青い海上に浮かぶ船
そのすぐ上を「何か」が目にも止まらぬスピードで駆け抜けていく
飛行する巨影を追い、海中からシーウインガーが飛び出す
「クソッ、こっちはこっちで忙しい時に…‼︎」
シーウインガーから先行して飛翔する存在がその身を翻し、被膜のようなマントを広げながら胸の中央部に紫の結晶体が生えた青い体表の異星人が吠える
『有象無象ごときが邪魔をするな‼︎ メビウスを倒してオレは連合のトップになるのだ‼︎』
異星人はハサミ状になった腕から光弾を連射し、シーウインガーを攻撃。だがシーウインガーはくるくるとその機体を翻し、海中への移動も交えながら回避する
『ユニオンドキュメントレッドリストに同種族登録確認しました‼︎ レジストコードは極悪異星種族・テンペラー星人です‼︎』
「レッドリストってことは攻撃もOKってことね‼︎ くらいな‼︎」
花からの通信を聞いてシーウインガーはテンペラー星人に反撃のレーザーを放つ
肩口にレーザーを受けテンペラー星人はバランスを崩しかけるが、返す刀でハサミ状の腕から伸ばすビームウィップを振り回してシーウインガーを退かせる
「クソッ…‼︎」
ーシェアァァッ‼︎
シーウインガーとすれ違う銀影ーウルトラマンイカロスがテンペラー星人へと突撃
その肩を掴み、港湾近くの海に共に落下する
『ぬぅぅぅ‼︎ 何者だ貴様ァ‼︎ オレの邪魔をするなァ‼︎』
追撃しようとするイカロスをテンペラー星人は苛立たしげにビームウィップを振り回して後退させる
その様子を仮設指令室で分析していた花が胸の中央部に着目する
「紫の結晶体、仮称《ネクロヴァイス》確認……この異星人も怪獣墓場から蘇ってきたの…?」
ーシェアァァッ‼︎
ビームウィップを掴み、テンペラー星人を引き寄せつつ鋭い蹴りがその体を捉える
ハサミでの打撃を的確にいなし、イカロスの拳がその肩や胸に打ち込まれる
よろめくテンペラー星人を狙ったイカロスの光弾を同じく光弾で弾き落とし、一際強力な光弾を放ちイカロスをよろめかせる
『メビウスでなくとも貴様もウルトラマンならば…オレの手柄としてここで死ねェェェ!!!』
テンペラー星人がハサミを合わせて強力な稲光を放つ光線を放つ
ーシェアァァ!!!
それに応じてイカロスもアポロニウムシュートを放つ
2つの光線が衝突。周囲にエネルギーのスパークが飛び散る
が、拮抗は一瞬。アポロニウムシュートがテンペラー星人の光線を押し返しそのまま星人の胸元に直撃。星人の体をエネルギーが迸る
『ごァァァァァァァァ!?!?オレは、オレはァァァァ!!!』
断末魔の悲鳴を上げながらテンペラー星人は爆散
大きな水飛沫を上げながら爆炎が空へと昇る
突如神戸の港に降りかかった災いは払われたように思われた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「
通信越しに会議に参加している翼が翔真から伝えられた名前を聞いて何が思うところがあるような表情を見せる
『テンペラー星人の進路を予測した結果、そこに辿り着いたんです。あのままテンペラー星人が進行していた場合はその研究所に到達していた可能性が高いです』
花の分析結果が合わせて送られてくる
テンペラー星人の飛行ルートとその予測軌道。その上に間違いなく神宮寺海上研究所は存在していた
『神宮寺……どっかで聞いたことあるような……』
「海洋学者の権威であり創設者でもある神宮寺博士の名前が使われているんです。神宮寺博士は有名な方ですから、聞いたことある名前だったのかもしれません」
『言われてみたら石動司令がそんな名前出してたような気するわ。なるほど海洋学の研究施設なのね』
「表向きは海洋学の研究施設ですが、それとは別に怪獣や異星種族のサンプル保管及び分析を行う施設でもあります。それも、ただのサンプルではなく特にー」
「ー特別な保管や管理が必要な、サンプル化してなおなんらかの特殊な能力を保持したマテリアルを保管しているのがその海上研究所なのです」
翼の補足説明に翔真たちが生唾を飲む
『怪獣墓場から蘇ったゾンビが真っ先に狙いうる何かがある…か…』
「…………」
しばし思案するような様子を見せていた翼が意を決したように提案する
「海上研究所ですが、僕の方で少し調査してみます」
『翼さんが……?』
「僕なら日向重工の取締役として顔が効きます。今はまだ事件性が推測の域を出ない以上、NEXT GUYSや華鈴さんみたいな人が向かうのは妙な警戒を招きかねませんから」
「ーそれに、僕も顔を合わせておきたい相手がいますから」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
神宮寺海上研究所
そのゲートで検査や審問を行いながら翼はどこか深刻そうな顔で研究所を見据えていた
エントランスに入った翼とコンたちを行き交う白衣の職員たちは一瞥するが、さしたる興味も示すことなく作業に戻っていく
「なんか感じ悪い連中……」
「ここの人たちは研究に没頭したいがためにここへの配属を望んでる人が多いからね。僕らのような客人も用がある当人以外には興味を示さない人が多いはず…」
翼の返答にコンが露骨に嫌そうな顔を見せる
「……仕事モードのあんたも面倒な時あるけど、それ以上のヤツいるとか…世界は広いわね……」
白い内壁が続く廊下を進む二人
時折すれ違う科学者たちもさして興味がないようにすれ違っていく
「どこか冷たい雰囲気の場所だ……僕もここは、少し苦手かもしれないな…」
翼はようやく目的の部屋を見つけ、インスタントコードが記録されたカードキーを読み込み室内へと入る
入った先の部屋は大きなコンピューターが設置された小さな部屋になっていた
中央の端末を起動すると部屋にあるいくつかのモニターにリストや画像が表示される。これらは全てこの研究施設に保管されている「曰く付き」のサンプルたちである
「プリズ魔の組織サンプル……ゼットンのエネルギーコア……円盤生物由来の生命コンピューター……超獣から採取された特殊細胞……」
次々と上がってくる実験・研究データはどれも怪しいものであり、異星人が利用しようとしていると考えられるようなものばかり
「……バルタン星の母艦から回収された人工太陽ーこれは?」
その中から翼は気になる研究データを発見した
サンプルの搬送日は最近。分類は「機械生命ないしはロボットの部品」となっているそれはもちろんながら翼には印象的な代物だった
白亜の装甲を持つ赤い目の頭部、そしてそれとよく似た黒い装甲の何かの紋章のようなものが見られるパーツ
「ギャラクトロンとギルバリスのパーツ……これもここに搬送されていたのか……」
彼らの強力さを文字通り身をもって知っている翼だからこそ感じた嫌な予感を拭い去り、更にデータを見ていく
そのデータ群の底も底、最奥にあるデータに翼は気づく
「……《マテリアル・UK》…?」
データを開きその詳細を確認する
保管場所はこの神宮寺海上研究所最深部の《セクション・000》
添付された画像には生前の姿を少し見ることができる遺骸の画像が添付されていた
それを見た翼が目を見開く
「この遺骸、まさかレジストコード……Uキラーザウルスの…⁉︎」
究極超獣Uキラーザウルス
70年前、ヤプールが生み出しウルトラ4兄弟を一時的に戦闘不能に追い込み、ウルトラマンたちのエネルギーでUキラーザウルス・ネオへと成長しウルトラマンメビウス、ウルトラマンタロウ、ゾフィーを加えたウルトラマンたちを苦戦させた恐るべき敵
ウルトラ兄弟たちの力を借り、合体したメビウスインフィニティーにより倒された究極の名に恥じない力を持つ強大な超獣
(遺骸は存在するとは思われていたけど、海底に沈んだはずだった……まさかサルベージと保管がされていたなんて……)
データベースを閉じ、翼が部屋を後にする
それを見たコンがその後を追う
「何が見つかったの?」
「想定の何十倍も悪いものが見つかった。ここの所長にかけあっておく必要がありそうだ」
情報保管室を後にする翼とコン
通りすがる研究者たちはやはり見向きもしないが、その中で一人の研究者がじっとその背中を睨んでいた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
宇宙空間
水星と金星の間にその穴はポッカリと口を開いていた
ウルトラゾーン
怪獣頻出期に何度か見られた空間の裂け目
70年前にGUYSが直接侵入して調査を行った際には怪獣たちの魂が眠る怪獣墓場へと繋がることが判明していた
その目前にメテオール粒子を纏ったフェニックスネストが到着する
「メテオールマイクロワープ完了。目標のウルトラゾーンを目視で確認できる位置まで来ました」
指令室でケリスが報告し、剛と輝が頷く
「あれが…ウルトラゾーン…」
モニターに映る空間の裂け目を見つめ、輝が固唾を飲む
「ビビってます?輝先輩」
「……流石にな。こんなとこに今から入るんだから…」
「……良かった。私だけじゃないみたいで」
「武者震いというヤツだろう。むしろこれくらいの緊張が無ければ、油断と慢心に足元を掬われる」
互いの顔を見合わせ、NEXT GUYSの精鋭3人は緊張感を滲ませながらも笑って頷く
フェニックスネストの後方からリングを重ねたような造形の小型ドローンが射出。 フェニックスネストからビームワイヤーを接続し、起動される
「アリアドネアンカー、正常起動」
「よし!これよりウルトラゾーンの域内調査、及び封鎖作戦に移る!NEXT GUYS、サリー・ゴー‼︎」
『G.I.G.!!!』
フェニックスネストのブースターが点火され、ウルトラゾーンへと突入していく
それとすれ違うようにして小さな光の流星がウルトラゾーンから飛び出していった
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「警備体制の強化、ですか?」
翼とコンの前に腰掛ける女性がパソコンを操作しながら淡々と告げる
「ええ、この研究所に保管されているマテリアルを考えるなら、先の異星種族襲撃は前触れである可能性が高い」
「………」
「この研究所は秘匿すべき情報が多い故にNEXT GUYSにもほぼ干渉が不可能。このままでは、本格的な強襲があればマテリアルも研究者たちの安全も保障がー」
「ー必要ありません」
女性ー神宮寺所長がきっぱりと告げる
「……なぜですか?」
「我々にはNEXT GUYSの庇護は不要だからです」
ードォン!!!
と、研究所内に衝撃と派手な破壊音が響く
《海上隣接セクターに侵入者を確認 敵性存在と認定》
「言ってる側から侵入者じゃないの……早いところ翔真たちにー」
「必要ないと言ったはずです」
神宮寺所長は淡々と作業から手を離さず告げる
「そこまで疑問だと言うならば、実際に見てみてはどうでしょう?我々がNEXT GUYSという武力を不要とする理由を」
破壊された研究所の壁から姿を現したのはギルバリスが強襲した際にフェニックスネストを襲ったあの白亜の機械兵ーバリスレイダーの軍団だった
銃や剣で武装した機械兵は足並みを揃え、下層へと向かう道へ向かっていく
「バリスレイダー…⁉︎ なんでここに」
「次から次へと、面倒なヤツが来るわね‼︎」
侵入してきたバリスレイダーに追いついた翼とコンが懐からトライガーショットを取り出して構える
《侵入者を確認 排除対象と認定》
と、そこにアナウンスが流れ同時に壁面のハッチが開き、何本ものマニュピレーターが現れ、装着されたレーザーガンをバリスレイダーたちに向ける
《排除行動 実行》
マニュピレーターが構えたレーザーガンからバリスレイダーに掃射が開始される
バリスレイダーたちも反撃に銃撃を行うが、マニュピレーターは最小限の動きで回避、更に無防備な翼やコンを守るためにシールドを配置するものもいる
マニュピレーターたちの射撃はバリスレイダーの駆動部やコアを的確に射撃し、効率的に無力化していく
《排除終了》
あっという間に一個小隊ほどいたバリスレイダーたちは沈黙し、そのボディの残骸を新たに現れたマニュピレーターたちが分解して回収していく
「何これ……全自動にしてもとんでもないわね……」
「イマノツルギは正常起動。想定以上に正確な判断及び動作を確認した」
呆然と眺める翼とコンの背後から淡々とした声が響く
「ーどうだね?俺の組み上げたAI・イマノツルギが制御するマニュピレーターは。ここは全域に渡ってイマノツルギが制御する防衛システムに守られている。侵略異星人など、ものの数でもないんだよ」
振り返り、現れた人物の顔を見て翼がやはり、と薄い笑みを浮かべる
「……
「ああ、大学以来だな。日向」
翼が帝と呼んだ険しい目つきの青年は抑揚の薄い声で翼の名を呼ぶ
「は…?まさか知り合い…?あんたの…⁉︎」
「知り合い、というかは僕の友人かな」
懐かしむように翼が答える
それに一層驚きコンは目を見開いた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《
「ああ、ただいま」
帝に促されたエレベーターで到着したフロアに降りると、カメラが装備されたマニュピレーターが伸びてきて3人を分析するように見聞し、道を開けた
そこかしこでマニュピレーターが作業している中を進み、最奥の部屋へと入る
電子回路の設計図や複雑な計算式のメモが散らばる部屋のデスクに帝が腰掛ける
「ここが帝の研究室なのか…キミのところには助手や他の研究員はいないのか?」
「いない。皆辞めさせたよ」
帝はきっぱりとそう告げる
「俺のAIの方が能率的に作業をしてくれる。こちらの意図も間違いなく汲んで実行してくれる。非効率で非生産的な人間や異星種族の職員や助手なんか不要極まりないどころか邪魔だ」
帝はどこか不機嫌そうにそう告げる
「……日向重工の社長になったキミが、こんな穴蔵になんのようだ?」
「ちょっと仕事の要件でね。あと、キミに顔を見せにきた」
ハッ、と帝が吐き捨てるように笑う
「俺の顔を見に来た?なんとも非合理的だ。実にキミらしいが」
パソコンを開き、先程タブレットに記録していたデータを写していく
「足労させておいて悪いが、俺からキミにかける言葉はない。元々、あの時大学で出会った以上に俺たちを繋ぐものはないのだから」
帝の言葉にムッとしたコンが何か言おうと一歩踏み出そうとしたが、翼が制止する
「ー元気そうな顔が見れただけで良かったよ。じゃあ、僕はこれで」
「なんなのアイツ……感じ悪いとかいうレベルじゃないんだけど」
研究所での要件が終わり、帰路につく中コンがぼやく
「彼は昔からああいう感じなんだ。自分の目標と為したいこと以外に興味がないし、非効率・非合理的なものを嫌う。それでも、自分が為そうとしてることには真っ直ぐなんだ」
「………なんか根っこはどっかの誰かと近いのね」
コンが翼の方をチラと見ながら尋ねる
「学生時代からしてクソ真面目だったあんたが友達とまで呼ぶなんて、それほどのことでもあったってわけ?」
「まぁ、ちょっとしたことだったんだけどね」
大学生時代
既に昴からイカロスを受け継ぐと決めていた翼は一人勉学に勤しんでいた
友人を作ることやサークルに参加する以上に工学やメテオール学の勉強、研究に一辺倒で成績もそれなりに上位
そんな翼はいい意味でも悪い意味でも周囲から浮き、関わろうとする学生はそういなかった
『実に非効率な設計だな。見ていて気分が悪くなる』
そんな翼に唯一と言っていいほど関わってきていたのが帝だった
『効率を重視することが悪いとは思わない。だが、効率を重視しすぎて柔軟性が欠けているキミの設計も考え直した方がいいとは思うよ』
出会いは側から見れば最悪
だが、翼はこんな帝の在り方がどこか気に入った
自らの理想と夢を持ち、それにひたむき
だが翼の設計や考えに意見して、その改良案を提案してきたりとどこかおせっかいなところもある彼のことを翼は友人として大切に思っていた
『夢、か。俺の夢はAIの行く末を見届けることだ。AIの到達点を』
『そうなのか。僕は、作りたいものがあるんだ。大切なある人との約束なんだけどね』
大学を卒業してからは帝は科学者としての道を、翼は日向重工の社長としての道を歩み始め、顔を合わすこともなくなっていた
「……友達って言うのかしら、それ…?」
「一般では違うかもしれない。でも、僕は彼のことはいい友人だと今でも思っているよ」
訝しむコンと対照的に翼は楽しそうに笑っていた
「帝は着実に夢に向かってる。それが見れて今日は嬉しかったよ」
翼とコンは手続きを終え、研究所を出る
それとほぼ同時にメモリーディスプレイに通信が入る
「花さんから?はい、こちら翼。ちょうど今研究所からー」
『翼さん、気をつけてください‼︎ 神戸市内にネクロヴァイスのエネルギー反応がー』
ゴォンーッ‼︎
花の警告が早いか否か、大きな衝撃音が響く
海上の研究所の入り口からも市街地から煙が上がるのが見えた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
神戸市内
白昼の中突然の衝撃に人々は混乱しながらも集まり、騒ぎだしていた
「なんだなんだ?」
「怪獣か?」
「また宇宙人じゃねぇだろうな…」
「やめてよね……」
群衆の目の前でそれは立ち上がった
銀色の体、光を湛えた瞳
胸に輝く青の光
ウルトラマンイカロスが神戸の街並みの只中に立っていたのだ
ただそこに直立したイカロスは神戸の街並みを見下ろし、そこを行き交う人々をゆっくりと目で追っている
「やっぱ怪獣でも出たんじゃない?」
「どこに?イカロス以外いないけど」
「お前のこと倒しにきたんじゃない?フォフォフォッて」
「いやいやそんなことあるわけー」
ーシェアァァッ!!
ふざけ合っていた聴衆の目線の先にあるビルが轟音と共に崩壊する
イカロスがその手刀からエネルギーショットを放ったのだ
ーキャァァァァァァァァァァ!!!!
ーうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
突然の出来事に民衆たちは恐怖し、蜘蛛の子を散らしたように逃げ惑う
ーシェアッ!!!
イカロスはそれを意にも介さず、ビルへ光弾を放ち更に破壊を重ねていく。足元では踏み潰された車が爆ぜ、足に絡まり引きちぎれた電線が火花を上げる
どこか愉快そうに街を蹂躙していくイカロスの前にガンブレイバーとガンバスター、シーウインガーが飛来する
それを発見したイカロスは迷うことなく手刀からの光弾で3機を攻撃する
間一髪で回避した3機を見据え、イカロスの口元が不気味に歪んだように見えた
「私たちを襲うなんて…翼さんじゃない‼︎」
『当たり前だ。あの人がこんなことするはずがない‼︎』
花たちの攻撃をイカロスはエネルギーシールドを展開し、街中へ弾く
ーシェアァ…ッ‼︎
3機を睨むイカロスはアポロニウムシュートを放とうとその腕にエネルギーを貯めはじめる
ーシェアァァッ!!!
そのイカロスに空から飛来したもう一人のイカロスのキックが直撃し、アポロニウムシュートの発射を妨げる
ーシェアァァ……
ーシェアァァッ‼︎
イカロスとイカロス
全くと同じ容姿の巨人が並び立つ
片方は肩を怒りに震わせながら構え、反対にもう片方は力を抜いた姿勢でもう片方を睨めるように見つめている
「何者かは知らない…だけどー」
コクピットの翼はその手を握りしめ、怒りに震わせる
「その姿で、ふざけたことをするなァァァァ!!!」
ーシェアァァァァァァッ!!!
翼の怒りとシンクロしたイカロスがもう一人のイカロスに掴みかかる
鏡合わせのように同じ手を繰り出し、2人の巨人は拮抗した勝負を見せる
手を掴み合い、力のままに押し合うが双方の力は全くの互角
このままでは埒があかないと手を振り払い、距離をとる
ーシェアッ‼︎
ーシェアッ‼︎
手刀からの光弾
全く同じ威力の光弾が相殺、弾ける
ーシェアッ‼︎シェアァァッ!!
負けじとイカロスが光弾を連続で放つが、その全てにまた鏡合わせのように対応し、もう一方のイカロスが光弾を放ち相殺する
ーフッ、ハァァァァッ……‼︎
イカロスはアポロニウムシュートを構える
もう一人もまたアポロニウムシュートを構える
ーシェアァァッ‼︎
ーシェアァァッ!
2つのアポロニウムシュートが激突
高エネルギーが拮抗し、火花を散らす
膨大なエネルギーの衝突でエネルギーが爆発
2人のイカロスが互いに吹き飛ばされる
ーシェアァ……
立ち上がる両者。だが片方のイカロスの姿が瞬間的にブレ、別の姿が現れかける
ーシェアッ‼︎
もう一人のイカロスが立ち上がり様に光弾を放つ
その不意の一撃には対応できず、イカロスは光弾の直撃を受ける
『ぐぁぁぁぁぁぁ!?!?』
その体がホログラムが解けるように変貌ーいや、元の姿へと戻っていく
「あの姿……‼︎ ユニオンドキュメントに記録確認‼︎」
現れたのは巨大な頭部と体表に散らばるように生えた紫の結晶を持つ痩せ型の異星人
銀色の頭部には環状の口と菱形の目が存在している
「……《凶悪異星種族 ザラブ星人》‼︎ レッドリストの侵略種族です‼︎」
『なら心置きなくぶっ飛ばしていいってわけね‼︎』
シーウインガーからのバルカン砲がザラブ星人に迫るが、ザラブ星人は青い結晶状のバリアで弾く
ーシェアァァ……ッ!!!
間髪いれずにイカロスはアポロニウムシュートを構え、ザラブ星人も両手にエネルギーを迸らせはじめる
ーシェアァァァァァァッ!!!
ーハァァァッ!!!
アポロニウムシュートとザラブ星人の必殺光線が衝突
ほぼ互角な威力の光線は再び拮抗し始める
「イカロスは……この銀翼は……お前たちが土足で踏み荒らしていいものじゃない!!!」
ーシェアァァァァァァッ!!!
翼の怒りに呼応するようにタイマーリアクターが一層光輝く
それに合わせてアポロニウムシュートの出力が大幅に上昇、拮抗していたザラブ星人の光線を押し込み始める
「ああああああああああああ!!!!」
ーシェアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!
遂にアポロニウムシュートがザラブ星人の体に突き刺さり、その体にスパークを迸らせる
ザラブ星人の体が爆散。同時に紫の結晶もバラバラと周囲に散っていく
怒りに肩を震わせるイカロス
そのタイマーリアクターの周囲。胸部プロテクターから青白いスパークが火花を散らしていた
そのイカロスの様子を見据える小さなドローンが一機
そのドローンから送られた映像を不機嫌そうな瞳が睨んでいた
「………つくづく非合理・非効率的だな。日向 翼。それがキミの夢の終着ということか」
海祢 帝はパソコンを操作し、イカロスの映像記録と並べて多くの映像記録を並べる
そこにあったのは、過去にこの星を訪れた巨人たちの記録
ウルトラ兄弟だけでなく、イカロスと共に戦ったウルトラマンたちの映像データもある
映像記録ではそのウルトラマンたちの動きを分析、解析データとして変換していく作業が共に行われていた
「データは揃った。アメノサカホコへのラーニングも予定通り」
「ー見せてやろう、日向。俺の夢の終着を。お前よりも優れた、俺の夢の形を」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あのウルトラマン、ニセモノだったんだって」
「宇宙人が化けてたってさ。東京とかの方でもいたよな」
「なーんだ。ウルトラマンが侵略に来たのかってびっくりした」
「やっぱ宇宙人は侵略者ばっかなんじゃないのか?」
「70年前の神戸も宇宙人にめちゃくちゃにされたらしいし」
「同じ街に住んでたら何されるかわかんないわ」
「怖い怖い。やっぱ得体の知れないヤツらは怖いよ」
神戸の街。先程までイカロスとニセイカロスの対決を見ていた人々が口々に不安を吐露している
そんな人々の隙間から能面で顔を隠した黒マントが姿を見せる
その能面の下
見えないはずの顔が僅かに微笑んだように見えた
『人類よ。愚かで蒙昧な種族よ』
『その発展は宇宙の正義に反している』
『貴様らは宇宙へまでその魔手を伸ばす』
『その傲慢なる野望は宇宙を壊す悪き者』
『身の程を知るといい。そしてより優れた我々と同化せよ』
次回ウルトラマンイカロス
『暗黒の未来』