ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第14話「その手に力を」

「ーっうッ!」

 

コンたちを庇って立ち塞がった花の頭に農具が叩きつけられる

襲いかかってきた島民をなんとか押し除け、スタンバレットで気絶させるが、間髪いれずに他の島民が襲いかかる

 

「どきなさい!」

 

コンの一喝と共に念動力で島民たちが吹き飛ばされる

ふらついた花をアルミルが受け止める

 

「大丈夫ですか⁉︎ 血が…」

 

どうやら頭を切ったらしく、額に血が滴っていた

 

「大丈夫…それよりもケリスさんたちに合流しないと…‼︎」

「……翼とイカロスも気がかりだけど、今はそうした方が良さそうね…」

 

花の提案にコンが頷き、ケリスたちのいる村落に3人が足を向ける

 

「……ダメです…イカロスのステータスはオールグリーン、そのはずなのにこちらからの遠隔操作や通信を一切受け付けてません…」

 

移動しながらアルミルはタブレットでイカロスの分析を続けている

その言葉にコンが苦虫を噛み潰したような表情を見せる

 

「やっぱりアーマードダークネスの力が残ってたっての…?」

 

そうこうしてるうちに3人は村落にたどり着く

 

「花ちゃん!コンさんたちも…って花ちゃんその頭!?」

「私は大丈夫です…‼︎ それよりも、イカロスが……‼︎」

 

振り返った先、項垂れるイカロスに新たに現れた怪獣が迫る

が、そこにガンブレイバーが飛来し、レーザーを当てて怪獣を後退させた。ガンバスターもギマイラに攻撃し、牽制を続けている

 

「怪獣は隊長とケリスがなんとか食い止めてる。イカロスはどうしちゃったんだ…?」

「攻撃は待って!」

 

2機の様子を見守る4人の元に華鈴が隊員数名を引き連れて合流してくる。こちらも島民に襲われたらしく、制服が所々擦り切れている

 

「華鈴さん⁉︎ 攻撃を待ってって…」

「あの黒い方の怪獣…爪が長い方は翔真なの……あたしの目の前で、あのトゲトゲ野郎の光線を浴びて怪獣に……」

「そんな…⁉︎ ギマイラの怪獣化能力か……」

 

それを聞いた輝はすぐに剛とケリスに通信を繋ぐ

 

「隊長、ケリス、黒い方の怪獣への攻撃は最低限にしてください!アイツは翔真がギマイラに怪獣化させられた怪獣なんです!!アイツは、翔真なんです!!」

『なんだと…⁉︎』

 

通信越しに剛の驚愕した声が響く

 

『……悪いけど輝先輩、それはできないかもしれない』

「何言ってんだケリス!? アイツは翔真がー」

『ギマイラが怪獣化した生物は死なないと元に戻らない。先にドキュメントで説明した通り……ユニオンドキュメントでもその記載が変わらないってことは、怪獣化は私たちのように地球より発達した科学力の星でもまだ治療法が見つかってないんだ…』

 

ケリスの言葉に輝が呆然とした表情を見せる

 

ーグオオオオォォァァァァ!!

 

『わかってくれ輝先輩……こうなったらむしろ、これ以上被害を出す前にトドメを刺してやるしか、翔真にしてやれることは無いんだ…‼︎』

「そんな……それしか無いのかよ……ッ!」

 

悲痛な声を漏らす輝

それを隣で聞いていた花が、意を決したように通信をケリスに繋ぐ

 

「ケリスさん、私の考えが正しいなら怪獣化を元に戻す方法があるかもしれません」

『……考えって?』

「ドキュメントGUYSに記録のあるレジストコード《人魂怪獣フェミゴンフレイム》、人間と融合して実体を現すこの怪獣に当時のGUYS隊員のクゼ・テッペイ隊員はウルトラマンと協力して生み出したメテオール《スピリットセパレーター》で対応、人間の分離に成功しています。これを元にすれば、怪獣化を戻すメテオールを生み出すこともできるはずです」

『怪獣との同化解除と怪獣そのものに変化するのは違う。その方法がうまくいったのは事実でも、怪獣化に対応できるかはー』

「分からない。まだ分からないんです。それは、不可能ではないということです」

『簡単に言ってくれるけど、だからといって実現できるわけでもないんだ。そんな策に頼るわけには…‼︎』

 

花が一つ深呼吸をする

 

「大切なのは、一歩踏み出すこと。それがどんな一歩でも。ある人が教えてくれました。不可能かどうかはそこからだと思うんです」

『……』

 

花の様子を見ていた華鈴もケリスに通信を繋ぐ

 

「あたしからもお願いするよ、ケリス隊員。例え可能性が低くとも、救えるかもしれない人命を見捨てることはできない。それに…」

 

「生意気なクソガキだけど、あいつは大事なあたしの部下だ。きっちりあたしの隊に戻して、色々教えてやらなきゃいけないからね」

 

通信を聞いていたケリスがため息を漏らす

 

『反則ですよ華鈴隊長。それを言われちゃ、私らも短い間でも彼の仲間だったわけだし』

『……言わせてもらえるなら、私にとってもまだ彼は隊員であり部下であり仲間だ。彼をこのまま終わらせることは隊長としてできない』

「俺も、あいつとはまだまだ聞きたいことも言いたいこともあります!」

 

「隊長の言う通り生意気なヤツだけど、それだから死んでいいヤツじゃない。俺たちも隊長に賛成だ!」

 

NEXT GUYS隊員たちとA.I.G.I.S.隊員たちの心は一つだった

 

「皆さん、力を貸してください!」

 

花の頼みに全員が頷いた

 

 

翔真だった怪獣はメテオール機からの攻撃が止んだのを確かめると項垂れるイカロスに向けて突進をはじめる

 

「液体窒素冷凍弾、ファイア!」

 

A.I.G.I.S.隊から怪獣を凍結させる弾頭による攻撃が始まる

怪獣の各部に直撃した弾頭を中心に怪獣の体に霜が降り、その行動が緩慢になる

そのまま怪獣は膝をついて静止、イカロスと同じように項垂れる

 

ーグオオオァァァァ……

「しばらくそこで頭を冷やしてな」

 

怪獣が封じられたことに気づいたギマイラは代わってイカロスに向かっていく

が、その胴体に二方向からレーザーが直撃し、侵攻が妨げられる

 

「行かせないよ。お前の相手は私らだ!」

「イカロスは相手できても私たちは無理かね?」

 

ーガァァオオオオオオゥゥ!!!

 

剛の挑発が聞こえたかのようにギマイラが吠え、角からの稲光りで2機を攻撃する

2機はその攻撃をかわしながら、代わる代わる攻撃をしかけて怪獣をあしらっていく

 

 

「で、具体的なプランは何かあるの?」

 

バギーの近くでコンとアルミルが持ち込んだメテオールカプセルと分析装置を組み立て並べながらコンが機材を操作する花に問う

 

「……ギマイラの霧は宇宙の混沌そのものだとドキュメントから知りました。もし、あの怪獣の本質が混沌そのものであるとするなら……怪獣化も恐らく対象をより混沌に、秩序だった形から怪獣という混沌に落とし込んでいるのかも、と考えられます」

 

アルミルが操作するタフブックにはフェミゴンフレイムとそれに取り憑かれていた女性の診断情報が表示されている

 

「フェミゴンフレイムの分析でも、怪獣化した後の組織分析は人間の組織が混ざった状態で内在されていたことが判明しています。今の翔真くんも同じ状態なら、人間と同じ値まで組織を秩序化させることができれば……」

「人間へと戻すことができる……確かに、道理は一理あるかもしれません」

「仮説も仮説……ですが、今はこれを試してみるしか……」

 

並べられたメテオールカプセルの中からスピリットセパレータのカプセルと空のメテオールカプセルを選びだしタフブックに装填し、アルミルが新たなメテオールを組み上げていく

 

「スピリットセパレーターのデータから、怪獣と人間を判別するデータを移動させて……あとは細分化されたデータを元通り人間の形に組み直すためのデータがあれば……」

「データを……組み直す……」

 

はっ、と何か思い出した花がメモリーディスプレイからあるデータを呼び起こしアルミルに見せる

 

「このデータは参考にできませんか⁉︎」

「このデータは…レジストコード《ウルトラマンエックス》の戦闘データと彼らの残したスパークドールズの解析データ…?」

「エックスの光線は、現状の解析だと怪獣を一度データ化してスパークドールズという形に再構築してるようなんです。スパークドールズ化は、まだ肝心のドールズが分析できていない現状だと難しいとしても、データがわかってる人間の形に戻すなら…」

「そうか……これなら確かに、バラバラになった人間という情報を元通りに構築していくことができるかもしれない…‼︎」

 

花から受け取ったデータをアルミルが分析、新たなメテオールとしての構築を始めていく

ここからの作業はまだ色々と勉強中の花には手が出せない

歯痒い思いをしながらもアルミルの作業を見守る花にコンがメモリーディスプレイを差し出す

 

「コンさん?これは……」

「イカロスのコクピットに繋げてある。ノイズしか入ってこないから通じてるのかはわからないけど……」

 

コンは見たこともない複雑な表情を見せている

悔しがってるような、心配しているような、そんな表情を

 

「私たちからアイツにかけたい言葉は、もう全部伝えた。だからあのバカ社長をどうにかできるかもしれないのは、第三者のあんたかもしれない」

 

コンが花を見据える

どこまでもまっすぐな瞳で

 

「お願い。アイツの助けになってやって。今のアイツはウルトラマンかもしれなくても、アイツだけに命張らせて終わりにはしたくない。だからー」

 

「私たちも、翼さんと戦う為に、ですね」

 

花がメモリーディスプレイを受け取り、微笑む

 

「今の私にはこれが精一杯ですが、やってみます!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ー寒い…

 

凍りついた体をうずくまらせ、翔真はぼーっと視線を動かす

目の前には同じように項垂れるウルトラマンイカロスの姿が

周りには自分に武器を向けるA.I.G.I.S.隊員たち。華鈴もこちらを睨んでいる

 

ーああ、怪獣になったんだっけ、俺…

 

自分の体を見下ろす

人間のものではなくなった腕が視界に映った

 

ー散々怪獣を殺して、ウルトラマンを恨んで…

ーお似合いの終わり方、なのかもな……

 

目を閉じる

翔真の中にはもう諦めが芽生えかけていた

 

ー俺がしたかったこと…力が欲しかった…

 

ーいや、違う…力が欲しかったのは……

 

目を開いた翔真の頭に不気味な声が響いてくる

 

【コロセ、コワセ!ハイジョシロ!!】

 

その声を聞いた翔真の意識が再び塗り潰されていく…

 

 

ーグオオオオァァァァァァァァ!!!

 

凍りついていたはずの翔真怪獣体が目を赤く輝かせ、無理矢理起き上がる

 

「冷凍が破られた!?もう一度…‼︎」

「華鈴隊長!ギマイラに洗脳された人々がまた集まってきています!」

 

怪獣の足元で待機していたA.I.G.I.S.隊の周りは島民に囲まれていた

 

「こんな時に…‼︎」

 

忌々しげに呟く華鈴を尻目に怪獣はウルトラマンイカロスへの進軍を開始していく

 

ーゴァァァァ!!!

 

そんな怪獣が新たに現れた巨体に吹き飛ばされた

怪獣のー翔真の前にアギラが立ち塞がった

 

 

「アギラ!頼む!」

 

アギラの足元から輝が声をかける

それに頷きを返し、アギラが怪獣にぶつかっていく

 

「……ああそうだよ、翔真。俺は、俺たちはお前のことなんかほとんど知らない。ぶっきらぼうで、でも目の付け所は鋭くて、メテオール機の操縦は俺たちの中でもピカイチで…俺が知ってるのはそれだけだ」

 

輝が怪獣をー翔真を睨む

 

「だから、話してくれなきゃわからないだろ!! 何を背負ってるか!背負おうとしてるのか!どうしたいのか!!どこまで口下手なんだよバカ翔真!!」

 

ーグオオァァァ……ッ‼︎

 

その言葉に反応したかのように翔真はアギラを突き飛ばし、低い吠え声を上げる

 

「へっ、聞こえてんなら都合がいいな。もっとぶつかってこいよ!お前からしてみたら俺はなんともないのかもだけど、なら俺から逃げてんじゃねぇよ!!」

 

翔真の猛攻を受け止めるアギラを輝が見つめる

 

「代わりをやらせてごめんな、アギラ。今のアイツは俺だけじゃ受け止められないから…」

 

その言葉を聞いたアギラは翔真を柔道の技のように投げ飛ばし、体の前で手を打ち合わせ、鼻息をふんすッと吹かせる

まるで「上等!」と気合い十分に返すように

 

「……ありがとう。よし、もう一踏ん張り頼む!!」

ーゴァァァァ!!!

 

輝からの激励を受け取り、アギラが再び翔真にタックルを打ち込んだ

 

ーガァァオオオオオオゥゥ!!

 

配下の怪獣が押し込まれていることに苛立ちの咆哮をあげるギマイラ

その胴体にブレイバーとバスターの攻撃が突き刺さる

 

「「バーミッション・トゥ・シフト、マニューバ!!」」

 

メテオール粒子を解放、ブレイバーとバスターがマニューバモードへと変形。戦車形態になったバスターの急降下攻撃がギマイラを突き飛ばす

 

「シネラマグレネード、ファイア!!」

 

ブレイバーから放たれるグレネードミサイルの雨を角からの稲光で悉く撃ち落としていく

 

「ヘイヘイ、足元がお留守だよッと!!」

 

足元を滑るように移動していく戦車形態のガンバスターからも砲撃が放たれ、ギマイラに着実にダメージが蓄積していく

 

「私の部下が随分と世話になったな…こいつはそのお返しだ」

 

上空でファントムアビエーションを続けるガンブレイバーの主砲がチャージ完了、砲塔がギマイラに向けられる

見上げたギマイラとブレイバーに乗る剛の視線が交錯する

 

「ブレイジングデトネイター!発射!!」

 

赤い重粒子光線がギマイラに放たれる

 

ーガァァオオオオオオゥゥ!!

 

苦し紛れかギマイラは口から大量の霧を吐き出し、その体を包み込む

が、直後には光線が霧を貫いていた

霧の晴れた先ーギマイラの巨体は消失していた

 

「……何ッ⁉︎」

ーガァァオオオオオオゥゥ!!

 

咆哮が響いてきたのは地面の下

ガンバスターの直下を掘り返し現れたギマイラがバスターを咥え込みながら立ち上がる

霧を撒いた中で地中に高速潜行してブレイジングデトネイターを回避したのだ

 

「おわぁあああああ!!!!」

「ケリス!!」

 

囚われたバスターを解放しようとシネラマグレネードを放とうとするが、ギマイラが咥えあげたバスターに当たりかねないため、放つことができない

 

ーガァァオオオオオオゥゥ……‼︎

「……卑怯者め…ッ‼︎」

 

悪態をつく剛が見えているかのようにギマイラがその瞳に邪悪な笑みを浮かべる

 

《Return to Cruise》

 

そうこうしているうちにメテオールが制限時間に到達、ブレイバーとバスターがクルーズモードに戻ってしまう

 

「クソッ!!」

 

攻めあぐねているブレイバーを尻目にギマイラはバスターを噛む顎に力を加えていく

バスターのコクピットは各部がショートし、ミシミシと嫌な音を上げていた

 

「ッ……これは流石に、やばそうかな…?」

 

バスターのコクピットに座るケリスの頬を冷や汗が伝う

 

翔真が変じた怪獣に吹き飛ばされたアギラも粒子化して霧散する

 

「アギラ!!」

 

翔真は再びイカロスに向かい歩みを進めていく

右手の巨大爪を振り上げ、イカロスに向けて振り抜かれるー

 

ガシッ!!

 

が、その爪は届かなかった

巨大爪はイカロスが掴み上げていたからだ

 

バイザー奥のイカロスの瞳と、タイマーリアクターが鮮やかな輝きを放ち、煌めいた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コンから渡されたメモリーディスプレイに向けて花が口を開く

 

「翼さん、あなたがなんでそんな形でウルトラマンとして戦っているのか私は知りません」

 

「でも、これははっきりと言えます。ウルトラマンイカロスは、翼さんが乗っているイカロスは、私にとっては本当のウルトラマンです!」

 

「何度倒れても、何度傷ついても、守るために立ち上がってくれる。私たちと共に戦ってくれる。その姿に何度も勇気をもらいました!」

 

「エックスさんが何でもない私の背中を押してくれたみたいに、知らずに勇気をもらってたんです!」

 

「それは、きっと翼さんにしか今できないことです。だからー」

 

花がイカロスの方を見据えて声を張り上げる

 

 

「また私たちと戦ってください!ウルトラマンイカロスッ!!」

 

 

声が響いた

ボロボロなまま立ち上がる翼、正面には甲冑、周りは全てを飲み込むような暗闇

コンの呼びかけも遠くに消えて、どんな声も届くわけが無いと思っていたのに

 

「花さん……」

 

花の声が届いたのだ

 

「そうか……そうだったんだな……」

 

何かに納得したように翼が頷き、甲冑を真っ直ぐ見据える

甲冑は槍を振り上げ、翼に向けて振り下ろす

その隙を逃さず、翼は突進、その腰から一本の長剣を奪う

甲冑が翼を突き飛ばすがもう遅いー

 

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

剣を振り上げる翼に、銀色のシルエットが一瞬重なる

甲冑が縦一文字に斬られ、よろめく

 

ーパキッ、パキキッ

 

音を立て、甲冑が崩れていく

 

そこに立っていたのはー翼だった

 

「そうだったんだな、やっぱり」

 

どこか納得したように翼が頷く

もう一人の翼は怯えたような表情で項垂れている

 

「怖かったんだ。僕は……力を持つことが」

 

翔真が技術や力を使う中で暴走していくのを見て、石動(いするぎ)から問われた翼自身の正義を考えて、そうしていくうちに翼は思っていたのだ

 

『僕はイカロスを兵器として見ていないと言えるのか』

『僕自身が暴走しないことなんてあるのか』

 

翼は、彼らが作り上げたイカロスが力を得ていくのが怖かったのだ

 

「でも、そんな心配は必要なかったんだ」

 

翼が長剣を捨て、もう一人の翼に手を差し伸べる

 

「僕の乗るイカロスは、彼から借りた力は、確かに誰かを守れてた。ウルトラマンとして戦えていたんだ」

 

もう一人の翼は、それを聞いて頷くとその手を取る

 

暗闇が晴れていく

見慣れたコクピット、翼はその中央に立っていた

 

「行こう、イカロス。力を貸して欲しい」

 

翼の呼び声に応えるように、イカロスの目に再び光が戻っていく

 

「僕は僕だ。ただの人間、日向 翼。だからー」

 

 

「皆を守るために、キミの名前と力を借りさせてくれ、ウルトラマンイカロス!!」

 

 

ーシェアァァァァッ!!

 

再起動したイカロスはアッパーの要領で翔真が変じた怪獣を吹き飛ばす

 

立ち上がったイカロスのプロテクター、アーマードエグゼスに銀のラインが迸り、光り輝いた

 

《アーマードエグゼス、起動完了》

 

『翼、翼!!……居眠りしてんじゃないわよバカ!!』

 

機能が回復したコクピットにコンからの涙ぐんだ怒声が届く

 

「ごめん、徹夜がたたったかな…」

『ワーカホリックめ……終わったら椅子に縛り付けてでも休ませるから覚悟しときなさい……‼︎』

 

冗談めかして返す翼

 

『……おかえりなさい…でいいのかな…翼さん…!』

「花さん、ありがとう。キミの言葉で前が向けた」

『私はただ言いたいことを言っただけなので……コンさんやアルミルさんはもっと心配してましたし』

『社長……‼︎ご無事で何より……‼︎』

 

話してるうちにイカロスの目の前で怪獣が立ち上がる

 

『翼さん!目の前にいる怪獣はギマイラに怪獣化された翔真くんなんです!』

「な…翔真くんが…⁉︎」

『今、アルミルさんたちが翔真くんを元に戻すメテオールを構築してます!だからそれまで食い止めてください!』

 

イカロスが翼と合わせて頷き、怪獣ー翔真に向き直る

 

ーガァァオオオオオオゥゥ!!

 

立ち上がったイカロスに気づき、バスターを咥えたままのギマイラが咆哮する

囚われたバスターに気づいたイカロスは右の腕を展開、エネルギーを集めて光球を放つ

光球が腹に直撃したギマイラはたまらず口を緩め、ガンバスターが解放される

 

「サンキューイカロス!」

 

なんとか姿勢制御を取り戻し、ケリスがイカロスにサムズアップしながら飛び去る

それに頷いたイカロスは改めて翔真に向き直った

 

ーグオオオオァァァァ!!

 

翔真は獣のような咆哮を上げ、イカロスに組みつく

 

「翔真くん…キミが力を求めるのがどうしてかはわからない。あの怪獣災害だけが理由じゃないのかもしれない……」

 

イカロスが翔真に顔を突き合わせる

 

「でも、その力には、求める理由があったはずだ!!キミをそこまで動かした理由が!それがキミの力になる!!」

 

「思い出せ!キミならやれるはずだ!!メテオールを無断で使用してまで、逃げ遅れた子供を救おうとしたキミが、このまま終わっていいはずがない!!!」

 

 

ーそうだ、俺は……

 

目の前に迫るイカロスから聞こえてきた声

自分が糾弾したあの青年の声が響く

 

【コロセ!!コワセ!!】

 

ー違う。俺はそんなことのために力が欲しかったんじゃない

 

頭を揺さぶる声を否定する

脳裏に浮かんだのはジャスキープの攻撃から子供と、まだ一般人だった花を庇った時の情景

あの時翔真の体は勝手に動いたのだ

 

怪獣が憎くないわけじゃない

それでも、それよりも翔真は

 

また自分のように誰かに失って欲しくなかったのだ

そうなる前に、救えるようになりたかったのだ

 

ー俺は、救うために、あの時届かなかった手を届けたいから力が欲しいんだ…‼︎

 

 

イカロスが翔真を押し返す

目前まで後退した怪獣を押し除け、ギマイラが前に出る

一本角に稲光りが収束、その光線をイカロスにー

 

「なっ!?」

 

と見せかけてギマイラは足元、華鈴たちA.I.G.I.S.隊員たちの方を向く

新たな怪獣を増やして戦力にするつもりだったのだ

 

が、その一本角が突如横から振り上げられた爪にへし折られた

 

ーガァァオオオオオオゥゥ!?!?

 

悲痛な悲鳴を上げ、ギマイラが後ずさる

A.I.G.I.S.隊の前に立ち塞がったのは、黒い表皮の巨獣

 

人間のものと同じ、真っ直ぐな瞳に戻った巨獣はちらとA.I.G.I.S.隊を、華鈴を見てすぐに前を向いた

 

「……遅いんだよ、少年。招集はすぐに聞け!!」

 

ーグオオオゥゥゥゥ…

 

翔真はイカロスの隣に並び立つ

 

ー俺は、たしかにウルトラマンを恨んだことはあった…でも、そうじゃない。俺は救いたかったんだ。だから……

 

イカロスの方を向く

 

ー力を貸してくれ、翼さん!

 

その声が聞こえたのかそうでないのかわからない

が、イカロスはたしかに頷いた

 

ーシェアァァッ!!

ーグオオオゥゥゥゥ!!

 

ウルトラマンと怪獣

2体の巨影がギマイラに向き直る

 

ーガァァオオオオオオゥゥ!!

 

怒りも露わに口から霧を吹き付けながらギマイラも進軍してくるが、イカロスの前に出た翔真が霧を受け止め盾になりながらギマイラに迫る

右爪の一撃がギマイラを引き裂き、怯ませる

霧が止んだ隙を逃すことなく、入れ替わり前に出たイカロスがギマイラを蹴り飛ばす

 

ーシェアッ!

ーグォオン!

 

イカロスの光球と翔真が放つ火球がギマイラに直撃、更にダメージを与える

 

ーガァァオオゥゥ…

 

不利と判断したのかギマイラは2体に背を向け、地中への潜行を開始する

 

ー逃すか!!

 

地中に潜りかけたギマイラの尻尾を翔真が掴み、力任せに引き摺り出して地面に叩きつける

 

ー今だ!

 

イカロスが頷く

ふらふらと立ち上がるギマイラに向かい合い、イカロスは両手の装甲を解放してエネルギーを凝縮、胸の前に広げ、巨大なエネルギー球に固めていく

銀と黒のエネルギーが渦巻くエネルギー球をギマイラに向けて放つ

 

「ギガレゾナンスバースト!!」

 

放たれたエネルギー球はギマイラを包み込み、その体はエネルギーのスパークを散らす

 

ギマイラは断末魔すら上げる暇なく力尽き、倒れた

 

「いよっし!!」

「大勝利ッ!!」

「やったぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

剛たちが完成を上げ、A.I.G.I.S.隊員たちも雄叫びを上げる

イカロスの勝利を見届けたコンは花に向けて拳を突き出す

その意図を汲んだ花は微笑み、自分の拳をコツンと合わせた

 

「できましたぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

それを合図にしたようにアルミルがメテオールカプセルを持ち上げて叫ぶ

 

長い長い作戦が終わりに近づいていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「転換メテオール試作型、ザナディウムエクスシフターβ。これが今僕らにできる手一杯……この一発だけが頼りです」

 

アルミルが花に空色のメテオールカプセルを渡す

メモリーディスプレイにインストール、それをコンから渡されたメテオールショットに装填する

 

《メテオール オーバードライブ》

 

翔真はただ静かにそれを見下ろしていた

その側ではイカロスが見守っている

 

『今から翔真隊員にメテオールショットを撃ち込みます。社長はアポロニウムシュートを彼に』

『イカロスの光線もスペシウムエネルギーの塊。スピリットセパレーターと同じように、メテオールと反応して効果を発揮するはずよ』

「わかった」

 

メテオールショットから光線が翔真に放たれる

怪獣化した表皮にサーキット状の青い光が走る

 

『今です、翼さん!』

 

イカロスが頷き、翔真のほうを向く

翔真も頷き、腕を開く

 

アポロニウムシュートが翔真に命中する

いつものようなスパークではなく、魔法陣のようなサーキットが広がり、その巨体が分解され足元だった場所に収束していく

 

翔真の足元近くで待機していたA.I.G.I.S.隊と華鈴が駆けつけた先に翔真は倒れていた

 

「少年……少年!」

 

その体を華鈴が揺さぶる

 

「……その呼び方……やめてって言ったじゃないですか……」

 

翔真が目を開く

 

「……ご迷惑をおかけしまーッ!?」

 

その頭に華鈴のチョップが突き刺さる

 

「バカ隊員一名、無事帰還しました」

 

笑顔で華鈴が花たちに報告する

喜ぶA.I.G.I.S.隊員と華鈴に肩を支えられ、翔真たちは村落に向かった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ギマイラの死体、その頭部付近

一人の男がそこにいた

 

手にした注射器型の器具を表皮に突き刺し、その血液組織を抽出する

 

「ギマイラのDNAサンプル、回収完了」

 

石動は器具から外した血液で満ちたカプセルにナンバリングし、ウエストバッグにしまう

それが済むと用は済んだとばかりに石動は杖をつきながら去っていく

 

その側の木の根元には小さな赤い花が咲いていた




検査が終わり退院した翔真
その心にはまだモヤが残っていた

そんな彼が訪れた街が未知の怪虫の群れに襲われる

虫の群れから現れた『死神』の誘いとは
翔真が選ぶ道は

次回ウルトラマンイカロス
『この胸にある答え』
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