車を運転しながら翼は難しい表情をしていた
その理由は数日前、ギルバリスの撃破後に遡る
「脅威の可能性、ですか?」
翼の言葉にセリザワの姿を借りたヒカリが頷く
「ジードからの言伝でもあるが、ギルバリスの撃破と同時にヤツから微弱ながら探知されていたデビルスプリンターの反応が消えていたらしい。レムは撃破の衝撃で霧散したと推測しているらしいが…」
「何ものかが干渉した可能性もある、と……」
「ああ、そういうことだ。こと今の地球には何が起こるか俺でもわからない部分が多い。ウルトラゾーンによる影響が強い現状では」
「俺は引き続き、宇宙から地球を守らせてもらう。イカロスに深手を負わせた存在も探さねばならないからな」
ヒカリが翼に小さなカプセル状のアイテムを手渡す
「これは…?」
「緊急時用の簡易ウルトラサインを作り出す装置だ。このスイッチで起動すれば、ウルトラサインとして打ち上がる。光の国までは届かないが、同じ太陽系にいる私の元には届くようになっている。デビルスプリンターもまだ油断ならない今はキミ一人では難しい局面にもぶつかるかもしれないからな」
ヒカリが翼に背を向ける
「この星を頼む。俺も、俺だからこそできることを為す」
ヒカリから受け取ったカプセルを胸ポケット越しに触る
助手席にいたコンが腕を組みながら口を開く
「……デビルスプリンターねぇ…この星にまだ残ってる可能性があるなら、面倒なことにならなきゃいいけど」
「怪獣の凶暴化とかが起こったら確かに厄介だ…」
「それ以上のこともね」
コンが意味ありげな言葉を告げる
「それ以上の…?」
「アンタみたいないいバカばっかりじゃないでしょ。人間も、宇宙人も…私だって…母さんとこで色々見たし……」
何やら辛そうな顔でコンがひとりごちる
「宇宙人だろうと、人間だろうと、一皮剥けば怪獣よりも怪物だったり醜いヤツはいるものよ。アンタはまぁそんな賢しさは無さそうだけど」
悪戯っぽく皮肉を告げるコンの言葉が車内に響いた
『
能面をつけた黒ローブがデスクで作業を続ける英輔に問う
「あぁ、ああ、素晴らしい。素晴らしいとも!コレこそ私が求めていたものだ…‼︎」
興奮気味に英輔が操作するパソコンのディスプレイには何かの分析結果が羅列されている
デバイスの側にはその分析中のものが収められたケースがコードに繋げられていた
オレンジ色に輝く三日月型のような形状の鉱石状物体
ケースの中のそれは小さいながらもどこか怪しい魅力のようなものを纏い輝いていた
『それならば重畳だ。破壊されゆくあの機械生命体から回収した甲斐があったというものだ』
「高エネルギーに未知のデータ……コレは何者かの記憶か?それに加えて未知の融合因子まで含むとは正に夢の物質だ。そして何よりも…‼︎」
英輔が立ち上がり、ケースを掴み
舐め回すように、愛し子を愛でるようにその視線が物体をなぞる
「こいつには何故かマテリアルU、ウルトラマンの組織サンプルが微量ながら含まれている…‼︎ 別の種族らしい遺伝子も混ざっているが、サンプルとしては申し分ない代物だ…‼︎」
「紫の結晶体の解析データももうじき完成するが、こんなものを得てしまったのだ。計画のフェーズも前倒しで行える‼︎」
英輔は嬌声を上げながら黒ローブなど眼中に無いように部屋の中を移動する
操作を始めたのは研究室の半分ほどを埋める謎の機械群
超獣製造機
ヤプールが英輔に贈った悪魔の機械。そこにも複数のコードが接続されている
『超獣製造機で何をするのだ?』
「この機械は生物と生物の融合しか行えなかった。だが、件のマテリアルU含有体に含まれた因子をデータ化して取り込めば、生物と機械の融合も可能となるはずだ」
英輔が不気味な笑みを浮かべ作業に没入する
「見ているがいい、愚かな連中め……僕こそが神の力を手にする…‼︎」
黒ローブは能面をかすかに揺らし、笑ったかのように見えた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翼が車を走らせた先はある私立大学だった
その名は
前回の怪獣頻出期から数年後に完成した宇宙人に関連した技術や惑星間交流に関する専科を持つ数少ない大学だ
その廊下を歩く翼とコンに学生たちの好奇心旺盛な視線が突き刺さる
「………居心地悪いとこね。見せ物じゃないんだけど…」
「まぁ僕たちはここの学生から見たら部外者だからね。普段見ない顔がいたら少しは気になるだろうし…」
通りすがる学生や教員らしい人物の中には何名か友好宇宙種族の姿も見られた
NEXT GUYSの基地があるこの周辺ならば、ありふれた景色になりつつある光景だった
やがて2人はある扉の前にたどり着く
《異次元研究科》
錆がいくつか見られるプレートに書かれた部屋の名前を確認し、翼が頷く
「……ここ?」
「ここだね。まさかこんな小さな研究室とは思わなかったけど…」
疑念が抜けない顔を向けてくるコンに翼が苦笑を返す
「ー私自身があまり広い部屋を好まないんだよ。拍子抜けさせてしまったかな?」
部屋の中から少し歳を経た男性の声が響き、思わず翼とコンが背筋を正す
「
しばらく呆然としていた2人だが招かれるままにその部屋の扉を開いた
部屋の中は雑然としている…というか混沌としていた
床はもちろん壁にもよくわからないコードが張り巡らされ、モニターや機器に接続されている
並べられた機械たちは整然と機械音を響かせながらチカチカと瞬いたり、パンチカードを吐き出したりしているものもある
「散らかっててすまん。普段はゼミ生と私以外は入らない穴蔵だからね。どうにも整理を忘れてしまう」
部屋の奥から現れ、吐き出されたパンチカードやシートを取り出して近くの机にまとめながら男が言った
痩身中背で黒髪を短く切った白衣の男。度の強い大きな丸眼鏡をかけているが、それでもまだ見えにくいのか目つきはどこか鋭い
「えっと……貴方が異次元学専攻の
「先生はよしてくれ。帷で構わないよ」
薄く笑って男ー帷が頭をかく
黄泉坂 帷
藤沢大学に5年前に新設された異次元研究科の教授を務めている若き天才。アメリカで工学知識を学び、異次元世界の観測法を研究し続け遂には一度だけ異次元と現実を繋ぐ穴を極小ながらも再現した
そして彼は同時に、翼の祖父ー昴の知己の1人でもあった
「で、確か私に異次元学といくつかの工学知識を貸してほしいという話だったね」
温厚そうな帷の瞳が鋭く尖る
「それはキミにーウルトラマンイカロスに必要なことなのかい?」
帷の言葉に翼が息を呑む
「異次元学やらを採用してイカロスや兵装を改良すれば確かにヤプールやら超獣にも有効打ができる。ウルトラゾーンも塞げるだろう。だが……その結果イカロスは果たしてウルトラマンであれるのかい?」
帷の言葉。その意味を翼は理解した
その上で毅然と答える
「僕がそうあるように守ります。彼を、彼の力も、逸脱なんかさせません」
その眼に迷いはなかった
それを聞いた帷は心底愉快そうに笑う
「ハハハッ、上出来だ!流石は昴が頼み込むできた孫だけはあるらしい。もう答えは見つけたんだな」
「ついこの前ですがね。その後に海野隊長から貴方のことを聞きました。今のキミなら力になってくれるだろうって」
「海野……ああ剛のことか。あいつが今NEXT GUYSの隊長だったねそういえば。懐かしいな…あいつと昴、それに大智も交えて色々作ったり試したりしたよ」
懐かしい思い出を思い返しながら帷は近くのテーブルを片付け、二人に促す
「かけたまえ。私の知識やらが必要なら長丁場になるだろう」
促されるままに二人が腰掛けたところで部屋の扉が開く
入ってきた人物を見た翼が驚いたように目を見開く
「…
「え、あ…貴方は…」
入ってきた人物も驚いた表情を見せる
前に見た時とは違う、動きやすいワンピースに短パン姿の女性
丸く見開いた金の瞳を翼はよく覚えていた
「なんだ、知り合いか?」
帷が意外そうな表情を向ける
「えっと、以前本屋で少し」
「はい。短い間でしたが買い物に付き合っていただきまして」
蛭子が懐かしそうに胸に手を当てながら答える
それをコンはどこか面白く無さそうに聞いていた
「今日は先生に用事なのですか?」
「ええ。僕の会社で開発しているものの助言をいただきに来ました。帷先生は異次元研究とメテオール技術双方の権威ですから」
「まぁそういうことだ。ああ、蛭子くんはそのままいつも通り研究に励んでくれて構わない。こちらも邪魔にはならないようにする」
と言いながら帷が翼に耳打ちする
「安心したまえ。秘密にすべきことはぼかして話す。そもそも私の研究は誰が聞いてるかわからないからね」
それを聞いて頷く翼
改めて蛭子に向き直り、尋ねる
「研究……蛭子さんは異次元学で何についての研究をしてるのですか?」
「異次元観測の研究を行っています。過去に数度見られた異次元からの侵略に対応、もし可能ならば交渉も行えるように、こちらからコンタクトが行えないかという研究です」
蛭子は笑顔でそう答える
「私のお父様…科学者なのですが、同じ研究をしているのです。いつか私も、お父様の力になりたいと思いながら、この分野の勉強を続けているのです」
「そうなんですね。とてもいい夢だと思います。応援しますよ」
翼の言葉に蛭子は笑って嬉しそうに頷く
(お父さんと一緒に研究するため、か……少し羨ましい)
翼の脳裏には彼の祖父ー昴の顔がよぎる
父の背を追う彼女にどこか親近感を感じていたのは事実だった
「では授業をはじめよう。まずは異次元学の基礎からー」
蛭子が研究の準備に向かうのを見て帷の「授業」が始まる
翼は真剣な表情で聞き入っていたが、コンはどこかつまらなそうだった
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
NEXT GUYS臨時作戦本部
野外訓練施設から改良した臨時本部にてNEXT GUYSとA.I.G.I.S.の合同部隊は作戦の準備を進めていた
改良型対空エネルギー砲シルバーシャークG7が3門上空を向き、A.I.G.I.S.特殊装甲車も数台がスタンバイしている
「作戦準備完了しました」
「シルバーシャークG7その他作戦機器に異常無し」
『こちらガンブレイバー。機体チェック完了。問題ありません』
本部としているテントで報告を受け剛が頷く
その隣のテントに並ぶ
「ウルトラゾーンの脅威が今になって拡大してくるとは…早急な対策はより急務ということか」
手にしたタブレットに映る監視衛星の中継映像を見やる
そこに映る中型彗星はじわじわと地球に近づいてきていた
話は前日に遡る
「ウルトラゾーンから彗星が⁉︎」
アラートの鳴り響く指令室に剛が急行してくる
「はい、先程監視衛星から緊急の連絡が入りました!」
花がコンソールを操作して監視衛星からの映像を映し出す
そこに映るのは更に大きな口を開いた宇宙の裂け目
そこから今まさに飛び出した彗星の姿だった
「データベースに類似形の彗星確認……オオシマ彗星…ってこれ70年前に地球に飛来したものと同じ⁉︎」
ケリスの言葉に驚きながら画面を見た剛
所々に紫の結晶が生えたその彗星は着実に前進を続けていた
「怪獣・異星人の概念だけでなくそれと関連したモノの概念まであそこには眠っているとでも言うのか…⁉︎」
「このままの経路と速度だと明日の午後3時前後には地球、日本に衝突します!」
「ー対宇宙災害最大警戒!!オオシマ彗星の爆破作戦を準備する!!A.I.G.I.S.にも連絡し、早急にあの彗星に対処する!!」
『G.I.G.!!』
そして現在に至る
『
通信越しに聞こえてきた石動の声に剛が頷き返事をする
「まず、シルバーシャークG7によりオオシマ彗星本体を大気圏外で破壊、その後飛来が予測される破片を我々とA.I.G.I.S.の総力を以って排除し、地上への被害を食い止める」
剛のそばでケリスがウインダムのカプセルを握り、待機している
『了解した。いささか過剰戦力とも思える配備だが、その理由はあるのか?』
「あの彗星は推測が正しければウルトラゾーン、怪獣墓場で漂う概念から蘇生されたもの。以前確認したリフレクト星人などと同じものです」
剛が彗星が迫りつつあるであろう空を睨む
「何が起こるか、最大限の警戒は必要ですよ」
剛の懸念が的中したのか、アラートがテント内に響く
「オオシマ彗星より2つの飛来体!生体反応があります!!」
「分析急げ!!」
観測班のコンソールに剛が駆け寄る
コンソールに映し出された監視衛星の中継映像を高速で移動する何かが横切る
「生体反応分析、ドキュメント:SSSPとGUYSに同種族確認!」
「彗星怪獣ドラコに宇宙有翼怪獣アリゲラ…また厄介な怪獣が…」
オオシマ彗星から飛来した2体を更に分析したケリスから報告が届く
「両怪獣に紫の結晶体を確認!ウルトラゾーンからの飛来と考えられます」
「オオシマ彗星にくっついて復活したのか…ともかく、作戦進行の邪魔はさせるわけにはいかない!NEXT GUYS、サリーゴー!」
『G.I.G.!!』
ーギュィイイァァァァァァァァ!!!!
肩口に紫の結晶体が生えた赤い翼の怪獣が宇宙空間から高速で飛来。翼を前方に突き出した突入体勢から飛行体勢に入れ替え、その目の無い頭部を露にする
大気の抵抗すらものともせずに凄まじいスピードで加速したアリゲラは目についた地上の構造ーシルバーシャークG7へ向けてその進路を取る
「やらせるか!!」
そこに追い縋る戦闘機からレーザーが放たれ、命中。アリゲラがよろめく
アリゲラに追いついたガンブレイバーは的確にビームを放つが、アリゲラも高速機動でそれに応じる
決定打こそないが、アリゲラの注意はブレイバーに釘付けになる
それと交差するように飛来した黒い巨体が着陸する
ーグァァァァァァ!!!
翼の根元に結晶体を持つ彗星怪獣ドラコが咆哮を上げる
「対怪獣徹甲弾装填、撃ち方はじめ!」
待機していたA.I.G.I.S.の戦車隊からの砲撃でドラコがよろめく
閉じていた翼を広げ、空からの攻撃に移ろうとするドラコだがー
「そうは問屋が降ろさないってね!!」
背後からの一撃がドラコの背で大きな爆発を起こし、その片翼をへし折る。華鈴率いる遊撃隊の特殊弾頭が直撃したのだ
ーグァァァァァァァァァァ!?!?
ドラコが苦悶の声を漏らし、よろめく
「花ちゃん!」
『任せてください!!』
よろめいたドラコの背に更にガンバスターからのレーザーが命中、もう片方の翼も破壊され、脱力する
「オオシマ彗星、作戦圏内に入りました!」
「メテオール弾頭の装填を開始!!このうちにこちらもケリをつけろ、翔真、花!メテオール解禁!!」
剛の指示を聞いた翔真と花がブレイバーとバスターをマニューバモードに変形、アリゲラにブレイバーが肉薄し、その翼をシネラマトマホークで爆撃し、推進器官を破壊する
ーギュィイイァァァァァァ!?!?
バランスを崩したアリゲラが地面に墜落、ブレイバーがそこに追い縋る
負けじと尾の先にエネルギーを溜め、反撃のエネルギー弾を放つ
だがブレイバーの主砲のチャージは完了していた
「ブレイジングデトネイター、発射!!」
ブレイバーから放たれた重粒子砲がエネルギー弾を貫通、アリゲラに突き刺さる
ーギュィイイァァァァァァ………
アリゲラの体からエネルギーがスパークし、その体が爆散した
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ドラコ、アリゲラ襲来の数分前
藤沢超常科学大学
「異次元学…やはり僕の専攻とは違いすぎて中々難しい学問だ…」
コンを連れて廊下を歩く翼が頭を抱える
帷の詰め込み教育は中々ハードだったようだ
「難しい難しくないも私にはさっぱりだったわ…あんたがよく広げてる設計図の方がよくわかる」
「それだけ異次元学は今でも難しい学問ということだろうね。でも、そこで諦めるわけにはいかない…新しい封印メテオールを完成させるためにも…」
翼の決意が見れる表情をどこか満足げにコンは見やる
「あの、翼さん!」
が、その表情がすぐに少し険しくなる
2人の後方から息を弾ませて追いついてきた蛭子が翼たちを呼び止めた
「蛭子さん?」
「呼び止めてしまってごめんなさい……これを渡しておきたくて」
蛭子が翼に小さなメモ用紙を渡す
「これは?」
「私の連絡先です。先生、携帯は持ってるんですが研究に没頭していると出てくれない時がありますから念のために」
と少し恥ずかしそうに口元を隠しながら続ける
「……それと、翼さんと個人的にお話がしたかったのです。私の研究についてアドバイスとかもらいたくて…」
「ああ、なるほど。構いませんよ。仕事が空いている時くらいしか時間は取れませんが…」
「あ、ありがとうございます!」
なんの気無しに返事する翼に蛭子が嬉しそうに頭を下げる
コンはどこか不満げにそれを眺めていた
眺めているしかできなかった
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーグァァァァァァァァァァァァ!!!
ーゴァァァァァァァァァァァァ!!!
ドラコとアギラの巨体が衝突する
しばし拮抗していた2者だが、アギラが勝りドラコをよりきるように投げ飛ばす
よろめくドラコにすかさず砲撃が降り注ぐ
「ウルティメイトシェル装填、発射!!」
ガンバスターの主砲から放たれた特殊弾頭がドラコの胸に直撃し、その巨体が脱力し倒れ伏す
「怪獣2体、沈黙確認!」
「よし!ケリス、頼むぞ!!」
「G.I.G.!!」
ヘッドセットを展開し、トリガーユニットを手にして手をかける
それに対応し、シルバーシャークG7の砲塔が稼働。オオシマ彗星へと向けられる
ヘッドセット内の中継映像を介し、彗星がターゲットサイトに収まる
「シルバーシャークG7、発射!!」
ケリスが引き金を引く
放たれた光線はまっすぐ違わずにオオシマ彗星へと突き刺さり、それを破壊していく
オオシマ彗星は爆散、大小の星屑に変化して降り注ぎ始めた
「彗星片の被害推定を!被害が大きいとされる破片の情報を輝、翔真と花及びA.I.G.I.S.の分隊に報告して被害を最小限に食い止める!!」
剛が指示を飛ばす
ケリスがホッと息を吐きながらヘッドセットを外すが、アラートを響かせた端末を開いて目を通し、剛にすぐさま知らせる
「次元振動反応を検知!!このパターンは、超獣の出現パターンです!!」
「なんだと…⁉︎」
知らせるが早いか、虚空に七色の稲光が走り亀裂が広がる
勢いよく砕けた空から覗く青紫色の空間
ーゴォァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
大柄なシルエットの巨獣が咆哮を上げた
『ソレがキミが生んだ超獣かね』
黒マントが英輔が注視するモニターの中継映像を見つめながら告げる
モニターに映る青紫の空間から現れた巨獣を見据えながら邪悪な笑みを浮かべた英輔が答える
「超獣、その通称はキミたちが生み出す怪獣兵器のものだろう?ならば不適切な通称だ」
『なるほど、一理あるだろう。ならばキミはこの怪獣兵器をなんと呼ぶのだね?八坂 英輔』
「ー《
現れた巨獣ー凶獣アインヴァイツは空間の裂け目を割り広げながら地上へと降下する
ーゴォアァァァァァ……‼︎
重厚な体格に両肩から突き出した機械的な構造の巨大角
凶悪な貌には青い目が獰猛に輝いている
「翔真、花!迎撃を急げ!!石動司令!」
『彗星片の対処はこちらが行おう』
「頼みます!!」
アインヴァイツは後退するA.I.G.I.S.の戦車隊に体を向けてその肩の巨大角を向け、回転させる
回転する巨大角からエネルギーが迸り、超高温の熱線となり戦車隊を吹き飛ばす
ブレイバーとバスターが飛来し、攻撃を加えていくが頑強な体表にはダメージがうまく与えられていない
ーゴォアァァァァァ!!!
アインヴァイツは起動力に劣るバスターに狙いを定め、口から青い光線を放ち薙ぎ払う
辛くも避けたバスターだが、光線が掠めた主翼が凍結し制御が奪われる
「…ッ!制御が…⁉︎」
ふらつく中、バスターの翼に光線が掠め、氷を溶かす
『大丈夫か、花さん!』
「助かりました、翔真くん…‼︎」
並進するブレイバーに乗る翔真からの通信に花が安堵する
「口からは超低温光線、ドリルからは超高温光線……厄介な超獣だな…」
攻めあぐねる翔真たちの通信に華鈴からのものが入る
『こちらA.I.G.I.S.分隊!中規模彗星片の一つがカバー外に向かってる!NEXT GUYS側からどうにか対処を頼む!!』
「ー華鈴隊長!だがー」
離脱しようとするブレイバーだがアインヴァイツからの光線に阻まれる
ーゴォアァァァァァ…‼︎
「こいつ…行かせないつもりか…‼︎」
「ポイントH5へ落下中の彗星片が危険域に突入…このままでは…‼︎」
仮設本部からの入電に剛が苦渋の表情を見せた
ポイントH5
中規模住宅街が広がる中、公園で遊ぶ子供たちの一人が空の異変に気づく
「なんだろうあれ?」
見上げて指差す先、そこには真昼にも関わらず煌々と煌めき軌道を描きながらこちらに迫る流れ星がー
勢いを増しながら迫る流れ星。ポカンと見上げていた子供たちの前に大きな影がかかる
ーシェアァァァァッ!!
現れた巨人ーイカロスがアポロニウムシュートを天空に向けて放つ
放たれた光線は彗星片を捉え、その塊を粉砕、微細な破片も蒸発させていく
ーうわぁっ!?
突然の爆発に頭を庇う地上の人々を守るようにバリアを展開。いくつか降り注いできた小隕石も防ぎきる
「ウルトラマンイカロスだ!」
「初めて見た!!イカロスだ!!」
「おーーい!ウルトラマンイカロス!!」
子供たちが無邪気にはしゃぐ声に振り向き、無事な姿を確認したイカロスは安堵したように頷いた
ーシェアァァァァッ!!
ガラ空きになっていたアインヴァイツの胸に鋭い蹴りが突き刺さる
「悔しいけど、ナイスタイミング。イカロス」
イカロスの側を飛びながら翔真が微笑む
イカロスのカメラ越しにそれを見た翼も頷き、アインヴァイツに向き直る
「ポイントH5の彗星片消失!同ポイントにウルトラマンイカロスも出現していました!」
その言葉に剛も安堵し、イカロスにサムズアップする
『ドキュメントに記録のない超獣……心機一転した分、しまっていきなさいよ、翼!』
「ああ、わかってる!」
ーシェアッ!!
ーゴォォォォアァァァァァァ!!
アインヴァイツが肩から超高温光線を放つ
イカロスは左手に新たに装備したX字型のバックルからレーザーシールドを展開しながら防ぎつつ突撃、そのまま盾の一撃をアインヴァイツの胸元にぶつける
よろめくアインヴァイツの超低温光線による反撃を避け、イカロスが右手の手刀にエネルギーを纏わせ、袈裟に斬り、続けざまにキックを撃ち込む
ーシェアッ!!
更に追い討ちに光弾を放ち、アインヴァイツの肩の大角に命中させる
ーゴォォォォアァァァァァァ!!
反撃とばかりにアインヴァイツは両肩の角を回転させ、高熱のエネルギーを充満、先程までよりも強力な光線として放つ
イカロスも左手のバックラーから更に濃密なエネルギー粒子を迸らせ、厚いエネルギーシールドを作り出してそれを防ぐ
が、アインヴァイツの攻撃はそれで終わらなかった
アインヴァイツの口からイカロスの盾に向けて超低温光線が放たれる
超高温光線と超低温光線の混合。超温差により生じたエネルギーが爆発し、イカロスの体を大きく吹き飛ばす
ーシェアァァッ!?
「ぐあっ!?」
ーゴォォォォアァァァァァァ!!!
間髪入れずに再び超温差のエネルギーを放つべく2色の光線が放たれる
紙一重で回避したイカロスだが爆発の威力で地面が大きく吹き飛び、土煙が舞い上がる
『翔真くん!あの超獣の弱点になるかもしれない部位が見つかりました!』
ブレイバーから攻撃のチャンスを伺っていた翔真に花からの通信が入る
『次元波が一際強い部位が二箇所、両肩にあります。この部位があのドリルにエネルギーを送ってるとするなら…』
「破壊したら超高温光線は封殺出来るかもしれない、か」
『可能性止まりですが…』
「いや、可能性止まりでもやってみよう。もしものサポートなら、先輩に任せとけって!」
ブレイバーの後部座席に座る輝が翔真の肩を叩く
それに翔真は笑顔で頷く
「花さんは右肩を頼む!俺たちは左肩を!」
『G.I.G.!!』
ブレイバーとバスターがそれぞれの方向へ離脱、双方向からアインヴァイツを狙う
よろめくイカロスにトドメを刺そうとするアインヴァイツはそれに気づかない
「くらえッ!!」
ブレイバーから放たれた光線がアインヴァイツの肩口ーそこに怪しく脈動する光体を破壊する
ーゴォォォォアァァァァァァ!?!?
突然の衝撃にアインヴァイツがよろめき、苦悶の声を上げて左肩を押さえる
「こっちも…‼︎」
花の乗るガンバスターも右肩の光体をロックオンするが、その機体に反撃とばかりにアインヴァイツの頭部が向けられる
が、その左目に弾頭が着弾しその視力を奪う
ーゴォォォォアァァァァァァ!?
「よそ見はするもんじゃないよ、怪獣クン」
モトクロスバイクに跨り、ランチャーを構えた華鈴が悪戯っぽく笑う
そこの隙を逃さずバスターの攻撃が残る光体を砕く
ーゴォォォォアァァァァァァ!!!
怒りに震える咆哮を上げるアインヴァイツに相対したイカロスがバックラーを背中に格納し、両の拳をぶつけてエネルギーを迸らせる
反撃と肩のドリルにエネルギーを回そうとするが、エネルギーは集まらず、霧散していく
ーゴォォォォアァァァァァァ!?
動揺した様子を見せるアインヴァイツに狙いを定め、イカロスが腕を十字に組む
ーシェアッ!!
ーゴォォォォアァァァァァァ!!
放たれた必殺光線に対抗し、超低温光線を放つが虚しく押し返され、アインヴァイツの喉元が貫かれる
ーゴォォォォアァァァァァァ……ア……
脱力したアインヴァイツは崩れ落ち、虹色の光を放ちながら爆発する
「よしッ!!」
翔真たちとイカロスを見守っていた剛が思わずガッツポーズする
翔真たちもコクピットで安堵のため息をつく
それを見届けたイカロスは空へと飛び立ち、帰投していった
その様を見つめていた黒マントの男ーヤプールは用は済んだとばかりにマントを翻し姿を消した
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「父様、今日は遅くなるのですか?もうお夕飯を作ってしまったのだけど…」
キッチンから少し出た場所でスマホを耳に当てながら八坂 蛭子が通話していた
『ーああ、すまないな蛭子。少しばかり作業が長引いてしまってね。もう少しばかりかかりそうだ』
「そうですか…それは仕方ありませんね」
残念そうに蛭子が肩を落とす
『……今日は何かいいことがあったのかい?』
「へ?」
『なんだか声音が愉快そうに聞こえてね。研究がいい方向に進んだのかい?』
「……はい。とても有意義なお話ができました」
電話越しの声が微笑む
『それはよかった。僕の研究も進展した今日はいい日だったようだな』
「父様の研究も進んだのですね。ふふっ、本当に今日はいい日みたいです」
「おっと、そろそろ作業に戻らないと。すぐに終わらせて戻るよ」
『急がなくても大丈夫ですよ父様。慌てて失敗したりしたら大変ですから』
「心配いらない。では、また後で」
通話を切り、スマホをしまう
『娘か。我らには縁遠い話だ』
翁の面を付けた黒マントの人物が背後から話しかける
「可愛いものだよ。知らないのは少しばかり損な話だ」
「ぐぅっ……」
男ー八坂 英輔の側、倒れ伏した防護服の男が足元に縋り付く
「八坂博士……何を……」
「…キミが知る必要のない話だ」
冷たく言い放つ英輔は防護服を一部脱がし、その男から血を採ると白亜の複雑な形をした銃を向ける
「キミが独身で助かったよ。後始末が楽だからね」
ーパァンッ!
銃口から放たれたエネルギー弾が男を跡形もなく消失させる
「デモンストレーションだ。フューゼクス」
パチン、と指を鳴らした英輔の側に黒い霧のようなものが現れる
それに先程採取した血を与えるとその霧が形を変化させ、全裸の男の姿になり、遅れて防護服が形成され纏われる
「ふむ。まだ少し再現は粗いか。しばらく実験が必要だろうな」
英輔はその男を下がらせ、近くのクレーターの中へと入る
そこに落ちていた石ー紫の結晶を多く含むオオシマ彗星の破片を見下ろす
「マテリアルは揃った。これで僕は、神の力に到達できる…‼︎」
夜闇の中、英輔は歪んだ笑みを浮かべた
翼から休みを貰ったコン
特に何をするでもなく街をぶらつく中、蛭子と遭遇する
どこかモヤモヤした胸中から蛭子にきつく当たるコン
そんなコンに蛭子は翼へのプレゼントを提案する
どこかぎこちない2人の贈り物選び
それを邪魔するかのようにある事件が巻き起こる
次回ウルトラマンイカロス
『心からの贈り物』