ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第15話「この胸にある答え」

あるビルの屋上に腰掛け、青年は空を見上げる

街の上空には不吉な暗雲が渦巻いていた

 

青年は膝上に乗せたノートパソコンのカメラを暗雲に向け、何かを分析していく

 

「……ヤツらめ、この世界にも破滅をもたらそうと言うのか」

 

『もちろん。この宇宙もウイルスに侵されているのだから。それも、かつて見た別の宇宙よりもより深刻に』

 

青年が振り向く

その背後には異形の人型が座禅を組んで座っていた

水膨れしたような歪んだ皮膚の上から僧侶のような袈裟を纏ったその異形は、貼り付けたような笑みを浮かべている

 

『たとえ宇宙が違おうと、何度滅ぼうとも主の救済の手は止まらない。人間というウイルスを滅ぼすために、何度でも我々は現れよう』

「学習能力が無いのか、お前たちは。何度繰り返そうとお前たちの滅びは成就しない。人間は、そこまで甘いバカばかりじゃない」

『その言葉、そっくりお返しいたしましょう』

 

異形が口角を吊り上げる

 

『人間こそ何も学ばない。同じ歴史を、自滅を繰り返し醜い欲望を膨れ上がらせていく。そしてやがて、宇宙をも蝕むウイルスへと成り果てる。どこの宇宙でも同じだ』

 

剣のようになった右手を青年に向ける

 

『それは、貴方こそよく理解しているはずだ。藤宮 博也(ふじみや ひろや)、いや……ウルトラマンアグル』

 

青年が異形を睨む

不気味な笑みを浮かべた異形はその姿を霧散させた

 

「まさかとは思っていたが、やはりあの時と同じ存在か。死神め」

 

悪態をつきつつ、ノートパソコンを畳み立ち上がり屋上を後にする藤宮と呼ばれた青年

 

暗雲はその渦を強めていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「お世話になりました」

「いえいえ、立花さんこそお大事に」

 

玄関側の受付に会釈し、翔真は外に出る

ギマイラとの一件から一週間。翔真は各種検査と治療のためにあの後すぐA.I.G.I.S.の附属病院に入院しており、今日ようやく退院となったのだ

 

手にしたいくつかの紙袋を見やる

入院していた翔真の元には、毎日ではなかったが思ったよりも色んな人がお見舞いに来て色んなものを置いていった

 

初めにここに訪れた華鈴は「退院したらこれでも食いに行け」と朗らかに笑いながら焼肉屋のクーポンを何枚も押し付けてきた

 

何人かのA.I.G.I.S.隊員もここを訪れた。中には翔真の独断で怪我をさせてしまっていた篝や東吾もおり、責められることは覚悟していた

が、彼らは気にするなとだけ伝えて何人かは雑誌を置いていってくれた

 

花とケリス、輝が3人でやってきたこともあった

その時の花の様子は前に見た時よりも遥かに違って見えた

どこか凛々しくなったように思えたのだ

 

剛も後々ここにきた

ゆっくり休め、とだけ笑って言った彼は実家からの余りものらしいリンゴをカゴ一杯に置いていった

 

そして、翔真が糾弾した翼も現れた

どこかつき物が落ちたような様子の彼も翔真の無事を喜び、「僕がウルトラマンとして活動していることは、くれぐれも内密にお願いします」と小声で伝えてきた

 

「………」

 

体は快復した。また前のように隊員としても問題なく復帰できると医師にも言われていた

それでも翔真の顔は浮かない表情を浮かべていた

 

病院近くのバス停に座り、バスを待つ間もそれは変わらなかった

 

「また会ったな」

 

突然隣から声をかけられる

そこにはいつの間にか一人の青年が座っていた

日向重工が異次元に囚われた時に遭遇したあの青年だ

 

「あんたは…⁉︎」

「随分と雰囲気が変わったな。何かあったのか?」

 

翔真のほうを見ることなくぶっきらぼうに青年が聞いてくる

 

「……少し、色々と」

「そうか」

 

しばらくバス停に沈黙が流れる

 

「何を考えているのか、何を悩んでいるのか俺はわからない。たった2回すれ違うように出会った程度で人間一人を理解することは不可能だ」

 

青年が翔真の方を向く

 

「答えがあるとすればそれはお前の中だ。自分自身に答えを出せるのは、どうあれ自分だけだからな」

 

バスが到着し、青年がそれに乗ろうと立ち上がる

 

「……人間は、一度間違えたくらいで全てが無駄にはならない。たとえ愚かでも、前を向けるのもまた人間だ」

 

それだけ言い残し、青年はバスに乗って去っていった

 

「……答えは俺の中、か」

 

前までの自分なら知ったようなことを言うなと反論していただろうが、今の翔真にはその言葉が深く突き刺さっていた

 

ふと、街の方を見上げる

上空に渦巻く暗雲。その中から何やら小さな黒いものが湧き出していた

ひとつ、ふたつ、段々と数を増しながら溢れ出してきていたそれは遂に黒い霧のように見えるほどの大群として現れ、街の方へと降りていっていた

 

異変を察知した翔真の体はすぐに街の方に向けて動いていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「エリアB7の市街地上空に次元異常発生。しかもそこから無数の不明生体反応が溢れ出してます!」

 

ケリスが状況を報告する中、駆けつけた剛と輝がデスクに座る。花は既にデスクについており、ケリスと共に情報を分析している

 

「潮風島の一件から一週間ほど静かだと思っていたら次元異常だと…⁉︎ 溢れ出した生体反応はなんだ!?」

「市街の監視カメラの映像を映します!」

 

花がコンソールを操作し、スクリーンに映像が映し出される

そこに映ったのは画面一杯にアップになったおぞましい昆虫のような異形の生物の腹だった

流石に怪獣たちを見慣れてきているはずの花もあまりのショッキングな光景に「ひっ!?」と顔を真っ青にして硬直する

フリーズした花に変わってケリスが他の監視カメラの映像も映し出していく

 

「なんだこれは……⁉︎」

 

そこに映っていたのは、先程アップで映し出された怪虫と同じものが街中を覆い尽くさんと夥しい数飛び交っている光景だった

晴れているはずの空はその虫たちによって徐々に薄暗くなりつつある

それほどまでに大量の虫が現れているのだ

 

「生体反応総数……測定不能…というかヤバいまだ増えてる⁉︎ このまま増え続けたらこの街どころか世界中がこの虫モドキに覆い尽くされる…‼︎」

「いや……‼︎ それは嫌です……‼︎」

 

花が真っ青な顔でぶんぶんと首を振る

そうこうしているうちに監視カメラの映像が次々と切断されていく

 

「ともかくエリアB7に急行!焼け石に水かもしれんが……あの虫のような生命体を一体でも多く駆逐する! NEXT GUYS、サリーゴー!」

『G.I.G!!』

 

 

「次元異常に謎の昆虫みたいな生き物ですか…」

『ああ、これから我々はB7に急行して対処する。何かあった時は翼くんの方にも頼むかもしれないからその時はよろしく頼む!』

「わかりました。隊長たちも気をつけてください」

 

剛からの通信を切り、翼も衛星通信からエリアB7市街地の映像を見ようと試みるが既に断線しているのかどこの映像も拾えない

そんな時、受付からの内線電話が鳴ってきた

 

「もしもし?」

『お忙しいところ失礼します。社長に会いたいというお客様がいらしてるのですが…』

「僕に……?そんなアポは受けてないけど……」

『それが……ウルトラマンイカロスの件で話があると…』

 

その言葉に翼は驚く

翼がイカロスであることは日向重工の社員と翔真、花、石動しか知らないはず。社内のものでもない人間が知るはずがないのだ

 

「……わかった。応接室に通してくれ」

 

 

応接室の窓際にその人物は立って待っていた

入ってきた翼とコンに気づくとその顔を見据える

澄んだ海のような深く、少し冷たい目をした青年だった

 

「……こんにちは。僕に会いたいというのはあなたですか?」

 

警戒したまま翼が口を開く。コンも青年を睨みつけている

 

「脅すようなことをしてすまない。こうした方が手っ取り早いと判断した。事態は急を要しているからな」

 

青年が右手にはめているブレスを外して翼たちに見せる

 

「単刀直入に話そう。俺は藤宮 博也。この宇宙とは異なる宇宙の地球の人間、そしてウルトラマンの力を持つ者だ」

「ウルトラマンの力…⁉︎」

「信じられないというならこのアグレイターを調べてくれ。内部の光は、恐らくこの星の技術だけでは分析しきれないはずだ」

 

藤宮の言葉を聞き、差し出されたブレスを見る

翼はそのブレスを藤宮に返す

 

「信じます藤宮さん。あなたの目は嘘をついている人の目じゃない」

「ありがとう。日向社長」

「翼で大丈夫ですよ。ここにはどういった用でいらしたので?」

「今起こっている異常事態。それの対処法を伝えに来た」

 

と藤宮は応接机にノートパソコンを開き、シミュレーション映像を見せる

 

「先程、ある市街地の上空にできていたものを映して分析したものだ」

「次元異常反応……この反応は、どこかに繋がって……いや、繋がろうとしている…?」

「理解が早くて助かる。これは、俺たちの地球でワームホールと呼ばれていたものだ。根源的破滅招来体……そう名乗る侵略者が使う穴。宇宙怪獣や怪獣兵器を輸送する穴だ」

「怪獣兵器を……⁉︎」

「こちらの地球でヤツらの破滅は阻止された。どういうわけかそれがこちらの地球で蘇り、同じことをしようとしているらしい。ご丁寧にも尖兵を挨拶代わりに寄越してむこうから教えてくれたよ」

 

藤宮がパソコンを操作する手を止める

 

「俺自身の考えとしてはこの世界に必要以上の干渉をするつもりはなかった。だが、ヤツらの好きなようにさせたままというのは納得がいかない。ある意味、俺たちの不始末のようなものでもある」

 

「俺なら、あのワームホールを封じることが可能なはずだ。そのための装置を作るための技術と設備を貸してほしい」

 

藤宮の言葉を聞いていた翼は二つ返事で頷いた

 

「願ってもない提案です。是非この会社のラボを使ってください」

 

翼が手を差し出す

藤宮は薄い笑みを浮かべてその手を取った

 

 

日向重工 地下研究室

 

「……成る程、最先端技術の粋が集められているだけあるな」

 

研究室の設備を確認しながら藤宮が唸る

 

「僕やアルミルなら一通りのことはこなせます。手伝える作業があるなら是非僕らにも手伝わせてください」

「………」

 

藤宮が翼を見据える

 

「……この地球の技術のことは調べてある。メテオールという宇宙人のテクノロジーを利用した超常技術、それに加えてウルトラマンを再現して操作する技術」

「……‼︎」

「日向社長、キミは俺がそれらを奪いにきた、もしくは悪用しにきたとは考えないのか? 先程の証明も嘘で、俺自身がタチの悪い侵略者、もしくは悪意ある人間でないか、と」

 

藤宮の言葉を聞いた翼は少し沈黙したが、すぐに笑って答える

 

「言ったはずですよ、あなたの目は嘘をつくような人の目じゃないと。こう見えても僕は社長ですから、そういう人には敏感です」

 

藤宮はその言葉を黙って受け取る

 

「それに、先程のパソコン画面に映った計算式や法則の類の中にはこちらの次元研究では見られない算出法がいくつか見れました。その上で値は正確。これだけでもあなたが嘘をついていないことはよく分かりましたから」

「思っていたよりも抜け目が無いな。キミは」

「ウルトラマンの名と力を借りていますから、これくらいでもまだ足りませんよ」

 

薄く笑った藤宮が手を差し出す

改めて翼がその手を取り、握手を交わした

 

「時間がない。早速作業を始めよう」

「ええ、急ぎましょう」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

エリアB7

街を覆い尽くさんとばかりに飛び交う大量の怪虫

白昼堂々現れたそれから皆が皆逃げられたはずもなく、街中にはまだ逃げ遅れた人々がいた

 

息を切らせて走る少年

逃げる途中母親からはぐれたその小さな命も怪虫たちは見逃さなかった

少年の背後から無数の怪虫が襲いかかってくる

必死に逃げるが、運悪く脚が絡まり少年は転倒してしまう

 

「あー」

 

振り向いた眼前には既に怪虫たちが迫っていた

 

「喰らえっ!!」

 

その怪虫たちの前に誰かが割り込み、消火器を振り撒く

消火器を浴びた怪虫の何体かは墜落し、もがき苦しみ絶命する

 

「捕まってろ!!」

 

その人影は少年を抱きかかえると、怪虫から逃亡を始めた

 

(くそっ、何しにきたんだ俺は…‼︎)

 

人影ー翔真は自分の行動に嫌気が差して思わず心の中で呻いた

暗雲からの異常を見た翔真はエリアB7の市街地に駆けつけて何人か逃げ遅れた人々の避難を手伝っていたのだ

 

(罪滅ぼしのつもりか⁉︎ 何も持っていない、一般人同然の状態でこんなことするのに意味あるわけが……)

 

と、翔真の目前からも怪虫の群れが飛来する

挟み撃ちのような形になり、翔真の脚が止まる

 

「クソッ……‼︎」

 

少年を抱えて翔真がうずくまる

 

が、飛来した虫たちは何が大きなものに振り払われ、散っていった

 

自分たちにかかる影に気付き、翔真が目を開け見上げる

そこにあったのは、小さな胴体から大きな腕の生えた不恰好なロボットのようなマシンだった

NEXT GUYSでも、A.I.G.I.S.でも見たことがないそのマシンのボディには地球を2人の人間が抱えるようなロゴマークとXIGの文字があった

 

『そこの人!大丈夫ですか⁉︎』

 

ロボットから声が響く

信じられないことにあの中に人がいるらしい

 

『今ハッチを開きます。少し狭いですが、ひとまずそこから中に。アドベンチャーの外装強度ならドビシたちを防げるはず』

 

ロボットのボディが開く

呆気に取られていた翔真だが、集まってきた虫たちを見てすぐにロボットに乗り込んだ

 

「よかった。怪我とかは無さそうだね」

 

中にいたのは青地に黄色の装飾が肩にされたジャケットを来た一人の若い青年だった。人の良さそうな柔和な顔つきの青年だ

 

「あんたは…?NEXT GUYSとかA.I.G.I.S.の人じゃないみたいだけど…」

 

「僕は高山(たかやま) 我夢(がむ)XIG(シグ)の臨時隊員でパラレルワールドから友人を探しにきたんだ」

 

 

我夢と翔真、少年の3人を乗せたロボットー我夢曰くXIGアドベンチャー改という名前らしいーはアームを畳んだ形態に変形して市街地を走行していた

 

「あの虫たちはドビシ。どうしてこちらの世界にいるのかはわからないけど、僕らの世界に一度現れた怪獣だ。一体一体は脆いけど、数の多さと合体能力が厄介だから、広がる前になんとかしないと…」

「こんなのがここからもっと広がるのか⁉︎」

「僕たちの地球は一度この虫たちに丸ごと覆い尽くされてしまったことがある。それほどに広がったら、電波を吸収する性質と相まって大パニックになってしまう」

 

その時、アドベンチャーの上空を飛んで行く影がモニター越しに見えた

 

「あれは、ガンドラグーン…NEXT GUYSが駆けつけたんだな」

「NEXT GUYS……もしかしてそれがこの世界での防衛チームなのかい?」

「ああ、まぁそうと言えるはず…一応A.I.G.I.S.もそうだけど」

「なら彼らと合流するのが最善か……」

 

そう言いながら我夢はコクピット内のコンソールを操作し、モニター端に別の映像を並べる

 

「それは?」

「熱源センサーで周囲をサーチ、それからドビシの平均体温を除外したものを映してるんだ。これなら、高温の領域が広い場所では戦闘が行われていてエンジンの排熱やエネルギーの噴出が多くなってることからNEXT GUYSの人たちが作戦をしている部分が見当づけられるはず…」

 

表示された分析結果には高温を示す赤い領域が3ヵ所ほど見られた

恐らくこの領域が戦闘が主に行われている部分なのだろう

それとは別に市街地には小さな赤い点がいくつか見られた

 

「この点って……」

「……逃げ遅れた人々、だと思う。助けたいけど、アドベンチャーはもう定員オーバーだ。NEXT GUYSの人々との合流を優先しよう」

「………ああ」

 

翔真が苦虫を噛み潰したような表情で頷く

自分の無力さも、ここでわがままを言っても状況は変わらないと分かっていた

それに、今の自分にそれを言う資格があるのかと翔真の脳裏によぎったのだ

 

「………」

 

我夢はその顔を黙ってみつめ、アドベンチャーを熱源の方向に発進させていった

 

 

「ひぃッ!!」

 

花が思わず頭を伏せる

コクピットの窓にドビシが激突し、墜落していく

 

「花ちゃん、大丈夫……では無さそうだね」

「輝先輩ごめんなさい……怪獣は見慣れてるはずなのに……」

 

ガンフェニックスレガシーの操縦桿を握る輝が後部座席に座る花を案じる

真っ青な顔をした花は半泣きになりながら輝の座席の背もたれにしがみついている

 

ガンフェニックスレガシーとガンドラグーンで出撃したNEXT GUYSは各個分散し怪虫の撃破に向かった

剛とケリスはブレイバーとバスターに分離してそれぞれ分散したが、花が半ば戦力外状態になっている今は分離しての行動は難しいだろうということで2人はガンフェニックスレガシーのまま行動していた

 

「クソッ、キリが無さすぎる…‼︎」

 

ガンフェニックスレガシーのレーザーに焼き払われ、ドビシたちが墜落していくが、それ以上のドビシたちがまた空を覆い尽くしていく

既に街の上空はドビシに覆われ、暗雲すら見えなくなりつつあった

 

ーガグンッ!

「きゃあっ!?」

 

ガンフェニックスレガシーの姿勢が突如大きく崩れる

ドビシの群れが翼部分に貼り付き、重くなったために機体が傾き始めていたのだ

 

「くっ……うっ……‼︎」

 

操縦桿を懸命に操作し、姿勢を戻そうとするがドビシたちの重量が大きすぎてまともに操縦桿も動かない

 

そこに地上から飛来した何かが付着したドビシの群れに命中

電撃をスパークさせ群れを焼き払った

 

「あれ…?機体が軽く…?」

「輝先輩あれ…‼︎」

 

花が地上を指差す

そこにいたのはアームの大きい不恰好なロボット

そのロボットが器用にアームを振っていた

 

「なんだあれ…?あんなメカうちにもA.I.G.I.S.にも無かったはずなんだけど……」

 

怪しみながらも輝はガンフェニックスレガシーを着陸させる

 

『突然ごめんなさい。NEXT GUYSの方々ですか?』

 

ガンフェニックスレガシーから降りた輝にロボットからの音声が語りかけてくる

 

「ああ、うん。そうだけど……」

『良かった……』

 

ロボットのハッチが開き、青年と少年を抱えた見慣れた顔が降りてくる

 

「翔真!?」

「…?もしかして知り合い?」

「……その、なんというか…」

 

と話していると出てきた5人を発見したのか、ドビシたちがこちらに群れを為して集まりつつあった

 

「事情は後で!あの虫たちはビルの外壁を貫くほどの力はありません。近くの建物の中に!」

 

青年の提案に従い、5人は近くのビルに駆け込んだ

 

 

「もう大丈夫だからね」

 

翔真が抱えていた少年を寝かせてその頭を撫でる花

心配そうに見つめていた翔真の方に向き直る

 

「気絶して眠ってるだけみたいです。怪我とかは目立ったものはありませんでしたよ」

「そうか…良かった」

 

微笑む翔真を見て花もどこか安心したように笑う

 

「えーっと……じゃあ、高山さんは違う世界の地球からさっきのロボットみたいなので来たってこと…?」

「はい。ある事故で行方知らずになった友人を探していたらこの世界に流れ着いたんです。あと、我夢でいいですよ。その方が呼び慣れてますし」

 

我夢の話を半信半疑というような感じで聞いている輝に我夢が付け加える

 

「あの虫たちを早く退治しないと、こちらの地球も大パニックになってしまう……だから、協力させてくれませんか⁉︎ あの虫たちが出てきているワームホールを塞ぐ方法を知っていても、今の僕にはアドベンチャーしか戦力が無いので…」

「協力って言っても……俺たちだけだと……」

 

「俺からもお願いします!」

 

花とこちらに戻ってきた翔真が輝に頭を下げる

 

「……俺が言えた義理じゃないのは承知してます。でも、この人は我夢さんはきっと嘘は言ってない。この人ならこの状況を打開する策を見つけられるはずなんです!」

 

翔真の言葉を黙って聞いていた輝はその肩を叩き、我夢に向き直る

 

「翔真がそう言うなら、俺も信じてみる。我夢さん、手を貸してください」

「はい、こちらこそよろしくお願いします!」

 

輝が我夢と握手を交わす

 

「NEXT GUYSの皆さんが今使える戦力を見せてくれませんか?」

「えと、じゃあこのタフブックで…」

 

花が我夢の元に駆け寄る

輝の隣に立つ翔真はどこか申し訳なさそうに顔をそらしながら呟く

 

「どうして……俺の言葉なんか…」

「翔真、嘘は俺たちに言ったこと一度もなかっただろ?黙ってたことはあったけど」

 

輝は即答した

 

「アギラの試験運用の時も、フランベルスの時も、ギマイラの時も、お前は失礼なくらいに正直なことしか話さなかった。まだお前のことほとんど知らないけど、それだけでお前がそんな騙すようなことするヤツじゃないってのはわかるからさ」

 

それだけ答えた輝は我夢たちの手伝いをするべく、2人の方に歩いて行った

翔真も我夢たちのところに向かうが、輝と花の方ではなくしゃがんで作業をしていた我夢の近くに腰を下ろす

 

「……キミは、NEXT GUYSの隊員だったんだね」

「もう、辞めた身です」

「聞いたよ。花さんが教えてくれた。少し無愛想だけど、熱意のある人だったって、悪い人でもないとも」

 

翔真は顔をそらす

 

「キミは、どうしたい?」

「どうって……何を?」

「今この状況で、誰かが助けを求める中で、キミならどうする?」

「俺は……」

 

言葉を迷う翔真に我夢は向き直る

 

「僕は一度、僕自身の無理な判断で仲間を大怪我させてしまったことがあった。知識では誰にも負けないと思ってた時、そんな知識がなにも通じないヤツが出てきて、焦って……」

「………」

 

「僕だけじゃない。僕の友人も、僕の地球の人々も、取り返しのつかないような間違いをして挫折しかけたことがあった。それでも、やり直していくことはできるんだ。大怪我させてしまった梶尾さん…XIGの隊員の人ともかけがえのない仲間になれたように」

 

翔真が我夢のことを見つめ返す

我夢は微笑んでいた

 

「翔真くんも、きっとまだ大丈夫。それに……ドビシたちから必死にあの子を守ったキミはもうきっと答えを見つけてる。ここの中に、それはあるはずだ」

 

我夢は自分の胸に拳を当てる

それに倣って翔真も自分の胸を触った

 

「答え……俺の中に…?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ガンブレイバーとガンバスターのレーザーがドビシたちを撃ち落とし焼き払う

が、やはりすぐに新しい群れが補填され、虫たちの大群はなくならない

 

「埒が開かないな……」

 

飛来するドビシたちを避けながらブレイバーに乗る剛が悪態をつく

そんな中、地上を一台のトラックが走ってくるのが目に入る

 

「あれは…?」

 

トラックから光がチカチカとブレイバーに向けて点滅

それが物資の補給を示していることに気づいた剛がそのトラックの側に着陸する

 

「海野隊長!」

「コンくん!とそちらは…?」

「話は後よ。あの虫どもが現れてる空の穴、あれを封じる秘策を届けにきたわ。コクピットを借りるわよ」

 

と青年とトラックから下りてきたコンがそそくさとコクピットに乗り込みノートパソコンを計器に繋げて操作を始める

青年は空を飛び交う虫たちを忌々しげに見つめている

 

「キミは…?」

「臨時協力者、みたいなものだ」

「できたわ。隊長!」

 

コンの言葉に従い、剛がブレイバーの下に戻る

 

「そこの男の計算を参考にブレイバーとバスターの光線出力を調整したわ。これでバスターと合体して光線をあの虫たちが溢れてきてる場所に向けて放てば、次元接続が切れて虫たちの流入が止まるはずよ」

「わかった。あの穴…暗雲に向けて撃てばいいんだな」

 

コンの説明を受諾した剛がブレイバーに乗り込み、ケリスの乗るバスターの下に飛ぶ

 

「ケリス!コンくんから対抗策が届いた。合体してあの空の穴を直接叩くぞ!」

『了解!』

 

ブレイバーとバスターが合体、ガンドラグーンとなって虫たちが沸き出す穴ーワームホールへと向かう

 

「ここなら…‼︎」

 

照準を空の穴に向け、引き金を引く

が、合体光線は虫たちが集まり盾となって防がれる

 

ーキシャァァァァァオオゥ……

 

更に集まった虫たちは巨大なシルエットを形成、一つ目をギラつかせる怪獣ーカイザードビシの姿を現した

 

「合体したのか!?」

 

「なるほどね、そういうこともできるわけ…でも、それならこちらも!」

 

コンが振り返る

 

ーシェアッ!!

 

ガンドラグーンの前に現れたカイザードビシに地上から光線が直撃、爆発四散する

 

「援護感謝する!」

 

地上に立つ銀の巨人、ウルトラマンイカロスに礼を述べ剛がガンドラグーンの照準を再び整える

が、ドビシたちはまた集まり、今度は2体のカイザードビシに合体してみせた

 

「無駄だ。ヤツらは群れがある限りああやって怪獣態に何度も合体する」

 

イカロスは負けじともう一度アポロニウムシュートを撃とうとするが、その体が突如背後から羽交い締めにされる

 

「……‼︎ 死神!」

 

現れたその異形は昆虫を、その中でもハエを無理やり人型にしたようなシルエットの怪人だった

巨大な複眼は紫の結晶に縁取られ、同じく紫の結晶が角の代わりに伸びている

 

【貴方たち人間は宇宙を蝕むウイルスなのです。大人しく滅びを受け入れなさい。それが貴方がたに許された唯一のことなのだから!】

 

死神と同じ声で囁き、ゼブブがイカロスを右手の剣状の腕で斬り捨てる

イカロススラッシュで反撃するもその光弾は怪人の直前で弾かれる

光弾が効かないのならとパンチを打ち込むが、打ち込んだ拳から電撃が走り、吹き飛ばされる

 

 

「あの怪獣は全身を電磁バリヤーで防御してる。肉弾戦も、光線もあのままだと弾かれる!」

 

避難していたビルの屋上からワームホールを観測していた我夢が怪人の姿を見て呻く

 

「あの怪獣のバリヤーに弱点は無いのか…⁉︎」

「両目の間、あそこにバリヤーの隙間がある。そこを正確に撃ち抜けば……でもそれは簡単なことじゃない……」

 

それを聞いた翔真は屋上を後にする

 

ビルの前、我夢が調整した弾頭を積み直したレガシーローダーとレガシーウインガーの前に待機していた輝と花のもとに翔真が駆けつける

 

「輝先輩!レガシーウインガーを貸してください!」

「え!?どうしたんだ急に…?」

 

突然の要請に面食らう輝

 

「イカロスが押されてる。我夢さんが怪獣の弱点を教えてくれた。俺なら、そこを狙えるはずなんです」

 

翔真の視線と輝の視線がぶつかる

最初は困惑した様子だったが、輝は笑ってその肩を叩く

 

「ちょうど手が欲しかったんだ。こちらこそ頼めるか、翔真?」

「……‼︎ 俺の空戦成績を忘れたとは言わせませんよ、先輩!」

 

翔真がレガシーウインガーに乗り込む

 

「花ちゃんはあの子と我夢さんを頼む」

「輝さんは⁉︎」

「ローダーで翔真を援護する。後輩のフォローをするのも先輩の仕事だからな」

 

その返答を聞いた花が笑って頷く

 

離陸したレガシーウインガーとそれを追って離陸するレガシーローダー

レガシーウインガーに乗る翔真を我夢は屋上からしっかりと見ていた

 

 

死神の剣撃を避けながら反撃の機会をうかがうイカロス

だが、攻撃は電磁バリヤーに弾かれ、目立ったダメージは与えられない

 

死神が再び剣を振り上げる

その背に赤と黄色の光線が突き刺さるが弾かれ霧散する

 

死神が振り返る先にいたのはレガシーウインガーとレガシーローダーの2機

 

「輝と…花か?でも花は……」

『ーょう、隊長!』

「その声は…翔真か⁉︎」

 

通信越しに聞こえてきた声の意外な主に剛が驚く

 

『イカロスが戦ってる怪獣の弱点がわかりました。俺なら叩けます』

「……そうか」

『隊長、責任は俺も持ちます。だからー』

「バカを言うな、輝」

 

剛が微笑む

 

「ー責任を負うのは隊長の仕事だ。頼んだぞ翔真!メテオール解禁!」

『……!G.I.G!!』

 

「「バーミッション・トゥ・シフト、マニューバ!!」」

 

レガシーウインガーとレガシーローダーがマニューバモードへと変形し、ウインガーが死神の前に踊りでる

死神の剣があえなくその機体を両断するーがそれはマニューバモードの超機動が生み出した残像

死神は負けじと剣を振るい、ウインガーを斬り刻むがその悉くが残像であった

 

(俺は、いくつも許されないことをした。取り返しのつかないことにもなりかけたこともある)

 

翔真が操縦桿を握る

 

(でも、俺の心はまだあの時のままなんだ。あの時、ジャスキープから子供と花さんを庇うのに体が勝手に動いた時と同じー)

 

助けられなかった妹の顔がよぎる

だが、翔真はもう憤怒や復讐に支配されてはいなかった

 

(ー俺と同じように、なんでもない幸せを失う人をもう出させないために、俺は、また戦いたいんだ!!)

 

死神が目前に迫るウインガーを斬り捨て、残像が霧散

と同時に本物のウインガーが現れる

 

面食らう死神

翔真の見据える照準は死神の眉間を捉えていた

 

「スペシウム弾頭弾、ファイア!!」

 

ほぼゼロ距離からのスペシウム弾頭弾が死神の眉間に炸裂する

よろめく死神。破壊された複眼から光が消え、体を覆う電磁バリヤーにもノイズが走り、霧散していく

 

「決まったか…‼︎ ならこちらも!」

 

剛が正面の穴を見据える

だがカイザードビシたちがその行く手を遮る

 

『ここは俺が!ブリンガーファン、ターンオン!!』

 

輝が操るレガシーローダーから竜巻が放たれる

それに巻き込まれたカイザードビシはその体を元のドビシたちの群れに霧散させ、穴に群がるドビシたちとまとめて吹き飛ばされた

 

「今だ!!」

『次元封鎖弾、発射!』

 

ガンドラグーンのレーザーがワームホールを穿ち、バチバチとスパークする中へレガシーローダーから放たれた我夢の改造を受けた特殊弾頭が炸裂する

ワームホールがみるみるうちに小さくなり、すぐに消滅した

 

「よし!これで虫たちは打ち止めだな」

 

マニューバモードが解除されたレガシーウインガーがイカロスの側を通り過ぎる

 

「あとは頼んだぞ、ウルトラマン!」

 

それを聞いたイカロスがしっかりと頷いた

 

 

コンの側で作戦を見守っていた藤宮が前に歩み出る

 

「どこに行くつもり?」

「後始末だ。この数を相手するには一人だと難しいだろう」

「……なるほどね。そりゃそうか」

 

それを聞いたコンは藤宮に背を向け、手を振る

藤宮の右手にはめられたブレスーアグレイターの角飾りが展開され、青く煌めく

 

 

花の隣から我夢がビルの外に歩み出す

 

「花さん、ありがとう。僕も行かなくちゃ」

「行くって、どこに……」

 

と、花は我夢の手に見慣れないアイテムが握られているのを見た

逆三角形の、ウルトラマンのカラータイマーにも見えるアイテムが

 

「僕にはまだ、やれることがあるから」

 

ビルの外に出た我夢は空を、ドビシたちを見据え、その手にしたアイテムーエスプレンダーを前に突き出す

 

 

「ガイアァァァァァァ!!!」

「アグルゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 

我夢と藤宮、二人がそれぞれ赤と青の光に包まれ、空に昇っていった

 

 

ーデュアッ!!

ールゥオァッ!!

 

 

ガンドラグーンの前に飛来した赤と青の光が交錯する

 

「なんだ…⁉︎」

 

剛が目にしたのは、空に群がるドビシの大群の前に並ぶ二人の巨人

赤い体に黒いプロテクターを纏った巨人と、青い体に黒いプロテクターを纏った巨人。2人のイカロスとは違うウルトラマンがそこに姿を現していた

 

「赤と青のウルトラマン…‼︎」

 

2人のウルトラマンはそれぞれオレンジの光線と青い光線を組んだ腕から放ち、ドビシたちを焼き払っていく

 

街を覆っていた虫たちは2人のウルトラマンによりあっという間に焼き払われ、太陽が再び地上を照らした

が、一部残った群れが二つに分かれ、地上へと飛来していく

 

死神と向き合うイカロス、その背後に群れは飛来し、カイザードビシ2体の姿を作り出す

 

「新手か…‼︎」

 

現れたカイザードビシたちに振り返るイカロス

その背後に空から新たな巨体が大地を揺るがしながら着地した

 

「貴方たちは……まさか藤宮さん!?」

 

現れた2体のウルトラマン、そのうち青い巨人が背中越しにイカロスを見やり頷く

 

『こちらは任せろ。行くぞ、ガイア!』

『ああ、行こう、アグル!』

 

死神にガイアとアグルが、カイザードビシたちにイカロスが突撃する

 

剣を構えた死神に同じく光剣を構えたアグルが突っ込む

死神の剣撃を華麗にいなし、鍔迫り合いに持ち込むとキックで死神の体を吹き飛ばす

よろめいた死神に迫る剣撃。辛くも右手の剣を前に出すが、アグルの光剣はその剣を易々とへし折り、死神の体に深い斬撃を叩き込んだ

 

ーデュアッ!!

 

アグルと入れ替わるように飛び込んできたガイアのチョップがよろめく死神に突き刺さる

その死神の体を掴み上げ、宙に浮かせる

 

ーデュアァァッ!!

 

ガイアは死神の体をそのまま大きく投げ飛ばした

 

 

カイザードビシたちの挟撃をいなし、イカロスは2体に拳を叩き込み吹き飛ばす

 

「転送!アーマードエグゼス!!」

 

翼のコールと共にアーマードエグゼスが飛来、イカロスに装着される

カイザードビシたちはそれに怯むことなく胸部の口から口吻を伸ばし、イカロスの両腕を絡めとる

 

ーシェアァァ……シェアッ!!

 

が、イカロスはその口吻を縛られたまま掴み直し、振り回す

口吻に引っ張られたカイザードビシは互いに衝突、その隙にイカロスは口吻を力任せに引きちぎった

 

『決めるぞ、ガイア!』

 

アグルの呼びかけにガイアが頷き、両手を上に掲げ、開く

赤い光包まれたガイアの筋肉が盛り上がり、体に青いラインが新たに走る

 

2人のウルトラマンがその手にエネルギーを集め、円を描くように振り回す

収束したエネルギーをガイアは突き立て、並べた腕をスライドさせ、アグルは横に組んだ腕から右腕を持ち上げ、収束したエネルギーを光線として放つ

 

イカロスもそれに合わせ、胸の前に腕を交差

銀と黒のエネルギーを胸の前に球状に収束させてカイザードビシに放つ

 

それぞれの光線と光球が死神とカイザードビシたちに直撃する

エネルギーはそれぞれの巨体にスパークし、爆発四散させた

 

「やった…‼︎」

 

翔真が思わずガッツポーズを取る

 

3人のウルトラマンは向き直り空へと飛び上がっていった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

NEXT GUYSによる救助作業が始まる中、ウインガーから降りた翔真のもとに少年が駆け寄ってくる

その後ろには母親らしい女性の姿もあった

 

「あのね、お母さんと会えたよ!避難所から出て僕を探してくれてたの!」

 

追いついてきた母親が少年の頭を撫でる

 

「この子から聞きました。本当にありがとうございます…‼︎ なんとお礼したら良いか…」

「いや、俺は…ただ体が動いただけですから…」

 

翔真が照れ臭そうに頭をかく

 

「お兄ちゃん、NEXT GUYSの隊員さんなの?」

「いや……その、なんというか…」

「お仕事頑張ってね!」

 

少年が翔真に何かを手渡す

それは小さなレガシーウインガーのおもちゃだった

それを確かに握り、翔真が微笑む

 

「……あぁ、頑張ってみるよ」

 

 

撤収作業が続けられる中、それを眺めていた翔真のもとに剛が歩み寄る

 

「これからはどうするんだ?翔真」

「……いつも通りですよ。また頑張ります。今度は、焦らずに、見失わないように」

 

そう答えた翔真を剛は満足そうに眺めながら、あるものを差し出した

 

「これは……?」

「うちの隊、空戦は私やケリスが得意なんだが……エースパイロット級の人材はいなくてな。いつでも募集中なんだ」

 

手渡されたのはメモリーディスプレイ

翔真がNEXT GUYSを抜けるときに返却したものだった

 

「気が変わったらいつでも帰ってこい。今度はゆっくり話でもしたいところだ」

「……はい!ありがとうございます!」

 

頭を下げる翔真の肩を優しく叩いて剛は撤収作業に戻っていった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

数日後 A.I.G.I.S.機動隊詰所

 

「これがあんたの結論かい?」

 

華鈴が翔真から受け取った辞表をひらひらと振る

 

「……いっぱい考えました。A.I.G.I.S.に残って戦うことも、もちろん考えました」

 

翔真が華鈴の顔を見据える

 

「でも、それ以上に……俺は向き合う必要があると思ったんです。自分に言い訳をして、見ようとしなかったものに。そうしないと、きっと俺は変われないから」

「だから、NEXT GUYSのみんなと向き合うところからってわけだ」

 

華鈴は翔真に並び、その背を思いっきり叩く

 

「よく言った!いい顔になったじゃないの。そう決めたなら、しっかり向き合ってきな、翔真(・・)

 

翔真の首から下がったIDを取り上げる

 

「こいつは預かっとく。面白い部下には唾つけとく性分なんでね」

 

悪戯っぽく華鈴が笑う

 

「はい、お世話になりました!そして、またいつか!」

 

翔真は華鈴に敬礼し、荷物を抱えて詰所を後にする

憑き物が落ちたようなその顔を目にした華鈴は満足げに微笑んだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「藤宮!」

 

空を見上げていた藤宮に背後から声がかけられる

アドベンチャーから我夢がこちらに駆け寄ってきていた

 

「アドベンチャーの整備と調整が終わったよ。僕たちの地球に帰れる」

「…そうか」

 

それを聞いた藤宮が振り返る

 

「?藤宮、何かいいことでもあったのか?」

「何のことだ?」

「なんか……ちょっと笑ってた気がして」

 

我夢の指摘に藤宮は自分の頬を触り、微笑む

 

「さぁ、何かあったのかもな」

「?」

 

我夢はなんとも言えない藤宮の返答に首を傾げながらもアドベンチャーに向かってかけていく

アドベンチャーに乗り込む直前、藤宮は振り返りもう一度空を見上げる

 

「日向 翼。人間は際限なく愚かになれる生き物だ。それを忘れるなよ」

 

そこにはいない翼への忠告を呟くと、藤宮はアドベンチャーに乗り込む

2人を乗せたアドベンチャーは高速回転しながら道なりに装甲、稲光りとともにその姿を消した




久しぶりの休日を一人謳歌する翼
街を散策していると、不思議な着物の少女と遭遇する

どこか浮世離れした少女と交流を深める翼
その平穏を切り裂くように『空が割れる』

『我が怨念は幾度潰えようとも消えはしない!』
『今こそ我が復活の狼煙を上げるとき!!』

次回ウルトラマンイカロス
『怨念再来』
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