ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第1話「約束の翼」

かつてこの星には、様々な危機が訪れた

 

大地を揺るがす怪獣

宇宙からの侵略者

大いなる存在

 

だが、そんな中でも人々は諦めなかった

そんな人々の心に、応えてくれたものたちがいた

 

人々は彼らをこう呼んだ

 

ウルトラマン、と

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「じいちゃん、またあの話して‼︎」

 

少年が縁側に腰掛けた老人の袖を引っ張る

そんな少年の頭を撫でながら老人が微笑む

 

「翼は、本当に好きなんだな。ウルトラマンが」

「大好きだよ‼︎だってめっちゃカッコいいもん‼︎」

 

少年は老人に手にした教科書を開いて見せる

そこには「怪獣頻出期」という項目名とともに「地球のために尽力してくれた光の巨人・ウルトラマン」という項目が

そこには銀色の巨人が胸を張り立っている写真が載っていた

 

「ウルトラマンメビウス。はは、やはりいつ見ても良い姿だ……」

 

老人は教科書を受け取り、その写真をしみじみとなぞる

 

「彼はがむしゃらだった。時に敗北しても、それでも我々を守るために何度も立ち上がってくれた。彼は、いや彼らは真に英雄で、我々の良き友人だ……」

 

老人が、少年の頭を優しく撫でる

 

「翼、お前も誰かを守れる人になりなさい」

「ウルトラマンみたいに?」

「はは、そうさな。お前みたいに優しい子なら、なれるかもしれないな…」

 

どこか寂しそうに、老人が写真を見つめる

 

「私には遅すぎた。憧れても、結局私は彼らのようにはなれなかった……」

 

首に提げたネックレス、それにつながる小さな青い石を老人が名残惜しそうに掴む

 

「約束を、果たせずにすまない……だが、私の孫はこの誓いを継いでくれるだろう……」

「じいちゃん、どうしたの?」

 

翼と呼ばれた少年が老人の顔を不思議そうに見上げる

 

「……なんでもない。遠き過去の友を、思い出していただけだよ」

 

胸の石をしまうと、老人は優しく少年に微笑んだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

2077年現在

2006年に訪れた怪獣頻出期を最後に怪獣たちの出現は落ち着き、数年に一度程度出現するだけの日々が続いていた

最後の怪獣頻出期より防衛チームGUYSと交流を持ったファントン星人やサイコキノ星人を皮切りに地球外の友好種族との交流も進み、徐々に宇宙人の受け入れも進んできた

 

「いやぁ、悪い悪い……ちょっと寝坊しちゃった…」

 

垂れ目気味の柔和な表情の男性が指令室らしい部屋に申し訳無さそうに手を合わせながら入ってくる

 

「定例報告会開始1分前、相変わらずギリギリですね隊長」

 

部屋の中央に鎮座する大型デスクに腰掛ける男性に、そのデスクのコンソール前に腰掛けていた黒髪短髪の女性がニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら声をかける

 

「平和な日々が続いてるとはいえ、しっかりしてくださいよ隊長」

 

女性の隣に腰掛けた青年も合わせて抗議する

3人は共通のオレンジと青の目立つジャケットのような制服を着ており、隊長と呼ばれた男性の襟元は白、他の2人は赤に着色されている

 

ここは防衛チーム・NEXT GUYSの基地フェニックスネスト内の作戦指令室

GUYSは先の怪獣頻出期から20年後に地球外種族の構成員も加入し、NEXT GUYSとして新生。防衛任務と共に地球外文化との交流や調停も新たな任務として加わり平和な日々の裏で奔走していた

尤も、その平和さ故に実働隊員はこの3人まで少なくなっていたが

 

「気をつけてるつもりなんだが、どうにも朝には弱くてね…」

 

申し訳無さそうに頭をさするのは現NEXT GUYS隊長・海野 剛(うんの ごう)

マイペースでどうにも気の緩む人柄ではあるが、実働部隊歴はこの3人で最長の5年、隊長歴は2年のベテランである

 

「低血圧、でしたっけ?地球人の体質というのも難儀なものですね」

 

やれやれと肩を竦める女性は隊員の1人・ケリス。主にデータベース管理や作戦の後方支援を担当している

KJ−K5星雲出身の女性異星人であり、NEXT GUYS実働部隊初の異星人隊員である

 

「体調管理くらいしっかりしといてくださいよ。いつかくる新人さんに示しがつきませんよ」

 

生真面目に抗議する青年は高宮 輝(たかみや あきら)。現実働部隊では剛に次ぐ隊員歴(と言っても2年だが)の隊員であり、実務と現地活動を兼ねている

大学で宇宙文化学を専攻したこともありある程度の宇宙語を話すことが可能で、異星人とのネゴシエーターも務めている

 

『ー申し訳ない、待たせてしまいました』

 

3人の談笑に新たな声が割って入る

その声の主は3人がかけるデスクの前に鎮座するスクリーンに画像として映し出されている

3人とは異なり紺色のスーツに赤いネクタイを身につけた爽やかな様子の青年がデスクに腰掛けた状態で映っていた

 

日向(ひむかい)くん、お構いなく。私たちも今集合したところだ」

 

剛が姿勢を正して会釈する。それに合わせて輝達も会釈する

 

『そうでしたか、それならよかった……少々朝礼が長引いてしまいましてね』

 

日向と呼ばれた青年が胸を撫で下ろす

 

青年・日向 翼(ひむかい つばさ)は日向重工で社長を務めている

日向重工はNEXT GUYSと提携しており、メテオール開発や防衛装備の開発・メンテナンスを行なっている外部企業である

社長である翼はこうして定例会に参加して隊員から直に声を聞き、装備のメンテナンスや開発へと役立てている

それ以上に、翼自身が「人の血が通った仕事をしたい」というモットーからこの参加を願い出たという部分も大きいが

 

「太陽活動の異常活性化か……」

 

剛が顎に手を当て、タブレットに表示された報告を眺める

 

「非常に微々たるもので、しかも短時間ではありますがここ数十年で数回確認されてますね。同時に放射されるエネルギーの低下も確認されてます。地球上での影響は今のところ確認されていませんが、気になる変動ではありますね」

 

ケリスがタブレットのグラフを提示しながら説明する

 

「現状最後の怪獣頻出期に確認されたレジストコード:エンペラ星人も似たような能力を使った報告がありますし、太陽付近の警戒は少し強めた方がいいかもしれませんねぇ」

『僕たちの方でも観測衛星の調整を行なっておきます。念のため、バリアメテオール搭載型の衛星もこちらでメンテナンスを急いでおきましょう』

「こちらでも定期的な警戒は継続して行なっておこう」

「こちらからの報告としては以上、ですね。ここ半年は怪獣も出現してませんし」

 

ケリスが切り上げると、翼が改めて手を挙げる

 

『では最後にこちらから報告を、まずガンフェニックスレガシーの定期メンテナンスが完了いたしました。いつまた飛ぶことになっても100%のパフォーマンスを保証します』

「助かるよ日向くん。こういう時世とはいえ、いつまた怪獣や侵略者が現れるかはわからないからね…」

『もう一つ、開発中の新型メテオール搭載機ですが、もうすぐ実機試験が終了します。そちらに配備できる日も近いかと』

「ついに完成したんですね…!新型機体!」

 

輝が目を輝かせる

 

『調整が随分難航してしまいましたが、ようやく形にできそうです』

「完成を待っているよ」

『お時間取らせてしまいすいません。こちらからの報告もこれで終わりです』

 

翼が締めくくると、剛が一旦面々を見渡し特にこれ以上の報告が無いことを確認する

 

「では、これで定例報告会もお開きということで。お疲れ様でした」

『お疲れ様でした、皆さん』

 

剛の言葉に姿勢を正して礼をした翼の姿がスクリーンから消える

 

日向重工社長室

 

「ふぅ……」

 

椅子に深く身を預けた翼はネクタイを緩めて一息つく

 

「いつもの報告会は終わりかしら。流石に何回も似たようなのが続くと飽きてくるわね」

 

そんな翼に社長室の入り口からスーツに身を包んだ小柄な少女が近づいてくる

 

「そのいつも通りがいいのさ、コン。むしろ違うことは起こらない方がいい」

 

少女ーに見えるがれっきとした社長秘書のコンに言い聞かせるように翼が答える

 

「アテが外れたかもしれないわ。アナタと、アナタのお爺様のしようとしていることはとても面白そうだったのだけど」

「……出番が無い方がいいんだよ。彼の出番は無い方がいい」

 

机の上に行儀悪く座ったコンに翼が少し悲しげに言葉を返す

 

「……ま、そうはいかなそうだろうとは伝えておくわ」

「……それは、どういうことだい?」

「《予感》よ。そろそろまた、『怪獣頻出期』が来るわ」

 

コンがニヤリと笑いながら呟く

その瞳は怪しく輝いていた

 

「………」

 

コンの言葉に翼が思案顔を見せる

本来なら冗談だと笑って聞き流せるようなものだろう、だがそうできない理由がある

経緯は長くなるため省くが、コンは日向重工が雇った異星人従業員

その種族はーサイコキノ星人

かつてCREW GUYSとも交流を持っていた念動力を使える種族

そんな異星人のサイコキノ星人のコンが言う《予感》はただの勘と言い切ってしまうものでは無い、と翼は知っているからだ

 

そんな予感を叶えるかのように、日向重工にサイレンが鳴り響いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

同じくサイレンが響いていたのはNEXT GUYSの指令室

 

「状況は⁉︎」

 

離席していたらしい剛がデスクへと戻りながらケリスに現状を問う

 

「監視衛星に反応あり。巨大な飛翔体が地球に向けて降下中…というか既に大気圏に突入済みです」

「何…⁉︎ 落下予測地点を算出‼︎ 予測地点の映像を‼︎」

 

冷静ながらも少し焦った様子でケリスが答え、剛が指示を出す

それを聞いた輝がコンソールを素早く操作していく

 

「落下予測地点、ポイントK6‼︎ 映像出ます‼︎」

 

スクリーンに映し出されたのは何とは無いビル群

だが、数瞬のうちにそのビル群に赤熱した巨大な何かが墜落し、大爆発を起こす

爆心地の砂煙の中、巨大な影が立ち上がる

 

ギェエエエエエエエエエエエエエエエ!!!

 

白色の巨体を起こし、宇宙から飛来した怪獣が甲高い咆哮を上げた

 

「コイツは……ッと…」

 

何か気づいた様子のケリスがコンソールを操作し、データを映像と並べてスクリーンに映し出す

 

「同盟種族からの提供情報、ユニオンドキュメントに類似種族確認……というか、コイツは私も見たことあるので間違いないです。レジストコードは《宇宙猛禽(うちゅうもうきん)ジャスキープ》」

 

表示されたデータの画像は街で暴れている怪獣と瓜二つだ

 

「スペーススノーやら、宇宙を漂う小型生命を捕食しながら《渡り》を行う怪獣ですね。太陽系内にも一応経路はあるのだけど、地球付近は進路に無いはず……」

「何故そんな怪獣が地球に……」

 

そうこうしているうちに辺りを見回していたジャスキープは、ビルを破壊しながらその歩を進めだした

 

「事情の推察は後だ。ケリスは警備隊に連絡次第地上から援護を‼︎私と輝はガンフェニックスレガシーで怪獣を攻撃する‼︎」

 

剛の指令を聞いた2人は立ち上がり、姿勢を正す

 

「NEXT GUYS‼︎ サリー・ゴー‼︎」

「「G.I.G‼︎」」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「こっちです‼︎早くこちらに避難を‼︎」

 

NEXT GUYSのエンブレムを胸につけた警備隊たちが狂乱の中にある市民たちに避難指揮をしている

突然の怪獣出現に街は大混乱に包まれ、人々の悲鳴や泣き声があちらこちらでこだましている

逃げ惑う雑踏の中、一人の子供が躓き泣き叫んでいる

周りの大人は誰も目をくれず、子供だけ取り残される

 

「ボク‼︎ 大丈夫⁉︎」

 

そんな子供を一人の女性が助け起こす

それでも泣き止まない子供をなんとか背負おうとするその直上、ジャスキープが口から放った青い光線がビルを砕き、女性と子供にガレキが降り注ぐ

 

「危ねぇ‼︎」

 

ガレキが降り注ぐ直前、女性と子供を新たな人影が横に突き飛ばす

女性と子供を助けたのは、目つきの悪い一人の青年だ

 

「何してんだ死にたいのか⁉︎」

「その、子供が倒れてたんです。この子が…」

 

と女性が抱えていた子供を青年に見せると、有無を言わさず青年がその子供を抱き上げる

 

「とにかく逃げるぞ‼︎ 急げ‼︎」

 

逃げる寸前、青年は暴れ回るジャスキープに忌々しげな視線を送る

 

ギェエエエエエエエエエエエエエエエァァァァ‼︎

 

甲高い咆哮を上げたジャスキープは再び口から青い光線を吐き、地上をなぎ払う

その光線が逃げる3人の背に迫る

 

「キャプチャーキューブ、照射‼︎」

 

その光線は、突如現れた光の壁に弾かれて霧散する

逃げる3人と入れ違いに、怪獣に歩み寄る隊員服の女性が手にした銃を下ろしながらヘルメットに手を当てる

 

「事後報告申し訳ない、隊長、メテオールの許可を」

『後で始末書を書いておくように‼︎』

 

ジェット音を察知したジャスキープが、上空から迫る銀の機体に感づく

飛来したのは銀色の機体を持つ大型戦闘機

前身であるGUYSで使われていたものから作り出された次世代機ーガンフェニックスレガシーだ

 

「ケリス、地上からの援護を頼む‼︎ 輝、メテオールで被害が大きくなる前に倒すぞ‼︎」

『『G.I.G‼︎』』

 

コクピットに乗った剛が声を改める

 

「ガンフェニックスレガシー‼︎ スプリット‼︎」

 

ガンフェニックスレガシーが分離、レガシーウインガーとレガシーローダーに分かれ、ジャスキープの光線を回避する

 

「メテオール、使用許可‼︎」

 

異星人の技術を応用した超兵装、メテオールの使用が許諾される

 

「「バーミッショントゥーシフト‼︎ マニューバ‼︎」」

 

剛と輝のコマンドとレバー入力に合わせて、ウインガーとローダーが金色の光に包まれてその形を大きく変化させ高速移動を開始する

 

「さて、久々の出番だ。頼むよウィンダムくん」

 

手にしたカプセルを指で撫で、手にした小型デバイスーメモリーディスプレイにカプセルを装填する

《リアライズ》

引き金を引くとともに、地上のケリスの持つメモリーディスプレイから緑の光線が放たれ、渦を巻く

その渦の中から銀色の人型をした新たな怪獣が現れ、雄叫びを上げる

メテオール技術の一つ、マケット怪獣のウィンダムがジャスキープと対峙する

 

進軍するジャスキープにウィンダムが飛びかかりその進軍を押し留める

 

「スペシウム弾頭弾、ファイヤ‼︎」

 

ガラ空きになったジャスキープの背にウインガーから放たれたスペシウム弾頭弾が降り注ぎ炸裂、ジャスキープが悲痛な悲鳴を上げる

よろけたジャスキープをウィンダムが蹴り飛ばす

 

「ブリンガーファン、ターンオフ‼︎」

 

立ち上がりかけたジャスキープを、ローダーから吹き荒れた旋風が捕縛し大きく巻き上げる

吹き飛ばされたジャスキープは近くの造成地に叩きつけられる

 

「よし、これで決めるぞ‼︎」

 

ウインガーからトドメとばかりに弾頭弾が放たれ、合わせてウィンダムの額からも光線が放たれる

その弾頭弾と光線は、ジャスキープの眼前に形成された青いバリアに弾かれた

 

「何ィ…⁉︎」

 

「あの光線に利用してる粒子を利用した防御ってこと…⁉︎ 普段は自分より小型生物にしか近づかない臆病なヤツだからそりゃ防御手段なんか知られてない訳だ……」

 

地上にいたケリスがヘルメット越しに頭を抱える

バリアに阻まれながらもウィンダムはビーム照射を続けていたが、突然緑の粒子に分解されて消滅する

同時にウインガーとローダーも変形が解除され、クルーズモードへと戻る

メテオール使用限界の60秒が来てしまったのだ

 

バリアを解除し、現れたジャスキープはもちろんながら健在だった

 

「難敵か……‼︎」

 

剛が苦し紛れに呟いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

数分前 日向重工自社工場地下

 

《声紋、指紋、網膜認証完了。ようこそ、日向社長》

 

厳重な認証をくぐり、翼とコンは地下に設けられた指令室のような空間に脚を踏み入れた

 

「私の言った通りになったわね」

 

コンが得意げにニヤニヤと笑いながら隣の翼を見る

対して翼は、険しい顔で室内の大型モニターを見やる

そこにはジャスキープが暴れ回るビル群が映っていた

ゴクリ、と翼がつばを飲む

そんな翼の背をコンが叩く

 

「しゃんとしなさい。やるって決めたんでしょ、社長」

「……ああ……」

「ー怖い、不安。それでいいんじゃないの?私には知らない感覚だけど、今のあんたの顔は、母さんから『見せて』もらったアイツの顔に少しだけ似てるもの」

 

少しだけ真面目な顔になったコンが指令室中央の椅子に腰掛け、ウインクする

 

「サポートは任せて、大手を振って行きなさい、翼」

 

コンの言葉を受け、翼は頬を叩き微笑んで頷いた

 

地下指令室からエレベーターに移動、黒いボディスーツに着替えた翼は首から下げたペンダントを眺める

そこには、かつて彼の祖父が持っていた青い石が装飾されたレリーフがあった

 

『翼、これを……』

『私は、彼との約束を果たせなかった……』

『お前が、この約束を果たしてくれ……』

 

ペンダントを祖父から受け取った時の、祖父の最期の言葉が脳裏に蘇る

 

「じいちゃん……やるよ。僕は」

 

決意を込めて、出口に向き直った翼の前に広がっていたのはペンダントと同じ青い輝きを放つ巨大な円形の結晶だった

 

「各部チェック、オールグリーン。タイマーリアクター正常作動を確認。ウルトラマテリアルとメテオール改造合金の同調に異常無し」

 

コンソールを操作しながらコンがなにかのチェックを終える

 

『いつでも行けるわよ、翼』

「わかった」

 

コクピットらしい場所で翼が頷く

その眼前のコンソールにペンダントを収納、右掌を乗せ、叫ぶ

 

「イカロス、テイクオフ‼︎」

 

瞬間、広がる地下空間の闇に銀の双眸が輝いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

バリアを解除したジャスキープはウインガーに向けて青い光線を放つ

 

「……ッ⁉︎」

 

剛の操縦でウインガーはすんででそれを回避するが、間髪入れずに新たな青い光線が迫る

光線はジャスキープの背中に生えた青い結晶から放たれていた

 

「そこからも撃てるのかッ⁉︎」

 

流石に不意を突かれたその光線は、ウインガーの機体を捉えるー

 

ーデヤァッ!!!

 

その光線とウインガーを遮るように、銀色の光が空から降り注いだ

 

「なんだッ⁉︎」

 

機体の姿勢を戻し、剛がその光の主を見据える

そこに立っていたのは、銀色の巨人だった

 

ーへァアッ‼︎

 

銀色のボディに青い模様が入った巨人はジャスキープに向けてファイティングポーズを取る

その姿は、剛は、いやこの世界に生きる人々の多くが見知ったものだった

 

「ーウルトラマン、なのか……?」

 

現れたウルトラマンはジャスキープに突撃し、鋭い手刀を決める

よろめいたジャスキープに続けざまに正拳突きをかまし、その巨体を吹き飛ばす

 

ギェエエエエエエエエエエエエエエエ‼︎

 

怪鳥音の咆哮を轟かせ、ジャスキープが口と背中の結晶から光線を乱れ撃つ

ウルトラマンは殺到する光線を手刀で叩き落としていくが、いくつかは防ぎきれずに直撃を受け、よろめく

その隙を逃さず、ジャスキープはその腕から長い爪を展開、アッパーの要領でウルトラマンを大きく吹き飛ばす

 

ーグォアアァア‼︎

 

ウルトラマンの悲痛な声が響く

 

「くっ……‼︎」

 

アラートが響き赤いサイレンに照らされたコクピットで翼が膝を突く

 

『ちょっと‼︎シャキッとなさい翼‼︎ あんたこの時のために格闘術とかしてたんでしょ⁉︎』

 

通信回線からコンの声が響く

 

「存外、感覚が難しいんだ……シュミレーターなら大丈夫だったんだが、我ながら情けないな……」

 

息を切らしながら、立ち上がり、あのウルトラマンと同じファイティングポーズを取り直す

 

翼がいたコクピットは、あのウルトラマンの内部

あのウルトラマンは、彼が動かしているのだ

 

立ち上がったウルトラマンはファイティングポーズを取り直し、改めてジャスキープに向き直る

ジャスキープの突撃を受け止め、押し戻す

その間にも、ジャスキープの爪を受けよろめくが、都市部に近づけまいとウルトラマンは倒れない

怪獣の猛攻にウルトラマンが膝を突き、胸の結晶が赤く点滅するー

 

「ウイングレッドブラスター‼︎」

 

怪獣の肩口と背中に赤い光線が命中、背中の結晶を一つ粉砕する

思わぬダメージに気を取られた怪獣を蹴り飛ばし、ウルトラマンが立ち上がる

その視線の先にいたのはー剛が乗るレガシーウインガー

 

『総員に告ぐ、あのウルトラマンを援護せよ!』

 

剛の指令を受け、輝が微笑む

 

「その命令、待ってましたよ隊長‼︎ G.I.G‼︎」

 

待機していた輝のローダーが動く

ウインガーとウルトラマンに気を取られ、ガラ空きになった背中に先頭が向けられる

 

「バリアブルパルサー‼︎」

 

ローダーから放たれた黄色い光線が煌く

光線は残った結晶に見事命中し、粉々に砕いた

 

ギェエエエエエエエエァァァアアアア!!!!

 

ジャスキープの悲痛な悲鳴が響く

結晶が砕かれたジャスキープは項垂れ、大きな隙を見せた

 

「今だ、ウルトラマン‼︎」

 

「ーよし‼︎」

 

自分を奮い立たせ、翼が立ち上がり、共にウルトラマンも立ち上がる

翼が両の拳を突き合わせ、開く

同じ動きをしたウルトラマンの拳の間にエネルギーが収束していく

その腕を大きく横に伸ばし、収束したエネルギーの後ろで十字にクロスさせる

 

ーへァアッッ!!!

 

収束したエネルギーが爆発、交差した腕から銀色の光線が放たれる

ジャスキープはバリアを展開し、一時は光線を防ぐが、その光の奔流はバリアを突き破りジャスキープの体へと突き刺さった

膨大なエネルギーがスパークし、火花を上げ、ジャスキープの巨体が倒れ伏す。怪獣は、完全に沈黙した

 

それを見届けたウルトラマンはウインガーとローダーに頷くと、腕を空に伸ばし飛び去っていく

 

「あっ、ケリス!あのウルトラマンを追跡ー」

『ダメですね。上空に上がった途端レーダーからも反応が消えました』

「……そうか…」

 

ケリスの言葉を聞いて、剛が脱力する

 

「色々と考えなければならないこともあるが……作戦は終了だ。帰投しよう」

『『G.I.G』』

 

指示を下した剛は、ウインガーの窓からウルトラマンが飛び去った彼方の空を見て、ふぅ、と一息ついた

 

地下指令室

 

「お疲れ様、社長」

 

コンが地下指令室のベンチにボディスーツも脱がずに身を預けた翼に缶コーヒーを渡す

 

「ああ、ありがとう、コン」

 

缶コーヒーを開けてぐっと煽り、ぷはっと一息つく

 

「初仕事からして大変だったもんだね。先が思いやられるなぁ」

 

いつものように、悪戯っぽくコンが笑う

翼もそれに苦笑を返す

 

「簡単なことじゃないとは思ったけど、それ以上に大変そうだよ」

 

「……わかったような口を聞けるわけではないけどさ、多分一筋縄ではないよ。その名前を、ただの地球人が背負うのは」

 

「ああ、わかってる。僕にはとても重い名前だ」

 

翼がペンダントを取り出し、険しい顔を見せる

 

「それでも、この約束は果たさなきゃならないんだ。それが僕の決めたことで、僕のやりたいことだから」

 

決意も新たに、翼がペンダントを握りしめる

その顔を、コンは今までの悪戯っぽい笑みではない、どこか柔和な笑みを浮かべて眺めていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

翌日 NEXT GUYS指令室

 

『おはようございます、皆さん。先日の件は大事なかったでしょうか』

 

モニターに映る翼が心配そうにNEXT GUYSの面々を見る

 

「ああ、日向くんのところの整備のおかげで十全に戦えたよ。それでもかなりの強敵だったんだがね」

 

剛が渋い顔をして答える

 

『良かった。皆さんの手助けになれたなら冥利に尽きます』

「それよりも昨日は大変なことがありましたからね…」

 

輝が興奮冷めやらぬ様子で切り出す

 

「ー70年ぶりに現れたウルトラマン。よもや生きているうちに本物を見ることになるとはね」

 

剛がしみじみと呟く

 

「現状ではウルトラマン、と呼んでいますがやはりレジストコードが必要ですね。早く呼び名を決めないとー」

『……それなんですが…』

 

ケリスの提案に翼が恐る恐る手を挙げる

 

『実はそのウルトラマンのレジストコード、僕から一つ提案があるんです』

「ほう……どんな案があるんだい?」

 

『ーウルトラマンイカロス』

 

翼がその名を口にする

 

「ウルトラマン、イカロス……」

『彼は、僕の祖父がかつて出会ったウルトラマンとよく似ているんです。そのウルトラマンが祖父に名乗った名前を、是非使ってほしくて』

「ウルトラマンイカロス、いいですね!カッコいい名前です!」

「私もそれで良いかと」

 

輝とケリスが同意し、剛が頷く

 

「よし、じゃあ彼の名前はウルトラマンイカロスだ!」

 

その言葉を聞いて、翼も微笑んだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ある日、一人のウルトラマンが地球を訪れた

そのウルトラマンは、息も絶え絶えで傷だらけであった

 

満身創痍のウルトラマンは、一人の地球人を怪獣から守るために最後の力を振り絞って戦い、力尽きた

 

地球人はそのウルトラマンとある約束を交わした

 

『志半ばで倒れた彼の代わりに、地球に訪れる脅威と戦う』と

『キミの志を、私が受け継いで果たしてみせる』と

 

 




次回予告

宇宙怪獣を倒したのも束の間、新たな怪獣が出現する
姿の見えない怪獣に翻弄されるイカロスとNEXT GUYS
翼はその身に背負う名の重荷を改めて自覚する

次回ウルトラマンイカロス
『その名が負うもの』
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