「
多くのカメラやマイクが向けられる中、
「それだけでなく、僕は彼に脅迫されていたのです。僕自身の研究もレブナントへと投入するように、と。反対すれば僕の地位を剥奪するとまで言われていました」
悲痛そうに言葉を紡ぐ英輔はテレビの向こうに向けて語りかけ続ける
「先日の会見の2日後に彼は姿を雲隠れさせたまま。恐らく不正な開発がバレることを避けて逃亡したのでしょう。僕は彼を尊敬していましたた。それ故に彼の頭脳と技術が正しく使われなかったことが無念でなりません…」
立ち上がり、胸に手を当て英輔は改めて宣言する
「新たなA.I.G.I.S.の司令官として僕は、彼から教えられた技術を全て人類のために正しく役立てることを誓います‼︎」
「随分と役者じゃないか、八坂 英輔」
会見場から離れ、A.I.G.I.S.本部の隠し通路からたどり着いた秘密研究室で椅子に腰掛けた英輔はくっくっと愉快そうに嗤う
その様を翁面の黒マントが傍から見ていた
「取り繕いには慣れているのさ。このくだらない世の中を渡るには、これくらいの小細工がいるのですよ」
その室内にもう1人の人影が現れる
『食えないやつだな、キミは。あのヤプールが興味を持つだけある』
壁をすり抜けながら現れたノワール星人が英輔を見やる
「此度は僕の計画に助力していただいてありがとうございました。おかげで、スムーズに彼の油断を狙うことができましたよ」
『怪獣の遺伝子サンプル分働いたまでだ。レブナントも実に興味深かったことだし、私としても得るものは多かったよ』
「貴方にはまた、協力をお願いしたいことがあります。その時はどうか、またお力をお貸しください」
と英輔はノワール星人に怪獣たちの遺伝子サンプルが収められたアタッシュケースと怪獣の棲息地情報が記録されたメモリーディスプレイを手渡す
『いいとも、キミとは今後もいい取引ができそうだ』
「しばらくは活動を控えたほうがいいでしょう。工作はしていますが、あまりにも派手に動くと足がついてしまいますから」
『了解した。レブナント技術の応用も試してみたいからね』
ノワール星人はそれらを受け取ると部屋から姿を消した
「さて、次は私のために協力してもらおうか。八坂 英輔」
翁面を外し、
「問題ありません。フェニックスネスト改装作業で手薄になる今こそ狙い目……既に刺客は放っていますよ。貴方から借りた彼を、ね」
英輔はヤプールへ微笑む
メガネの奥の瞳は、獣のような光を放っていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
フェニックスネスト機関ブロック
いつもの隊服の上着を脱いだ輝と翔真が作業を技術部門とともに作業を進めていた
「この部分をここに接続して、そこは圧力調整を‼︎」
「わかりました」
黙々と作業を続けていく翔真たち
A.I.G.I.S.本部襲撃から3日目
今、フェニックスネストは全体を大幅に改修されようとしていた
祖父・昴が残した研究や
宇宙空間ー次元の裂け目として開いたウルトラゾーンに突入、異常を解決するために、この不死鳥の砦はもう一度飛び立とうとしていたのだ
ふぅ、と一息ついて汗を拭う翔真に
「休憩しようぜ。あまり根詰めてぶっ倒れたら元も子もないしな」
「ありがとうございます、輝先輩」
2人並んで缶コーヒーを傾ける
隣の翔真が浮かない顔をしていたのを輝は見抜いていた
「……石動司令官のこと、気になってる?」
「な、なんで分かったんですか?」
「まぁそりゃ、翔真しばらくA.I.G.I.S.にいたことあったわけだし、そういう意味でも石動司令官って一応翔真の上司でもあったわけだろ?」
なるほど、と翔真は頷く
「で、どう思ってるんだ?あの不正とかのこと」
「あり得ません。あの人に限って」
「だよなぁ……」
輝がうんうんと頷く
「あの人、やり方とか言葉選びはめちゃくちゃ怖いけど、道理は通ってる人だってのは俺でもわかるんだよな。誤解されやすいけど、悪い人じゃないっての?」
翔真は缶コーヒーをぎゅっと握り込む
そんな後輩隊員の背中を輝がパンッと叩く
「だから、お前が信じてるなら最後まで信じてやらなきゃダメだろ?あの人には、あの人でなくてもそういう人は必要なんだからな」
「……はい‼︎」
底抜けに明るく言う輝を見て翔真が微笑む
「うし‼︎ そろそろ作業再開するか‼︎ もうすぐ完了だしな」
「はい。やりましょう‼︎」
「で、花ちゃんはやっぱ石動司令官のことが心配なわけだ」
指令室で並んで作業を続けるケリスが花に聞く
「はい……行方不明になっているのは事実でもありますし、石動さんの身に何かあったのではと……」
パソコン横に置いているグビラのスパークドールズのことも見やりながら花が答える
「まぁね…いくら不正な開発って言っても逃げるような人違うだろうし…なんというかあの人ならバレる不正はしなさそうだし」
「石動司令はたしかに強硬派な人ではあるが、それだけではないからこそ司令官が務まっているのもまた事実だ」
配線図を見比べながら作業をしていた剛もケリスに続ける
「華鈴くんも、彼女の部下も、むろんA.I.G.I.S.のほとんどの職員も彼の熱意と人柄を知っているからこそ彼の下にいる。そんな部下たちを放っておくような人ではない」
「石動さん……無事でいてくれたらいいのですが……」
「ダメね。A.I.G.I.S.職員とかの一部に聞いても石動司令官を見た人がいないし、どこに行く可能性があるか知ってる人もいないわ。元々プライベートとかは語らないタイプらしいのが仇になってるわね…」
コンがスマホを振りながら翼に告げる
「石動さん……彼がこんないなくなり方するなんて絶対あり得ない」
「まぁ、バレるとかにしてもただ逃げるようなヤツじゃないのはたしかよね。いくらなんでも変だわ」
スマホでもう一度会見の様子を見ていたコンがふとあることに気づく
「八坂……八坂?なんか聞いたことあるような……」
「……蛭子さん…」
「あっ…‼︎ たしかにあの子も八坂…しかも確か父親がなんかの研究してるって……」
もう一つあることをコンは思い出す
「そういえば、あの子父親の研究が進展したからお祝いしたいとか言ってたような……それからのこれって……」
それを聞いた翼は顎に手を当て思案する
「……関係があると考えるのが妥当だとは思うが…でもまだ疑うにも判断材料が薄すぎる……」
はぁ、と一つため息をつく
「石動さんの安否が気になるけど、フェニックネストのフライト成功を先に為さないと僕もNEXT GUYSも動けない。ひとまずは、翌日の作戦開始をー」
翼のスマホに着信が入る
見慣れない番号だが、翼の重要度高の仕事用スマホの番号を知る人物は多くないためとりあえず出ることにする
「日向重工代表の翼です。……あなたはー」
電話口に出た意外な人物に驚いた様子を見せていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日フェニックスネスト
「フェニックスネストのフライトモードへの変形準備は整った。今日向重工の方々が行う点検作業が済み次第、フェニックスネストはフライトモードを実行、ウルトラゾーンへと向かい調査及び閉鎖作戦に移る」
指令室に集うNEXT GUYSのクルーメンバー
その全員がヘルメットやグローブ等、いつも以上の装備を整えている
『総監と私の許可も既に通っています。我々は地上から作戦成功を祈っていますよ』
通信として参加していた真田補佐官が補足する
「作戦内容の確認は終わっているか?」
「ばっちりですよ」
「なんとか叩き込んできました」
「よし。ならば後は作戦遂行を待つだけだな」
と剛が締め括る
が翔真と花はお互いの顔を見合わせて頷くと、手を上げる
「隊長、すみません。意見よろしいですか?」
「どうした翔真?改って……」
翔真と花は剛の面前に並ぶと、ある提案をする
「隊長、勝手を承知でお願いします。俺たちを地上基地に残してはくれませんか?」
「……理由を聞こう」
「……私事ではありますし、杞憂かもしれませんが、私たちは石動司令官の行方不明とA.I.G.I.S.の内部改革にどうも嫌な予感がしています。今地上を空けてしまうと、その何かが進行してしまう可能性も考えられると思います」
「その対策のために、2人はここに残るというのか」
「先日も謹慎中の勝手な行動をしたばかりですみません」
「でも、この問題を見過ごしたまま重大な作戦に私たちは参加できないと判断しました」
「「無理を承知でお願いします。隊長」」
2人が頭を下げる
しばしそれを真剣な様子で剛は眺めていた
「勝手なお願い、ではないなそれは」
剛は優しく微笑み、2人の肩を叩く
黙って聞いていた輝とケリスも納得したように頷く
「2人の作戦提案、了解した。この地球での留守番と、可能ならA.I.G.I.S.の調査も任せる」
剛の言葉に2人は顔を見合わせて驚くも、すぐにもう一度頭を下げる
「「ありがとうございます!」」
『僕も地上に残りますからいざという時は力になります。日向重工の社長としても、イカロスの力を借りるという意味でも』
翼から通信越しに言葉がかけられる
「心強いよ、翼くん。ではー」
「じゃあ2人の面倒はあたしらが見ておこうかね」
突然指令室に入ってきた一団、その先頭の一人が告げる
「
「いよっ、翔真。隊長呼びは仕事ん時……ってもう今はあたし隊長じゃなかったんだわ」
「いやいや、俺らがついてきたんすからまだ華鈴隊長ッスよ」
「華鈴くん、A.I.G.I.S.の方はどうしたのかね?」
「辞めてきました」
『ハァッ!?!?』
剛の問いになんでもないことのように答えた華鈴がからからと笑う
「元々A.I.G.I.S.にいたのは石動司令がいたからだからね。あの司令になら、あたしもこいつらも背中預けられたし」
「……どこの馬の骨かも分からんヤツが急に実権を握るなどおかしい話だ。俺たちはそんなヤツについていく気は無い」
「そういうことで、隊長以下A.I.G.I.S.機動部隊はA.I.G.I.S.辞めたんですよ」
と締め括る男性隊員の腹に軽く肘を当て、華鈴が付け加える
「お前たちまで辞める理由は無いって5回は止めたろうが…」
「華鈴隊長と石動司令以外の、認めてない隊長や司令官に従うくらいなら辞めてやりますよ。それだけ俺たちは隊長と石動司令に背中預けてますから」
「……まぁ、そういうこと。ひとまず総監補佐官殿、あたしたちを臨時隊員として雇ってくれないかい?」
華鈴の申し出に真田は快く頷く
『あなたがたのような方ならこちらとしても大歓迎です。剛隊長たちが宇宙にいる間、その力お借りします』
「私としても華鈴くんたちがいてくれればより心強い。うちの隊員たちを頼む、華鈴くん」
剛の言葉に華鈴はサムズアップして答える
フェニックスネストから少し離れた制御管制施設
日向重工の職員から報告を聞き、翼が改めて剛たちに通信を繋ぐ
「点検作業は終わりました。フライトモードへの変形、可能です」
『わかった。ありがとう、翼くん』
「ここから先は皆さんにお任せします」
そう告げて翼は首から下げた二つのうち、青いネックレスを握る
「地球は、僕たちに任せておいてください」
『ーああ、頼んだ』
笑顔で頷く剛を見て、通信を切る
ふと端末に目を落とすと日向重工本社から着信が入っていることに気づく
「?何か火急の用件でも入ったかな…?もしもし?」
インカムを付け、本社からの通信を繋げる
『HELLO、
聞き慣れない機械音声混じりの声に翼の警戒度が限界まで上がる
「誰だ、お前は……‼︎」
『オレ?YOUならもう気付いてんだろ?オレが
通信越しの声は笑いながら伝える
『ー翼社長‼︎ そいつの言うことに耳を貸さないでください‼︎ そいつの狙いはー』
アルミルの声が鈍い打撃音でかき消される
『まぁ、YOUがそういうHUMANならそれでいいが……早くCOMEしないと……コイツらの
通信が途切れるが早いか、翼は部屋の外に駆け出す
すれ違いにコンが翼を呼び止める
「ちょっと⁉︎ 翼どこに行くつもり⁉︎」
「本社が襲撃された…僕がなんとか対処するからってみんなには伝えて、コンはフライトモード変形のサポートを‼︎‼︎」
「はぁ⁉︎ ちょっと、あんた一人でどうするつもり⁉︎」
呼び止める間もなく、翼は一人駆け出していく
周囲の職員ともども呆然とするコンだがすぐに気を取り直し
「大丈夫なわけないでしょ…‼︎」
頭を掻きながら剛たちに通信を繋げて救援を呼ぼうとして
「おっと、それは大丈夫だよコンちゃん」
と、聞き慣れた声に止められた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
日向重工本社
乗りつけた車もそのままに翼がビルへと駆け込む
ロビーや受付には負傷し倒れた職員や怯えた様子の職員が何人もいた
「社長……‼︎」
「神谷さん⁉︎ 大丈夫ですか⁉︎」
受付からなんとか顔を出した社員ー神谷に声をかける
「わ、私はすぐに身を隠したので助かりました…でもみんなが…」
「侵入者はどこに…⁉︎」
「直接見てませんが、しゃ、社長を探してたので…社長室の方に向かったかもしれません…‼︎」
「…‼︎ 神谷さんは動ける皆さんに声をかけてビルの外へ避難を‼︎」
翼はそのまま社長室フロアへと足を向け、急行する
『おっと、中々にQUICKLYな登場だなPRESIDENT』
社長室フロアのラボラトリー
実験器具や計器が散乱したそのエリアから現れたのは黒い装甲とオレンジの瞳を持つ異形
「お前は誰だ。アルミルをどうした⁉︎」
『おっと、こいつはSORRY……オレはこういうPERSONだ』
異形はどこからか名刺ケースを取り出し、一枚の名刺を投げて渡す
「殺し屋、ガピヤ星人ガイス……‼︎」
『YES‼︎ COSMOいちCOOLなKILLER、ガピヤ星人ガイス様とはこのオレのことさ。ピッカピカのRED LISTの、なァァ!!!』
突然左腕からブレードを伸ばし、突撃してきたガイスの攻撃を間一髪でかわし、その腕を掴み押さえるがそこをガイスは絡めとり羽交い締めのようにして翼を捕まえる
『会いたかったぜ、PRESIDENT 翼ァ‼︎ FAKEのウルトラマンをONEから生み出したCRAZYなBOY…‼︎ 一応
ゲハハハハァァ‼︎と笑うガイスの腹に肘鉄を撃ち込み、背負い投げの要領で投げ飛ばして拘束を解き、投げ飛ばされたガイスに組み付き、拳をその顔面に打ち込む
が、ガイスはそれでも愉快そうに笑いながら翼の肩を殴り飛ばす
「がっー⁉︎」
社長室のドアに叩きつけられ、ドアを破壊しながら吹き飛ばされた翼はなんとか受け身を取りながら立ち上がるが、ガイスは瞬時に距離を詰めてその胸ぐらを掴みデスクに叩きつける
ーゴシャッ!!!
ブレードを振りかぶるガイスの頭に機材がぶつけられる
「社長……逃げてください…‼︎」
体の各所から血が滲んだアルミルがフラフラと社長室に入ってくる
肩で息をするその姿は今にも倒れそうだった
「アルミル…‼︎ よせっ‼︎」
『……
ガイスは右手の手甲に装備した銃口をアルミルに向ける
そこから弾丸が放たれるー
「ーシッ‼︎」
その瞬間、疾風のごとく現れた黒い影がガイスの右腕を床に叩きつける
『なーンゴォあッ!?!?』
返す刀で厚底ブーツの蹴りがガイスの顔面を鋭く横から蹴り飛ばし、床に転がす
「ふぃ〜間に合った間に合った」
ガイスを蹴り飛ばしたのは翼も見知った人物ー華鈴だった
「華鈴さん⁉︎」
「よっ、翼くん。なんとか間に合ってよかった」
朗らかに笑いながら華鈴は倒れかけたアルミルを支え、壁にもたれさせながら翼に手を挙げる
『HEY……どういうつもりだテメェ……オレのENTERTAINMENTを……‼︎』
変な方向に曲がった首を元に戻しながらガイスが華鈴を睨む
少し怒りのこもった顔で華鈴がガイスを睨み返す
「ー知るかバカ。殺しの遊びなんざクソ野郎のすることだろうが」
華鈴はこきこきと拳を鳴らし、翼の側へ並ぶ
「好きにやりな翼くん。あたしはあんたに合わせるからさ」
「ー‼︎はい‼︎」
華鈴の言葉を聞いて突撃してくるガイスの腕を掴み、その関節を締めながら裏拳を胸に叩きつける
そこに華鈴がボクシングの要領でジャブを何度も叩き込み、トドメとばかりに蹴りを鳩尾に打ち込む
よろめくガイスの顔面に華鈴の、鳩尾に翼のストレートと正拳突きがめり込む
『げはぁッ⁉︎』
機械改造した身とはいえ、装甲の薄い部分のダメージは殺しきれずよろめく
「ーセェッ!!!」
ダメ押しとばかりに華鈴が高く振り上げた踵をその首に叩きつけ、再びガイスは床面に沈み込んだ
沈黙したガイスを踏みつけ、華鈴が手にしたトライガーショットを向ける
「助かりました…」
安堵して脱力、少しふらつく翼の腕を掴み華鈴がその体を支える
「いいってことよ」
笑って手を振る華鈴
その一瞬の隙を突き、ガイスは拘束を振り切り立ち上がる
『ハハハッ……‼︎ SURPRISEはこれからだ……NESTがお留守だぜ?』
捨て台詞を残し去っていくガイス
華鈴のインカムに通信が入る
「フェニックスネスト目前で次元異常…⁉︎ 超獣が来るってワケ⁉︎」
「……あのガピヤ星人、ヤプールの仲間だったのか…‼︎」
気絶したアルミルを介抱しようとする翼の肩を掴み華鈴が告げる
「この子は任せなそっちはすることあるんだろ?ウルトラマンイカロス」
「えっ、どうしてそれを…⁉︎」
「司令から聞いてるよ。あたしも隊のみんなも。彼もまた私と同じ道を探し歩み切り開くものだから手出し無用、ただしいざとなれば力になってやれってね」
とウインクしながら告げる
「ーありがとうございます、華鈴さん‼︎」
その言葉を受け取り、翼は地下格納庫へのエレベーターに向かう
華鈴もすぐにアルミルを抱え、フロアを後にする
無人になった社長室のフロア
その中で何故か翼のデスクのパソコンだけ点灯、黒いモヤを放出し、様々なデータを表示し始めていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
数分前 フェニックスネスト
「各部変形稼働、80%まで完了」
「搭乗員の配置は既に終わりました」
指令室でコンソールを操作しながら輝とケリスが告げる
「……このまま何もないといいんだが…」
「不吉なこと言い出すのはやめてくださいよ隊長……」
と剛の呟きに輝がつっこんだ瞬間
ービーッ‼︎ ビーッ‼︎ ビーッ‼︎
けたたましい警戒アラートが鳴り響き、フェニックスネスト目前の空が割れて青紫の空間が顔を出す
「次元異常確認‼︎ 異次元ゲートが開いてます‼︎」
「このタイミングでヤプールの妨害だと…‼︎」
ークォォォォォォォォォォン!!!
空を切る咆哮とジェット音と共に何かがゲートから飛来、そこから放たれたミサイルのようなものでフェニックスネストの周囲が爆破される
基地内を襲う衝撃に3人がよろめく
「フェニックスネストの発進を妨害してるのか…‼︎」
『隊長‼︎ ここは俺たちが出ます‼︎』
翔真と花からの通信に隊長が頷く
「頼んだ、2人とも‼︎」
ークォォォォォォォォォォン!!!
超高速で飛翔する黒い影を発進したガンフェニックスレガシーから翔真たちが目視する
「あのスピード…翔真くんのウインガーなら対応できそう?」
『五分五分……いや難しいかもしれない。だけど、俺単独の方が追尾はしやすいのは確かだろう』
「わかった。基地は任せて、攻撃は私が防いでみせるから」
『ガンフェニックスレガシー、スプリット‼︎』
分離したウインガーがフルスピードで黒影に迫り、ローダーは基地指令室の前方に滞空し様子を伺う
ークォォォォォォォォォォン!!!
超高速で飛翔する何かにウインガーが追い縋っていくが、何かはそれをモノともせず、振り切ろうとすることなく再びフェニックスネストへ飛行し始める
「させる、かッ‼︎」
ウイングレッドブラスターでの追撃、ようやくウインガーからの攻撃を脅威と見做したのか黒影が回避しながら後方にミサイルを乱射
ウインガーはそれをなんとか回避するが、そのうちの何発かはフェニックスネストの周囲に着弾
致命的な部分への飛来は間一髪でローダーが迎撃する
「クソッ…‼︎ ファントムアビエーションでも追いつけるかわからないぞこれ…‼︎」
ーシェアッ‼︎
レガシーローダーと並び立つようにイカロスがフェニックスネストの前に降り立つ
「こいつは…‼︎」
イカロスの高感度カメラを通しても黒影を捉えることは難しいようで、狙いを定めかねる翼
何発か光弾を放つが、掠りもせず避けられてしまう
「こうなったらー」
『翼さん後ろッ‼︎』
『HELLO〜ウルトラマンイカロス……』
花からの通信が届くが早いか、下卑た声が響く
振り返ったイカロスをガピヤ星人ガイスの刃が何度も切り裂いた
ーシェアァァッ⁉︎
突然の不意打ちにイカロスが倒れ込む
『ハッハァ……‼︎ 第2ラウンドと行こうかイカロスゥ…‼︎』
「ガイス…‼︎ こんな時にッ‼︎」
ガイスからの銃撃をかわしながら立ち上がるイカロスの背とフェニックスネストの周辺に空を切り裂く黒影からのミサイルが降り注ぐ
ーシェアァッ⁉︎
思わずよろめくイカロス
それを見たガイスは苛立たしげに黒影を指差す
『HEY!!YOUの狙いはあのNESTだろうが‼︎ オレのTARGETまで狙うんじゃねぇ!!』
膝をつくイカロスの中で翼はガイスと黒影を睨み、何かを決断する
「今がこれの使い時ーグッ⁉︎」
何かを起動しようとしたイカロスと翼を黒影からの攻撃が襲う
そこに負けじと近づいてきたガイスの連続斬りが襲い、その体をビルへ叩きつける
『こうなったら、ヤツの前にYOUをKILLしてやるぜェ…‼︎』
「各部の変形状況は!?」
「先程の攻撃で少し遅延して95%‼︎ まだ1分は早くともかかります‼︎」
ケリスからの報告に剛が渋面を見せる
ガイスと組み合うイカロスー翼とこちらに逐一攻撃を仕掛けてくる黒影、花の乗るローダーのスピードでは攻撃をいなすのが手一杯、翔真の乗るウインガーでもそのスピードに対応しきれない
「クソッ、考えろ……何か策は…‼︎」
『ー策ならここにあるだろうよ‼︎』
どこからか入ってきた通信と共に蒼い翼がフェニックスネストを掠めて飛んでいく
「この戦闘機ヤロウ…‼︎」
なんとか攻撃を当てようとする翔真だが、黒影はそれを回避し続ける
『苦戦してるようだな、翔真‼︎』
その黒影に蒼い光線が飛来、避けたその先を予想していたような追撃が突き刺さり、黒影が初めてよろめいた
「な…なんて偏差撃ちだ……」
『この程度で驚くならまだまだだなぁ翔真』
悪戯っぽい声の通信と共に並列飛行してきたのは、蒼い翼を持つウインガーの同型機
「その機体……まさかシーウインガー⁉︎ しかもその声はー」
『いよっす‼︎ 元隊長が手助けに来てやったよ』
シーウインガーに乗っていたのは華鈴だった
思わぬ救援に驚く翔真たちにミサイルが襲いかかる。黒影の凶獣が2人を脅威としてようやく認識したのだ
『あたしはA.I.G.I.S.にくる前はGUYS・オーシャンで飛行機乗りしてたのさ。まだまだ若いヤツに負けてやる気は無いよ‼︎』
「ーハハッ、俺も負けません‼︎」
2機のウインガーが黒影へと高速で突撃していく
「剛隊長‼︎」
『ああ、メテオール解禁!!』
『バーミッション・トゥ・シフト、マニューバ!!!』
メテオール解禁と共にレガシーウインガーとシーウインガーがマニューバモードへと変形
光り輝く粒子を纏い、より精密に、より高速に立体機動を繰り返し、空を舞う
黒影はシーウインガー側に狙いを定め、それにミサイルを放つ
シーウインガーはマニューバモード故の急停止からの旋回を応用させ、それを回避しながら黒影へと肉薄していく
今度は黒影がシーウインガーを追従する形となり、ソニックブームを巻き起こすような高速の空戦が展開される
そんな中、突如シーウインガーが急停止し、翻る
ークォォォォォォォォォォン!?!?
黒影の目前にはレガシーウインガーがいたのだ
「ここだ…‼︎ スペシウム弾頭弾、ファイア‼︎」
放たれたスペシウム弾頭弾4発を黒影はすかさず回避する
が、それはブラフ
ークォォォォォォォォォォン!?!?
避けた先に飛来したもう2発のスペシウム弾頭弾が黒影の翼を砕く
「いきなりあたしの真似とは、やるじゃないの…‼︎」
華鈴も黒影を捉え、引き金を引く
シーウインガーがいたのは、黒影の真上。太陽を背にしたシーウインガーからミサイルが放たれる
「ダメ押しにくらいな‼︎ スペシウムトライデント!!」
シーウインガーから放たれたスペシウムトライデントが黒影に直撃
きりもみ回転しながら地上へと墜落していく
ーシェアァッ‼︎
『ぬおっ⁉︎』
組み合った状態から突き飛ばされるガイス
そこにマニューバモードになったレガシーローダーから追撃が放たれる
「ブリンガーファン、ターンオン‼︎」
ブリンガーファンが巻き起こす旋風巻き込まれ、ガイスの体が宙を舞う
『Nooooooooooo!!!』
イカロスから離れた地面に叩きつけられるガイス
更にその上に墜落してきた凶獣が叩きつけられる
『邪魔だ‼︎』
ークォォォォォォォォォォン‼︎
その身に乗る巨体を押し除け立ち上がるガイス
押し除けられた巨体が浮遊。ようやくはっきりとした姿を見せたブーメラン型のボディにラインが走り、変形していく
ーギシャァァァァァァァァオォォォォォウゥゥゥ!!!
そこから現れたのは青い目を輝かせる恐竜じみた巨体を持つ凶獣ードラーフィア
両腕には翼から変形した鋭いブレード型の爪が伸びている
相対していたイカロスが構え直し、クルーズモードに戻った三機と並ぶ
『待たせたな、みんな。今度はこちらの番だ‼︎』
通信の声に翼が振り返る
皆の背後にあった不死鳥の砦が、大地を震わせながら駆動していたのだ
指令室のあるブリッジが前方へ延伸、主翼が展開され、エンジンに火が灯る
「フェニックスネスト変形段階100%‼︎ エンジン駆動も問題ありません‼︎」
「よし‼︎ フェニックスネスト、離陸‼︎」
剛の掛け声に頷き、輝とケリスが操作。フェニックスネストが空へと飛行をはじめていく
『チッ、TIME UPか!?』
ガイスが悪態を吐きながら腕の銃口を向け、撃つ
が、その射撃はフェニックスネストを覆うエネルギー障壁に弾かれる
「フォトンフィールドも正常に稼働してる…成功だ‼︎」
翼がホッと胸を撫で下ろす
「主砲延伸!!」
フェニックスネストのブリッジ上部分から巨大な砲身が展開、固定される
「専用メテオール弾頭装填‼︎ メテオール粒子圧縮充填‼︎」
「ターゲットロックオン‼︎ 」
青白く輝くエネルギーを迸らせた砲身がガイスとドラーフィアへと向けられる
「メテオール解禁‼︎ フェニックスフェノメノン、発射‼︎」
『発射!!!』
フェニックスネストの主砲が大気をも震わせるエネルギーを撃ち出す
たまらずガイスは逃亡しようとするが、その襟首をドラーフィアが掴み自身の前に押し出す
『な、テメっーぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
フェニックスフェノメノンはガイスに直撃、膨大なエネルギーの奔流を受けガイスは全身からエネルギーをスパークさせる
『テメェ……FIRSTから…そのつもり、か…ッ‼︎』
よろめくガイスを捨てるように前に投げ、背中から放つミサイルでガイスにトドメを刺す
「あの怪獣……異星人の仲間ではないのか…⁉︎」
『剛隊長‼︎ あとは僕に任せてください‼︎』
驚く剛に翼からの通信が入る
ーシェアァァッ‼︎
ーギシャァァァァオォォォォウウゥゥ‼︎
イカロスがドラーフィアと激突、その爪の攻撃をいなしながらボディに的確な一撃を加えていく
ーギシャァァァァオォォォォウウゥゥ‼︎
ドラーフィアはイカロスの攻撃を弾き、目から放つ光弾で反撃し吹き飛ばす
距離を取ったドラーフィアは背中から放つミサイルでさらに追撃を放つ
「やらせない‼︎ フューチャーシステム、スタート‼︎」
イカロスが左手に装着していたバックラーが展開、同時にバックパックから緑の粒子が吹き出し、ミサイルが降り注ぐ中イカロスの体へと纏われていく
ミサイルの爆風を払い除けて現れたのはイカロスの新たな姿
青く輝く胸と右腕に装着されたエックス字のラインが走るプロテクターを装備し、展開されたバックルからは電子回路のような模様が走る緑の構造がのぞいている
「イカロスの、新しい姿か‼︎」
ーシェアァァッ‼︎
新たな姿のイカロスはその姿を緑に輝かせると一瞬でドラーフィアへと距離を詰め、拳を叩き込む
反撃として放つミサイルの雨の中、イカロスはその姿を緑の粒子に分解させながら瞬間移動を繰り返して回避し続ける
「高エネルギー分子ミスト制御コンピューター動作正常。マケット怪獣に使われているこの技術をエックスのデータとレムさんから学んだ技術の応用でイカロスに組み込むのは、うまくいったみたいだね」
ーシェアァァッ‼︎
ドラーフィアの背後へと瞬間移動したイカロスのチョップが背中のミサイルポッドを破壊する
ーギシャァァァァオオオォオォウ!!
弱々しく咆哮するドラーフィアが口元と胸のエネルギーコアに赤黒いエネルギーのチャージをはじめる
「ーサイバーマケットウォール‼︎」
左手のバックラーからマケット粒子の盾を形成、それを目前に放つ
ドラーフィアから放たれた光線が盾に直撃するが緑の燐光を纏う盾は光線を遮断し、イカロスを守る
左手のバックラーが背中へと格納され、イカロスは必殺光線の構えを取る
光線の消失と共に盾が消失
だが、それで十分だった
ーシェアァァッ!!!
イカロスのアポロニウムシュートがドラーフィアの胸部コアに直撃する
ーギシャァァァァオオオォオォウ!?!?
ドラーフィアは悲痛な悲鳴をあげながら仰向けに転倒
虹色の燐光を放ちながら爆散した
「よし‼︎ 作戦完了だ‼︎」
「やったぁ‼︎」
指令室で剛たちが歓喜の声をあげ、それぞれのコクピットで翔真たちが安堵と喜びの表情を見せる
夕焼けの空に空に留まるフェニックスネストの前にイカロスとレガシーウインガー、レガシーローダー、シーウインガーが滞空。地上ではコンや元A.I.G.I.S.のメンバーたちが並ぶ
「これより私たちは、宇宙空間に開いたウルトラゾーンの調査とその封印作戦を敢行する」
ウインガーたちと、更にイカロスに乗る翼からも通信が繋がる
「その間、地球をよろしく頼む。翔真、花、華鈴隊長に…翼くんたち」
剛が笑顔で告げると、通信画面に映る翔真たちも笑顔で敬礼する
翼の動きに合わせてイカロスもフェニックスネストに敬礼する
それを受け取り、フェニックスネストは反転して宇宙へと飛行していく
イカロスーそれに乗る翼は感慨深そうにそれを見送った
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「2体目の凶獣も倒されたか。加えて我々の新たな信奉者も死んだ。中々の痛手と見るが?」
黒いローブを纏う老人ーヤプールが傍で椅子に腰掛ける男ー八坂 英輔を試すように見つめる
「正直なところ、あの新たなイカロスの姿は計算外でした。ドラーフィアに収集させる予定だったアーマード・ダークネスを応用したと思しきあの形態の戦闘データを逃してしまった……」
残念そうに告げる英輔の周りに黒いモヤのような何かー3体目の凶獣・フューゼクスが現れ、その後ろのデスクに備え付けられたパソコンへと侵入し、起動させる
「ーが、ガイスは期待以上の仕事をしてくれましたよ。このフューゼクスと共に、ね」
邪悪な笑みを浮かべた英輔がパソコンへ向き直る
ガイスが社長室で翼と乱闘したその時、ガイスの体に秘密裏に憑依していたフューゼクスは翼のパソコンへと侵入、そのデータを盗み出していたのだ
「元々は別の目的でしたが、日向 翼の端末に潜入できたならば当初以上のモノが手に入ったはず。この通り」
パソコンに表示されていくデータの中から英輔はあるデータを発見し、拡大する
《
そこから更に深層へとアクセスし目当てのものを発見する
《ARMORED DARKNESS》
暗黒の「皇帝」が遺した遺物の解析データを
「これでようやく、僕の女神は完成に向かう。ピースはあともう一つだけだ」
立ち上がる英輔
その背後の窓から臨む格納庫に佇む巨影が英輔とヤプールを見下ろしていた
宇宙へと向かった剛たちから地球を任された翼たち
休む間もなく神戸の街に紫の結晶を持つ異星人が姿を現す
異星人の狙う海上研究センター
そこにあるモノとは
更に突如現れたもう一人のイカロスにより神戸は混乱へと誘われる
次回ウルトラマンイカロス
『深淵よりの御使い』