きたいんだ?」
「あたしはノアニール出身で実家もノアニールにあります・・・」
ノアニールの住人が突然眠りにつき、眠りから覚めなくなったことはご存じだと思います。・・・あそこには、眠りから覚めないお母さんがいるんです。勇者様にもノアニールに行きたいとお願いしました。しかし、今の勇者様はカンダダから王冠を取り戻したことで、ロマリアの王様に気にいられて、次のロマリアの王様になるとか、ならないとかでお忙しいようで・・・羨ましいことに僧侶さんはいつも勇者様とご一緒ですし・・・女戦士さんはモンスター格闘場に入りびたりで・・・
「あたしはお母さんを助けたい・・・一日でも早く助けたいです・・・商人さんなら、あたしがイイカンジダナーって思っている商人さんなら、力になってくれると信じています。商人さんがカザーブに向かったと聞いてルーラで飛んできたのです。一緒にノアニールに行きませんか?」
勇者たちがロマリアに足止めされている間に、アッサラームにそしてイシスに向かい魔法の鍵を入手する。早速、アッサラームに向かったほうがこの目的達成の可能性が上がる。軍隊ガニ鍋を食べている場合ではない。待てよ。勇者がロマリアの王になって、そのまま冒険を終えるパターンのエンディングもあるのだろうか・・・しかし、魔法使いが涙をためながら懇願している。俺は・・・
「行こう。ノアニールに。ノアニールを救って、魔法使いのお母様にご挨拶だ!」
俺たちの真の目的は、この世界を、人々を救うことだ。短期的な目標として、勇者よりも早く魔法の鍵入手を掲げたが、目の前の救わなければならない人を救わずに、母親を助けたい女の子を助けずに伝説になんてなれるわけがない!
「えー!ボクは、ノアニール行きは反対だよ。早く魔法の鍵を手に入れて、商人さんの心の奥底にしまわれたボクへの想いを解放したいし!このままでは、魔法使いさんにヒロイン枠を取られしまいそうですし。ボクは男ですけどね!」
「ウェイトレスさーん!締めの雑炊セットを卵付きでお願いしまーす。遊び人さん、たくさん食べて欲しいです。そういえば、ノアニール名物のデスフラッターフライや、エルフの隠れ里のエルフ饅頭もとっても美味しいです。あたし、頑張ってごちそうしますよ」
「行きましょう!ノアニールに!ノアニールを救って、デスフラッターフライ、エルフ饅頭を堪能しましょう!」
「ありがとうございます!商人さん、遊び人さん!」
(ちょろいですー。好きの一言で、食べ物で釣れる人たち、ちょろすぎですー。お母さんとノアニールのみんなの為に利用させて頂きます)
商人と遊び人と魔法使い。3人の想いが一致しノアニールを目指すことになった。