ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第19話「イカロス・アイデンティティ」

「えぇっ、翼さんがウルトラマンイカロス!?」

 

大袈裟に驚く輝の口を翔真が慌てて塞ぎ、翼もしーっ!と指を立てる

 

「他言無用なので……どうか…」

「輝先輩、少し空気読みましょうよ…」

 

ケリスが呆れ顔で呟き、隣で花が苦笑する

 

輝たちと翼はフェニックスネストの食堂に集まっていた

剛が雑務で遅れてくるということで、その際に先日のケルグ事件の際のことを輝が聞いてきたのだ

 

「……メビウスもGUYSの隊員として地球に来ていたって話だったけど…まさか俺たちの代までそうだったなんて…」

「正確に言うと、僕の場合はイカロスが残したカラータイマーを基にして爺ちゃんー祖父が設計した機械のウルトラマンなのですけどね」

「それでも翼さんが戦っていたのは事実じゃないですか」

 

驚いていた輝だったが、いつものように笑顔を翼に向ける

その変わらなさが翼には嬉しかった

 

「……というか、この感じまさか他のみんなは知ってたの⁉︎」

「……自分はギマイラの、正確にはフランベルスの時に」

「わ、私もそれくらいに…」

「私はゴルバゴスの事件の時にはなんとなく」

「「「そんな早くから!?!?」」」

 

ケリスの言葉に3人が驚く

そんな様子を見ていた翼は思わず吹き出していた

 

ビーッ!!ビーッ!!

 

そんな平和な食堂にアラートが鳴り響く

目の色を変えた隊員たちが立ち上がり、指令室に急行していく

 

「僕は本社に向かいます!後ほど!」

 

翼は途中離脱し、隊員たちは指令室に到着する

 

「戻ったか!こんな昼時に慌しいヤツだ…」

 

先に着いていた剛がぼやきながらケリスと花の分析を待つ

 

「監視衛星から報告、地球へと飛来する複数の未確認飛翔体。そのうち一番到達が早いのは……え?」

 

と報告を待たずしてフェニックスネスト全体が大きく揺れる

 

「くっ!?周囲の映像を!!」

 

すぐにモニターにフェニックスネスト周辺の中継映像が映し出される

 

フェニックスネストの真正面にそれは着陸時の砂煙を纏いながら立っていた

 

白亜の体表を持つ赤い目の怪獣ーのように見えたが関節から覗くコードや機械的なパーツがその存在が有機生命体であることを否定する

胸のコアと目が赤く煌めく

 

「げぇっ!?ギャラクトロン!?」

 

ケリスが素っ頓狂な声を上げて驚く

 

「知ってるのか?ケリス」

「私の星、というか宇宙工作員の間でも特級に警戒されてた機械生命体ですよ……別宇宙で生まれたらしく、とにかく目についた生命体を星ごと滅ぼして周る危険極まりない暴走メカ……」

「生命体……それって、生き物も自然も手当たり次第ってことじゃ⁉︎」

「だから特級に警戒されてたんだよ。勝手に文明を悪と判断して破壊して周るようなうちの上層部すら、見つけ次第逃走、あるいは迅速な破壊をって言うほどに」

 

ケリスの深刻な言葉に花が生唾を飲み込む

 

「でも、あいつら確かしばらく前に目撃例がまるっきり無くなってはずだけど……」

 

と言っている間にギャラクトロンはその腕を持ち上げ、ゆっくりとこちらに前進してくる

 

「翔真と花はガンドラグーン、輝はガンフェニックスレガシーで出撃!ケリスは私と基地内の非戦闘員の避難誘導を!」

 

「NEXT GUYS、サリー・ゴー!」

『G.I.G.!!』

 

号令に従い、各自が持ち場に急ぐ

 

「ーッ!隊長!別の飛翔体がまもなくこちらに!」

「まだ何か来るのか!?」

 

 

フェニックスネストへと一歩、また一歩と歩みを進めてくるギャラクトロン

 

ーハァッ!!

 

その白亜のボディに新たに飛来した銀の流星が直撃する

吹き飛ばされたギャラクトロンの前に銀色の巨体が着地する

 

立ち上がったその巨人の姿はどこか初めて地球を訪れたウルトラマンの姿に酷似していた

だが、その巨人とウルトラマンには大きく違う部分があった

細いながら鋭く尖った爪を持つ手、そしてその瞳

釣り上がったような青い瞳は獰猛な獣のようでありながら、深い優しさを帯びているようにも思えた

 

ーハァッ……‼︎

 

現れた謎のウルトラマンはギャラクトロンに向けて野獣の如く爪を立て、低く身構える

 

「あれは…ウルトラマンなのか…?」

「多分……そう……なのかな?」

 

困惑する翔真と花の乗るガンドラグーンに見守られながら、謎のウルトラマンはギャラクトロンに突撃、高く跳び上がりながら膝蹴りを見舞い体勢を崩させる

すかさず爪を振り上げるギャラクトロンの腕を受け止め、肘鉄を打ち込む

 

吹き飛ばされたギャラクトロンの隙をついて謎のウルトラマンの姿が赤く輝き、大きく変化する

銀のプロテクターを胸や肩に装着した赤いマッシブな姿になったウルトラマンは格闘技のような構えを取り、ギャラクトロンに相対する

 

ーデヤァッ!!

 

裂帛の気合いと共に炎を纏った拳がスラスターの噴射で加速しながらギャラクトロンに突き刺さる

鈍重ながらも鋭いパンチや蹴りをギャラクトロンの反撃を的確にいなしながら当てていく

 

ールァァァァァァ……

 

と、歌声のような声が響くと共にウルトラマンの背後にもう一体のギャラクトロンが出現、右腕の剣を展開し振り上げる

 

「やらせるか!」

「くらえっ!!」

 

剣は目標に当たる前にガンドラグーンとガンフェニックスレガシーの光線によって弾かれる

 

ーシェアァァァァッ!!

 

さらに空から駆けつけたイカロスの拳が新たに現れたギャラクトロンを吹き飛ばす

 

交戦していたギャラクトロンを突き飛ばし、イカロスとガンドラグーンたちを交互に見やった謎のウルトラマンは頼もしそうに頷く

それにイカロスも頷きを返し、背中合わせになってギャラクトロンに向き直った

 

イカロスがギャラクトロンと衝突。その腕を振り下ろし力任せにイカロスを押さえつけてくるギャラクトロンのパワーに流石のイカロスも押されていく

 

「くっ…ッ!!なんてパワーだ……」

 

が、ギャラクトロンの背中にガンブレイバーとガンバスターからの援護射撃が命中し、怯んだ隙にイカロスが脱出する

 

「助かりました!」

『翼さん、あの怪獣はケリスさん曰くかなりの強敵らしいです!レジストコードはギャラクトロンだと』

『ギャラクトロン…⁉︎ アレ実在したのね…私らでも聞いたことあるくらいには有名なヤツよ。直接見るのは初めてだけど』

 

花の言葉に通信越しのコンが驚きを見せる

 

「なら出し惜しみしてる暇は無さそうだ。着装!アーマード・エグゼス!!」

 

システムコールに合わせて現れたアーマード・エグゼスがイカロスに装着、排熱の水蒸気を各部から噴き出す

 

「はぁっ!!」

ーシェアァッ!!

 

ギャラクトロンの突撃を拳の一撃で押し返す

振り回される剣状の腕を振り回し、迫るギャラクトロンの一撃を受け止めいなしながら重い打撃を叩き込んでいく

 

 

ーデヤァッ!!

 

謎のウルトラマンもギャラクトロンに炎の拳を叩きつけ、その体を吹き飛ばす

イカロスに吹き飛ばされたギャラクトロンと背中合わせに衝突し、逃げ場を失った2体の前に2人のウルトラマンが立ち塞がる

 

「トドメだ!レゾナンスバースト!!」

 

イカロスが黒銀のエネルギー球を、もう一人のウルトラマンが右手の装甲を展開しチャージした炎を纏う緑のエネルギーを光線に変え、同時に放つ

 

必殺の一撃が同時に着弾した2体のギャラクトロンはエネルギーをスパークさせながら爆発四散した

 

「やった!」

 

ギャラクトロンを撃破した二人のウルトラマンに思わずガッツポーズする輝

 

『大事にならずに済んで何よりだ。急ぎ帰投をー』

 

剛からの通信が突如途絶える

 

「隊長?どうしました?隊長⁉︎」

 

異常事態に気付く輝、彼が乗るガンフェニックスレガシーの計器にもノイズが走った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

先に現れ戦っていた謎のウルトラマンに向かい合うイカロス

件のウルトラマンは強面ながらも優しい視線をこちらに返していた

 

「あなたも、エックスたちのような別の宇宙のー」

 

と、何かを察知したのかウルトラマンが視線を映し身構える

それに倣って同じ方を向いたイカロスの胸にミサイルが突き刺さる

もう一人のウルトラマンにも別方向から光線が降り注いだ

 

「なっ!?」

 

ミサイルを放った主たるモノを見て翼が驚愕の声を上げる

そこにいたのはマニューバモードを起動させていたガンフェニックスレガシーとガンブレイバー、ガンバスターの3機だった

 

「皆さん⁉︎ 彼は味方のはずです!」

『違ー‼︎ ー体ーー手に⁉︎』

 

ノイズ混じりの通信が聞こえてくる

途切れ途切れながら彼らの乗るメテオール戦闘機の制御がおかしくなっていることが伝わる

 

「一体何が……」

『何これ…バカみたいな速さでフェニックスネストのネットワークが侵食されてる⁉︎ ハッキングにしてもこんなの……ッ⁉︎ 翼ー』

 

コンからの通信が途絶え、同時にイカロスのコクピットがダウンしたかのように暗くなる

次の瞬間、一度ビタっと動きを止めたイカロスが突如翼の意志に反して動き出し謎のウルトラマンに襲いかかった

 

「イカロス!?どうして!?」

 

事態に驚きながらも計器類を操作してイカロスの状態を確認する

 

「イカロスの制御系が書き換えられてる…⁉︎ 制御権限が僕じゃ無くなって……」

 

イカロスのステータスを示すプログラムコードが翼の前で凄まじい速さで書き換えられていく

 

不意打ちのような形で組みつかれ、謎のウルトラマンはイカロスの攻撃に押されていく。反撃しようと立ち上がるが、そこにメテオール機からの攻撃が加わりよろめく

 

「くっ……このままじゃ……‼︎」

 

翼は苦渋の顔を見せ、意を決したように操作を再開する

 

「イカロスを止めるには……今はこれしかない……‼︎」

 

翼はあるプログラムを実行に移した

そのプログラムは正確に起動、イカロスの制御系がデリートされていく

イカロスを起動するためのプログラムを初期化したのだ

 

イカロスが脱力し、ウルトラマンが解放される

再び立ち上がったウルトラマンの胸にガンブレイバーからのブレイジングデトネイターが直撃し、体勢を崩したウルトラマンの姿がそのまま消失する

 

 

「ちょいちょいちょい⁉︎ フェニックスネストの制御系が乗っ取られてる!?同時にメテオール機の制御まで!!」

「バカな、システムのプロテクトは最高レベル…それにここの制御系はスタンドアロンだったはずじゃ⁉︎」

「その通り…その通りのはずなんですが‼︎ それでも確かに今ハッキングを⁉︎」

 

指令室の電源系統がダウンし、照明が落ちる

剛が急いで出入り口に向かうが、自動ドアは硬く封鎖され、ビクともしなくなっていた

 

【無駄である。この施設の制御系統は全て私が掌握した】

 

突然の声と共に指令室のモニターが点灯する

そこに映ったのは心臓のように脈動する赤い球体

 

「何者だ!?」

【我が名はギルバリス。争いのない平和な宇宙を築くべく生み出された存在である】

「ギルバリス…?平和な宇宙を築くって……」

【平和の実現のために争いを繰り返す知的生命体の存在は不要。同時に他者からエネルギーを得る非効率的なシステムを為す生態系も不要である】

 

【宇宙の平和を維持するべく、この星及び生育する生命体のリセットを開始する】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

イカロスからなんとか降りた翼が見上げた先で輝たちが乗るメテオール戦闘機たちがフェニックスネストへと帰投していく

 

「応答してください、誰か!!」

 

メモリーディスプレイに向かって声を上げるが、誰からの応答も返ってこない

 

「翼!!」

 

立ち尽くす翼のもとに一台のワゴンが乗りつけてくる

降りてきたのはコンとアルミルの2人

 

「コン、アルミル!無事だったんだね」

「間一髪抜け出せたわ。嫌な予感したけどまさかここまでやられるなんてね……」

「ここまで……本社は⁉︎」

「残念ながら本社もほとんど機能停止状態です。本社とは別ネットワークのボクの通信機でなんとかエンジニア部門の皆さんと通信は繋がり、今は彼らがなんとか解決の糸口を探してくれていますが…」

 

コンが動きを止めたイカロスを見上げる

 

「で、イカロスの方はどうなってるの?」

「……プログラムを初期化した」

「は?初期化!?それ本気で言ってるの⁉︎」

「他に手がなかった。あのままイカロスが他のウルトラマンを、最悪地球の人々に手を出すことになるならって……」

 

思っていたよりも絶望的な状況にコンが思わず頭を掻きむしる

 

「えっと……少しいいかな?」

 

そんな中、翼たちの前に一人の少年が姿を現す

 

「キミは……?」

 

「僕は朝倉 リク。さっきギャラクトロンと戦ってたウルトラマンジードでもある」

 

少年ー朝倉 リクはその手に握ったデバイスを掲げて見せる

 

「ウルトラマンジード……キミがさっきの…⁉︎」

「あなたが、一緒に戦ってくれたウルトラマン…でよかったですよね?」

「あ、ああ……えっとそうだけど、そうじゃないというか…」

 

答えにつまっている翼をよそにリクと名乗る少年はそのデバイスを手にしながら首を傾げる

 

「……わかった。あのすみません、何か通信端末を貸してもらえませんか?僕の仲間から話したいことがあるらしくて…」

「端末……僕のメモリーディスプレイならー」

「バカ、少しは警戒しなさい⁉︎ あんたのメモリーディスプレイにはイカロスのこととか色々まずい情報があるでしょ⁉︎」

 

メモリーディスプレイを差し出そうとした翼をコンが止め、アルミルが代わりにNEXT GUYSタフブックを取り出す

 

「予備のタフブックがありますので、こちらでお願いできますか?」

「ありがとうございます。レム、これでいい?」

 

デバイス越しに何か聞いたリクはそのデバイスをタフブックに押し当てる

と、タフブックが勝手に起動しその画面に黄色い球体が映し出される

 

『通信状態確認……良好。ギルバリスからのハッキング影響無しと確認。リク、聞こえていますか?』

「うん、聞こえてるよ。こっちの声はどう?」

『問題ありません、よく聞こえています』

 

タフブックに映し出された球体が主なのかはわからないが、画面から女性の声が響いてくる

 

『こちらの地球の方々、はじめまして。私はレム。宇宙船・星雲荘の管理AIをしています』

「宇宙船の管理AI?」

『はい。現在はギルバリスからのハッキングの影響を避けるために衛星軌道上で待機しています』

 

淡々と応答しながらレムが続ける

 

『現在の我々の状況、そしてそれに伴う形で発生してしまった脅威を改めて説明します。そこにいる少年、朝倉 リクことウルトラマンジードはデビルスプリンターという存在を追って様々な宇宙を渡り歩いているのです』

「デビルスプリンター…?」

「怪獣を凶暴化させたりする《悪魔の欠片》、僕たちはそう呼んでます」

『そのデビルスプリンターの影響により、先程この星のウルトラマンとジードが戦った機械生命体ーギャラクトロンとそれらの創造主でもあるマスターコンピューター・ギルバリスが復活、リクの尽力により別の宇宙で彼らは再び撃破されました』

「撃破されたって…でも今ここにいるじゃない?」

 

コンの言葉にリクが悲痛そうな顔を浮かべる

 

「……倒したはずだと思っていました。でも、ギルバリスは自身のバックアップとも言える存在を別宇宙に転送していたんです。それが、この宇宙、この地球にたどり着いてしまった」

「それが、今フェニックスネストとイカロスをハッキングしてきた存在なのですね」

 

翼の言葉にリクが頷く

 

「翼さん、皆さん、どうか力を貸してくれませんか?今のギルバリスと対抗するには、翼さんのーこの星のウルトラマンの力も必要なんです」

 

リクの言葉に翼は唇を噛む

 

「……もちろん、と言いたいのですが、今の僕では恐らく力になれません…」

「それは…どうして?」

「今のイカロスは、ハリボテも同然だからよ」

 

言葉に詰まる翼に代わりコンが答える

 

「ギルバリスとやらのハッキングを振り切るために翼はイカロスのプログラムを初期化して強制停止させた。今のイカロスは起動のためのプログラムが完全に欠けてるの」

「……イカロスに搭載されていたプログラムはじいちゃん…僕の祖父が作り上げたものです。自動保全システムにコードの保全を全部任せてそのソースコードは祖父が破棄してしまっている。僕は、そのプログラムを触ったこともなかったんです」

 

「僕たちの技術だけでイカロスを再起動させられる可能性は……極めて低い……」

 

翼の絞り出すような言葉に思わず一同が静まる

 

『提案。我々の技術を利用するのはどうでしょうか?』

 

そう告げるレムを翼がディスプレイ越しに見つめる

 

「君たちの技術を…?」

『正確には私の技能ですが。私の技能を応用すればそこにあるイカロスの躯体からデータをサルベージしできうる限りのプログラムコードの復元が可能なはずです』

「そんなことが…‼︎ それなら、僕たちでプログラムの復元も可能になるかもしれない……」

 

意気消沈していた翼の瞳に光が戻る

 

「僕も、手伝えることがあれば手伝います!」

 

リクが翼の隣に並び立つ

 

「ありがとうございます、朝倉さん」

「リクって呼んでくれていいですよ、翼さん」

 

意を決した翼はイカロスを今一度見上げる

 

(ここでできなきゃいけないんだ。じいちゃんを超えるために)

 

そんな翼の表情をリクはどこか心配そうに見ていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ガギンッと鈍い音を立ててコクピットが開く

 

「翔真!花ちゃん!無事⁉︎」

「なんとか…」

 

アラートの鳴り響く格納庫に3人が降り立つ

 

「ガンドラグーンの方も制御不能か……フェニックスネストの機能も同じような状況なのか?」

 

周囲を見回しながら輝が呟く

 

「だとしたら、非戦闘員の方たちが危険かもしれません」

「隊長とケリス先輩も心配ですね。とにかくここから出ませんか?輝先輩」

「だな。とにかくここからー」

 

その時、3人の前にどこからともなく白い装甲と赤い目を持つロボットが何体も姿を現し、銃を向けてくる

咄嗟に3人もトライガーショットNEXTを取り出し引き金を引く

ロボットのうち数体は倒れたが残る数体は意に介さず3人に銃撃を放つ

格納庫のコンテナに二手に分かれて転がり込んで回避する

 

「翔真!花!」

「了解!」

「は、はいっ!」

 

輝の号令に従い花が牽制射撃を行う

ロボットが回避のために見せた一瞬の隙を縫って輝と翔真が突撃

短剣を取り出し対抗してくるロボットたちに怯まず組み伏せ、近づいてくるロボット共々トライガーショットで撃ち、無力化する

翔真の背後から残る一機が現れるがすんでのところを花が撃ち抜き沈黙させた

 

「こいつらいったい……」

 

動かなくなったことを確認しながら輝が呟く

 

「……見た感じというか、装甲の雰囲気はさっきのロボット怪獣…ギャラクトロン?に似てるように思いますが」

「となるとやっぱ基地の機能停止はあのロボットの親玉が原因だろうな…」

 

立ち上がった輝が翔真と花を見やる

 

「俺は指令室に向かう。ケリスと隊長が残ってるはずだし、取り残されてるなら救援もいるだろう。2人は基地内の非戦闘員の人たちを頼む。危なくなったらメテオールを使ってもいい。俺が後で始末書くらいいくらでも書くからな」

 

輝からの指示を受け取った2人はたしかに頷く

 

「「G.I.G!」」

「頼みましたよ。輝先輩」

「そっちこそ、今度は無茶なことするなよ」

 

3人は格納庫のロックを破壊すると二手に分かれて基地内を進み出した

 

 

「ケリス、どうだ?」

「どうもこうもまだなんとも…さすがは人工知能、セキュリティ面も中々ってことですね…」

 

指令室ではケリスが端末からギルバリスへのハッキングを試みていたが、作業は進行していないようだった

大型モニターの方に映るギルバリスは何故か沈黙を保っている

 

【データ復元進捗…40%……機能復元率35%……】

 

(?なんのことだ……?)

 

ギルバリスのシステム音声に剛が首を傾げているとケリスが何かに気づいたように手を打つ

 

「そうか、こいつは多分壊れてるんだ……」

「壊れている?」

「原因はわかりませんが、こいつはおそらく機能が損傷していて完全じゃないんです。だからギャラクトロンを作ることやこの基地を掌握することしかできてない……本来のこいつなら私たちに宣戦布告しなくとも侵略をはじめていてもおかしくないはず、というかそれがこいつの最善の行動のはずなのに……」

「…とすると、それならー」

 

【この星に関するデータの閲覧を完了、同時に優先目標を再設定】

 

剛の言葉を遮るようにギルバリスの機械音声が響く

 

【ウルトラマンイカロス、及び機械改造怪獣群の優先破壊を開始する】

 

 

バァンッ!

 

迫り来るロボットを蹴り飛ばし、トライガーショットでトドメを刺しながら輝が周囲を見回す

 

通路には先程輝が倒したもの以外に多くのロボットの残骸が転がっていた。どのロボットもボディが鋭利なもので切り裂かれたように破壊されている

 

「隊長……にしてもこんな損傷になるのは変だし……」

 

と残骸を検分していた輝の背後からロボットが新たに現れ、ナイフを振り上げる

が、その刃が振り下ろされる前にロボットが脱力し、崩れ落ちる

 

「怪我はないか?」

 

ロボットの背後から現れた男が輝に声をかける

 

「あなたは…?」

 

現れた黒衣の男からは厳しい顔を輝に向けてはいるが敵意は感じない

その手には光る刃を持つ短剣が握られていた

 

当初混乱していた輝だったが、男の顔の見覚えを思い出し更に驚愕する

 

「あ、あなたは、前GUYS時代のセリザワ カズヤ隊長…⁉︎」

「この男のことを覚えている地球人がいたのか。すまないが、俺はこの男の顔を借りているだけにすぎない」

 

と男の顔に青いウルトラマンの影が一瞬現れる

 

「ウルトラマンヒカリ…‼︎」

 

ヒカリは頷き、通路を見据える

 

「ギルバリスがこの星に侵入したと聞いてイカロスではまだ手に余ると判断しここに来た。ギルバリスの姿が見えないとは思っていたが、やはり…」

 

ヒカリが輝に目を向ける

 

「指令室への案内を頼めるか?俺ならば、ここのコンピューターからギルバリスへとアクセスすることが可能かもしれない」

「はい!任せてください!」

 

頷く輝

同時に大挙して現れたロボットたちに向き直り、2人は短剣とトライガーショットを武器に突撃していった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ウルトラマンイカロスコクピット内部

 

リクとレムが見守る中で翼とコン、アルミルは作業を進めていく

 

「……レムさんのサルベージのおかげで大分希望は見えてきました。これなら、イカロスの復旧は間に合うかもしれない……」

 

配線を修復しながら翼の顔を見やったコンが薄く笑う

 

「よかった……」

 

リクもまるで己が事のように安堵の声をこぼす

 

「……このイカロスは、今まで翼さんと戦って来たんですね」

「はい。名前と姿を借りているだけですけどねあくまで…」

 

翼の答えを聞いたリクは何かを言おうと口を開きかけ

 

それを突然の衝撃が遮った

 

「なっー」

 

翼がなんとか衝撃に持ちこたえながら先んじて復旧させていたモニターから外の様子を見る

 

そこに現れていたのはギャラクトロンーだが先程倒したものと異なり人間のような形の手と顔を覆う金のプロテクターが存在していた

 

『警告:ギャラクトロンMk-2の出現を確認』

「ギャラクトロンMk-2ですって…⁉︎ アレの改良型ってこと⁉︎」

 

コンの驚く声にリクが頷く

 

【優先破壊対象、ウルトラマンイカロスの破壊を開始する】

 

突如コクピットの中に無機質な音声が響く

 

「優先破壊対象……? ウルトラマンイカロスが…⁉︎」

 

翼の声に応えるように音声は続ける

 

【ウルトラマンイカロス。ウルトラマンの機械模倣体。我々のデータベースに記録されているウルトラマンに該当する脅威存在との比較検証の結果、その戦力の80%を再現していると確認】

 

【この星に生きる知的生命体の技術レベルは酷似した惑星のものよりも遥か高水準に位置。更にはその技術が未だに戦争等の闘争行為に運用されている文明の暴走が顕著な惑星である】

 

【中でもイカロスという人造ウルトラマンこそ膨張し暴走しつつある文明の証左であると判断。宇宙平和を乱す可能性が黙認できない水準であると判断し、該当機体を優先排除することに決定した】

 

「そんな、それは違う!!」

 

音声が告げる言葉に翼が声を荒げる

 

「イカロスは文明の暴走でも過ちでもない…イカロスは約束の翼で希望なんだ…お前が、イカロスを語るな!!」

 

【イカロスという機体は短期間に複数の戦力を追加し改造を繰り返している。平和利用と嘯きながら戦力を加え続け、過剰な力を得た結果争いを激化させそれを繰り返してきた。この地球で何度も繰り返された戦争の歴史と何が違うというのだ】

 

「それは……ッ!!」

 

反論しようとする翼の脳裏にかつての翔真からの言葉が過ぎる

 

『あれだけの力、「兵器」を作り出しておいてー』

 

(……そうだ。イカロスが兵器でないなんて、僕以外に誰が証明できるんだ……)

 

翼が俯き言葉に詰まる

 

同時にイカロスに向けてギャラクトロンMk-2が侵攻を始める

それを見たリクがイカロスのハッチに駆け出す

 

「翼さん!」

 

リクの声に翼が顔を上げる

 

「……イカロスは、本当に兵器と見られて終わりでいいんですか?」

 

それだけ声をかけたリクはその手に取り出した青い扇形のデバイスを起動し、出現した光のゲートに突入していった

 

 

ゲートの中、光に包まれながらリクは赤い彼自身とジードの描かれたカードを取り出し、デバイスに差し込む

 

《RIKU Access Granted》

 

腰のホルダーからメダルを3枚取り出す

 

「ライブ!ユナイト!アップ!」

 

取り出したメダルをデバイスに装填

メダルにはジードやイカロスとは異なるウルトラマンの顔が描かれていた

 

「ウルトラマンギンガ!ウルトラマンエックス!ウルトラマンオーブ!」

 

装填されたメダルをデバイスにリードしていく

 

《GINGA》

《X》

《ORB》

 

「集うぜ、綺羅星!!」

 

デバイスを掲げ、リクがトリガーを押し込む

 

「ジィィィィィィド!!!」

《Ultraman GEED Galaxy Rising》

 

ジードに力を与える3人のウルトラマンが飛翔

更に黒いウルトラマンと銀のウルトラマンのシルエットが重なり、リクがジードとなり飛び立つ

 

 

侵攻を続けるギャラクトロンMk-2を現れたウルトラマンの膝蹴りが怯ませ後退させる

 

ーハァッ…‼︎

 

ギャラクトロンMk-2の前に立ち塞がったウルトラマンジードは先の戦いで魅せたのとは違う姿をしていた

最初に現れた初代ウルトラマンのような姿に青黒い鎧を纏ったような重厚な姿をしたジードはギャラクトロンMk-2に向けて格闘技のような、それでいて獣のような荒々しい構えを取る

 

ギャラクトロンMk-2はジードを認識すると突撃、それを受け止め翻りながらジードのエルボーが炸裂。ギャラクトロンMk-2も負けじと首と腕を背後から掴みジードを押さえ込まんとする

 

『ーギャラクシーカッティング!!』

 

ジードの肘から伸びるヒレ型の刃から光のブレードが展開、ギャラクトロンMk-2の白亜のボディを引き裂き拘束を振り解く

 

ーハァァァァァッ!!

 

荒々しい咆哮(ウォークライ)と共にジードの斬撃が再び閃くー

 

ーガギィンッ!!

 

が、その一撃は後頭部から分離した斧に弾かれる

返す刀で斧をジードの体に叩き込み、その体を大きく吹き飛ばす

 

斧によるダメージを負いながらも構え直し、ギャラクトロンMk-2に対峙するジード

 

ギャラクトロンMk-2はその斧を振りかざし、突撃を始めた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

フェニックスネスト指令室

 

閉ざされていた入り口の扉が火花を上げながら開き、輝とヒカリが突入する

 

「輝!無事でよかった…そちらは…」

「俺はウルトラマンヒカリ。この基地のシステムにアクセスする手段はあるか?」

 

男の名乗った名前に困惑している剛の背後からケリスが手を挙げる

 

「こちらに!」

 

ケリスが作業している端末を指し、その前にヒカリと輝が立つ

 

「と言ってもヤツのセキュリティが厚すぎてアクセスも何もできていないのですがね…」

「ギルバリスは惑星クシアが作り出した高性能コンピューターのような存在だ。ただの電脳的手段なら勝ち目はほとんど無い」

「じゃあどうやって…」

「下がっていろ」

 

右腕を掲げ、ナイトブレスを出現させセリザワの姿からウルトラマンヒカリに戻る

 

『俺が直接電脳世界に潜り込み、データ体のヤツを叩いて隙を作る。キミはその瞬間を狙ってハッキングを頼む』

「なるほど、ウルトラマンならではのやり方ってわけですね…了解。任せといて下さい!」

 

ケリスの威勢のいい返事に頷き、ヒカリの姿が発光。光となって端末の中へと消えていった

 

 

ヒカリが降り立った電脳空間は荒野のような情景。だがところどころ穴が空いたように黒塗りになり、グリッド線が覗いておりここが電脳空間であることを嫌でも認識させてくる

 

【データ復元率55%……機能復元率40%……】

 

ヒカリの前にその姿はあった

 

砲塔や機械回路のような模様を持つ黒い装甲に包まれた小さな要塞とも言える異形のシルエット

宇宙平和の管理者という自称を皮肉ったような醜悪で攻撃的なその姿は機械の悪魔とも言える邪悪さが溢れていた

が、その体もまた空間同様半ば崩壊したように穴空きになっており、機能が十分で無いことが伺える

 

『ギルバリス…‼︎』

【電脳空間に侵入者確認。優先排除対象に追加指定。直接の破壊を開始する】

 

ヒカリの姿を隻眼化した赤い目で捉えたギルバリスが動き出す

それを見たヒカリも構えを取った

 

地上とは異なる電脳空間での死闘が今始まろうとしていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『イカロスという機体は短期間に複数の戦力を追加し、改造を繰り返している』

 

端末を操作する翼の頭にあの声が何度も想起される

 

『この地球で何度も繰り返されてきた戦争の歴史と何が違うというのだ』

 

(違う。違う…‼︎ イカロスはそんな存在じゃない!そんな存在にさせたりしない……‼︎)

 

冷や汗が翼の頬を伝う

 

(ーでも……それは、僕が、僕と一部の人が思い込んでるだけじゃないのか……?)

 

翼の手が止まる

 

(僕は、僕は守ることと約束を言い訳にして、じいちゃんのイカロスを兵器に近づけてしまっていたのでは……?)

 

「……翼?」

 

翼の息が荒くなる

 

心配するコンの声も届かず、ぐるぐると翼の頭に思考が巡る

翼の意識はいつのまにか白く白く混濁していった




地上でのギャラクトロンたちの侵攻、電脳空間でのギルバリスとの攻防
かつてない危機が翼たちに襲来する

ギルバリスの機能修復が進んでいく中、ジードとレムは、そしてコンとアルミルは翼に語りかける

ギルバリスの「答え」を塗り替えるために
翼は今一度立ち上がることができるのか

次回ウルトラマンイカロス
「共に羽撃く翼」
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