ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第10話「正義の証明」

ー何もできなかった

 

迷宮の中で出会ったフランベルスにロクに攻撃が効かなかったことがフラッシュバックする

 

ー結局、俺には力がなかった…

 

青いウルトラマンがフランベルスを粉砕する

翔真はそれを見ているしかなかった

 

ウルトラマンは要らない、そう思っておきながら…

 

 

ー助けられたかも知れなかった

 

呻き、苦しむレッドキングと泡を吹き倒れふすゴモラが脳裏に浮かぶ

 

ー結局、私は何がしたいのだろうか

 

レリアという異星人に手を差し伸べ、友達になった妹の樹

花はそこまで踏み出せたことがなかった

 

変わりたい、そう思っていたのに…

 

 

そんな中、フェニックスネストに異常事態発生のアラートが響いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

炎剣岳(ほむらぎだけ)地下に異常熱源、か……」

 

A.I.G.I.S.指令室でアラートの報告を受け、データマップを見つめる石動(いするぎ)

マップには高熱地点が炎剣岳の地下数百メートルに分布していること、それが徐々に地表に近づいていることが示されていた

 

「十中八九、10年前に現れたレジストコード《フランベルス》の再出現だろう。ドキュメントを参照するに、ヤツは高熱を纏った地底怪獣…何より10年前には炎剣岳地下に逃走したと見られるなら尚更だ」

「確かヤツは10年前にNEXT GUYSのクルー半数を…NEXT GUYSも警戒体制に入ったようですが、我々はいかがいたしましょう?」

 

石動は懐からタブレットを取り出し、何かの情報を確認するとA.I.G.I.S.(エイジス)の司令官として指示を下した

 

「105式改造装甲車に神経断裂弾、及び冷凍麻酔弾を装備させ10機を配備。対象、フランベルスのサンプルを迅速に回収するため、回収班も武装して待機」

 

石動の淡々とした指令が終わるとクルーたちは皆無言で敬礼し、それぞれの仕事を開始した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「炎剣岳……」

 

アラートを聞き駆けつけた翔真はその原因に目を見開く

 

「先日より度々確認されていた炎剣岳地下の異常熱源、それが急速に浮上を開始した」

 

モニターに熱源の移動の様子が示される

もう熱源は地表にだいぶ近づいていることがわかる

 

「知っている者も多いと思うが、炎剣岳は10年前にレジストコード《フランベルス》による怪獣災害で多数の被害者が出た地域だ。今回の熱源はその災害で逃走したフランベルスの可能性が高い」

「対象の怪獣の表皮は堅牢。10年前の戦闘データだとスペシウム弾頭弾の直撃にすら耐えてます。しかも合計20発も…」

「そんな硬さの表皮……どうやって突破すれば……」

『その点に関しては、僕から提案を』

 

モニターに映る翼がデータを展開する

 

『ガンバスターマニューバモードの主砲から発射するウルティメイトシェル、これならばスペシウム弾頭弾数十発分の破壊力を一度に与えることも可能です』

「ガンバスターの主砲をメイン戦力に据えた戦法か…サポートにブレイバーやウインガーたちを配備しておけばもしもの時のリカバリーも可能になりそうだ…」

「私も翼さんの案に賛成です。過去の事例を見るにフランベルスは早期撃破ができなければ被害が拡大する懸念がありますから」

「よし、ならばその作戦を軸に配備する。バスター以外のメテオール機のマニューバモードは温存、不足の事態に備えて私は地上に待機して支援体制を整えておく」

「G.I.G!」

「では、炎剣岳周辺に作戦本部を仮設する。NEXT GUYS、サリー…」

 

「ま、待ってください!」

 

資料を熟読していた花が立ち上がり剛の言葉を遮る

 

「花、どうかしたか?」

「……私からも、作戦の提案をしてもいいでしょうか…?」

「花が作戦を…?言ってみてくれ」

「はい…‼︎」

 

おどおどしながらも花が作戦の説明をしていく

 

「私の提案する作戦は、フランベルスの撃破ではなく撃退を主眼としたものです」

「撃破ではなく撃退……命を奪わずにフランベルスを無力化するということか?」

「はい。フランベルス……あの怪獣は10年前の出現以外にも出現と消失をあの地で何度も繰り返しているみたいなんです」

 

花のタブレットから送られたデータが展開される

太平風土記なる記録に示されている《炎薙》という魔獣の記述は確かにフランベルスの特徴と合致しており、出現と消失を繰り返すことが記録されている

他の古文書にもそれらしい絵巻がいくつも見られている

 

「この資料は、キミが見つけたのか?」

「偶然見つけたものがほとんどです。太平風土記には他にも怪獣らしい記述が存在したので、今読み解いている途中なのですが…」

 

こほん、と咳払いし改めて花が話し始める

 

「これらの記述からフランベルスは暴れはしても炎剣岳以外の場所にまで下りてくることはほとんど見られません。そこから推測するに、フランベルスは何か理由があって地表に出現していることが考えられます。その理由を調査、対応することができたなら…怪獣を無為に殺すことなく怪獣災害に対応することが可能になると思うんです」

 

花の言葉を聞き、剛、ケリス、輝が頷く

 

「突飛な見方ではあるが、確かにそれが可能ならこちらの被害なく怪獣に対応していくことができるやもしれん…」

 

しばらく試行錯誤していた剛だが、落とし所を見つけ指令を改める

 

「花の案を一部採用、レーザーケーブルを利用した拘束を行い怪獣の調査を作戦に追加。調査結果次第で撃退が可能ならそれも作戦案件にー」

 

「俺は反対です」

 

翔真が立ち上がる

 

「フランベルスは凶暴な怪獣だ。いわば害獣と同じ存在……今までがそうでも、今度は街にまで降りていくかもしれない。そうなったらまた大量の被害者が出る。そうなる前に駆除するのが俺たちの仕事のはずだ」

 

どこかいつもよりもキツい語調で翔真が反対意見を口にする

 

「……ですが、怪獣たちもまた生き物なのは事実です。害獣かも知れないとはいえ、理解しないままに殺し続けてしまうのは、地球の生態系バランスにもダメージを与えかねないかもしれない…」

 

「それはたった一体殺しただけで簡単に崩壊するのか?そんなものが生態系なら、とっくの昔に地球の環境はボロボロだ。そうなってないなら、怪獣たちは地球にとってもイレギュラーである証明じゃないのか!?」

 

反論する翔真に初めて花がムッとしたような表情を見せる

 

「それはいくらなんでも横暴が過ぎます。今までは技術的に難しかったとはいえ、現状のメテオール技術なら殺さずとも怪獣を分析して理解することが可能なはずじゃないですか!それをせずただ殺すだけなんて、私は認められないんです!」

 

「何かと思えば、あんた個人が認められない?そんな理屈で大勢を危険に晒すのか!?そんな無責任な言葉は、あんたが怪獣の恐ろしさを知らないからだろう!!」

 

「恐ろしさならとっくに知っています!入隊前にジャスキープに襲われた時、ソームニアと対峙した時、何度も怖いと思った。でも先日のゴモラやレッドキングは確かに悲鳴を上げていた。怖いだけじゃないとわかったからこそ理解をしなきゃならないんです!それを知った私は、黙ったままでいるのはもう嫌だから!」

 

激しい口論になる2人を輝とケリスが抑える

 

「落ち着け翔真!」

「花ちゃん、どうどう!」

 

パンッ!!

 

喧騒を遮って剛が手を叩く

 

「両者の意見はどちらもごもっともだ。だからこそ、今回の作戦はどちらの案も可能なように展開する。細かな指示は作戦中にその都度行う。いいな?」

 

「……G.I.G……」

 

剛の言葉に翔真は渋々と頷いた

 

 

出撃準備を整え、ドックに向かう翔真

その背後から剛が追いつき声をかける

 

「……フランベルスを駆除したい。それは10年前の一件があるからか?」

「……俺の考えが復讐からだと?」

「そういう訳じゃない。だが頭を冷やせ」

 

剛は翔真の頭をポンと撫でる

 

「前にメテオールを無断で使用した時と同じ顔をしていた。もしお前の原動力がその復讐心から来ているのなら……」

 

立ち止まる翔真を置き去りに先に行きながら剛が告げる

 

「私たちが何を背負っているのか、何を守るのか、今一度考え直せ」

 

一人残った翔真は通路の壁を殴りつけた

 

「……俺が背負ってるものも知らない癖に……‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「………」

 

翼は作戦会議から離脱したのち、一人考え事をしていた

 

(駆除ではない、撃退……怪獣の命を守るべきか……)

 

「何ぼーっとしてんのよ」

 

コンが翼に声をかける

いつものように側から、ではなく今日はソファから

片手で氷嚢を頭に当てながら応接机に置かれたパソコンで仕事をしている。先日の怪獣襲撃で無理をし過ぎたらしく今でもまだ頭は痛いらしい

翼は休むようにと言ったのだが家にいたらいたで退屈で死ぬらしく、仕事量を普段の10分の1に減らして仕事をしている

 

「いや……ちょっと考えごとをね…コン、ひとついいかな?」

「頭痛いから難しい話は無理よ」

「怪獣を殺さずに、その脅威を抑えることってできるだろうか…」

「……花の言ってたこと気にしてるの?」

 

返事を特に返さない翼にため息をつき、コンが返答する

 

「無理、無茶、問題外。考えられないし、そんなことして何になるのやら、倒せるなら倒したほうが安心でしょ」

 

答えはとても冷淡。だが多くの人も抱くものだった

 

「あくまで私は、だけどね」

 

コンが付け加える

 

「私には無理だけどさ。でも花の言ってることもわからなくもないのよね。私たちの種族とかもさ、どこかの物好きが気に留めたりしてくれて救われたようなものだし。花みたいな《誰もできなかった考え方》って面白いものができるってのは、あんたを見てればよくわかるし」

 

足元のミニ冷蔵庫からパックジュースを取り出し、口をつける

 

「あってもいい……か……」

 

それを聞いた翼の表情は少し晴れたように見えた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

炎剣岳 NEXT GUYS仮設本部

日向重工の皆も協力し敷設された仮設本部の近く、ガンフェニックスレガシーとガンドラグーンが停泊し、内部の隊員達と技士達が共に整備を行っていた

 

「計器確認、異常ありません」

 

ガンフェニックスレガシーに乗るのはケリスと花

花はレガシーローダーに乗り、ウインガーのケリスと共に分析を行う手筈だ

 

「花ちゃん、あんな風に反論するんだね。なんというか、すごく意外だった」

 

ケリスが花に声をかける

 

「……私、NEXT GUYSに来たのは自分を変えたかったからなんです」

「そっか」

「前に、ケリスさんからもらった本やゴモラたちを見て、助けたいって思ったんです。大きくて、怖くて、でも怪獣たちもやっぱり生きてる。助けられるかもしれないなら、あの子達も助けてあげたい。そう思った以上、無視はできなくて…」

 

花が言葉をケリスは黙って聞いていた

 

「私は実は翔真少年の考えの方に賛成だったんだよね。あの場では黙ってたけど」

 

ケリスが口を開く

 

「フランベルスは凶暴極まりない怪獣だ。翔真少年の言う通り、害獣と言ってもおかしくはないと思う」

「………」

「でも花ちゃんの向き合い方もまるっきり間違いとは思わない。駆除以外の道が見つかっていけるなら、それに越したことは無いだろうからね」

 

ケリスの言葉を聞いて花は一瞬驚いたような表情を見せる

が、すぐに表情を引き締めて頷きを返した

 

 

ガンドラグーンに乗るのは輝と翔真

バスターに輝が乗り、翔真はブレイバーでサポートする手筈だ

 

「……花ちゃんの意見に、一部俺は賛成だ」

 

機内に広がる沈黙の中、輝が独白する

 

「アギラと通じ合えた時、あいつにも心があるってよくわかった。コノミせんせ…隊員がミクラスと心を通じ合わせてたこととかもあるし、花ちゃんの言う通り怪獣の命を奪い続けるのが正しいのか、俺は迷ってるのかもしれない」

 

翔真はその言葉を黙って聞いていた

 

「でも、翔真の意見も正しいと思う。どの怪獣もミクラスやアギラみたいなヤツらばかりだとは思えないし……ただ…」

「………」

「翔真、お前が怪獣を駆除するのに拘るのは、本当にNEXT GUYSとしてだけなのか?」

 

輝の言葉に翔真は答えなかった

 

 

仮設本部

計器を準備していた翼の側に剛が顔を出す

 

「翼くんはどう思う?」

「……翔真くんと花ちゃんの考え方、ですか?」

「ああ。キミの意見も聞いておきたく思ってね」

「……僕もどちらが正しいのか、あるべき考えなのかは分かりません」

 

翼はペンダントを見つめ、剛に向き直る

 

「だからこそ、僕はどちらの考えも否定したくない、そう思いました。コンの受け売りもありますが…どちらの考えもあっていい、今はそう思うんです」

 

「たとえどちらかが間違ってるとしても、その間違いからまた前に進める。それが人間なんだと僕は思いますから」

 

翼の答えに剛が微笑む

 

「キミらしい、いやキミたちらしいいい考えだ。やはり若い者の考えは新鮮味があるねぇ…」

「海野隊長もまだまだ十分お若いですよ」

「いやいや、私はもういいトシだよ」

 

はははっ、と笑いながら剛はどこかの遠くを見つめるような目を見せた

 

「もう10年も年をとってしまったことも、あるしね」

 

「異常熱源が地表に急接近!!」

 

その時は突然にやってきた

観測班の報告とほぼ同時に大地が鳴動、パックリと裂けた谷底からマグマと共に巨体が現れる

 

ーギャオオオオオオオオン!!!!

 

冷え固まったマグマのような表皮、剣のような爪

ドキュメントに記録された姿そのままに、炎剣魔獣フランベルスが出現した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「まずは花くんの提案した作戦に基づき拘束する!対怪獣レーザーアンカー、発射!!」

 

剛の号令と共に周囲の山肌に設置された砲塔からレーザーアンカーがフランベルスに放たれる

アンカーを撃ち落とそうとフランベルスは腕を振り回すが、何発かのアンカーはフランベルスの腕と胴体を拘束、その体を押さえつけた

 

「モンスタースキャン開始!!」

 

並列に飛行するレガシーウインガーとレガシーローダーの間にスキャンパルスが展開、それにフランベルスを潜らせ、分析が開始される

 

ーギャオオオオオオオオン!!!

 

が、じっとしていてくれるはずもなく、フランベルスは火球を放ち地上部隊への攻撃を始めた

灼熱の火球が炸裂し、山々を炎が覆っていく

 

「ウイングブルーブラスター!」

 

翔真の操るガンブレイバーが牽制を始める

それに釣られ、フランベルスは撃ち落とさんと火球を連射する

火球を持ち前のテクニックで回避しながら翔真はフランベルスを睨みつける

 

「体内温度の分布……これは……」

 

花が分析していく中、フランベルスの体内温度の分布にあるものを見つける

 

「ケリスさん!仮説ですが、フランベルスの凶暴性の原因がわかったかもしれません!」

『それは?』

「フランベルスの体内の温度分布、かつてのドキュメントに記録のある溶岩や地下深くを生息域にする怪獣たちのデータと比較しても高すぎるんです。いくらマグマ内部が住処と考えられる怪獣でも、この体温のままで生き続けているとしたら、逆に地殻を刺激しかねないのではないでしょうか?」

『一番低いところでも2000度…たしかに異常に高いね。地殻への影響があってもたしかにおかしくない……』

「そう考えると…あの怪獣は定期的に体内に蓄えた熱量を発散しているのでは…?」

『……たしかにそうかもね。賭けてみる価値は、あるかもしれない…』

 

ケリスのその言葉を聞いた花は剛に通信を繋げ、分析結果を伝える

それを聞いた剛は翔真と輝に新たな作戦を伝える

 

『翔真!輝!怪獣の状態が判明した!体内のエネルギーを火球で吐き出し終わればエネルギー量が安定して鎮静化させられるはずだ』

「……G.I.G、怪獣を牽制して火球を放たせます」

『G.I.G!』

 

剛から作戦を聞いたガンブレイバーとガンバスターはフランベルスを牽制するように動き、火球を誘発。爪を振り回しアンカーを砲塔ごと破壊したフランベルスは爪が届かないことを認識し、火球を放ち続ける

機動力の高いブレイバーがそれを引きつけ、バスターは威嚇射撃でフランベルスを刺激する

 

ーギャオオオオオオオオン!!!!

 

火球を放ち続けるフランベルス。そこから放たれる熱量はたしかにじわじわと低下しているように見えた

だが、数十分の間火球を吐かせているのに一向にフランベルスは弱る気配を見せない

 

『花!!まだなのか!?』

「効果は確認できています!怪獣体内のエネルギーはだいぶ低下して……」

 

花の言うことは事実だった

フランベルス体内のエネルギーは火球を放つごとにだいぶ低下している。それでもまだ最低温度1500度。まだまだエネルギーは有り余っているのだ

 

ーギャオオオオオオオオン!!!!

 

痺れを切らしたかのように咆哮を上げると、フランベルスは両の爪を打ち合わせ、その爪に向かって炎を吹き付ける

 

灼熱した剣爪を火の粉を散らせながら振り払い、デタラメに振り回した

 

「うわあっ!?」

「キャアァァァッ!!」

 

振り回された爪から灼熱の斬撃が迸り、近隣の山に敷設された仮説本部や飛行していたレガシーウインガーとレガシーローダーに襲いかかる

ブレイバーとバスターは間一髪攻撃を回避したがウインガーは左翼を切断され、ローダーは機関部に大ダメージを負い、墜落していく

 

「花!ケリス!!」

「剛さん!!」

 

二人を案じて駆け出そうとする剛を翼が制止、みると斬撃の第二波が仮説本部に迫っていた

メモリーディスプレイをセットしたトライガーショットを構えた翼の真意を汲み、剛もトライガーショットを構える

 

「「キャプチャーキューブ!!」」

 

2人のトライガーショットから放たれたメテオール障壁が炎の斬撃を辛くも防ぎ、霧散させる

 

「ッ、各員負傷者の確認を!!重傷者は下がらせろ!!花!ケリス!応答しろ!無事か!?!?」

 

『こ、こっちはなんとか大丈夫…です…』

 

弱々しいながらもケリスから通信が入り、剛が安堵の息を漏らす

 

「花!百瀬隊員!!無事か!?応答してくれ!!」

 

 

「……う」

『ーいん!ーしーくれ!!』

 

一瞬気を失っていた花は目を開ける

混乱する中、自分の頭をなぞるとぬるっとした感触と共にグローブの上からでもわかる赤い液体が指先に付く

 

ズン、ズンッ!!

 

朦朧とした意識の中、地響きが聞こえてくる

なんとか見上げると、フランベルスの巨体が目の前に迫っていた

 

ーグルルルルルルル……

 

フランベルスの凶暴な顔が花を見下ろす

 

「あ、あっ……‼︎」

 

朦朧とした意識が明瞭になると共に花はコクピットのシートベルトが破損した計器に挟まれて外れなくなっていることに気づく

 

「はっ、あっ、ぁあっ、いやっ!!」

 

パニックに陥りベルトを引っ張り続けるが、ベルトはびくともしない

 

ーギャオオオオオオオオン!!!

 

フランベルスが腕を振り上げ、花めがけて振り下ろされるー

 

瞬間、ガンブレイバーからの射撃が頭部に命中し、フランベルスの注意が花から逸れた

元々眼中になかったのか、フランベルスはブレイバーのほうに目標を移し、花の乗るウインガーから離れていった

 

「あ、あぁあああぁぁぁあ…ッ!」

 

まだ体の震えがおさまらない花は悲鳴とも嗚咽ともつかない声をあげてうずくまった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「花隊員を確認しました。7時の方向に墜落しています」

『そうか、よかった……すぐに救護班を向かわせろ!』

 

翔真はフランベルスを睨みつけ剛に提案する

 

「撃退作戦の続行は不可能と判断します。やはりアレは害獣です」

『……わかっている。撃退主体の作戦から駆除作戦に変更。対象の怪獣を迅速に無力化する』

「G.I.G」

『……G.I.G』

 

『駆除作戦になったということなら、我々も動いても構わないということだな?』

 

通信に石動が加わる

 

『……そう思ってもらって構いません』

『了解した』

 

石動との通信が切れるが早いか、山間部から装甲車が発進

ミサイルポッドをフランベルスへと向ける

 

「神経断裂弾、撃てェーッ!!」

 

戦車隊司令官の号令とともに装甲車からミサイルが放たれる

だが、着弾したそれらは表皮を十分に貫けず、満足なダメージを与えられていない

 

苛立たし気にフランベルスが火球を戦車隊に放っていくが、その頭部にブレイバーのウイングブルーブラスターが命中する

 

「輝さん。俺が引きつけている間にウルティメイトシェルを。狙うとしたら喉です」

『わかった…無茶はするなよ!!』

 

バスターが着陸可能な地面に近づく

 

「隊長!」

『ああ、メテオール解禁!』

 

「「バーミッショントゥーシフト、マニューバ!!」」

 

ブレイバーとバスターがマニューバモードへと変形

戦車形態になったバスターの主砲がフランベルスに向けられる

ブレイバーはファントムアビエーションによりフランベルスを牽制、眼前に一気に近づき急上昇することでフランベルスに上を向かせることに成功する

 

「今だ!!ウルティメイトシェル、発射!!」

 

バスターからメテオール徹甲弾が放たれる

それは見事フランベルスの喉に直撃、表皮を貫通し爆発

見てわかるほどの大ダメージを与える

 

「ダメ押しだ、シネラマグレネード、ファイヤ!!」

 

ブレイバーから放たれたシネラマグレネードが更に傷口に直撃していく

しばらくもがいていたフランベルスはよろめき、脱力。そのまま地面に倒れ伏し息絶えた

 

「やった……‼︎ウルトラマン無しで……‼︎ 対象の沈黙を確認!」

 

ーキャォォォン

 

興奮気味に叫ぶ翔真の耳に今までよりも小さな咆哮が耳に入る

 

倒れ伏したフランベルスの亡骸、その側に先ほどの個体よりも小さなフランベルスが寄り添っていた

剣のような爪はまだ発達しておらずどこか丸い印象を受ける個体

 

「……子供なのか…?」

 

子フランベルスは亡骸に顔をすり寄せ、悲しげな声をあげている

よくみるとその目から涙が溢れたような痕も見られた

 

「ーざけるな」

『?翔真?何かいー』

 

「ふざけるなァァァァァァァァァァァ!!」

 

今まで聞いたことのない怒声を上げた翔真は子フランベルスに容赦なくシネラマグレネードを放った

巨大怪獣すら当たりどころによっては一撃で絶命させうるメテオール兵器の直撃に耐えられるはずもなく、子フランベルスはエネルギーの爆発に巻き込まれ、悲鳴をあげることもなく爆発した

飛び散った血液が、亡骸にべったりと上塗りされる

 

『翔真!?何してんだ!!目標はもう倒したんだぞ!?』

「黙れ!!黙れぇ!!一匹でも残したら、また被害者が出るかもしれない…子供でもアレは害獣だ!!」

 

輝すら閉口するほどの剣幕で翔真は怒りを露わにする

輝の言葉に反発したんじゃない。翔真の怒りは別にあった

 

亡くした親に泣きつく子供

その姿は、妹を、両親を失った時の翔真とほとんど同じだった

 

肉親を奪った害獣がそんな姿を今更見せたことが翔真はなによりも許せなかったのだ

 

「奪っておいて…俺の家族を踏みにじっておいて…俺と同じ目をするな……‼︎ お前たちは、害獣なんだ……そのはずなんだ…ッ!!」

 

錯乱する翔真

そんな彼の乗るブレイバーに火球が直撃した

 

「ぐぅっ!?!?」

 

墜落していくブレイバーの窓から翔真は2匹の亡骸に近づく別個体のフランベルスを見た

最初の個体より一回り小さい、だが爪の鋭さはこちらの方が上で、体表の色は黒曜石のように黒光りしていた

 

ーゴァァァァオオオオォォン!!!

 

新たな個体は大地を、大気を揺るがす咆哮を上げた

花でなくても、この個体が今どういった感情を持っているのかは想像がついた

 

ー絶大なまでの怒りだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「クソッ!!輝は翔真の回収を!!これ以上の任務は危険と判断し退却を始める!!!」

 

事態の急変に大わらわになる仮説本部から離れ、翼がコンとの通信を繋げる

 

「コン、イカロスの発進を頼めるか」

『そう言うと思ってたわよ。今向かわせてる』

 

それを聞き、翼は通信を切る

そう経たないうちにイカロスは翼の直上に飛来、腕部分の迷彩だけ切り、翼をコクピットまで運び入れる

 

ーシェアァァッ!!!

 

暴れ回るフランベルスに拳を叩きつけ、その侵攻をイカロスが止める

 

ーゴァァァァオオオオォォン!!!

 

フランベルスは怒りを抑えることなく、イカロスへと斬りかかる

一撃、二撃と攻撃を防ぐが絶大なフランベルスのパワーにどんどん押し込まれていく

 

「くっ…‼︎ 転送!イカロスナイトソード!!」

 

フランベルスをいなし、イカロスナイトソードを転送、セイバーカスタマイズへと換装する

フランベルスの斬撃を2刀で受け止め、いなしていくが、一瞬の隙を突かれて火球がイカロスの旨を直撃、あまりの威力に大きくイカロスが吹き飛ばされる

 

「ぐぁぁぁあッ!!」

 

コクピットすらも天地がひっくり返るほどの衝撃に襲われ、翼が怯む

視線を戻したその先では、フランベルスが剣爪に炎を吹き付け、あの斬撃をまた放とうとしていた

 

「まずいッ!?」

 

翼は咄嗟にイカロスに剣の腹で攻撃を受けとめさせる体勢をとらせた

 

 

墜落したガンブレイバーのコクピットから脱出した翔真の見上げた先

そこではイカロスがフランベルスの斬撃を受け止めていた瞬間だった

 

ーシェアァァァァッ!?

 

凄まじい熱量に翔真が顔を覆う

 

バギンッッ!!

 

鈍い音と共に、イカロスが手にした剣が半ばから切断され、炎の斬撃がその体を捉え火花を散らした

あまりのダメージにイカロスが脱力し、くずおれる

カラータイマーが急速に点滅を始めるが、それよりも翔真はある部分に目を奪われた

 

イカロスの胸のプロテクター、そこに生じた亀裂からバチバチと火花を散らす内部機構のようなものが見えたのだ

 

「あれ、は…⁉︎」

 

驚愕する翔真の元に通信が入る。秘匿通信、剛たちとはチャンネルの違う回線だ

 

『立花 翔真隊員だな?』

「あんたは……?」

『A.I.G.I.S.司令官の石動だ』

 

 

『A.I.G.I.S.司令官……?それが何の用で俺に?』

「何、かつて約束したものが見られると伝えておこうと思ってね」

 

石動は一方的にそう告げると、通信を切りその手に何やら見慣れないデバイスを取り出した

 

『解凍処置完了。圧縮栄養剤投与による代謝も良好。いつでも出撃可能です』

「ご苦労。その場から退避せよ。出撃の際の不慮の事故はまだ考えうるからな」

 

通信が終了したことを確認した石動は、手にしたデバイスを起動させる

 

「A.I.G.I.S.培養怪獣兵一號、レブナントG。出撃」

 

 

先程の斬撃でイカロスナイトソードが破壊され、更にタイマーリアクターの動力パイプを大きく損傷し、立ち上がることすら難しくなったイカロスの再起動をどうにかせんとしていた翼の耳に地響きの音が響く

 

それは、フランベルスの背後から大地をめくり上げながら現れた

 

ーGyaaaaOooon……

 

土煙の中から合成音声じみた不協和音な咆哮を上げ、現れたそれはゴモラによく似ていた

 

が、その怪獣は異様な姿をしていた

体の各所にはパイプや機械部品、装甲がつけられ、顔はバイザーらしいパーツで覆い隠されていた

 

ーゴァァァァオオオオォォン!!

 

損傷したイカロスを敵として除外したのか、フランベルスは新たに現れたその怪獣へと突撃していく

怪獣はフランベルスの斬撃を獣とは思えぬ正確さで受け止め、その刃を抑え込むと、右の剣爪に腕のプロテクターをエルボーの要領で叩きつけ、爪をへし折った

 

ーゴァァァァオオオオォォン!!!

 

爪を折られた痛みからもがくフランベルスは負けじと火球を放つ

が、それは怪獣が前方へ展開したバリアーによって難なく弾かれる

一発ならと二発、三発と火球が叩き込まれるがバリアーは小揺るぎもせず、その火球のエネルギーを球状に収束、フランベルスに撃ち返し大ダメージを与えた

 

ーGyaooooooN!!!

 

怯むフランベルスを怪獣は見逃さず、その首を腕で締め上げる

フランベルスが暴れ出そうとすると拘束を解き、返す尻尾の一撃で山へと叩きつけた

 

その様を見届けていた石動がデバイスを怪獣ーレブナントGへ向け、指令を下す

 

「強化超振動波、発射」

 

指令を受け取ったレブナントGは両腕を体の前に突き出す

その両腕の間と角にエネルギーが圧縮されていき、それが放たれる

よろめきながら立ち上がったフランベルスは避けられるはずもなく、そのエネルギー波の直撃を受け、体中から火花をスパークさせる

 

ボロボロになったフランベルスが息絶え、崩れ落ちる

その背後の山は強化超振動波の余波で大きく削れ、山肌が見えていた

 

ーGyaaaaOooooo……

 

レブナントGは仕事は終えたとばかりに地中へと潜っていき、姿を消した

 

先程までの激闘が嘘のように炎剣岳は鎮まりかえっていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「……これはなんだ?」

 

剛の前には翔真が立ち、デスクには一枚の書状が置かれていた

 

「NEXT GUYSを辞めさせていただきます。辞表はここに書きました」

 

淡々と告げると辞表に並べて翔真はメモリーディスプレイをデスクに置く

 

「……背負っているものは、考え直せたのか?」

「えぇ、それ故の辞表です」

 

それだけ一方的に告げると、翔真は指令室から去っていった

 

一人残った剛は翔真の辞表とメモリーディスプレイをしまい、パソコンの画面を見る

 

そこには花からのしばらく休ませてほしいという旨が書かれたメールが映し出されていた

 

剛はパソコンをしまうと指令室を後にした

照明が落とされ、誰もいなくなった指令室は酷く広く感じられた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

A.I.G.I.S.指令室

 

「本日付で、我々A.I.G.I.S.の実働部隊に新たなメンバーが加わることになった。入れ」

 

石動に促されて一人の隊員が入室してくる

A.I.G.I.S.の制服を纏ったその青年は姿勢を正すと他の隊員に軽く一礼した

 

「新入隊員の立花 翔真です。よろしくお願いします」




フランベルスの作戦失敗により塞ぎ込む花
怪獣と寄り添いたいと思いながらその心は怪獣を拒絶しようとしていた

そんな中、次元振動と共に街中に深海怪獣グビラが出現
そして花の下に言葉を話す謎のデバイスが転がり込む

宇宙から飛来した謎の怪獣が猛威を振るう中
花は再び歩み出せるのか?

次回ウルトラマンイカロス
「繋ぐ意志と絆の未来」
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