ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第12話「人々が消えた島」

ーオォォォォォン……

 

夜の島を覆う森の中、不気味な咆哮が響き渡る

男はもう一人の仲間と共にその咆哮の主から逃げていた

地響きと共に山影から巨影が現れる

赤く輝く目と枝分かれした巨大な角を持つそれは男たちを見下ろす

 

「ひ、ひぇぇぇ!?」

 

恐怖に駆られて足を早めるが、それが仇となった

足がもつれ男が倒れる。仲間は助けようと振り返るがすぐに逃げ出してしまう

 

「待って、待ってくれ!!!」

 

逃げ出した仲間が霧に飲み込まれる

 

ーうぁああぁああぁあああぁ!!!

 

断末魔のような悲鳴が夜の闇に響く

腰を抜かした男は怪獣から這う這う遠ざかる

が、そんな男に霧は容赦なく襲いかかった

 

「あぁ、あぁあああぁああ!!!!」

 

男は悲鳴と共に霧の中に姿を消した

 

ーガァァァァオォオオオオゥゥゥゥ!!

 

邪悪なる咆哮が霧の中に不気味に響いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

潮風島(しおかぜじま)で怪獣の目撃が多発……ですか?」

 

フェニックスネストでは新たな怪獣災害と思われる事件に関しての作戦会議が行われていた

潮風島という孤島にて、近隣を航行していた船から何件もの怪獣らしい巨影の目撃情報が上がっていたのだ

 

「ああ…しかも目撃の報告がバラバラなんだ。ある船は巨大な角のある影を見たと報告するし、またある船は恐竜のような影を見たという」

「シルエットからして違うということは……別々の怪獣かもしれないってことですか?」

「そういうこと。現在までだと少なくとも2種類の目撃例が上がってるから……怪獣2体があの島にいるのかもしれないって私は踏んでる」

 

ケリスの言葉に輝が頷く

 

「少なくとも2体……そんなにたくさんの怪獣に私たちで対処できるのでしょうか……」

 

不安げに呟く花の言葉を聞いた剛がこほんと咳払いをする

 

「花の不安は尤も。故に今回はA.I.G.I.S.とも本格的に連携した調査作戦を展開していくことになった」

 

剛の言葉を聞いていたのか、モニターに通信が入り相手が表示される

 

『海野隊長から言われた通り、今回NEXT GUYSとA.I.G.I.S(エイジス).は合同で調査任務を展開することになった。改めて挨拶を、私はA.I.G.I.S.総司令石動 大智(いするぎ だいち)。A.I.G.I.S.の指揮と戦力開発を行なっている』

 

モニターに映し出された石動が淡々と言葉を紡ぐ

 

『僕たち日向重工からも技術班と科学班を出向します。大規模調査になるならNEXT GUYSの職員だけでは人手不足になる可能性もありますから』

 

翼もそれに続けて伝える

滞りなく会議は進み、潮風島調査任務の段取りが定まった

 

島全域の調査はNEXT GUYSの隊員だけでは難しいため、A.I.G.I.S.の機動隊員の人員による広域捜査、及び日向重工の技術士団による後方支援を加えた体勢で調査を行うことになった

 

調査開始は明日から

早朝には調査拠点の準備が始まる

 

 

会議を終えた翼が一息つく

すぐにソファで待機していたコンとアルミルの方を向く

 

「さて、2人とも。調査の概要は今しがた会議と並列して送った資料の通りだ」

「はいはい了解。メテオール機材のテストでも無いのに私たちまで出向くことになるとはね…」

 

コンが少しばかり面倒そうに言うのに対しアルミルは緊張した面持ちでタブレットの資料を何度も読み返していた

 

「……アルミル?大丈夫かい?」

「だ、だだだ大丈夫ですす……‼︎」

「ガッチガチじゃないの……」

 

変な汗をダラダラ流しながら小柄な体を更に縮こまらせていたアルミルは翼の方を向き助けを求めるような視線を投げかける

 

「な、なんでボクなんかを技術士団代表に選んだのですか翼社長ォ……もっとボクよりも優秀な人ならいるはずです……」

「優秀なメンバーなら分野的に見ると確かにいる。でも僕がキミを代表として選んだのはただそれだけを理由にしてるわけじゃないんだ」

 

アルミルの隣のソファに腰掛け、彼と目線を合わせる

 

「キミは研究・技術部門たちの趣味、人柄、食べ物やその他の好みや癖までよく熟知しているだろう?僕も社員の顔や基本情報は把握しているが、キミはそれよりももっと彼らを理解してる。僕だけではできない管理がキミに可能だと信じているから、今回の代表に指名したんだ」

 

アルミルが目をぱちくりさせる

その様子をニヤニヤしながらコンが見つめている

 

「この社長、社交辞令なんて器用なこと社員にはできないからマジで言ってるわよ。だから大人しく光栄に受け止めておきなさいアルミル。なんかあったら少しくらい手は貸せるわよ」

「コンさん……‼︎ ありがとうございます!社長も光栄なお言葉ありがとうございました!!」

 

同期でもあるコンの言葉で緊張が解れたのかアルミルが深く頭を下げる

その様子を見て微笑む翼。だがそんな彼をコンは訝しむように見つめている

 

「翼、本当にアレ運用するつもりなの?」

「………」

 

コンの問いに言葉をつまらせる翼。アルミルも心配そうに様子を伺う

 

「あのメテオールは、一応製造と性能テストが完了しました。ですが多用するのは避けた方がいいとボクも思います。翼社長のことですから過剰運用はしないと思いますが…それ以上に素材として使用した検体の不確定要素がまだ強いですし……」

「……万が一の時は迷いなく運用するよ。でもその万が一が来ないように僕も全力で戦う。心配させてしまってすまなかったね、二人とも。じゃあそれぞれの準備を頼むよ」

 

翼は明るい様子でそう答えると社長室を後にした

 

「……アルミル。あのバカなことあんたもよく見といて」

「え、翼社長のこと?」

「そうよ。あのバカがあんな感じの時は抱え込んでる時……あいつ、私らのこと実際信頼してそこまで秘密も抱えないのに、クリティカルなことだけは秘密に抱えたがるから…」

「……わかった。ちゃんと見ておくよ」

 

コンとアルミルは互いに頷きあった

 

 

「いよっす翔真少年!元気にしてるかい?」

 

A.I.G.I.S.地上基地本部廊下を歩いていた翔真の肩がバシン!と叩かれる

翔真に話しかけてきたのは綺麗な黒髪をポニーテールにまとめた女性。支給されたA.I.G.I.S.機動部隊の活動服の右上腕に青いバンダナを巻き、首にはゴツいゴーグルをぶら下げていた

 

青柳(あおやぎ)隊長……その呼び方はやめてくださいと言ったのですが?」

「少年は少年だろう?やめる道理は残念ながらあたしには無いんだなぁこれが」

「……4歳だけ歳上のクセに」

「少年〜?女性に歳の話をしたら舌引き抜かれても文句は言えないぞ〜?ん〜???」

 

この女性は青柳 華鈴(あおやぎ かりん)

翔真が配属となった第一機動隊で若くして隊長を務める女性隊員である

元々は自衛隊に所属していたらしいが、その腕前を買われ石動から直々に招致されここに所属しているらしい

 

「明日からの調査任務についてはちゃんと理解した?」

「当然です。俺はそんな場所に手を抜くような人間ではありません」

「そんなことは思ってないよ。ただキミ確かNEXT GUYS抜けてこっちにきてるよね?時期とか鑑みるに栄転とかじゃないだろうし…昔の同僚とかとまた仕事するの大丈夫かな〜って」

 

肩に置かれた華鈴の手を払い除ける

 

「関係ありません。俺は私情を持ち込まないので。それにー」

 

心底冷たい瞳で翔真は華鈴を睨む

 

「ここでも、むこうでも、俺は馴れ合いをしてる暇はありませんから。会話もほとんどしない相手のことなんて、向こうも覚えていませんよ」

 

それだけ言い放つと翔真は華鈴を置いて去っていった

 

「………やっぱり少年は少年、か…」

 

華鈴は払い除けられた手をぷらぷらと振ると、一瞬どこか底冷えのするような瞳を見せた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

潮風島 仮設本部

 

「NEXT GUYS、そして日向重工の諸君、本作戦ではよろしく頼む」

 

石動が淡々とNEXT GUYSの面々と翼たち日向重工の代表に挨拶を済ませる。それ以上は特に何も告げず、仮設本部であるテントの方に向かっていった

 

「……改めて会ったけど、怖い雰囲気の人だなぁ…」

「……はい、なんだか緊張してしまいます…」

 

輝と花がホッと一息をつく

 

「石動さんは元から強面ですからね。昔から表情を崩したところを僕もあまり見たことありませんし…」

 

翼のその言葉に輝が反応する

 

「そういえば…翼さんって石動さんの知り合い…?」

「知り合い、と言ってもじいちゃん…祖父を介しての、と言った方がいいかもですね。石動さんは祖父の研究仲間だったらしいです。正確には祖父の研究所の後輩だったとか…」

「翼さんのお爺さん……?」

「花はまだ知らなかったっけ?翼くんのお爺さん、日向 昴博士はメテオール技術の権威だったんだよ。元々一機作るのもやっとだったメテオール戦闘機の安定生産を可能にしたり、新たなメテオールの開発をしたり、今のNEXT GUYS装備にも博士の改良品や開発したものが多く使われてるんだよ」

「つ、翼さんのお爺さんはすごい方だったのですね……」

 

翼が照れ臭そうに頬をかく

 

「僕も祖父には頭が上がりませんでした。ガンドラグーンは僕が一から開発した戦闘機ですがそれでもまだまだ祖父のノウハウが使われてますし、祖父を超えるのはだいぶ先になりそうです」

 

どこか懐かしむように翼が笑う

その横顔を見たコンはどこか複雑そうな表情を浮かべていた

 

そんな話をしていた中、ふと視線を移した輝が見覚えのある顔を見かけ声を上げる

 

「翔真!?」

 

輝が駆け出したその先にいたのは、NEXT GUYSを辞めたと剛から聞かされていた立花 翔真だった

その身にはA.I.G.I.S.機動隊の制服を纏っている

 

「お前……A.I.G.I.S.に行くなら行くってそう言えよな…心配したんだぞ…急にいなくなって……」

「話す義理が俺にはありませんから」

「……え」

 

翔真が輝たちを睨む

その目は、対フランベルス作戦の時輝が見たどこか危うげな目よりもずっと鋭く、剣呑な光を持っていた

 

「NEXT GUYSでは俺の求めることが為せない。そう判断したから俺はこちらに来たんですよ。あの時の作戦で確信しました。NEXT GUYSは弱いと」

 

翔真は冷たく言い放つ

 

「怪獣に同情して作戦を掻き乱し、第三者みたいな視点で俯瞰してるつもりのものもいる、隊長も、わかったような口で語るだけで役立たず。ウンザリしたんですよ」

「………」

 

その言葉を唖然と聞いていた花が輝と並ぶように前に歩み出る

 

「……確かにあの時は私の中途半端な判断が原因で失敗しました。でも、私はまだ怪獣を知ること、歩み寄ることを諦めていません」

「だからどうした?言葉だけは一丁前になりましたね。花隊員」

「お前、そんな言い方ー」

 

あんまりな物言いに輝が翔真に掴みかかろうとした

 

ーガツンッ!!!

「っ゛ッ!?」

 

瞬間、ものすごく痛そうな音とともに翔真が頭を抱えて膝をつく

 

「少年〜?なーに生意気な口聞いてケンカ売ってんだァアん??」

 

翔真の背後に現れたのは華鈴。その手には今しがた翔真を殴ったであろうヘルメットが握られている

笑顔を浮かべてはいるが、確実に激怒しているのがわかるほどの凄みを放っている

 

「ごめんね、うちのバカが失礼なこと言っちゃって。えっと…」

「あ、NEXT GUYSの高宮 輝です!」

「お、同じく百瀬 花です!」

 

華鈴に2人が挨拶をする

笑顔で華鈴はその様子を見て返す

 

「こりゃどうも。あたしは青柳 華鈴。A.I.G.I.S.機動隊の隊長をやらせてもらってる者だよ。気軽に華鈴と呼んでくれたまえ」

 

華鈴は輝と花の肩をバンバン叩きながら元気よく自己紹介をする

ちらとその後方、様子を見ていた剛がバツの悪そうに軽く会釈しているのを見ると悪戯っぽく笑った

 

「さて、とりあえず今回の作戦はよろしくね。色々話したいけど、ブリーフィングとこの少年の教育的指導があるから失礼するよ。またね〜」

 

翔真の腕を掴んで無理やり立たせた華鈴は輝たちに手を振りながら翔真を引きずって離れていった

そんな翔真はちらと、何故か翼の方を一瞬睨みつけたのをコンは見逃さなかった

 

 

バンッ

華鈴が翔真を木に叩きつけ、ため息をこぼす

 

「少年さ、何を考えてんの?マジで。作戦行動を取るってことは互いに信頼しないとダメって口酸っぱくして言ってると思うけど…」

「………」

 

翔真は不貞腐れたように黙っている

 

「私情の詮索はしないけど、あんまりに酷いならその限りではないぞ〜?わかってる?」

「……以後気をつけます」

「……」

 

翔真を冷たい目で睨みつけながら華鈴が口を開く

 

「俺の求めることがNEXT GUYSにはなかった、ね。じゃあA.I.G.I.S.にはあったの?」

「ありますよ。だから俺はー」

「レブナントシリーズがあんたのお眼鏡にはかなったわけだ」

 

華鈴が翔真を見下ろす

 

「翔真隊員、あたしらの仕事はなんだ?」

「……怪獣を駆除して人々を、地球を守ることです。そのための力がこのA.I.G.I.S.にはあるー」

 

翔真の顔の真横にブーツが突き刺さる

 

「力?あんたはそれが欲しくてここに来た?なら辞めちまいな。ここはあんたの居場所じゃない。あんたじゃ、何も守れない」

 

華鈴がいつになく冷たく言い放つ

 

「あたしらが力を以て守ってると思うなら、殺すことが守ることと思うままならあんたはこのままどこにも行けない。胸に手を当てて、よく考えな」

 

それを静かに聞いていた翔真は立ち上がり、華鈴を置いて去っていく

 

「あんたも……俺に知ったような口をきくのか……ッ」

 

去り際の怨嗟とも思える声を聞いた華鈴はチッ、と舌打ちするとその背を睨む

 

「……だからあんたはいつまでも『少年』なんだよ。ガキが」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

調査はまず島中央付近の村落から行われることになった

事の発端たる怪獣の発見は近隣を通る船からの通報で、より怪獣に遭遇するはずのこの島の住民からはなかったのだ

加えて潮風島の駐在からの連絡が途絶えているらしい事も事前調査で判明、故に島民の安全確保を最優先に行うことになった

 

「今のところ特に異常は無し…平和そのものだね」

 

A.I.G.I.S.機動隊に混じってケリスが呟く

調査のため機動隊とともに編成されたのはケリスと花、そして翼の3人

後方支援担当でもある翼はバックパックに簡易整備ツールを入れて持参している。その手にはメテオールカプセルを調整するタフブックもある

 

「はい……気味が悪いくらい静かです……」

 

辺りを警戒しながら花がそれに応える

そんな2人の後方にいた翼はふと、側の森の木に紛れて見えた赤い何かに目が移った

 

「村落に到着しました。ですが……」

 

と、A.I.G.I.S.機動隊員が告げ、翼も視線を戻す

目の前には小さな村落が広がっていた

が、異変はすぐに判明した

 

「人っ子一人いないね……生活痕はあるのに」

 

とケリスが足元に転がるボールを見る

その他にもカバンがそのまま転がっていたり、野菜の詰まった袋が転がっていたり、まるでそこで生活していた人々がそのままいなくなったかのような、そんな感じだ

 

「……これは?」

 

機動隊と共に村の調査を始めるケリスと花から離れて村を調査していた翼はある家の側に妙なものがあるのを見つけた

それは赤い花だった

ただの花じゃない。翼自身別に植物に詳しいわけではないが、見たことがない形の花だったのだ

 

(新種の植物……?とにかく採取しておく必要があるか…)

 

と採取用の瓶を取り出した瞬間

 

ーォオオオオォオォン!!!

 

おどろおどろしい咆哮があたりに響いた

その咆哮の主は島の中央部方向から現れた

 

「1時の方向より怪獣出現!こちらに接近してきています!」

 

現れた怪獣はまるで鹿を2本脚で立たせて大型化したようなフォルムだった。頭から伸びた枝分かれした2本の大角が特徴的なその怪獣は剛毛に覆われた顔から覗く赤い目でこちらを見下ろした

 

「早速おいでなすった…‼︎ 隊長、こちらケリス。調査隊が怪獣と遭遇……」

 

早速ケリスが剛たちに通信を繋ぐ

が、通信機からはノイズが走るだけで応答は無い

 

「隊長?海野隊長!……ダメか。繋がらない……」

「こっちもダメです!」

 

花が応え、翼もインカムを耳に当てながら首を振る

 

「こちらもダメです!通信途絶!」

「まさかこれのせいで島民の人らは通報できなかった…?」

 

困惑する隊にお構いなく怪獣は腕を振り回し、こちらに近づいてくる

 

「くっ…‼︎ やるしかないか…」

 

ケリスがトライガーショットを構えると共に花もトライガーショットを怪獣に向ける。それに合わせてA.I.G.I.S.の各隊員も手にした武器を構え攻撃を開始する

怪獣の表皮に着弾するとともに火花が散り、怪獣がもがく。しかしこれでも目立ったダメージは与えられていないようで怪獣はこちらを見下ろして腕を振り上げる

 

その横顔で突如爆発が起こり、巨体がよろめいた

 

 

「着弾確認。効果アリ、と」

 

望遠鏡で怪獣を確認しながら華鈴が肩に担いでいたランチャーを放る

 

「生体表皮改造弾頭が効いたなら……コイツも効くでしょ?」

 

バギーから新たに取り出したランチャーに弾頭をセットし、素早く構えて撃つ

 

ーォオオオォオオオン!!!

 

ランチャーから放たれた弾頭が正確に怪獣の頭と胸、膝に炸裂する

 

ーガオオオオオオオオン!!

 

「!?」

 

新たな咆哮が背後から響く

今相手していた怪獣とは別の、恐竜のような怪獣がどこからか姿を現していた

 

「団体さんで来ちゃったか…‼︎」

 

素早くバギーに乗り込み、通信機を起動する

 

「こちら華鈴、仮設本部応答せよ!」

 

が、通信機からはノイズが響くだけで通信が繋がる様子がない

 

「……なるほどね。村の方に合流するか…‼︎」

 

華鈴は助手席から特殊閃光弾を手に取るとサングラスをかけ恐竜型怪獣に放つ

 

ーガオオオオオオオオン!?

 

怪獣が目を塞ぎ、うずくまるのを確認すると華鈴は村に向けてバギーを発進させた

 

 

村落

 

「もう一体!?ちょーっと白兵戦だと厳しいかな…」

 

ケリスが恐竜型を確認しながら舌打ちを漏らす

そこにバギーに乗った華鈴が走ってきた

 

「華鈴隊長!」

「状況報告!」

「こちらの損害はゼロ!NEXT GUYSの方を中心に鹿型怪獣と交戦していた最中に恐竜型の出現を確認!」

「仮設本部に通信は?」

「繋がりません…ノイズが走るばかりで…」

「機動隊側のトランシーバーも不通です…」

 

思案している華鈴が起きあがろうとする鹿型に気付く

 

「ケリスさん、僕が代理で許可を出します。マケット怪獣で応戦しましょう!」

 

翼からケリスに提案がされる

それを聞いていた華鈴も頷く

 

「一体だけでもそちらが抑えてくれるならありがたい。その作戦可能ならあたしも賛成」

「分かりました」

 

ケリスがウインダムのカプセルを取り出し、ウインダムを出現させる

 

「こっちは鹿型を!ウインダムお願い!」

 

ーゴァァァァ!!

 

ケリスの命令を受諾し、ウインダムが鹿型怪獣に向き合う

それを確認したA.I.G.I.S.隊が接近しつつある恐竜型を見据える

 

「目標、恐竜型怪獣!攻撃開始!」

 

それを確認した翼は気配を消して森の中に移動した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

森の中にはうっすらと霧が立ち込め始めていた

 

「この霧のせいか…?メモリーディスプレイもうまく機能しない…」

 

翼はNEXTタフブックを開き、メモリーディスプレイを接続する

 

「日向重工の衛星を介した通信なら…よし!」

 

タフブックのディスプレイにコンとアルミルが映し出される

 

『社長!』

『翼!あんた定期連絡も無しになにしてたの!?』

 

二人の声の背後で『翼くんからの通信!?』と剛の驚く声が聞こえてくる

 

「村落調査班の方の通信機がまともに機能してないんだ。この通信も衛星を介してでやっとできてる」

『通信妨害ってことね…状況は?』

「怪獣が2体。ケリスさん、花さんと華鈴さん率いるA.I.G.I.S.隊が応戦中。海野隊長すみません、僕が代理でメテオール使用許可を出してウインダムも呼んでます」

『状況把握した。伝達感謝する』

 

状況を聞いた剛が通信から離れる

通信を聞いているのがコンだけだと確認し、翼が口を開く

 

「そちらの通信でイカロスの遠隔出撃は頼めるかい?」

『………なんとか。こっちはまだ通信妨害されてないみたいだし』

「じゃあ頼む。流石にこのままだとケリスさんたちが危ない」

『わかったわ。ノイズが入ってるけどGPS情報は拾えたからそこに飛ばすわね』

 

「ここで何をしてるんですか?」

 

と通信を終え、立ち上がる翼の目の前に翔真が立ち塞がった

 

「……通信妨害をなんとかできないかと衛星通信を試してたんだ。隊長たちに報告ができて何よりだったよ」

「そうですか。それは良かった」

 

翔真が翼を睨みつける

 

「ウルトラマンも無事ここにくるらしいですしね」

 

翔真の言葉に翼が息を呑む

 

「……フランベルス攻略作戦の時に俺はイカロスの傷口から機械のパーツが覗いているのが見えた。ウルトラマンは超常存在とはいえ、生物のはずだ。それなのに機械のパーツが見えるのは何故か、ずっと怪しんでいた」

 

翔真が淡々と続ける

 

「調べてたらあんたのお爺さんに当たったよ。メテオール研究の権威にして、マテリアルU……ウルトラマンの検体研究の第一人者。他に真っ当にマテリアルUを研究している学者はそうはいないと目をつけていたが…当たりだったらしい」

「……当たりとはなんのことかな?」

「まだしらばっくれるのか!? ウルトラマンイカロス…いや、機械のハリボテでウルトラマンとして活躍した気分になってるのはお前だろう?」

 

翔真の言葉に翼がふぅ、とため息をつく

 

「……誤解がある部分は訂正しておくと、僕は別に悦に浸るためにあの力を使ってるわけじゃない。あの力は、僕と、じいちゃんと本物のイカロスとの約束を果たすためだ」

「どうとでも言えるだろそんなものは。悦に浸っていない…?ならなんで今までのイカロスはNEXT GUYSたちがピンチにならないと現れなかった?約束がどうあれ、それを正しく使うと言うなら初めから現れればいいものを!!」

「イカロスの力は最終手段だ。そうならないように僕自身もNEXT GUYSと作戦を練るし、その手段の開発も惜しんでいない」

 

「あれだけの力を、『兵器』を作り出せる技術を秘匿してまでヒーローごっこがしたいのか!?」

 

翼の目が見開かれる

 

「あの技術が浸透したら、一体何人が救われた…?何体の怪獣が殲滅できた!? ごっこ遊びでその手段を取り上げておいて正義の味方ヅラなんて笑わせー」

 

「ー彼の力は兵器じゃない!!」

 

翼の怒声が響く

 

「……僕のしていることをどう思うかはキミの自由だ。どんな言葉も甘んじて受け入れる……だが、じいちゃんの…僕の友をモノとして見るなんて侮辱は許さない…‼︎」

 

翼の言葉に翔真が肩をすくめる

 

ーゴァァァァ!!

ーォオオオオォオオォン!!

 

地響きが響く

ウインダムが鹿型怪獣に押されている。ビームという絡めてがあるウインダムだが、肉弾戦はお世辞にも得意ではない

鹿型怪獣に吹き飛ばされ、ウインダムは山にその体を倒れこませた

 

ーガオオオオオオン!!!

 

A.I.G.I.S.の攻撃を受け、恐竜型が悲鳴のような咆哮を上げるが、進撃は止まらない

 

「もういい。これ以上は無駄だ」

 

翔真がその手に石動がレブナントGを呼び出した時に持っていたものと似たデバイスを取り出す

 

「A.I.G.I.S.培養怪獣兵弐號レブナントF、出撃!」

 

大地が鳴動すると共に恐竜型の背後の地面が捲れ上がる

 

ーGoAAAAAAAAAA!!!!

 

現れたのは以前フランベルスを撃破したものとよく似た武装怪獣

あの時の個体はゴモラに似ていたが、今現れたその個体はー

 

「フランベルス……⁉︎」

 

フランベルスの姿と瓜二つだったのだ

 

「フランベルスを素体にしてレジストコード《ガーゴルゴン》の組織片から得た因子を注入して完成した新しいレブナントシリーズ。フランベルスの時点でも既にウルトラマンを圧倒したこの力があれば、人間はどんな怪獣にも、宇宙人にも負けはしない!!」

 

ーGoAAAAAAAAAA!!

 

翔真の意思を汲んだかのようにフランベルスが咆哮した

 

 

「レブナントF…!?なんで……ってまさか、翔真……⁉︎」

 

突如現れたレブナントFに華鈴たちA.I.G.I.S.隊も動揺を見せる

 

「あれって、フランベルスを撃破した改造怪獣と似てる…⁉︎」

 

レブナントFの姿を同じく確認したケリスが驚き、警戒を始める

 

ーGoAAAAAAAAAA!!!

 

レブナントFは咆哮を上げると、威嚇する恐竜型に真っ直ぐ突撃。タックルを決めてその巨体を吹き飛ばす

 

「ーッ、退避ィ!!」

 

その巨体が倒れ込む先にいたA.I.G.I.S.隊員に華鈴が退避を促す

間一髪退避した隊員たちがいた場所に巨体が倒れ込む

それを無視し、レブナントFは鹿型とウインダムに向かっていく

 

「あのガキ……‼︎」

 

華鈴が盛大に舌打ちをする

 

ーGoAAAAAAAAAA!!

ーゴァァァァ!?

ーォオオオオォオオォン!?

 

乱入してきたレブナントFに注目し、ウインダムと鹿型怪獣が戦いをやめる

レブナントFは両腕の剣状の爪にエネルギーを凝集させ、横一文字に薙ぐ。エネルギーの斬撃が鹿型とウインダムに直撃、2体を大きく吹き飛ばす

 

「なんてめちゃくちゃな……ッ⁉︎」

 

ーゴァァァァ……

 

ケリスが倒れたウインダムに駆け寄ると弱々しい声を上げると共にウインダムが粒子になって消滅する

 

ーGoAAAAAAAAAA!!

 

ウインダムの消滅を確認したレブナントFは倒れた鹿型に跨り、その表皮を切り裂いた

 

ーォオオ、ォオオオォオン……

 

弱々しい悲鳴をあげ抵抗する鹿型怪獣を意に介することなく、ズタズタに引き裂いたレブナントFはトドメとばかりにその喉に剣爪を突き刺す

鹿型怪獣はしばらく痙攣すると、糸が切れたように脱力した

 

ーガオオオオオオン!!

 

起き上がった恐竜型がレブナントFに向き直る

レブナントFもそれに相対し、剣爪を研ぎ澄ます

 

ーガァァァァォオオオオォオオォウウ!!!

 

その時、恐竜型ともレブナントFとも違う咆哮がどこからか響き渡り、それに呼応するかのようにレブナントFの動きが止まった

 

 

「……おい、どうした?レブナントF!!!」

 

翼が見つめる先で翔真は動揺した様子を見せる

何度もデバイスを操作してレブナントFに向けるが、レブナントFは脱力して立ち止まったまま動かない

が、突如そのバイザー下の目が赤く光った

 

ーGoAAAAAAAAAA!!!

 

突如覚醒したレブナントFは恐竜型を無視し、地上にー調査隊がいたはずの村落に火球を放ち始める

 

「な、何をやってる!?レブナントF!!言うことを聞け!!」

 

どうやら制御不能になったらしく、翔真がさらに動揺する

イカロスの到着をメモリーディスプレイで確認した翼はその様子を睨みながらもイカロスの元へ向かった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「クソッ、火が森に移るとまずい!消火活動を!」

 

A.I.G.I.S.隊たちが消火弾を放ち、炎上する家屋や木々を消火していく

レブナントFは時折頭を抱えながらもこちらにしつこく火球を放ってくる

 

「制御不能…?制御系がイカれたのか?」

 

ーシェアァァァァッ!!

 

暴れ回るレブナントFを飛来した銀の流星が吹き飛ばす

 

「ウルトラマンイカロス、か。助かった!」

 

レブナントFと対峙するイカロスにサムズアップを送る華鈴はすぐに隊員たちの様子やケリスと花の様子を確認する

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

突如隊員のものと思われる悲鳴が響く

見ると、村落の奥ー島の中央部方向からこちらに霧が降りてきていた

その中にいる何かに、隊員が襲われているらしく隊員たちが霧に消えていく

 

「霧から退避!!ガスマスク装備も忘れるな!!」

 

華鈴たちが素早くガスマスクを装備、ケリスと花もヘルメットからマスクを展開する

霧の中にいる何かがゆらりと姿を現すー

 

「あれって…人間…?」

 

現れたのは虚な目をした数十人の人間だった

その人間たちが手にした農具で隊員を襲っていたのだった

 

 

ーシェアァァァァッ!

 

走りくる恐竜型にタックルで対抗、その突撃をいなす

吹き飛ばした恐竜型めがけてイカロスは腕の機構を展開、光弾ーイカロススラッシュを放つ

 

ーガオオオオオオン!!

 

イカロススラッシュを浴びた恐竜型が怯み、後ずさる

同時に、恐竜型怪獣は頭を押さえ苦しむような様子を見せていることに翼は気づいた

 

「苦しんでいる…?一体どうして…」

ーGoAAAAAAAAAA!!

 

考える余裕すら与えられず、イカロスの背に重い衝撃が響く

 

「ぐあっ!?」

 

よろめきながら振り返るイカロスに、アッパーの要領でレブナントFの剣爪が炸裂しその体を大きく吹き飛ばす

 

「ぐあああああッ!!!」

 

吹き飛ばされた先でどうにか立ち上がるイカロス

その正面にはいつのまにか並びたった怪獣が2体

かたや斬撃、かたや火球、それぞれの最大の攻撃が遠慮なくイカロスに放たれ、銀の体に大きな火花を散らす

 

《警告:スペシウム合金製フレームの耐久を上回るダメージを確認》

《内部損傷:軽微 外部損傷:警戒 継戦は可能ですが推奨できません》

 

今までの戦いでは聞いたこともない警告音声の羅列がコクピット内部の翼に浴びせられる

 

イカロスの外部フレームには火星で採取されたスペシウムに数種のレアメタルを複合したメテオール合金・スペシウム合金が使用されている

単発ならばゴモラの超振動波も耐える頑強な金属だが、立て続けに強力な攻撃が命中したらその限りではないのだ

 

ーガァァオオオオオオゥゥ!!

 

絶対絶命の状況の中、新たな咆哮と共に島の中央部付近から巨体が持ち上がる

 

「新手の怪獣……⁉︎」

 

新たに現れたその怪獣は、恐竜型と同じような体型をしていた

が、恐竜型と違いその体表は青い棘状の逆立つ鱗状で、頭部には鼻先から白い一本角が伸びていた

まるで人間のような目は赤い瞳を歪ませ、まるでイカロスを嘲笑うかのような邪悪な意志を覗かせていた

 

ーガァァオオオオオオゥゥ!!!

 

現れた怪獣ー吸血怪獣ギマイラが高らかに咆哮する

 

イカロスのタイマーリアクターはそれと共に赤く点滅を始めてしまった




ギマイラが加わった3体の怪獣
その前にイカロスはなすすべなく倒れてしまう

レブナントシリーズの強行使用の咎を受けた翔真は混乱の中隊から逃げ出し、霧の中に消えてしまう

そんな中、操られた島民が霧と共に隊を襲撃
更にギマイラは新たな怪獣を引き連れ現れる

強敵を前にした翼は、イカロスは新たな力を纏うがー

次回ウルトラマンイカロス
『霧の迷い子』
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