ールァァァァァァァァ……
歌声のような咆哮と共に白亜の機械が侵攻する
その先にあるのはA.I.G.I.S.基地。特殊戦車隊が待機し、迎撃を行なっている
「第二特殊機動部隊の攻撃、効果が見られません!」
「怪獣未だ健在!侵攻を止める気配はありません!」
侵攻する怪獣ーギャラクトロンをモニター越しに石動が睨む
「参號のメンテナンスは?」
「内部機材の汚染確認が終了、問題はありません。出撃可能とのこと!」
「第二特殊機動部隊を撤退。ここからは参號がヤツを相手取る」
石動の命が伝達され退がる部隊の前に地下からのハッチが開き、巨体が迫り上がる
二つの頭部を持つ半機械半生物の巨獣がギャラクトロンと対峙する
「レブナントD、起動」
石動の命令入力と共に3体目のレブナントは双頭の目をバイザーの下から青く輝かせ口を開く
構える間もなくギャラクトロンの白亜の体を不可視の斬撃が切り裂いた
目を凝らすとギャラクトロンの体を撫でる細い「何か」はレブナントDの二つの口から覗いていることがわかる
断層スクープテイザー
かつて地球に降り立った宇宙怪獣ディノゾールが持つ『見えない舌』
そのディノゾールの因子を持つレブナントDもそれを武器としているのだ
レブナントDの攻撃を受けながらもギャラクトロンは胴体中央のコアにエネルギーを収束。絶大な威力をもつ光線ーギャラクトロンスパークとしてレブナントDに放つ
レブナントDは胸部装甲を展開。ギャラクトロンスパークを吸収し、そのエネルギーを青い光線に再収束させ撃ち返す
その光線に第二射のギャラクトロンスパークが衝突。暴発したエネルギーが2体を大きく後退させる
ーQyyyyyyyyyy……
「宇宙平和を為す裁定者かなんだかは知らないが」
コントローラーを構えた石動がモニター越しにギャラクトロンを睨む
「侵略者よ。あまり人類を舐めてもらっては困るな」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーキシャォォォォォウウゥゥ!!
暴れるレッドキングが目の前に現れる
僕はそのレッドキングに向けて光線を放ち、その命を奪った
ーフンッ!!
次に現れたのはリフレクト星人
僕の手には光の剣が握られ、その剣を砕き斬り捨てた
ーガァァオオオオオオゥゥ!!
ギマイラが咆哮を上げる
両手の間に収束させた黒銀のエネルギー球を放ち、その息の根を止める
全部、全部僕がやってきた
僕が、イカロスにやらせた
ーGyaoooouuu……‼︎
次は?
僕は前を見る
レブナントG
石動が生み出した怪獣兵器
街を破壊し始めるそれに僕は光の剣を振り下ろす
鮮血が舞う
僕が斬り捨てたのはー石動の体でー
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
翼が跳ね起きる
「翼⁉︎ どうしたのよ⁉︎」
コンの言葉で目が覚める
翼が横になっていたのはイカロスのコクピット
両手を見るがもちろん血はついていない
「はぁ……ッ、はぁ……ッ」
荒い呼吸をなんとか落ち着かせる
ーハァッ!!
ールァァァァァ……
モニターには外の様子が映し出されていた
ギャラクトロンMk-2の斧をいなしながらジードの拳や蹴りが炸裂。わずかずつながらもギャラクトロンMk-2にダメージが溜まっていく
ギャラクトロンMk-2を吹き飛ばしたジードは手を天に突き上げ、4つのレーザーの輪を生み出す
『プラズマ光輪!!』
ーハァッ!!
ジードが放つ光輪をギャラクトロンMk-2は光線で叩き落とすが、数発落とすことが叶わず胴体が斬り裂かれる
ーハァァァァァァァァァ……‼︎
光のエネルギーを背に集中し、炎の翼のように迸らせながらジードが咆哮する
『レッキングフェニックス!!』
十字に組んだ手から光線が放たれる
しばらくは持ち前の防御力で防いでいたギャラクトロンMk-2だったが、やがて耐えきれずその体にエネルギーをスパークさせ爆散した
『ギャラクトロンMk-2の沈黙を確認』
レムが告げる言葉をモニターを見ながら聞いていた翼の肩をコンが叩く
「よしっ!今のうちにイカロスを修復しないと。フェニックスネストの方も早く助けにー」
「ーイカロスの修復は、もういい」
翼が告げた言葉に場が静まり返る
「……なんて?」
「修復は、もういいんだ。イカロスはこのまま凍結させる」
翼の胸ぐらをコンが掴み上げる
「何バカ言ってんのよ…⁉︎ ギルバリスは⁉︎フェニックスネストはどうするっての⁉︎」
「リクくんに任せる。ヒカリも来てくれるかもしれない。なら僕は、イカロスは不要じゃないか」
「冗談も大概にしなさいよ…ッ‼︎」
翼がコンの手を振り払う
「ギルバリスの言う通りだ。僕たちのイカロスがこのままあれば、いつか兵器になってしまうかもしれない」
「そうなってないのは私たちが一番よくわかってるでしょうが!!あの機械野郎の方を信じるの⁉︎」
「僕たちだけにそう見えてるのは意味が無い!!」
翼の一喝にコンが口を閉じる
「僕たちにそう見えても、イカロスが兵器と思われたら、利用する人間も宇宙人ももっと現れる……そうなったら僕は、じいちゃんとイカロスの約束の証を、兵器にして傷つけてしまう…それは、それだけはー」
俯く翼を冷ややかに見下ろし、コンが踵を返す
「……あっそ。ならもう知らないわ」
翼を放ってコンはコクピットの隅に行き、壁の方を向く
あまりのことにアルミルも呆然とし、言葉を失う
コクピットに沈黙が重苦しく満たされた
『ー警告。新たなエネルギー反応を複数確認』
レムの警告が静寂を裂くが早いか、ジードの前にギャラクトロンMk-2が新たに2体出現した
ジードはイカロスの方を見つめていたが、新たに現れたギャラクトロンMk-2たちに向き直り、構えた
それを画面越しに見た翼は一瞬悲痛そうな表情を浮かべ、俯いた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーヘァッ!!
ナイトビームブレードを展開し、光刃を放つヒカリ
だがデータ体のギルバリスに届く前にそれは阻まれる
ールァァァァァァァ…
同じくデータ体のギャラクトロンMk-2が出現し、ギルバリスの前に立ち塞がったのだ
ギャラクトロンMk-2に組み付き、その巨体をどかしギルバリスに向かおうとするが、新たにギルバリスの側に生み出された2体のギャラクトロンが放つ光線がヒカリを阻む
ールァァァァァァァァァ…
更に背後からギャラクトロンMk-2の手斧が背に振り下ろされる
ダメージにのけぞるヒカリにギャラクトロンたちのビームが襲いかかる
「このままじゃヒカリが…ケリス!ハッキングは⁉︎」
「ヒカリが到達してない今じゃまだまだ無理ですよ…‼︎ あのヤロウ、ヒカリを迎撃しながらもこっちのクラッキングへの対応は変わらずかよ…」
モニター越しに電脳空間の戦況を見ていた輝が声を固唾を飲む
「このまま俺たちは見てるだけしかできないのか……」
歯痒さにデスクを殴りつける輝を見たケリスが何か思いついたようにタフブックを取り出し、別の作業を始めた
モニターの中ではヒカリがなんとか立ち上がり、3体のギャラクトロンに向けてナイトビームソードを構えていた
襲来するロボットにビームが突き刺さり、沈黙する
「これで何体だ…?」
「20体からは、数えてないです……」
トライガーショットを構える花が肩で息をしながら隣の翔真に答える
2人の背後には即席のバリケードとそこから心配そうに2人を見守る人々がいた
フェニックスネストにいる非戦闘員たちがこの食堂に避難していたのだ
「大丈夫ですか⁉︎ 2人とも‼︎」
人々の中から真田補佐官が顔を出し、2人に声をかける
「……まだ、戦えます!」
その問いに花が肩で息を整えながら答え、翔真は黙して前を見据える
再びロボットたちが食堂の入り口から現れ迫りくる
花が撃ち抜き、翔真が格闘でロボットを沈黙させながら雪崩れ込むロボットたちを倒していく
「ぐっ!?」
そんな中、翔真の背後に現れたロボットが彼を羽交い締めにする
「翔真くん!!ーッ⁉︎」
花も新たなロボットに頭を掴まれ、地面に組み伏せられる
ガァンッ!!ガァンッ!!!
が、2人を取り押さえていたロボットたちが何者かに撃ち抜かれ脱力する
「真田補佐官…⁉︎」
トライガーショットを構え、飛び出してきた真田が更に迫りくるロボットたちを何体か撃ち抜く
「私の錆びついた腕では足手まといかと思い下がっていましたが、四の五の言ってはられませんね…‼︎」
「助かります!」
真田が加わり、なんとかロボットたちを押し戻していくが、それを嘲笑うようにロボットが再補充され3人の前に並ぶ
翔真の方を冷や汗が伝った
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーグァッ!!
ギャラクトロンMk-2の挟撃にジードがよろめき、膝をつく
その様子が流れるモニターを前にしながらも翼はそこから目を背けていた
『………一つ、ある少年の話をしましょう』
レムが突然言葉を紡ぎ出す
『彼は、ヒーローに憧れていました。そしてある日偶然、彼はヒーローになりうる力を手にします。彼はその力で、何度も立ち上がり、何度も人々を救ってきました』
『ですが、人々は彼をヒーローとは見てくれなかった。彼の姿の恐ろしさにいつか敵になるのではないか、と疑心を抱いていたのです。当然、彼はそれを聞いてとてもショックを受けていました』
レムの語る物語に翼が顔を上げる
『後に少年は残酷な運命を告げられます。彼自身が、《ヒーローの模造品》のように生み出され、利用されていたことを。彼が本当は何者になるのではなく、ある巨悪の復活の為の礎に過ぎなかったことに』
モニターに映し出されたジードが2体のギャラクトロンMk-2が振り下ろす斧を受け止めるが、そのパワーに押され膝をつく
その胸のカラータイマーが点滅を始める
『ーそれでも彼は、ヒーローであろうとした』
ジードが力を込め、2体のギャラクトロンMk-2を押し退け立ち上がる
『ーギャラクシーカッティング!!』
肘から伸びた光の刃がギャラクトロンMk-2のボディを切り裂き、2体を後退させる
『何度も運命に阻まれ、運命に嘲笑われ、それでも彼は前に進み続けた。仲間の言葉に奮起し、家族に背中を押され、立ち上がることをやめなかった。そんな彼は、遂に本当のヒーローになったのです』
吹き飛ばしたギャラクトロンMk-2を睨み、ジードが構え直す
『それが、ウルトラマンジード。朝倉 リク。今も戦い続けている彼なのです』
「リクくんが……」
『日向 翼。ギルバリスが告げた通り、あなた方が使う力はオーバーテクノロジーになりうる強力なものです。それに溺れ、宇宙全体の脅威となった存在も、惑星クシアが宇宙の平和のために作り上げたギルバリスをはじめいくつも存在しています』
『ーですが、それは《ただの運命》です』
翼がレムを、ジードを見据える
『……翼さん。ギルバリスはああ言ったけど、僕は翼さんを…翼さんたちを信じます!』
ジードからの声が、リクの言葉がコクピットに届く
『ギルバリスにイカロスが脅威になると告げられた時、あなたは本当に悲しそうな顔をした。そんなあなたなら、イカロスの力を間違うことなく使ってくれる!僕は、僕たちはそう信じられる!!』
リクの言葉に続き、レムが告げる
『運命は変えられる。《
『『ジーっとしてても、ドーにもならねぇ!』』
リクとレムの声が重なる
「……僕でもできるでしょうか…?」
翼が声を絞り出す
「……ウルトラマンでもなんでもない、ただの人間の僕にも…」
「ーアンタでないとできないでしょうが」
黙っていたコンが壁を向いたまま呟く
「ウルトラマンの力を借りて、その姿を借りて、為せなかった使命を果たす約束を守るためにその第二の故郷を守るために、ただただ弱い人間なのに立ち上がった。それはアンタの爺さんとアンタにしかできなかった。しかも爺さんは、イカロスを動かすまで行かなかったんでしょう?」
「ならー今そんなバカなことができるバカは、アンタしかいないでしょうが、バカ社長」
3人からの激励を受けた翼はその拳を握りしめ、コンに向き直る
「……僕は、イカロスがただの兵器になってしまうのが怖い。僕たちが彼をウルトラマンと思っても、そうは思われないかもしれない。このテクノロジーが間違った道にいつか向かうかもしれない」
「ーそれでも僕は、僕の信じるこのイカロスを信じたい」
壁を向いていたコンが振り向き、そのままつかつかと翼に詰め寄ると握り拳を翼の鳩尾に打ち込む
「ぐふっ!?」
思わず体のくの字に折ってよろめく翼
「……バカ社長が…イカロスを信じてるのがあんただけだと思ってるの?」
よろめく翼の体を後ろからアルミルが支える
「ボクも、イカロスを信じています!社長とイカロスなら、新しい未来に繋げられる。太陽にも飛んでいけるって!!」
翼の手を掴んでコンが乱暴に引き起こす
「私らがアンタについてきたのは何故?私はアンタとアンタたちのイカロスが面白いと思ったからだけど、アルミルたちは他でも無い。バカ真っ直ぐでバカ正直で、バカみたいに眩しいアンタだからついてきたのよ」
カツッとコンがヒールを鳴らす
「これは、このイカロスは、アンタとアンタの爺さんの夢だけじゃない。私らがアンタらに見た未来の翼でもあるのよ」
ぽすっ、とコンの拳が翼の肩にぶつけられる
「絶対に蝋の翼で終わらせるもんですか。一人で太陽で焦がされるのが怖いなら、皆で太陽飛び越えてやりゃいのよ!」
コンの言葉に翼が笑って頷いた
「……その顔じゃなきゃ、張り合いが無いわねバカ社長。おかえりなさい」
「あぁ、ただいま。もう一度、前に進もう。コン、アルミル、レムさん、リクくん、もうしばらく頼む!」
翼、コン、アルミルがデバイスに向かう
リクージードもその言葉に頷いた
3人が撃ち抜いていくロボットたちの背後から続々と新たなロボットが現れくる
花がロボットを撃とうと引き金を引くが弾は出ない。トライガーショットのエネルギーが切れたのだ
「くっ!?」
翔真のトライガーショットもエネルギーが尽きる
万事休すーそう思われた
『ー頭下げてな、危ないぜ』
何者かの声が響く
『ー蛇心剣・新月斬波!!』
翔真たちがしゃがむが早いか、その頭上をロボットたちを引き裂きながら赤い斬撃が通過する
倒れていくロボットを蹴りわけながら現れたのは胸に赤く深い三日月の傷を持つ茶色い鎧のような姿をした異星人
その手には一振りの日本刀が握られていた
「あんたは…⁉︎」
『おっと、敵じゃないぜ俺は。通りすがりの宇宙人……名乗るほどのものじゃないさ』
愉快そうに答えながらその宇宙人は背後からナイフを振りかぶるロボットに肘鉄を加え破壊しながら続ける
『面白そうなモンが降ってきてるの見たから寄ってみただけだ。遊び飽きたオモチャだが、これはこれでいい暇つぶしになるなッ、と‼︎』
新たにロボットを斬り伏せながら背を向けた宇宙人は薄く笑う
『あー、あとそうだな……甘ったるいコーヒーのお礼、ってヤツかな』
そう告げた宇宙人ージャグラス・ジャグラーは迫りくるロボットたちを次々と沈黙させていった
電脳空間でギャラクトロンMk-2と対峙するヒカリ
ギルバリスへと向かおうとしてもギャラクトロンたちがそれを阻み、向かうことが叶わない
『なんとかギャラクトロンたちを撃破しなければ…‼︎』
ヒカリの言葉に焦りが見える
ギルバリスの側からギャラクトロン2体が進軍をはじめー
『頼んだよファイヤーウインダム!』
『任せたぞ!アギラ!!』
その2体を火球と巨体によるタックルが吹き飛ばす
ヒカリの前に現れたのはファイヤーウインダムとアギラーNEXT GUYSの頼もしい『仲間』であるマケット怪獣たちだ
『ヒカリ!ファイヤーウインダムにギルバリスをハッキングするプログラムを持たせてます。私たちも援護しながら直接ハッキングを行います!』
『ギャラクトロンは任せてください!ヒカリは強化ギャラクトロンを!』
電脳空間に響いてくるケリスと輝の声にヒカリが頷く
ーガァァァァァァ!!
アギラのタックルがギャラクトロンを捉え、その体を大きく吹き飛ばす
吹き飛ばされたギャラクトロンが反撃とばかりにビームを放つが、予想外に軽快なローリング回避でそれを回避。力を溜めた跳躍からのボディプレスがギャラクトロンを岩山に叩きつけ、爆発させる
ーゴァァァァァァァァ!!
ファイヤーウインダムの正確な射撃とそれに劣らないギャラクトロンのビーム攻撃が相殺し合い、電脳空間を火花が照らし出す
その光に照らされた中を塗った火球がギャラクトロン胸部のコアを撃ち抜く
ひび割れたコアに更に正確に火球が何度も突き刺さり、火球のひび割れが広がってついにその体を貫通する
ガンマンのようにバーナーを構えたファイヤーウインダムだけがそこに立っていた
ーヘアッ!!
斧を手に迫り来るギャラクトロンMk-2
その斧を受け止め、振り下ろす力を利用して腕を捻り上げながら斧を叩き落とす
返す刀でナイトビームソードを展開し、ギャラクトロンMk-2のボディを十字に切り裂き、その体を爆散させる
ファイヤーウインダムとアギラがギルバリスへと向かうが、その眼前に新たなギャラクトロンが召喚されはじめる
ーフンッ!!
背後から2体に追いついたヒカリの一閃がギャラクトロンたちを撃破し、道をこじ開ける
『今だ、行け!!』
『ファイヤーウインダム!!』
ーゴァァァァァァァァ!!
ケリスの声に応えてファイヤーウインダムがギルバリスに近づき、その手を触れさせようと伸ばす
ザシュッ…‼︎
が、その手はあと一歩で届かなかった
ーゴァァ……ア……
ファイヤーウインダムの胸を貫いていたのは構成を完了していたギルバリスの爪だった
まさかの反撃に輝たちの顔が驚愕に染まった
レムの構成し直してくれたプログラムの雛形からの復元はほぼ終了し、翼は最後に残された課題に直面していた
コンやアルミル、時にはレムのアドバイスを受けながら翼はその課題となるプログラムを構成し最適化させていく
翼は首から下げたネックレスを握り、祖父との過去を思い出していた
「翼。ウルトラマンは好きかい?」
「大好き!カッコよくて、みんなを守ってくれるもん!」
「ああ、そうだな。だが、彼らも一人じゃ戦えないんだ」
「彼らも悩む。彼らも倒れてしまうこともある。時には、挫けそうになることもあるんだ」
「だから、もし翼が将来そんな彼らの側に立つ時が来たなら」
「ー共に羽撃く翼になってやって欲しい」
「一緒に、はばたく?」
「ああ。そうだ」
「ウルトラマンも、それ以外の宇宙人たちとも、きっと我々は手を取り合える。助けてもらうだけじゃなく、ただのひとりの友人にもなる日はきっと来る」
「私は、一人と手を繋ぐのがやっとでその友との約束も結局守れなかった。私では、遅すぎたのかもしれない」
「優しくて強い、お前なら、きっとできる。いや、これは翼だからこそできるのかもしれないな」
祖父の笑顔と頭を撫でられた時の温もりが蘇る
(そうだ。爺ちゃんに並ぶ必要も、超える必要もなかったんだ)
(爺ちゃんにしかできなかったように、僕にしかできないことがある。それを積み重ねて僕はここにいるんだ)
(みんなの手を借りて、みんなの手を取って。共に羽撃いてきたここに)
翼は決意を新たにイカロスの新たなプログラムを構成していく
だが、完成を目前にしてイカロスを守るジードにも限界が近づいていた
ーグァァッ…‼︎
ギャラクトロンMk-2たちを押さえ込むジードだが、遂に力負けし、一体がイカロスの方に向かってしまった
『ー待て!!』
追おうとするジードをもう一体が斧で背中から斬りかかり、羽交い締めにするようにして押さえ込む
なんとか脱出しようとするが、不足しつつあるエネルギーのせいか思うようにジードの体が動かず抜け出せない
イカロスめがけてギャラクトロンMk-2の斧が振り下ろされー
ーシェアッ!!
ーたと思ったその瞬間、吹き飛ばされたのはギャラクトロンMk-2の体
ギャラクトロンMk-2の影から銀色の体躯が立ち上がる
「ーイカロス、テイク・オフ!!」
ーシャアァァッ!!
コクピットで構えを取る翼に同調し、イカロスも同じファイティングポーズを取った
ここに銀の翼が再び立ち上がったのだ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
NEXT GUYS内電脳空間
胸部を貫かれたファイヤーウインダムがよろめき、緑の粒子になって霧散する
『ーくっ、失敗か…‼︎』
ヒカリがうめく
が、対照的にモニターを見ていたケリスと輝はニヤリと悪戯っぽく笑った
『残念でした〜正解はこちら!!』
ケリスの冗談めかした声に合わせてファイヤーウインダムの消えた影をかき分け、突進してきた巨体がギルバリスのデータ体に突き刺さる
ーガァァァァ!!
アギラだ
アギラの角がギルバリスに突き刺さり、その体にデータを流し込む
ーファァァァオオオォォォンンンンンン……‼︎
流し込まれたデータによりハッキングされていくギルバリスが苦悶の声を上げる
『今あんたに流し込んだのは強制命令。この場であんたを直接跡形もなくデリートするデータを組み上げるのは不可能だった。だからー』
ケリスの言葉とともに紫のスパークを起こしてショートしながらデータ体を分解、電脳世界から離脱していく
「ー任せたよ、翼さん。今のあなたなら、大丈夫だって信じてる」
「俺たちの分まで、頼みます!」
復旧していく基地の機能
点灯したモニターにギャラクトロンMk-2たちを相手取るイカロスとジードが映る
アギラの離脱を確認したヒカリも端末から青い球体として離脱してくる
『助かった。NEXT GUYSの諸君』
ヒカリの言葉に輝とケリス、そして作戦を見守っていた剛が敬礼する
それを受けたヒカリは球体のまま基地の外へと移動していった
「隊長、翔真と花ちゃんの無事を確認してきます!」
「私も向かいます!」
「ああ、頼む」
剛は2人を見送ると、司令室に備えられたドックへのドアを開きドックへと向かった
ギャラクトロンMk-2たちが吹き飛ばされ、衝突させられよろめく
『ギャラクシーフェニックス!!』
「レゾナンスバースト!!」
ジードの光線とイカロスの光球がギャラクトロンMk-2を吹き飛ばす
「よしっ!!」
イカロスから降りて戦いを見守っていたコンとアルミルがガッツポーズを見せる
が、それと裏腹にアルミルの抱えたデバイスから不穏な警告が響く
『警告:絶大なエネルギー反応を確認。反応照合…ギルバリスと確認』
『気を抜くな!イカロス!ジード!!』
イカロスとジードの間にヒカリが降りてくる
『ヒカリ!』
『ギルバリスがマテリアライズする。来るぞ!!』
ヒカリの警告と共に3人のウルトラマンの前に黒鉄の巨体が構築されていく
電脳空間にいたのと同じ翼のように砲塔を備えた要塞のような機獣
しかしその体はそこかしこが欠落したようになっており、復元が不完全であることがわかる
《機体復元割合、全快時の75%。機能回復70%》
欠落し隻眼となった眼を赤く光らせ、ギルバリスがイカロスを見据える
《愚かな選択を繰り返すか、地球人類。お前たちが作り出した兵器はまた新たな争いを生む。心情、正義、そんな不確かなものは争いを止める抑止足り得ない》
「違う!争いを止めるのも、心ある僕たちができることだ!」
《また新たな誤ちを生むに過ぎない。生命体は常に間違いを繰り返す愚かな存在であることは膨大なデータが証明している》
「だとしても、僕たちは一人じゃない。間違えたなら止めてくれる誰かも、共に正しさを探してくれる誰かもここにいる。間違い続けようとも僕たちは前に進んでいけるんだ!」
ギルバリスの砲塔が駆動を始め、3人のウルトラマンに向けられる
《これ以上の問答は無意味と判断。リセットを再開する》
砲塔から雨のような砲撃が放たれる
イカロス、ジード、ヒカリは砲撃をいなしていくが弾幕の厚さにギルバリスに近づくことが叶わない
「くっ、これじゃあー」
その時、イカロスの側を何かが高速で駆け抜けていった
コクピットのモニターに映るそれを見て翼は驚愕する
ジェットビートル
科学特捜隊が運用していた何世代も前の旧型戦闘機が弾幕の雨を掻い潜り、ギルバリスに向かっていた
「古いものには古いものだからこそできることがある。こいつみたいに、コンピューターがスタンドアローンだからこそ飛べたりとかな」
操縦席に座る剛がニヤリと笑みを見せる
近づくジェットビートルに狙いを定め、ギルバリスが砲撃のターゲットを絞るがジェットビートルには当たらない。最新鋭のメテオール機にも劣らない機動でまるで踊るように舞うジェットビートルはギルバリスを翻弄しながらバルカン砲を撃ち込んでいく
「…前総監には悪いが、私はやはりこの操縦桿の方が手になじむ!」
剛はコクピットに備えつけたメモリーディスプレイの通信をどこかに繋げる
『行け!ウルトラマンイカロス!!』
「う、海野隊長!?」
コクピットに響く声に翼が驚く
『私から今言えることは一つだ。キミは、確かにウルトラマンだ!借り物だろうが、ハリボテだろうが…その翼は確かに羽撃いている!』
『だから遠慮なく飛べ!落ちそうになったら私たちが支えてやる!キミは、一人ではないだろう!!』
剛の激励を受け取り、翼は確かに頷いた
ーシェアァァッ!!
ジェットビートルに引きつけられ薄らいだ弾幕をイカロスが突き進む
その接近に気づいたギルバリスはその目を輝かせる。ハッキングを仕掛けようとしているのだ
ーデヤァッ!!
だが、イカロスの突撃は止まらず、重い拳がその頭部に突き刺さり巨体が傾いた
「ハッキングはもう効かない。レムさんからヒントをもらってプロテクトは更新済みだ!!」
ーシェアァァッ!!
ーファァァァァァァォォォォォォン!!
接近を許したギルバリスはアームによる反撃を試みるが、イカロスはそれをいなしていく。翼自身の鍛錬にヒカリの手本を混ぜたその体捌きにギルバリスは追いつけていない
ーハァッ!!
正拳突きの一撃でギルバリスがよろめく
返す刀で右手を引き絞り、その前腕のエネルギー機構を解放、拳にエネルギーの光を纏わせた一撃がギルバリスの胸に叩きつけられ、大きく巨体が吹き飛ばされながら倒れる
『ジード!』
『はい!!』
イカロスに並び立ったヒカリが右手を天に突き上げ、ジードが構えを新たにする
「ウルティメイトファイナル!!」
ジードの中、インナースペースに立つリクがその手にカプセルを取り出し起動する
それに合わせてリクの前に紅いロッドーギガファイナライザーが出現。その柄にカプセルを入れ、ジードライザーで読み込みロッドの起動ボタンを押し込む
《アルティメット・エボリューション!》
「繋ぐぜ、願い!!」
リクが先端部のボタンをスライドし展開させる
「ジード!!」
リクの姿が、ジードの姿が光に包まれて変わっていく
赤と銀と黒のボディに黄色のラインが輝く光の巨人
ジードの究極の姿が現れていく
《ウルトラマンジード!》
《ウルティメイトファイナル!!》
ヒカリが突き上げた腕の先
柔らかで、どこか暖かい光を放つ結晶がヒカリの体を伝いながら降りていく
ヒカリの体に定着した結晶は鎧となって輝きを放つ
かつてはハンターナイトツルギとして纏っていた復讐の鎧
今は、彼の決意を形にしたアーブの願いを繋いだ勇者の鎧
鎧を纏ったヒカリは鋭い眼光をギルバリスに向けた
ジードがギガファイナライザーを構え直し、ヒカリがナイトブレスに触れ、それぞれの技を放つ
ーハァッ!!
『ギガスラスト!!』
ヒカリが放つ光の斬撃にジードがファイナライザーから放った極太の光線が重なり、ギルバリスの胸部を穿つ
胸部装甲が大きく爆発し、装甲の下のコアが見えた
『イカロス、共に力を!』
「はい!!」
ジードーリクの言葉に翼が頷く
ジードはファイナライザーを地面に突き立て、ヒカリは右手のナイトブレスを掲げエネルギーを収束
イカロスも両拳をぶつけ、両腕前腕のエネルギー機構を解放してエネルギーを昂らせていく
「アポロニウム・ブラスト!!」
『レッキングノバ!!』
ーヘアッ!!
3人の光線が正確にギルバリスのコアを貫く
ギルバリスの巨体があちこちから火花をあげショート。明滅を繰り返していた目が忌々しげにウルトラマンたちを捉えるが、そのまま沈黙し崩れ去る
「よっしゃぁぁぁ!!よくやったバカ社長!!」
「やったぁぁぁぁ!!やりました!!」
コンとアルミルが飛び上がって喜ぶ
「……やった…」
コクピットに立つ翼も安堵の息をつく
コンソールにスロットされたネックレスが静かに輝いていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
見えない舌の連撃にボディを削られたギャラクトロンが膝をつく
「強化焦熱熱線、発射」
ーQyyyyyyyyyyyyyy!!!
レヴナントDの胸部装甲が展開、渦巻く灼熱のエネルギーが熱線となって放たれる
ギャラクトロンはその熱線に上半身を焼かれ、爆散
残った下半身が力なく崩れ落ちる
「作戦、終了」
静かに石動がコントローラーをスリープさせる
それを受けたレヴナントDはうずくまるようにして鎮静化した
「どうだ?
「バイタル正常、拒絶反応も確認されません。あれほどの戦闘でこれならば、成功としても良いかと」
「その判断はまだ早かろう。だが、一つ前進はできたわけだ」
地下へと格納されていくレヴナントDを見据えながら石動は表情を崩さず眼光を鋭くする
「ギマイラの検体から培養した因子により怪獣因子の統制が可能になった今、ようやくアレの開発が進む。計画の完成は近い」
「やった…‼︎やりました!!」
「よしッ!!」
復旧していたモニターからイカロスたちがギルバリスを打倒した瞬間を見た花と輝が歓声をあげ、翔真と真田が頷く
同じく見守っていたスタッフたちも歓声をあげて喜ぶ中、ケリスはひとり食堂の入り口の物陰に近づき背中越しに声をかける
「意外と義理堅いのね。通りすがりさん」
その言葉に陰からハッ、と鼻で笑う声が返ってくる
「借りを残したまま帰るのは後味が悪かったからな。それだけだ」
そう告げた瞬間、気配が消える
やれやれと肩をすくめたケリスはふらふらと近くの椅子に腰掛けると一つ大きなあくびをこぼす
「……流石にちと、オーバーワークしすぎたかも」
とケリスはそのまま椅子に背を預け呑気に居眠りを始めた
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翼とリク。2人は硬い握手を交わす
「リクくん、レムさん。ありがとうございました。おかげで僕は前に進めたのかもしれません」
リクが首を振る
「翼さんは、多分もう前に進めてましたよ。僕たちがしたのは、翼さんが自分と向き合うために背中を押しただけです」
快活に笑いながら深々と頭を下げる
「こちらこそ、ギルバリスの撃破に手を貸していただいてありがとうございました」
翼が照れ臭そうに頬をかきながら会釈する
と、リクの頭上に細長い宇宙船が降りてくる。恐らくこれがリクと仲間の乗る星雲荘なのだろう
「では、僕たちはこれで」
「はい。またいつか会える日があれば、またお話し聞かせてください」
翼の言葉に微笑み、手を振るリクが星雲荘へとテレポートされる
リクたちを乗せた星雲荘が見えなくなるまで翼は手を振って見送った
「ふーん、私たちがいなくても大丈夫だったわけね社長さんは」
後ろで見守っていたコンがアルミルを連れて皮肉混じりに翼を睨む
「まさか。コンもアルミルも、みんなもいてくれたおかげだよ」
「ハッ、当たり前でしょうが。アンタ一人じゃまだまだ見てられないもの」
コンの悪戯っぽい笑いに釣られて翼とアルミルもいつの間にか笑っていた
それを更に遠く。着陸したジェットビートルのコクピット縁に腰掛けて見守っていたのは剛
彼の脳裏には、かつて世話になった恩師に呼び出された日の情景が浮かんでいた
「これは…‼︎」
剛が見下ろす先、広大な格納庫で組み上げられていたのは機械の体を持つ巨人
「ウルトラマンイカロス。と言っても、彼を模しただけだがね」
隣に現れた初老の男性が誇らしげに、だがどこか寂しげに告げる
「総監がこれを…?何故……」
「何、つまらない理由だよ。だが同時に私には大きなかけがえのない理由でもある」
男性が取り出したのはネックレス
装飾としてつけられていたのは深い青色の宝石だった
懐かしそうながらも辛そうに彼はその石を眺めていた
「私は彼と約束をしたんだ。彼が果たせなかった使命を、このまま無くさないと。キミの遺した力で私が代わりに為すと」
男性はネックレスをしまう
「……残念ながら、私には果たせそうにはないがな」
剛は男性の顔を不思議そうに見つめていた
「剛くん。キミに頼みがある」
「何でしょうか、先生?」
男性が剛の方を向き、優しく微笑む
「一つは、このことを誰にも言わないでくれという頼みだ。ここは、NEXT GUYSにも極秘の事項にしている。イカロスは、私の約束は、私たちの中で果たしたいんだ」
剛はその言葉に頷いた
「もう一つは、NEXT GUYSを志望しているキミだから頼めることだ」
「A.I.G.I.S.や他の配属になるかもしれないし、どこにも入らないかもしれないが、少しでいい。私の孫を見守ってやって欲しいんだ」
悪戯っぽく男性が笑う
「この約束、孫はきっと私が頼まずとも引き継いでくれる。そんな優しい子だ。でも、前途は多難。つまずくことも悩むこともあるだろう。そんなどうしようもなくなった時にだけでいい。私と今、この秘密を共有したキミが、孫の背中を押してやって欲しい」
男性の言葉を受け取り、剛が頬をかく
「なんともまぁ、責任重大ですね。ハメましたね先生」
「人聞きの悪い。私の生徒の中でもキミだからこそと頼んでるのだよ」
ハハハッと豪快に男性が笑う
それに釣られて剛も思わず頬が緩む
「少しくらいしか手助けなんて出来ないかもしれませんが、わかりました。引き受けますよ。日向
照れ臭そうに男性ー昴が手を振る
「よしてくれよ。先生でいい。私のような偏屈者にはそれくらいが丁度いいんだ」
懐から取り出した昴と写った写真を見て懐かしそうに剛が笑う
「先生…いや、前総監。あなたのお孫さんは立派に、それでいて優しく育っていますよ。立派すぎてやっと今日背中を押してやれました」
満面の笑みで写る昴に釣られたようにカッカッと笑うと剛は翼たちの方に向かっていった
ウルトラゾーンの閉鎖及びヤプール封印用のメテオール作成のために翼はある研究部門の扉を叩く
同時に地球に迫る小彗星爆破のためにNEXT GUYSは作戦を進めていた
一方A.I.G.I.S.内部では八坂の不穏な計画が動き始める
ヤプールの不敵な笑みをファンファーレに新たな超獣が現れる
小彗星爆破を阻止せんとするその狙いとは
次回 ウルトラマンイカロス
『小彗星爆破作戦』