ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第24話「願いの先、変える世界」

ーパァンッ!!

 

乾いた音が響く

花のトライガーショットの銃口は地面に向けられていた

 

「……なんで、なんですか…」

 

「なんでも何もあるか…撃たせるわけにはいかないだろうが…」

 

腰が抜けたのか、花は脱力しぺたんと座り込む

その手や脚は震えていた

 

翔真は弱りきった指を解いてトライガーショットを取り上げる

 

最後の2人に一瞥もくれないままにレブナントFを制御しながらノワール星人を睨む石動(いするぎ)

 

ーギャオオオオオオオオン……

 

が、建物の外で取っ組み合い暴れる巨大対決にも唐突に決着がつく

 

アーストロン・メカレーターが機械の拒絶反応に耐えられず、事切れたのだ

それを見届けたレブナントFは帰還命令を受け止め、地面を掘削し姿を消した

 

『拒絶反応か。思ったよりも早かったな』

「……下らん茶番だ。怪獣を改造するならば、なぜ拒絶反応を考慮した改造を施さない?」

 

『そんな配慮は不要だろう?機械の悪影響に負けない強靭な個体こそが、我々にとって「良い資源」なのだから』

 

ノワール星人が嗤う

石動はコントローラーをしまうが眉ひとつ動かさない

 

『今日はもう潮時のようだ。またゆっくり後日にでも語り合おう、石動 大智』

 

ノワール星人の姿が薄れ、消える

 

用は済んだとばかりに石動は店の外に向かう

 

「貴方のような人がいるから、か。そう思うだけでは、未来は変わらない、変えることなどできない」

 

座り込んだままの花に石動が声をかける

 

「私を撃つならば好きにするがいい。それで世界を変えられるならば、だがな」

 

「私ならば、いつでもA.I.G.I.S.本部に来れば面会できるのだから」

 

それだけ告げた石動は一定の杖音を響かせて去っていった

 

残された花は、拳を握りしめて地面に叩きつける

 

「わかってる…わかってますよ、思うだけじゃ世界は変わらない、もう一歩を踏み出さなくちゃ世界は変えられない……‼︎そんなことはわかってるだから!!」

 

もう片方の拳も地面に振り下ろされる

その側に涙がこぼれ落ちる

 

「だから……だから撃たなきゃいけなかった、止めなきゃいけなかったのに……ッ、なんで動けなかったのよ……なんで……ッ‼︎」

 

今度は自分の震える膝を殴りつける花

 

膝を突き、目線を合わせて翔真が花の肩を支える

 

「わかってだんだろう。間違えていたことに。こんな方法じゃダメだってことに」

 

翔真の言葉に花が唇を噛み、その胸ぐらを驚くほど強い力で掴み上げる

 

「間違ってる…?こんな方法じゃダメ…?じゃあどうすればいいの⁉︎私の声は届かない!!守るためには戦わなきゃならない!!でも、でも、どちらもダメだったならどうしたらいいの!?」

「それでも考えるしかない。考えるしかー」

 

「翔真くんにはわからないよ!!」

 

翔真の言葉を花の涙混じりの絶叫が遮る

 

「怪獣が……怪獣が憎くて仕方なかった翔真くんには理解できるはずがない……憎んでいた怪獣への復讐も終わらせたあなたになんか……‼︎」

 

激情のままに告げられた言葉

 

花の本心かどうかわからない。そんな言葉を否定しようと

 

開いた口からー言葉は出なかった

 

現場の整備に訪れた剛たちが合流するまで、2人はそこに呆然といることしかできなかった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「……これでもまだ、ノワール星人を罪に問うことは不可能なのですか」

 

薄暗い会議室に座る翼が忸怩たる思いをにじませた言葉を紡ぐ

 

『ええ。改造怪獣を操作していた地球人とガルメス人は取り押さえましたし、彼らへの処罰も後に下されます。ただ彼らが使った兵器が、ノワール星人のものだっただけのこと』

 

アンヘル星種族代表ラーフが淡々と告げる

他の種族代表たちはどこかバツが悪そうに沈黙している

 

「ですが、彼らの危険思想に気づかず、もしくは気づいていても怪獣を提供した可能性があるならば、ノワール星人がやったことは未必の故意とも取れます、それならばー」

 

『しつこいですね、キミも』

 

ラーフの声色が変わる

 

『ならばキミたち地球人も、アルド殿の種族チブル星人も星ごと罪に問う形になっても良いと?兵器や凶器になるものを生み出して提供しているキミたちは許されてノワール星人が許されない理由は説明可能なのかな?』

『なっ、我々の開発品はただ我々種族の脆弱な身体機能の補助が主であってそれを兵器運用しているのは個々の責任だぞミスター・ラーフ⁉︎』

 

突然矛先を向けられたアルドが焦りながら早口で弁明を述べる

 

『当然承知しています。ほらこの通り、兵器になりうるものなんて発展した文明の下であれば誕生は避けられない。ならば彼らの改造怪獣も、提供だけで罪に問うことはできないのですよ』

 

ラーフが告げる

 

『憎たらしい怪獣を殲滅するだけに留まらず、我々の戦力にもなる形に組み替える彼らは有益な種族なんですよ。擬似ウルトラマンという技術を確立しながら、それを秘匿するなんていう無益極まりない貴方以上に、ね』

 

その言葉に翼が反論する

 

「ラーフ代表。それは、僕とこの同盟との契約の際に申したはずです。イカロスの秘匿は、独占のためでなく悪用の防止だと。約束を果たした後に封印する技術であると」

「日向臨時代表の言う通りです。ラーフ、言葉を慎みなさい」

 

翼の言葉を受けたリブラの言葉にラーフが押し黙る

 

「……日向臨時代表、すみませんがそういうことです。この件のノワール星人への追求は、未だ不可能なままなのです」

「………承知しました。無理を言って訪問した無礼をお許しください」

 

リブラたち代表に頭を下げ、翼が会議室を後にする

 

 

自室の電灯も点けずに花は枕に顔を埋めてベッドにうつ伏せに脱力していた

 

無断で持ち場を離れたこと、度重なるコールに応じなかったことにより花と翔真は一週間の自宅謹慎を言い渡されていたのだ

 

リビングでテレビを眺めている(いつき)が心配そうに度々姉の方を見やる

 

『ー昨日出現した機械改造怪獣、その片方について対異常脅威防衛部隊A.I.G.I.S.の長官・石動 大智氏が関与していたことが報告されました』

 

偶然映ったニュースの言葉を聞いた花が起き上がり、驚く樹を他所にテレビを見つめる

 

そこには記者会見場に腰掛ける石動の姿があった

 

『先日の改造怪獣、あれがA.I.G.I.S.(エイジス)で秘密裏に開発されていたものであるということは本当なのですか?』

 

『事実だ。公表は、このプロジェクトの終着に至ってからと予定していたが、改造クローン怪獣レブナントは私が主導になり開発していたものだ』

 

石動は淡々と告げ、レブナントの詳細をスライドに写す

怪獣の遺伝子をクローニングして生まれた素体に怪獣の因子を人工的に遺伝、補助となる機械パーツを装備・移植することでコントロール可能な生体兵器として生み出す

 

『この技術は生命を一から生み出して兵器転用してるのですよね?それは生命倫理に抵触しているとは考えないのですか?』

 

『重々承知している。私の研究もそもそも万人に理解されるものではなかった。生命倫理に関した糾弾も、何度も聞いた』

 

石動はカメラの方をーカメラ越しに花が見えているかのように灰色の瞳で見据える

 

『ーだが、それでも私はこの技術が必要だと考え、研究と開発を続けたのだ。この世界、この地球に』

 

視線を質問者に戻し、石動の視線が光る

 

『故に、これ以上意味のない問答に答える理由はない』

 

質問を打ち切る石動になだれ込むようにカメラのフラッシュや質問の声が響く中、映像は街頭インタビューの画像に変わる

 

『怪獣を兵器に利用するなんてすごいこと考えるよな』

『でも怪獣ならそれくらいの力があるもんね』

『ウルトラマンやらNEXT GUYS以外に戦力が増えたら怪獣も怖くないよなぁ』

『怪獣さんかわいそう…』

『倫理的ってのもわかるけど、怪獣だもんなぁ』

 

それを呆然と眺めていた姉を心配して樹が声をかける

 

「お姉ちゃん、なんかあったの?」

「……なんでもない」

 

花は抱えた枕に顔を埋めて返答する

 

「……なんでもなくないでしょ?その感じ。前に休んでた時と同じ」

 

姉のことをよく知る妹にはそんなごまかしは通じなかった

樹は姉が放置していた怪獣に関する図鑑と勉強に使っていたノートを手に取る

 

「お姉ちゃん、怪獣のこと勉強してたよね?そのこと?」

「………そう。そのこと」

「なるほどね……」

 

樹はどこかに立ち上がると一冊のノートを持ってくる

 

「これ、見てほしいんだけど」

 

花は少し顔を持ち上げ、ノートを受け取り開く

 

「これって……」

 

そこに書いてあったのは、異星文化や異星種族に関することのまとめ

花が怪獣のことを学んでいる時にとっているノートとよく似ていた

 

「言い出しにくくて黙っててごめん…私も、最近異星種族について勉強してるんだ」

 

バツが悪そうに樹が明かす

 

「レリアと友達になって、異星種族のこと私は全然知らないんだなって思ってそれからもっと知りたいなって思ったから」

 

花のノートを抱きしめながら樹が続ける

 

「……勉強してるうちに、私たちと異星種族の人らが仲良くしていくのって難しいんだなってのも痛いほどわかった。昔地球に侵略に来た宇宙人と同族だったり、そもそも文化の常識が違いすぎたり、ミアダ星の人たちなんか不定形らしいからもっと色々と難しいだろうし」

 

「何よりも、この前にレリアと色々街を見て回ってた時に地球人側が異星種族のことを差別的に見てる人が少なくないっての、痛いほど知った。何より私も、最初はレリアのことちょっと不気味とか思っちゃったし」

 

樹は懐かしむようにスマホからぶら下げたキーホルダーを見る

レリアに渡したものとお揃いにしたくて買い直したあのライオンのキーホルダーを

 

「ーでも、それと同じくらい異星種族と仲良くしたいって人たちもいると思うんだ。さっきのインタビューにもいたけど、お姉ちゃんが向き合う怪獣たちのことを想ってくれる人もきっといる」

 

「今の私は…レリアのことを心から友達として想ってる。他の地球のみんなも、レリアと私みたいにもっと理解し合えたらいいなって思うの。だから、ささやかだけど私は前に進みたくて勉強してるの」

 

樹は花の顔を持ち上げ、目を合わせる

 

「姉妹だからわかるよ。お姉ちゃんも、怪獣たちのことを想ってるって。私がレリアにしたことのように、もしかしたらそれ以上に酷いことをしてしまったことを後悔してること。それ以上にー」

 

「それでも負けるもんかって迷って前を向こうとしてること」

 

樹はにっと笑ってみせる

 

「私たち、平凡だけど昔からこう思ったら頑固なのは一緒だったでしょ?そんな感じで、NEXT GUYSに入るんだってめちゃくちゃ勉強カンヅメして入ったお姉ちゃんだもの」

 

樹のその言葉を聞いた花の頬を涙が伝う

でもすぐに笑ってみせる

 

「……美味しい学食があるからって、難しい学校への入試頑張りまくった樹に言われたら叶わないね」

「そ、そのことは忘れてよ!?いや、満足してるけど我ながらとんでもない志望動機だったし…」

 

顔を赤くしてぶんぶん手を振り回す樹

花は頬をパンっと叩くと自室に戻る

 

いつもの私服より少し活動的な服に着替えるとメモリーディスプレイを持って玄関に向かう

 

「樹、私ー」

「行かなきゃいけないとこあるんでしょ?行ってらっしゃい、お姉ちゃん!!」

 

手を振る樹に花は微笑む

 

「うん、行ってきます!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

街中を走る

度々通行人にぶつかりそうになるけど、それでも走る

 

(ちょっと、もう少し普段訓練しとけばよかったかも……)

 

はぁ、はぁと息を切らしながら花は走る

少し息が切れて立ち止まる

 

そんな花の側に一台のバイクが乗りつけ、止まる

 

「花さん‼︎」

 

聴き慣れた声にバイクの方を向く

 

「翔真くん⁉︎」

 

バイクに跨っていた翔真がヘルメットを花に投げ渡す

 

「行くんだろ?乗れ‼︎」

 

一瞬戸惑った花だったが頷いてヘルメットを被り、翔真の乗るバイクに跨る

 

バイクを発進させ、しばらく

ヘルメットのマイクから翔真のー恐らく向こうのヘルメットのマイク越しのー声が聞こえてくる

 

「俺が怪獣を憎んでいたのは本当です。俺の家族を奪ったフランベルスは、憎くて憎くて仕方なかった。ウルトラマンを逆恨みさえした」

 

「NEXT GUYSに入った理由も、怪獣のことを殺すことができるからってのが強かった」

 

翔真は少し言葉に詰まりながらも続ける

 

「でも俺は、あの時のフランベルスを殺しても何も思えなかった。それに……錯乱してたとはいえ、俺はあのフランベルスの子供を殺したんだ。俺が怪獣にされたみたいに、俺はあのフランベルスが守ろうとしたものを奪った」

 

「思い出す度に、ずっと後悔してるんだ」

 

「翔真くん……」

 

フッと翔真が笑う

 

「謝らないでくれ、花さん。花さんの言葉は間違いじゃない。怪獣を憎いと思ってたことは本当だし、怪獣との共存にそこまで理解があるわけじゃないのも本当だ。だから返す言葉もなかったわけだし」

 

そんな翔真は胸を張って言葉を続ける

 

「だからいっぱい考えて、思い直して、今返す言葉を思いついた」

 

「ー俺は、怪獣を憎む人をなくしたい。俺のようにずっと怪獣を憎んで、迷って、苦しむ人はもう生まれてほしくないから。でも、怪獣を根絶やしにすればいいとも俺は考えない。そうしたとしても、また憎み背負うことになるから」

 

「どちらかをなくして守るんじゃない。無くさなくていい世界にするために守る。人間も、異星種族も、これからは怪獣も。そのために俺は、NEXT GUYSとして戦い続けるんだ」

 

翔真の言葉を受け止めた花は微笑み、頷く

 

「私も、私もそんな世界のために、そんな未来のために、怪獣たちのことをもっと伝えます。笑われても、否定されても、何度も何度もしつこくやってやる!」

 

「それが、私の特技ですから‼︎」

 

翔真も満足げに微笑む

 

「……まぁ、今まさに俺たちクビになりそうだけどもな…」

「……後で剛隊長に一緒に謝ろう、全力で…」

 

 

A.I.G.I.S.本部

石動の件の記者会見のせいで多くのマスコミに囲まれており、入り口にたどり着くのも困難になっている

 

「どうしよう、これ……」

 

立ち尽くす花と翔真

すると、何故かマスコミの集まりが機動隊によりかき分けられ、道が作られる

 

「翔真‼︎花ちゃん‼︎今だよ‼︎」

華鈴(かりん)隊長⁉︎」

 

かつての上司の登場に翔真が驚く

駆け寄ってきた翔真の頭をコツンと華鈴が小突く

 

「今は華鈴さんだろ?こっちの隊にはいないんだし」

 

カッカッカッと笑い、2人の顔を見て肩を叩く

 

「司令から聞いてるよ。花と、来るか分からないけど翔真がここにきて、目の色が変わってるなら通せってね。行ってきな」

「‼︎ ありがとうございます‼︎」

 

花と翔真が頭を下げ、本部の中に急いで行った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

研究室で1人石動は写真立てに納めていた写真を見ていた

 

石動と日向(ひむかい) (すばる)ーかつての友の写る写真を

 

気心が知れて愉快な議論も何度も行えた無二の親友だった昴を

 

 

『どういうことだ⁉︎研究発表を辞退してNEXT GUYS総監に就任するだと…⁉︎』

 

30年前、親友の突然の告白に石動は大きく動揺して問い詰めた

 

『貴様の研究は革新的なもので、私にもたどり着けない結論を得ているのだぞ⁉︎ 何故だ‼︎』

『すまない、石動。私はやりたいことができたんだ。果たさなくちゃいけない約束が、できたんだ』

 

物悲しそうに首から下げた青い石のネックレスを眺め、昴は自嘲気味に笑う

 

『イカロス……あのウルトラマンか……』

 

石動は昴のもう1人の友のことを知っていた

その友が、志半ばで死んだことも

 

『彼の使命を、私が受け継ぐと約束したんだ。それ以上に、私は彼が愛したこの星を守りたいからね』

 

そう微笑む友の顔を、石動は忘れなかった

 

そこから石動は開発を始めた

 

神話を覆しうる人類の矛を生み出すために

友とその盟友が使命に縛られない未来を作るために

 

1人で、ここまで来たのだ

 

 

「ー腹は決まったかね?百瀬(ももせ) 花隊員」

 

自室を訪れた若者を振り返ることなく出迎える

息を切らしながら入ってきた花は息を整えると石動に告げる

 

「私は、貴方みたいな考えを許したくない。怪獣は犠牲になっても仕方ない。怪獣はただの脅威だなんて結論で終わらせたくない」

 

決意のこもった視線が石動に向けられる

 

「だから私は何度でも、何度でも彼らに向き合います。笑われても否定されても、それでも私は諦めない」

 

「いつか貴方達のように怪獣を命として見れない人たちが、怪獣を憎んだり疎んだりする人がいなくなるその時まで、私は私なりに戦い続けます。貴方に銃を向けるのではなく、彼らのことを伝え続けることで」

 

それを聞き届けた石動は椅子から立ち上がり、花の方を向く

 

「それがお前の答え、お前の意志ということか」

 

『無駄な話だ。そんな成り得ない未来など』

 

研究室の影からノワール星人が現れ、石動の方を向く

 

『キミがよく知るはずだ、石動 大智(だいち)。怪獣は資源、怪獣は兵器。我々と同じ結論に至ったキミならば…‼︎』

 

ノワール星人の言葉を聞き、石動は一つため息をつく

 

「レブナントGの素体のためにジョスン島で狩ったゴモラ。かの個体は老齢化しており凶暴性が増していた。放置しておけばいつ人里を襲ってもおかしくないくらいには。日本で撃退したレッドキングも動揺だ」

 

石動はノワール星人を睨み、続ける

 

「我々は古来より、命をいただくことで命を繋げてきた。そのいただく命は、怪獣もまた同様だ。我々の生活を守るため、我々の命を守るため、彼らの命をいただかねばならない。彼らの強靭さに我々は敵わないからな」

 

「今までは奪うだけだった彼らの命は、生きた証はこうして利用できる。それを私は、レブナントという形で証明した。たとえ、倫理に反すると言われようとも、その力強い命に私なりの敬意を払うために。遠い星よりきた友となりうる誰かが使命に縛られることがないように」

 

「誰がなんと言おうが、どう捉えようが、これが私の命に対する敬意の形だ」

 

ノワール星人はそれを聞き、やれやれと肩を竦める

 

『我々と行き着くところはやはり同じではないか』

「違うな。貴様らは怪獣の命への敬意など持っていない。実験過程でもなく、実践個体として命を失おうとも怪獣を酷使して死なせるだけの操り人形遊びに、私のレブナントは負けんよ」

 

その言葉を聞くが早いか、ノワール星人は石動の肩を頭部からの光線で貫く

 

「石動司令!!」

 

倒れる石動を翔真が抱える

 

『下らない。実に下らない。敬意などという自己満足に我々のメカレーターが劣る?それこそあり得ない』

 

ノワール星人が指を鳴らす

同時に本部に地響きが伝わる

 

 

A.I.G.I.S.本部の近く

突然の爆発共に球状のシルエットを持つ巨大な怪獣が転送、大地を揺るがしながら着地する

 

ー■■■■■■■■■■■!!!!

 

金属音の混ざる異様な声を響かせるその怪獣は全身に棘のように生えた砲塔を展開し、左手にはライフル、右手には巨大なロボットアーム、そして両肩にもアーム状の装備と大砲を装備した正に戦闘を行うためだけに生まれたかのような怪獣だった

 

 

石動の自室からモニター越しにその怪獣出現を確認した3人にノワール星人が勝ち誇るかのような笑いを送る

 

『あれはデアボリック。宇宙には友好種族同盟とは違う、社会の裏に潜む同盟ももちろんあってね。そこで取引されている高級怪獣兵器、それがあの怪獣爆弾デアボリックだ‼︎ まぁ、私がより扱いやすく改造した一点物にはなっているがね』

 

デアボリックはこちらに向けてゆっくりと進軍

山間部に仕掛けられた迎撃用砲塔たちの攻撃にも動じず、逆にそれらを砲撃で破壊しながら迫ってくる

 

『交渉が決裂した以上、強硬策を打たせてもらうよ。悪く思わないでくれたまえ、石動』

 

ノワール星人はそれだけ告げるとその姿を消した

 

「……待機していた戦車部隊、及び機動部隊はすぐに出撃。作戦系統B-21に従い怪獣の迎撃を行え。私も後に合流する」

 

翔真に支えられながらインカムで隊員への指示を終わらせた石動は部屋を出ようとよろめきながらも扉に向かう。慌てて肩を支えるために続く翔真。2人を呆然と見送る形になりそうになっていた花に石動が声をかける

 

「キミには見る資格がある。百瀬 花、同行したまえ」

「…‼︎ はい‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ー■■■■■■■■■■■■!!!

 

石動を支えながらたどり着いたのはA.I.G.I.S.本部の屋上

戦車部隊の砲撃にすら動じないで近づいてくるデアボリックを睨み、石動は懐から取り出したデバイスとインカムを翔真に手渡す

 

「レブナントFを出撃待機させている。お前が使え、立花(たちばな) 翔真臨時隊員」

「俺が…⁉︎」

 

デバイスを受け取るも、躊躇う翔真

その脳裏にはかつての怪獣を憎むだけの自分が、力に溺れて隊を犠牲にした、仲間のはずのイカロスー翼にも刃を向けた自分がいたからだ

 

「見せてみろ。今のお前ならば、私の生んだ矛を預けられる。私がそう判断した」

 

石動の言葉に先程の言葉が花の頭に浮かぶ

 

『たとえ、倫理に反すると言われようとも、その力強い命に私なりの敬意を払うために。遠い星よりきた友となりうる誰かが使命に縛られることがないように』

 

『誰がなんと言おうが、どう捉えようが、これが私の命に対する敬意の形だ』

 

翔真に告げたその言葉に、彼の想いを花はたしかに見ていた

その言葉を受けた翔真は、決意を込めてそのコントローラーを握りしめ、頷く

 

「はい」

 

コントローラーを起動し、前に突き出しながら認証コードを口にする

 

「レブナントF、出動‼︎」

 

その声に応える形で、デアボリックの前方の大地が捲れ上がる

 

ーGoAAAAAAAAAAAAAA!!!

 

A.I.G.I.S.が、石動が生んだ守るための矛、レブナントFがデアボリックに対峙する

 

『あんたは怪獣に集中して好きにやんな‼︎ 援護はあたしらがやってやる!!』

「華鈴さん⁉︎ でも……」

『安心しろよ、翔真。B-21はレブナントとの連携がメインになった戦略だからよ』

『よほど暴れない限りは俺たちに害は無いぜ。俺らの連携なめんな』

(かがり)さん…東吾(とうご)さん…‼︎」

 

華鈴に続けて声をかけてきてくれたのは、かつて翔真の勝手で負傷した機動部隊の2人だった

どちらも怒りなどなく、翔真を信じると笑っていた

 

『あんた、随分といい男になってたし。あたしだって信じてやるよ、翔真臨時隊員』

 

『背中なら、あたしたち年長者が支えてやる。だから前だけ向けよ、若者よ‼︎』

 

カッカッと笑いながら飛ばされてきた激励を受け止め、翔真はレブナントFのコントロールを開始する

 

ーGoAAAAAAAAAAAAAAA!!!

ー■■■■■■■■■■■■!!!

 

レブナントFの突進がデアボリックの巨体を押し戻す

それを返そうともがくデアボリックの腕に機動部隊からの集中砲火が命中、怯んでがら空きになったそのボディに鋭い爪撃が叩き込まれる

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

デアボリックの左手のライフルからの速射がレブナントFに迫るが、レブナントFは左腕の手甲から発生させたレーザーシールドでそれを防ぎながら口から吐く火炎弾で反撃

直撃し、火花を上げる左目に更に機動部隊からの追撃が命中してデアボリックが大きく後退した

 

ー■■■■■■■■■■!!!

 

瞬間、デアボリックは右腕を突き上げ、そのロボットアームを延長。内部から現れた機構を眩く発光させる

 

ーバチッ‼︎

「ーッ⁉︎」

 

翔真は右耳からの衝撃に思わずインカムを投げ捨てる

火花を上げるそれが既に機能しなくなっていることがよくわかる

 

「こいつは…⁉︎」

 

 

「やられた…‼︎ EMPか…ッ」

 

同じく機能しなくなったインカムを忌まわしげに見つつ、言うことを聞かなくなって発熱した武装を華鈴が投げ捨てる

 

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

デアボリックはEMP装置を格納すると全身の砲門を全方位に向けて大量のミサイルやバルカン砲を撒き散らしてきた

再度防ごうと左手甲を突き出すレブナントFだが、シールド発生機構もショートしているために防ぎきれず、何発もの砲撃を喰らって倒れ込む

 

「クソッ‼︎」

 

その時、3人がいる屋上にも大量のミサイルが降り注ぎつつあった

思わず花が石動を庇いながら目を瞑る

 

ーシェアァァッ!!!

 

そこに銀色の巨体が立ち塞がり、ミサイルを防ぐ

 

「……ウルトラマン、イカロス」

 

その姿を見た石動は、無感情な目をどこか懐かしげに緩めて呟く

 

「……いい所で来てくれるな……翼さん‼︎」

 

立ち上がり、笑って見せた翔真を見て頷いたイカロスはレブナントFを助け起こす

 

コクピット越しに並び立つレブナントFと石動を見て、翼はどこか複雑な表情を浮かべるが、頷く

それに応じたレブナントFも頷くような仕草を見せた

 

ーシェアァァッ‼︎

ーGoAAAAAAAAAA!!!

 

巨人と改造怪獣。異色のコンビがデアボリックに相対する

 

 

「やっぱりここに来てたのね、花と翔真」

「コンさん⁉︎」

 

タフブックでイカロスの状態を確認しながら大型アタッシュケースを提げたコンが合流してくる

タフブックでの確認が無事済んだのか、閉じたそれを脇に置き、大型アタッシュケースを置いて開ける

 

そこにあったあったものの一つ、マケット怪獣のカプセルとメモリーディスプレイを花に手渡す

 

「NEXT GUYS側がどこかの性悪野郎にサイバー攻撃されてるみたいで離れられないから剛隊長から伝言。後で追加の報告書と始末書、そして元気な顔を見せるようにってさ」

 

花から伝えられた言葉と渡されたアイテムに目を白黒させながら戸惑う花にコンがカプセルを指差して続ける

 

「本当はトライガーショットとか持ってくるつもりだったけど、なんでか知らないけど机に並べておいたコイツが落っこちたのよ。連れてけって言わんばかりに」

 

悪戯っぽく笑うコンが花の肩を叩く

 

「力になりたいって言ってるんじゃない?メテオール許可なら翼の権限で承認しとくわ」

 

花は今一度カプセルとメモリーディスプレイを握り、力強く頷くとカプセルを装填、ディスプレイに《PROTO MAQUETTE》と表示される

 

「力を貸して……今度は、私とあなたで守るために‼︎」

 

 

デアボリックが両肩から放つロボットアームアンカーがイカロスを掴み拘束、右腕が展開し装着されたチェーンソウが唸りをあげる中、引き寄せられていく

 

ーGoAAAAAAAAA!!!

 

そのワイヤーをレブナントFが切断、拘束が緩むとすかさずもう一方のワイヤーを掴み、イカロスがデアボリックを引き寄せる

 

ーシェアァッ‼︎

ーGoAAAAAA!!

 

よろめくデアボリックの顎にイカロスとレブナントFのダブルラリアットが炸裂し、のけぞったまま大きく吹き飛ばされる

 

ー■■■■■■■■■!!!

 

追撃のために近づこうとする2体にデアボリックの弾幕が襲いかかる

 

2体を吹き飛ばしたデアボリックは機械的な動作で起き上がり、その口から巨大なガトリング型の砲身を伸ばす

 

必殺武器と思しきそれにエネルギーが集まり、怯んだイカロスとレブナントFとその背後のA.I.G.I.S.本部が焼き払われー

 

ーゴァァァァァァァァァァァァ!!

ー■■■■■■■■■■!?!?

 

ーることなく強烈な光線が空を割いた

デアボリックの足元がいきなり陥没し、落とし穴に落ちるようにデアボリックが転倒したのだ

 

ーゴァァァァァァァァァァァァ!!!

 

デアボリックの足元からドリルのような鼻先を動かしながら、白い巨体が顔を出す

その姿ーその怪獣は、翔真にも見覚えがあった

 

「グビラ⁉︎ どうしてここに……」

 

ハッと隣を見る

そこにいた花の手にはカプセルが装填されたメモリーディスプレイが握られていた

 

「ありがとう、グビラ‼︎」

ーゴァァァァァァァァ!!

 

花が呼び出したプロトマケット怪獣のグビラはその言葉に嬉しそうに前脚を振る

 

もがくデアボリックの前に立ち塞がるイカロスとレブナントF

それぞれアポロニウムシュートと必殺斬撃を構える

 

ーシェアァァ‼︎

ーGoAAAAAAAAA!!!

 

アポロニウムシュートがデアボリックを撃ち抜き、レブナントFのエネルギー斬撃がデアボリックを縦に両断する

 

バチバチとスパークを放ちながらデアボリックの体は爆散し、大きな土煙を巻き上げた

 

夕焼けに染まりつつある屋上風景に、2体ともう一体の勇士の影が並んでいた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

イカロスから降りた翼が石動に向き合う

 

「石動さん。僕は、やはり石動さんの考える理想を理解しきることはできません」

 

石動はその言葉を黙って受け止める

 

「でも、その理想を否定することが違うということも、わかった気がします」

 

石動が翼を見据える

 

「ノワール星人の生むメカレーターと、貴方が生み出したレブナント、どちらも怪獣を使い潰した存在なのに僕にはどうしても同一視することはできませんでした」

 

「貴方が生んだレブナントは、確かな意志と誇りがある。そう思えた気がして」

 

翼は微笑んでいた

 

「だから僕は、貴方がもし間違った道を歩むことになるなら全力で止めます。それまでは、貴方が望む違う未来も、僕は信じてみたい。やり方は、変えねばならなくなることもあるかもですが…」

 

石動はその顔に、どこか親友の面影を重ねていた

 

何度も議論し、衝突した

真っ向から反した意見をぶつけることもあった

だが、あの男はこちらの意見や考えを否定はしなかった

 

ー間違えた道にいくならそんときはぶん殴ってでも止めてやる

 

そうなんでもないことのように笑いながら

 

「お人好しな考えだな。あいつと同じく」

 

すれ違い様に石動は翼の肩を叩く

 

「いい目と顔つきになったな。日向の孫……いや、日向 翼」

 

今までの淡白な印象からは思いもよらない暖かな言葉を残す

 

去り際に石動はもう一度翔真と花に顔を合わせる

 

「変えてみせろ。この世界を」

 

「それができるのは、それだけの願いを持つお前たち若者だけだ」

 

「私たちのような石頭の老人には、もう不可能な偉業を為してみせるといい。立花 翔真、百瀬 花」

 

思いもしない助言に翔真と花は顔を見合わせる

 

「壁を越えたお前たちなら、まだ見ぬ未来にもいけるかもしれないのだからな」

 

そう告げて去っていく石動の背に2人は頭を下げる

 

「やって見せます…必ず‼︎」

「何度でも、何度でもやってみせます‼︎」

 

それを聞き届けた石動はうっすらと微笑んでいたようにも見えた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

山中を彷徨う人影

その背後に石動が追いつき、告げる

 

八坂(やさか) 英輔(えいすけ)。何をしている」

 

呼び止められた男ー八坂 英輔は振り返り、石動を無表情に見つめる

 

「何って…嫌だなぁ、先程撃破したあの怪獣の生体組織を集めていたんですよ。マテリアルとして保管するために」

「くだらん茶番はやめろ。私に誤魔化しは通じないのはお前がよく知っているだろう?」

 

その言葉に英輔は愛想笑いをやめ、邪悪な笑みを浮かべる

 

「ああ、なら簡潔に答えましょうー」

 

ーズブリ

 

警戒する石動の胸から刃が突き出る

ごふっ、と鮮血が口元から溢れた

 

「ー司令官交代の下準備ですよ。今終わりましたけど」

 

石動を背後から突き刺した人影が刃を抜き、石動を崖から突き落とす

 

「ご苦労様でした。協力感謝しますよ、ガイス」

 

腕から伸びた刃の血を拭いながら夜闇から現れたのは黒い装甲を纏った長身の人影

 

『ヤプールからのORDER(命令)でYOUにFOLLOW(服従)してるが、いきなりKILLしろだなんて……とんでもねぇHUMANだなぁYOUは』

 

暑苦しい声色と英語混じりの言葉で話しながら人影ーガピヤ星人ガイスは肩を竦める

 

「まだまだこれは下準備ですよ」

 

「お楽しみは、これからですから」

 




A.I.G.I.S.で突如司令官が交代
新たな司令官・八坂 英輔による改革が始められる

動揺を隠せない翼たち
動乱のただ中ながら怪獣墓場への調査作戦が進行する

再び翼を得るフェニックスネスト
そこに新たな凶獣と刺客が襲来する

次回ウルトラマンイカロス
『策謀のファンファーレ』
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