なんとか立ち上がったイカロスに恐竜型怪獣が襲いかかる
その追撃を辛くも受け止め、パンチを連続で撃ち込み吹き飛ばす
ーGoAAAAAAAAAA!!!
が、それと入れ替わるようにレブナントFがイカロスの前に歩み出てその剣爪を叩きつける
「ぐうっ!?」
よろめきながらもレブナントFの攻撃を受け止めるが、その強大なパワーに押し込められていく
そこに更にギマイラが角から光線を放ち、イカロスを攻撃する
「こ……のぉッ!!」
ーシェアァァ……ッ!!
膝をつきレブナントFに押さえられながらもイカロスは拳をぶつけ、残るエネルギーを振り絞っていく
「これで……ッ!!」
レブナントFの胸元にイカロスの必殺光線ーアポロニウムシュートが直撃する。光線に押し返され、レブナントFはイカロスから離れる
ーGoAAAAAAAAAA……‼︎
レブナントFの胸部は光線で焼かれ、痛々しい傷跡になっていたが急速に組織が再生し、傷跡が塞がってしまった
「ガーゴルゴンの再生能力を使ってるのか…⁉︎」
イカロスがよろめき、膝をつく
胸のタイマーリアクターの点滅はこれまでにない早さで点滅していた
それはイカロスにもう立ち上がるエネルギーすらほとんど残っていないことを示していた
そんなイカロスに恐竜型怪獣とレブナントFが近づいていく
が、恐竜型怪獣の首元に爆発が起こり、その巨体がふらついた
イカロスの視線を動かした先にはバギーに乗った華鈴が手に大砲を持って怪獣の方を向いていた
ーガオオオオオオン……
華鈴が放ったのはA.I.G.I.S.の保有する改造弾頭、怪獣の神経組織を損傷させて仕留める神経断裂弾だったらしい
通常なら何発も撃ち込む必要があるそれを、華鈴は正確に怪獣の神経節を推測して撃ち抜くことで一発だけでも仕留めうる一撃にした
よろめいた怪獣が泡を吹き、倒れ伏す
ーガァァオオオオオオゥゥ!?
「今なら…ッ!!」
恐竜型怪獣のダウンに驚愕の咆哮を示したギマイラの一瞬の隙を縫ってイカロススラッシュを放つ
放たれたそれはギマイラの右目に直撃し、その眼に大きな傷を負わせた
《リアクター稼働限界 イカロス、機能停止します》
それとほぼ同時にイカロスのタイマーリアクターが消灯、イカロスの稼働限界が訪れた
「ッ、アンノウンチャフ展開!」
《承認 アンノウンチャフ展開》
翼の指示と共にイカロスの姿がゆらめき、虚空に消えていく
迷彩メテオールが展開されたのだ
ーガァァオオオオオオゥゥ!!!
眼に負った傷から血をだくだくと流すギマイラはたまらず島の中央部に向かい地中に潜航して逃亡していった
イカロスのコクピットの中で翼は握りしめた拳を床に叩きつけていた
「あとはもう一体…‼︎」
ケリスが残るレブナントFに向き直る
襲ってきた人々をどうにか押し除け、時にはショックバレットで気絶させながら対応していたがギマイラの撤退に合わせて霧と共に人々も島の中央部方向へと消えていった。残る脅威はレブナントFだけ…
が、レブナントFは棒立ちになりだらりと腕も下げている
しばし沈黙していたレブナントFだが、そのまま地面へと倒れ伏した
「あ……?」
呆気に取られるケリスを放って華鈴はスコープでレブナントFを確認する
倒れたレブナントFの背中。装着された装甲に張り付いたランプが赤く点灯しているのが見られた
(アポトーシスモードが作動してる……司令が手動で起動したか、はたまたストッパーみたいなのを仕掛けてたか……)
レブナントFには細胞の自己崩壊システムが発動していた
その影響で活動が停止したことが今確認されたのだ
「皆さん、すみません!無事でしたか⁉︎」
森の方からガスマスクを片手に翼が駆け寄ってくる
「翼さん!そちらこそ無事で?姿が見えなかったような…」
「NEXTタフブックで衛星通信を試みていました。仮設本部の隊長たちに連絡が通じたので、むこうの判断次第ですが援軍が来る可能性も…」
と話していると、早速一台のバギーが村落に向かって来ていた
「仮設本部から援軍が来たみたいだね。じゃああたしたちは早速だけど怪獣の遺体処理に向かうよ」
「了解しました。よろしくお願いします華鈴さん」
華鈴は翼たちに手を振り、隊員たちを招集して怪獣が倒れた場に向かっていった
「ケリス!花ちゃん!翼さん!無事⁉︎」
バギーから降りてきたのは輝とコン、アルミルの3人
「無事ですよ輝先輩。なんとかなりました」
「よかった……隊長たちは仮設本部から動けないから俺とコンさんたちだけ来る形になったのだけど…」
「私よりも、消滅してしまったイカロスの方が心配ですね。消滅の前にはカラータイマーが消えていたように見えたし……その場合今までのウルトラマンたちの記録通りなら…」
「イカロスが…⁉︎ そんな……」
その会話を翼は他人事とは思えないような苦い表情で聞いていた
実際他人事ではないのだが
コンとアルミルもそれを察したのか不安そうな顔を見せる
「……えっと、僕たちも少し別行動いいですか?」
翼がケリスたちに提案する
「村落付近で気になる植物を見つけまして、森の方に似た植物は無いかなと思いまして。そのサンプル採取をと思いまして」
「なるほど…でもさっきの様子のおかしい人々もいるかもしれないし、怪獣もまだ倒せたわけじゃないから…」
「私たちも行くから大丈夫よ。社長が無茶しそうになったなら、私たちが引っ張ってでもここまで退却してくるから」
不安げなケリスだったがコンの言葉に渋々頷く
「分かりました。無茶だけはしないでくださいよ」
「ありがとうございます。そこまで遠くは行きません」
翼がコンとアルミルを連れて森の方へと歩みを進めていった
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首根っこを掴まれた翔真が木の幹に叩きつけられる
「……あんたのしたことは何か、その結果が何か分かるか?立花 翔真隊員」
底冷えのするような声で華鈴が詰問する
隊員に回収の指示を与えた後、華鈴は呆然としていた翔真のもとに向かったのだ
「何……って……?レブナントシリーズを使って、怪獣を殲滅した。俺が動かなければ、もっと犠牲が出てたかもしれない!」
翔真が声を振り絞って反論する
それを眉一つ動かさずに受け止めた華鈴は翔真を掴む手の力を更に強める
「
「こいつらの負傷と、こいつら分の欠員は、お前が勝手をしなけりゃなかったかもしれないものだ」
華鈴が翔真を地面に投げ放る
「手前勝手極まる行動でお前はあたしらの人員を2人も犠牲にしかけた。それがお前のしたことだ」
「でも……でもあのまま戦っていても負傷者はいた、もっと増えたかもしれない!!それだけの犠牲でヤツらが殲滅できるならー」
「ゼロで済んだものを2にしたって大事にすら気付かねぇのかお前は!?」
華鈴が声を荒げる
「犠牲が増えたかもしれない?あたしらも随分舐められたもんだな。70年前の怪獣頻出期終わりからも少しずつ出現するようになってきた怪獣たちに対処するためにNEXT GUYSと並んで組織されて40年近く、装備も更新し、修練も血の滲むほど積んでここまできた精鋭たちが、むざむざ犠牲者負傷者が出るように振る舞ってると!?」
翔真のもとにしゃがみ込んだ華鈴が再びその胸ぐらを掴む
「仮にあんたの言う通り犠牲が出ても怪獣を倒せたとして、こんなとこで犬死に、もしくは戦線を退いたヤツの身内になんて言うんだ⁉︎ あなたの身内の尊い犠牲のおかげで怪獣が殺せましたってか!?」
翔真は眼を見開いたまま反論ができない
「あんた自身が気づかないと意味が無いことだから黙っていてやったけど、ここまで分からないなら言ってやるよ。あんたは何も背負っちゃいない。ただただ自分の思うままに渡された力を振り回して救える気になってるだけ」
「違う……俺は、俺は‼︎ あの時を繰り返さないように!あの惨劇を背負ってここまで…ッ!」
「そいつはな、言い訳ってヤツだ。結局それすら背負って無いのがお前だよ翔真隊員。守る覚悟も、その為に奪う覚悟もお前には無い」
「そんなわけがない!!」
「お前のやり方が『もう一人のお前』を生むところだったのをわかってるのか?」
華鈴が翔真を睨む
「篝には嫁さんと3歳になる娘が、東吾のヤツには最近できた彼女がいたな。こっちがドン引きするくらいの惚気っぷりで自慢してきたからよく覚えてる。さっきのでこの二人が仮に死んだ場合、この嫁さんと娘さん、彼女さんが怒りを向けるのは、お前になるんだぞ」
翔真の目が泳ぐ
脳裏に超空間で見たレガシーウインガーに潰された両親の姿と、翔真自身が憎しみのままに殺した幼年個体のフランベルスの死体がよぎる
「お前はあと一歩で、お前の言う『害獣』と同じものになりかけたんだ」
「違う……違う!俺は、俺は……」
華鈴の手を振り払い翔真が立ち上がる
頭を抱え、荒い息をこぼし、翔真は華鈴を残してどこかに駆けて行った
「隊長!」
翔真を追おうとした華鈴を隊員が呼び止める
「どうした?」
「それが……先程の鹿型怪獣と恐竜型怪獣の遺骸が消失していました」
「なに?まさか、細胞の自己崩壊でもしたの…?」
「いえ、正確には遺骸があったはずの場所にそれぞれ鹿と成人男性の遺骸がありました。解剖はまだですが、鹿の遺骸にはレブナントFが鹿型怪獣につけたものと同じ傷があります」
「それって……つまり……」
「他の生物を怪獣化させる怪獣?」
村落の調査がひと段落し、バギーに積んだ通信設備にNEXTタフブックを接続して操作しているケリスのタブレットを輝が覗く
「鹿型怪獣の死亡後に現れたあのトゲトゲ怪獣、レジストコード《吸血怪獣ギマイラ》は以前にもこの島に現れてる。ユニオンドキュメントにも記録のある怪獣兵器。尤も、最近取引されてる兵器としてのコイツはコスパを良くする為に品種改良されてるけど……」
『怪獣兵器……随分と物騒だな……』
通信越しに剛が呻く
「改良種のギマイラは生体エネルギーの吸引と怪力を武器に侵略する星の生体をエサにしながら成長していくけど、原種はもっとタチが悪い。生体エネルギーが多分に溶け込んだ生物の血液を吸い、宇宙の混沌を気体として吐き出して生体を操る…私たちを襲った人々も多分そのガスに操られてる」
ケリスが更に続ける
「でもってコイツの一番厄介な能力は…自前の混沌を他の生物に光線として注入して怪獣に変異させてしまうこと」
「怪獣に!?」
「以前の出現でも防衛チームのチーフや近海に生息してたタコが怪獣化されて当時のウルトラマン80に襲いかかってる。こうなったら最後、元の生物に戻すことは不可能に……」
強烈な真実に輝が唾を飲む
『ケリスの報告を元にするなら……ギマイラは島の中央付近に操っている島民といる可能性が高そうだな……負傷してる今なら、こちらにも勝機はあるかもしれん。ガンドラグーンで追撃を試みよう。今からそちらにガンドラグーンで合流するから、村落で待機しておいてくれ』
「G.I.G」
通信を終了させ、ケリスがタフブックをたたむ
「……あれ?そういえば花ちゃんは?」
花の不在に気づいた輝がケリスに訊ねる
「花なら、翼さんたちが心配だから後を追うって言ってましたよ」
「内部損傷はほとんど無し、外部装甲の損傷が大きいが、一応は稼働可能って感じか……」
翼がひとつため息をつく
翼たちが来ていたのは迷彩メテオールで隠したイカロスのもとだった
簡易的に翼とアルミルで整備し終え、起動自体は問題ないことがわかったのだが
「タイマーリアクターのエネルギーは完全に枯渇してますね…予備電源の圧縮スペシウムと太陽光からのチャージをフルでしたとしても…次の稼働は1分が限度でしょう…」
「普段よりも1分30秒も短くなるのか…」
「前もそんな感じで起動しといてなに言ってんだか……」
コンがため息混じりに告げる
「今回は相手が相手だ……取り巻きの怪獣は撃破したけど、あの怪獣自身も恐らく強力な怪獣のはずだし……」
「……それは、たしかに……」
意気消沈する2人を見てアルミルが意を決したように告げる
「社長、アーマードエグゼスの整備と最終チェックは済んでいます。もしもの時は、きっと無事に使うことができます!」
「アーマードエグゼスの…?いつの間に⁉︎」
「この島に発つ前になんとかラボのみんなと協力して終わらせておきました。正直……ドキュメントにも記載されている暗黒宇宙の遺物たるアーマードダークネスの力をイカロスが使うのは怖いです……」
アルミルが翼に歩み寄る
「でも、社長は、先代や皆さんと作ったイカロスをウルトラマンにしてくれました!社長自身がどう思っているかはわかりませんが、僕たちはそれを見てきたからこそ信じられる。社長なら、必ず使いこなしてくれるって……」
「……ありがとう、アルミル」
コンはアルミルに微笑みかける翼をどこか訝しむように見つめていた
その笑顔にどこか影があるように見えたからだ
だがコンも翼のことは、イカロスのことは信じている。例え元が闇の遺物でも今彼が抱く意志ならば、正しくそれを使いこなせると
それでも、コンはどこか不安を感じているのがわかっていた
「翼さん!皆さん!」
と、そんな3人のもとに駆け寄ってくる人影が1人
遅れて翼たちを追った花だった
「花さん?なんでここに……」
「翼さんたちがやっぱり心配で……私白兵戦はそんなにですけど、いないよりはマシだと思って……」
花がおずおずと答える
「あと……どうしても聞きたいことがあったんです……」
意を決したように花が翼を見据える
「ーウルトラマンイカロスが、翼さんの乗る機械のウルトラマンって本当なんですか!?」
予想外の花の言葉に、思わず翼が目を見開いた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ジュル…ジュルル……
薄暗い洞窟の中、首筋に管のようなものが取り付けられた何十人もの人々がぼうっと立っている
その管ー舌の先でギマイラはうずくまっていた
負傷し、塞がっていた右目が血を啜るにつれてみるみる修復されていく
ーガァァオオゥゥゥ……‼︎
傷が完全に塞がり、その目に邪悪な光が戻った
「花さん……何故それを……?」
翼が恐る恐る花に問う
コンとアルミルは警戒を強め、花を睨んでいる
「えっと、えっと!ごめんなさい!!さっき翼さんが村落から離れていくのを見て……追いかけてみたら翔真くんと話してて……それを聞いてしまって……」
「翔真……?はぁ⁉︎ってことは翔真隊員にもバレてるわけ!?」
「えっと、彼の場合は大分事故というか……いや、花さんも事故なんだけども……」
コンの糾弾にばつが悪そうに頬をかく翼
一つ咳払いをし、観念したかのように花の方に向き直る
「……それは事実だよ。花さん。今現れてるウルトラマンイカロスは、僕の祖父がウルトラマンの遺骸を基にして設計して僕たちが完成させた人造のウルトラマンだ」
翼の答えに花は驚いたような、それでもどこか安心したような顔を見せる
「そうだったんですね……」
「……もうキミの中で僕の信用は無いのかもしれないけど、イカロスを悪用してるわけじゃないことは信じてほしい」
翼の言葉におずおずと花が頷く
「あ、あの、翼さん、私ー」
ーズゥン!!
花が何か言いかけたその時、地響きと共に咆哮が上がった
ーガァァァァオオゥゥゥ!!!
「おいでなすったわね…‼︎」
眼を再生させたギマイラが天に向かって咆哮する
それを見た翼がイカロスに向かう
「エネルギーの切り替えと充填はなんとか間に合いました!先程の通り1分なら戦えます!」
「1分…⁉︎ それだけしかダメなんですか⁉︎」
「あのイカロスはあくまでも機械……当然燃料も必要だし、核になってるタイマーリアクターだって冷却がいるわ。1分でもよく動くほうよ」
イカロスの手に乗り、胸元まで持ち上がっていく翼を花が心配そうに見つめる
コクピットに乗り込んでコンソール認証を終わらせる
《残存スペシウム:不足 タイマーリアクター冷却率:50%》
《イカロスの稼働限界は平時の40%になります》
アラートが鳴り響く中、翼は呼吸を落ち着かせ、コンソールを撫でる
「……ごめん。もう少しだけ無茶をさせる」
意を決して翼が立ち上がる
「ーイカロス、テイクオフ!!」
ウルトラマンイカロスの目とタイマーリアクターに再度光が灯った
迷彩メテオールを解除し、イカロスがギマイラの前に立ち上がる
ーシェアァァッ!
ーガァァオオゥゥゥ!!
傷の残る右目がイカロスを忌々しげに睨みつける
先制をしかけたのはイカロス。ギマイラに駆け寄り、手刀を叩き込む。よろめいた体に更にキックを当て、パンチに繋げていく
ギマイラも負けじとイカロスにタックルを命中させ、その体をよろめかせる
ーガァァオオゥゥゥ!!!
怯んだイカロスに向けて間髪入れず高濃度の霧を吐き出す
混沌が形を為した霧がイカロスの体でスパークし、ダメージを与えよろめかせる
ーシェアァァッ!!
それに負けじとイカロスもイカロススラッシュを放つ
が、以前のようにはならないとばかりに一本角に光弾は弾かれた
構え直すイカロス。その胸のタイマーリアクターが早くも点滅を始める
ーガァァオオゥゥゥ……‼︎
苛立たしげにイカロスを睨むギマイラ
その視線が足元、森の中の一点に不意に向けられる
ギマイラの瞳が邪悪な笑みを浮かべた
霧が立ち込め始めた森の中を翔真は一人フラフラと彷徨っていた
「違う……違うんだ……俺は…俺は……」
潰れた両親、冷たくなる妹、血塗れの幼年期フランベルス、遊園地を破壊し尽くすフランベルス、頭の中にいくつもの情景が何度も何度もフラッシュバックしていく
膝を突いて項垂れる
「俺は……俺には力が……ああならないために……ウルトラマンなんかいなくても救えるように……」
ーガァァオオゥゥゥ!!
朦朧とした意識の中、気付くのが遅れた
怪獣が自分を見下ろしていること、その怪獣の角から放たれた光線が自分めがけて迫って来ていることに
赤と青の稲光りを放つ光線が翔真の胸を貫いた
「か、はっ……⁉︎」
「翔真!!」
倒れ込む翔真を遅れて追ってきていた華鈴が受け止める
「おい!しっかりしろ!!」
「が、あ、あぁあ!?」
支える華鈴の手を振り払い乱暴に立ち上がる
翔真はそのままフラフラと華鈴から離れていく、それと共にそのシルエットはどんどんと膨張していきー
ーグォォアアァアアァアアアァァァァ!!!!
そこに現れたのは、巨大な黒い表皮を持つ怪獣だった
「……これは、なんの冗談だ…⁉︎」
華鈴がトランシーバーを起動する。しかし辺りは既に霧に覆われ、トランシーバーからはノイズが走り始めていた
「クソッたれ!!」
華鈴が部隊に合流しようと振り返る
霧の中からはフラフラと操られた人々が現れ始めていた
「邪魔なんだよ…今それどころじゃない!」
華鈴がちらと怪獣をー翔真だったものを見上げる
その変わり果てた赤い瞳が光る眼は既にこちらを見ていなかった
「……バカな部下にお灸を吸わせなきゃならないってのに!」
スタンバトンを取り出した華鈴は人々に真っ向から向かっていった
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーグォォアアァアアァアアアァァァァ!!!
ギマイラが光線を放つとともに森から新たな怪獣が姿を現した
黒い表皮を持つギマイラと似た体型の怪獣。その右手からは長く伸びた爪が剣のように伸びていた
赤い瞳を持つ眼はまるで人間のようにこちらを見据えている
「新手…⁉︎」
新たな怪獣に並び立つギマイラと共に獣の瞳がイカロスを見据える
黒い怪獣が動いた。黒い怪獣は真っ直ぐイカロスに突撃、その爪を振り下ろす
イカロスはそれをなんとか受け止めるが、想定外のパワーがイカロスを押し込んでいく。咄嗟に胴体に蹴りを撃ち込み、怪獣を下がらせる
ーシェアァ……
タイマーリアクターの点滅が更に加速していく
「このままじゃ……」
コクピット内で翼がふらつく
決心した翼は、その口を開く
「やるしかない…‼︎ 転送!アーマードエグゼス!!」
翼のコールが認証、日向重工へとコマンドが転送される
地下ドックからコンテナが持ち上がり、勢いよくカタパルトから射出されていく
イカロスの頭上で展開されたコンテナから外装パーツがイカロスへと落下、システムとリンクした外装が新たな胸部プロテクター、手甲、バイザーとなってイカロスに装着される
アーマードダークネスの欠片を素体として作り上げられた新たなイカロスの力ーアーマードエグゼスの装着が完了し、イカロスの各部から排熱として蒸気が吐き出される
《システムリンク完了 アーマードエグゼス起動、完rー》
ガイドアナウンスが突如途切れ、コクピット内の照明もダウンする
「な、なんだ…⁉︎」
周囲を見渡そうとした翼だが、突如意識にモヤがかかり、その場に倒れ込んでしまった
イカロスもそれに合わせてバイザー奥の目が一瞬光ったかと思うと、両膝をついて項垂れ、動かなくなってしまった
「翼……?翼!?どうしたの!?返事をしなさい!!」
異変に気づいたコンがメモリーディスプレイの通信をイカロスに繋ぎ呼びかける
が、その声は届いていないのかイカロスがー翼が応えることはなかった
「なんで……分析しても異常はなかったはずなのに…‼︎」
アルミルもタブレットを操作し、異常を検知しようとするが何も見つからない
憔悴していた2人とイカロスを呆然と眺めていた花が周囲の異常に気づく
「コンさん、アルミルさん!!」
2人に警告を飛ばす
3人の周囲は霧から現れた操られた人々に囲まれていた
花が2人を庇いながらトライガーショットNEXTを抜き構える
それと共に農具を振りかぶって花たちに人々が襲いかかった
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「………ここ、は…?」
暗い、闇が満ちた空間に翼は一人立っていた
何もない、暗闇だけが満ちた空間。光は一筋も見えなかった
ーガシャン、ガシャン…
そんな暗闇に、金属が擦れるような音が響く
翼の目前の暗闇が揺めき、輪郭を得ていく
現れたのは、甲冑を纏った人のようなシルエットの何か
霧のような暗闇が全身を覆っており、その姿ははっきりとは認識できない。赤い瞳だけが闇の中に輝いている
甲冑は手にした槍を振り回すと、迷いなく翼を切り捨てた
「ぐぁあああああっ!?」
吹き飛ばされる翼。切り裂かれたと思しき胸元をなぞるが、ぱっくりと裂けた傷口は何故かすぐに塞がった
甲冑は翼にゆっくりと近づき、槍を向ける
「アーマードダークネスの意志、なのか……⁉︎」
なんとか立ち上がり、甲冑に突進する
が、甲冑はびくともせずに翼の背を殴りつけ振り払い、再びその体を切り裂く
「がぁっ!?」
斬り上げられ、宙を舞う翼
再び傷は塞がるが、痛みは消えない
ゆっくりと歩み寄る甲冑を翼は睨む
甲冑はただただ槍を向ける
勝ち目が無いことはわかっていた
だが翼は再び甲冑に突進していく
今の翼にはそれしかできなかった
アーマードエグゼスの装着と共に機能を停止したイカロス
閉ざされた闇の中でアーマードダークネスの意志が翼に襲いかかる
イカロスを、翼を守るため、怪獣化した翔真を救うため
NEXT GUYSとA.I.G.I.S.の共同作戦が始動する
不可能なはずの怪獣化解除のために立ち上がる花
絶対絶命の状況に光を灯すのは
次回ウルトラマンイカロス
『その手に力を』