ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第29話「暴走するユメ」

イカロスの前に現れたウルトレイダー・ツキカゲ

 

それを前に混乱しどよめく人々

 

その様子を眺めていた日傘をさした和装の人影は一人

頬に手を当て恍惚の笑みを浮かべていた

 

「嗚呼、ようやくお父様の悲願が叶うのですね」

 

少女が立つ路地の剥き出しになった地面に見たこともない赤い花が揺らめいていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ツキカゲは腕部装甲を展開し、エネルギーを解放。光刃を放ちイカロスを攻撃してくる

 

「ぐっ!?」

 

不意の一撃によろめくイカロスに瞬時に肉薄し、首根っこを掴むツキカゲ。間髪いれずに強烈な膝蹴りを連続して打ち込み、体を起こしてエネルギーを迸らせた拳をプロテクターに叩き込む

 

ーシェアァァッ!?

 

盛大な火花が散ると共にイカロスが大きく吹き飛ばされる

 

《攻撃は有効と判断 パターン041による攻撃を続行》

 

距離を離したイカロスに更に光弾による追撃を放つ

が、今度はそれに対応し、イカロスも光弾連射で応戦する

 

「ギガレゾナンスバースト!!」

 

その隙を狙い、必殺の一撃をイカロスが放つ

 

《登録行動確認 危険度:高 パターン対応》

 

それに合わせてツキカゲも拳を胸の前で打ち合わせ、腕の装甲を展開

エネルギーを迸らせた拳を後ろに引き絞る

 

《ネクロレゾリュームリアクターからの供給完了》

《ネクロレゾリュームブラスター発射》

 

拳を突き出す形で黒と紫のエネルギーを束ねた光線が放たれる

 

その光線はギガレゾナンスバーストを貫き、たやすく霧散させる

 

「なー」

 

驚愕する翼。そのまま突き進んでくる光線はイカロスの左肩に直撃

 

ーシェアァァッ!!

 

派手な爆発が晴れた中で露わになるイカロスの左肩、そこからは内部の機械的な配線が露出し、その体が機械であることを否応なしに示していた

 

『ご覧ください。これこそがイカロスが機械人形である証拠。信じられないことにアレは、僕が構想していたこのツキカゲの設計を何者かが盗み、無断で利用していたのです‼︎』

 

英輔の言葉とイカロスの正体に混乱していた観衆がざわつきはじめる

 

「何を、勝手な……‼︎」

 

『正体を秘匿し、ただのウルトラマンと偽って活動していたのが何よりの証拠。これほどの兵器ならば、隠して持つことがどれほどのことか理解できないはずがない…‼︎』

 

「く……ッ!!」

 

翼は唇を噛み締めながらもなんとかイカロスを立ち上がらせ、空へと離脱する。雲に潜ると共に迷彩メテオールでその姿を隠す

 

ツキカゲはそれを見上げていたが、何故か追おうとはしなかった

 

 

「結果良好。アメノサカホコは正常に、実に効率的な戦果を出した」

 

A.I.G.I.S.の研究棟、そこに英輔から渡されたラボの中でツキカゲとイカロスの戦いを見据えていた帝は笑っていた

 

「どうだ、翼。コレこそが俺の夢だ。俺の夢見た人類の叡智と技術の果てだ!!」

 

帝が両手を広げ、天を仰ぐ

が、不意に笑みをやめ顔を押さえる

 

「これが、これが正解なんだ。最大効率の最大幸福。これが到達点なんだ……」

 

「そうでなければならないんだ…‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「クハハッ、クハハハハハハハハ!!!成功だ!!僕の悲願がようやく叶ったんだ!!」

 

英輔は一人、自分の研究室で狂ったように笑い声を上げていた

それを後方からヤプールとノワール星人が見守っていた

 

「お前が望んでいたものはアレだった、というわけか」

『素晴らしい。実に素晴らしい‼︎ ヤプールや異星の産物を応用したとはいえ、一からウルトラマンに匹敵しうる機械兵を組み上げるとは‼︎』

 

笑いが収まらない英輔に静かにヤプールが近づき訊ねる

 

「イカロスを奪えば良かった、訳ではないか」

「その通り。僕が欲しかったものは、僕だけの神。他人の手垢の付いた鉄クズが欲しい訳ではない」

 

英輔はデスクに散らばる書類を集め、整理していく

 

「そうコレは、ツキカゲは僕だけの神だ」

 

書類の中から取り出したスイッチを英輔が起動する

 

「ー‼︎」

 

と同時に研究室内の四隅に仕掛けられた装置が展開

ビームワイヤーのようなものでヤプールを拘束する

 

「……なんのつもりだ?八坂 英輔」

「今までご苦労様、というつもりですよ」

 

英輔が邪悪に笑いながら白亜の銃ーギャラクトロンの破片とデータから再構築した銃トロンショットをヤプールに向ける

 

『き、貴様⁉︎』

「フューゼクス。ノワール星人を拘束しておけ」

 

その場から動こうとしたノワール星人に黒いモヤー凶獣フューゼクスが纏わりつく

 

「異次元人ヤプール。貴方が今までやってきたことはアーカイブから全て知っている。人間の悪意を利用した超獣を生み出してウルトラマンや防衛隊の心を揺さぶって見せたことも」

 

トロンショットに紫のカプセルを装填、銃身を伸ばす

 

《OVER METEOR ACTIVATE》

 

「日向 翼のメテオール設計と海祢 帝に回収させたUキラーザウルスのサンプルデータは実に役に立った。こうして貴方を封印するオーバーメテオール、ディメンジョナル・アイソレーターを完成させることができたのだから!」

 

トロンショットから放たれた光線が着弾すると共に部屋に仕込まれたデバイスからも光線が放たれる

 

ヤプールの背後の空間が超獣が現れる際と同じような空間の亀裂が走り、割れる

 

「ーなるほど、よもや我らを出し抜く人間が現れるとはー」

 

フッと微笑むヤプールを飲み込み、亀裂は逆再生するかのように閉じ、青い光と共に消滅した

 

『バカな…⁉︎ 貴様ー』

「貴方にも役に立ってもらいますよ。ノワール星人」

 

英輔は新たに注射器型の紫のカプセルを取り出し、ノワール星人の胸に突き刺す

 

『ゴッ⁉︎ ォ……オォォォアァァアァァア!?!?』

 

もがき苦しむノワール星人の体を突き破り無数の紫の結晶が飛び出してくる

 

「フューゼクス。その宇宙人を指定座標に転送して合図があるまで潜伏していろ」

 

ーシュルルル……

 

英輔の命令を受け、フューゼクスはノワール星人を飲み込み姿を消した

 

それを見届けた英輔の下に通信が入る

 

「ー僕だ。どうした?」

『エリアK5地下から複数の熱源反応。怪獣と思われます』

 

通信が終わるが早いか、A.I.G.I.S.基地のアラートが鳴り響く

 

「ウルトレイダー・ツキカゲを発進。遊撃隊と戦車隊はK5近郊で待機せよ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

荒い息を吐く翼が腰を下ろす

 

いつもの地下指令室よりも少し小さいそこは有事のために翼が緊急避難先にしている場所、かつて日向 昴がイカロスを研究・制作するのに使っていた蛍火村近くの地下基地だった

 

「ウルトレイダー……ツキカゲ……」

 

イカロスの前に姿を現したあの機械の巨人の姿を思い出す

 

最大効率にして完全。然して無機質にして冷酷

翼が最も恐れていた『人造ウルトラマンという兵器』

 

それが、目の前に形を持って存在していた

 

ードンッ!!

 

兵器にしない。守るための力としてイカロスの名を借りる

そう誓った自分の、祖父の想いを踏みにじるツキカゲに有効打を与えられなかった自分に憤りデスクを殴りつける

 

そんな翼のメモリーディスプレイに通信が入る

 

『翼社長!ご無事ですか⁉︎』

「舞村さん‼︎ 無事で良かった」

 

通信してきた相手は日向重工の社員の一人、舞村(まいむら) (りょう)だった

 

「翔真くんたちは……花さんたちは無事ですか⁉︎」

『安心してください。日向重工にも、NEXT GUYSの皆さんにも今のところ死傷者はいません。翔真隊員、華鈴さん、花隊員、そしてコンさんはしばらく絶対安静ですし、こちらの防衛システムも修復に時間がかかりますが……』

「よかった……本当によかった……」

 

翼が安堵し脱力する

 

『……翼社長の方が我々は心配です。何よりも、イカロスの秘密が明るみになってしまったことが』

「……ああ、なんとかしたいけどまずはイカロスの整備からだ。怪獣が現れても、あの人造ウルトラマンと戦うにしても……」

 

絞り出すように告げる翼の声を聞き、僚が口を開く

 

『社長。無理だけはなさらないでください』

 

「無理……?」

 

『イカロスは、ウルトラマンは兵器なんかじゃありません。世界中がなんと言おうと、私たちは翼社長と先代のその夢を信じます』

 

僚の優しい声が翼の耳に沁み込む

 

『私たちは、心優しい貴方の夢だからついてきた。貴方自身の心優しさを信じて戦ってください。貴方が信じるものを、信じたいものを守るために……』

「舞村さん……」

 

そんな中、僚側からの通信からアラートが響くのが聞こえる

 

『翼社長‼︎ ニュースレポートを‼︎』

 

僚の言葉を聞き、翼がモニターに端末を繋げニュースレポートを立ち上げる

 

 

ポイントH4市街地

 

ーガァァァァァァァァ!!!

ーキシャァァァァオオオオゥゥゥゥ!!

ーグァァァァァァァァ!!!

 

地中から突然出現する3体の巨影

長い首を持つムカデのような節を持つ怪獣

蛇腹状の皮膚を持つレッドキング

黒い体表の一本角を持つ怪獣

 

どの怪獣も虚な瞳と体表に纏わりつく黒いツタのようなものを持ち、ツタからは不気味なほど鮮やかな赤い花が生えていた

 

《ドキュメント照会 レジストコード・百足怪獣 ムカデンダー、どくろ怪獣 レッドキング、凶暴怪獣 アーストロンと確認》

 

怪獣たちの目の前に空からゆっくりと白亜の機神が降り立つ

 

《脅威段階判定 対照群の危険度:中 行動パターン選定・完了》

 

ーグァァァァァァァァァァァァ!!!

 

ツキカゲにアーストロンがマグマ火球を放つ

白亜の巨体に直撃、その体が爆炎に呑まれる

 

《排除行動・開始》

 

その爆炎から飛び出したツキカゲの手刀の鋭い一撃がアーストロンの一本角を砕き折る

 

ーグァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!?

 

へし折れた角を掴み、ツキカゲは振り向きつつムカデンダーの吐き出す火球を角で弾き撃ち落とす

 

ーグァァァァァァァァ!!!

 

背後から突進を仕掛けてくるアーストロンに背を向けたまま、火球を溜めたその口に折れた角を突き刺す

 

突き刺された角は頭蓋を貫き、アーストロンの目から飛び出して鮮血をぶちまける

 

《武装選択・ネクロレゾリュームフレア》

 

ツキカゲの手のひらの装甲が展開

手のひらの間にエネルギーを収束しエネルギー球を形成、それをそのままアーストロンの首に叩きつける

 

膨大なエネルギーの直撃に耐えきれるはずもなく、アーストロンの頭部は粉々に吹き飛ぶ

主を失った怪獣の胴体は脱力し、糸が切れた人形のように転がる

 

《脅威対象の追加を予測》

 

不意打ち気味にツキカゲの目前の地面が陥没し、そこから5本の角を持つツタに覆われた怪獣が現れる

 

その怪獣が放つ爆炎をエネルギーバリアで防ぎ、そのまま怪獣の顔面に叩きつけその怪獣を吹き飛ばす

 

《レジストコード・再生怪獣 サラマンドラ確認》

《脅威判定:中 続行》

 

ーガァァァァァァァァ!!!

 

ムカデンダーの噛みつきを半身ずらして避け、伸びてきた首を脇で挟み込み捕らえる

首と胴体の接合部にエネルギーを迸らせた手刀を叩き込み、根元から切断する

 

ーガァァァァァァァァァァァァ!?!?

 

血液を撒き散らしながらムカデンダーの胴体がよろめき離れる

が、ムカデンダーの生命力は凄まじく、千切れた首がそのままツキカゲの腕に巻きつき肩に噛み付く

 

ーキシャァァァァオォォォ!!

ーガオオオオオオオン!!

 

動きを止めたツキカゲにレッドキングとサラマンドラが突進してくる

それを纏わりついた首を盾にして受け止める

 

ーガァァァァァァァァ!?

 

神経が共有されている胴体がもがく

それに一瞥もくれず、首を鈍器のように用いてレッドキングに叩きつける

 

ーキシャァァァァオォォォ!?

 

何度も、何度も、何度も

 

そのうち泡を吹き脱力したムカデンダーの首を背後から放射されてきたサラマンドラの火炎に投げつけ盾にして爆散させる

 

残っていた胴体にもネクロレゾリュームブラスターを放ち爆発炎上させる

 

ーキシャァァァァオォォォ!!!

ーガオオオオオオオン!!!

 

レッドキングとサラマンドラの同時突進を受け止めるツキカゲ

双方の頭部を掴み、突進の勢いを相殺。押し込み始める

 

ーメキメキメキメキッ……

 

鈍い骨の軋む音が響く

レッドキングとサラマンドラの頭をそのままぶつけ合わせ、双方の胸に拳を叩き込む

 

ーキシャァァァァオォォォ!!!

 

激怒したレッドキングに瞬間的に接近、その頭を掴みそのまま地面に叩きつける

衝撃に弱って立ち上がれなくなったレッドキングの首めがけてツキカゲが脚を振り上げる

 

ーゴギン!!

 

強烈なストンピング

鈍い音と共に首の骨が砕けたレッドキングはしばらく痙攣し、そのまま絶命した

 

ーガオオオオオオオン!!!

 

サラマンドラの強烈な火炎放射にツキカゲが包まれる

ツキカゲはバリアを張ることもなく、片手でその火炎を押さえ込みながら前進。ゼロ距離からの光弾をその口に叩きつけ爆発させる

 

ーグァァァ……ッ!?

 

もがくサラマンドラの首、再生器官がある場所をツキカゲの手刀が無情に貫き、その命を奪ってみせた

 

 

「なんて戦闘だ……」

 

翼があまりに惨い戦闘、いや殲滅に思わず口元を押さえる

 

残虐、冷酷だが美しいほどに効率的かつ効果的

 

兵器としての冷血さを嫌でも痛感させる。そんな戦闘だった

 

『ご覧いただけた通り、ウルトレイダー・ツキカゲの戦闘能力は正確無比にして強力。アメノサカホコのラーニングと思考ルーチンにより100を越える戦術から怪獣たちに沿った戦略を導き出し、1%の狂いもなく実行する。この一機で、NEXT GUYSたちの精鋭すら超えうる戦果を叩き出せるのです!』

 

英輔の演説の中、ツキカゲは直立姿勢のまま飛行し何処かへと帰投していく

その様を見た翼はニュースレポートを閉じる

 

『どうだい?日向 翼。僕の神の力は』

 

僚に繋がっていたはずのメモリーディスプレイから異なる人物の声が響く

 

「八坂 英輔……‼︎」

『こうして話をするのははじめてだったかな?』

「どういうつもりですか…貴方は、なんてものを…‼︎」

『なんてものとは酷いな。キミとキミの祖父が作り出したそれも強力な兵器じゃないか』

「イカロスは兵器なんかじゃない‼︎ 元より僕も祖父もそんなつもりでイカロスを生み出したんじゃない‼︎」

 

『それはキミたちのつもりだろう?』

 

くっくっと笑いながら英輔が告げる

 

『僕たちからすれば、アレは完全無欠の兵器だ。ウルトラマンと同等の力を、人間の意志で振るうことが可能。何とも素晴らしい。これさえ在れば怪獣も異星人も物の数でなくなる!これぞ僕が求めた神の形だ‼︎』

「神……だって…?」

『ああ、そうだとも。これこそが僕の悲願、僕の夢の果てだ‼︎』

 

『不完全で不安定な人間たちが神に惹かれるのは当然のこと。僕もその一人だ。理論上にしか存在し得ない完全存在。それを生み出すことこそが僕の研究の終着だった!』

 

『この世界で最も新しい神話、ウルトラマンを生み出したこの手にその力を収めて完全にして無欠の力を実証することが、今ここに成ったのだよ‼︎』

 

「そんな理由で、その力を振るった先の未来は誇れるのか…」

『誇れるとも。これこそ僕の理想の形だからな』

 

英輔が下卑た笑みを浮かべながら続ける

 

『そういえば、ここはキミの故郷だったかな?』

 

モニターに突如ノイズが入り、どこかの森林が映し出される

その映像の中の山の並びを翼は知っていた

 

「ここは……蛍火村の……⁉︎」

 

 

蛍火村近くの森林地帯

 

『カッ、ァア……ぐぅアァア……ッ!?』

 

黒いモヤの中から現れたノワール星人はもがき苦しみながらしばらく辺りを彷徨うが、膝を突き胸を押さえる

 

『が、ぐ、ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

断末魔に等しい絶叫と共にノワール星人の体が膨れ上がる

 

巨大化したノワール星人の体の各所からは紫の結晶・ネクロヴァイスが生えており、その目からは光が失われていた

 

【ぁあ……あぁあああぁ……‼︎】

 

ノワール星人はしばらくもがきながら頭を震わせ、その視線の先に蛍火村を見つける

 

【ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!】

 

獣じみた雄叫びを上げ、ノワール星人は蛍火村へ向けて進撃を始めた

 

 

「ーッ!!!」

 

翼が駆け出す

その気配を察した英輔はメモリーディスプレイの通信を切る

 

「神は一人で十分なのだよ。日向 翼」

 

「旧時代の神には、そろそろご退場願うとしよう」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

【ガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!】

 

咆哮を上げながら蛍火村へ進軍を続けるノワール星人

その背後からイカロスが現れ羽交い締めにしてその歩みを止める

 

ーシェアァァ…ッ!!

 

その胸のタイマーリアクターは既に赤く点滅している

連戦によりエネルギー補給が万全ではないのだ

 

「行かせない…‼︎ 蛍火村には指一本触れさせない!!」

ーシェアァァッ!!

 

蛍火村から遠ざけるようにノワール星人を後方に投げる

 

【ガァァァァァァァァ!!!】

ーシェアァァッ!!

 

それでもなお進もうとするノワール星人の胸を押さえ、エルボーを撃ち込みさらに後退させる

ゾンビのように腕を振り回すノワール星人の攻撃を回避し、振り回された腕を掴み蹴りを撃ち込む

 

その様を空中に滞空した小さなドローンが撮影していた

 

 

『ご覧くださいリブラ様。イカロスが、日向 翼が我々との契約を破っている証拠です』

 

その映像は友好種族同盟の代表たちの前で公開されていた

 

「……」

 

それを見せられていたリブラは黙ってその様子を見つめていた

 

『非警戒種族のノワール星人への攻撃。彼が過ぎたるイカロスという力を振るうことを許したのは彼自身の正義を信じたからこそ。だが、彼は我々との取り決めを今ここで破りその信頼を踏み躙った』

『ミ、ミスター・ラーフ。それは少々横暴ではなかろうか?』

 

チブル星人アルドが異を唱える

 

『このノワール星人は、未だ侵略行為に至らずとも正気には思えない。それこそ何者かに操られているようにとらえた方がー』

『……私はラーフに賛成だ』

 

ルリヤ星人エルゼアが首肯する

それにミラクル星人ファノアも同調する

 

『私もラーフ殿に賛同する。彼の、イカロスという武力は間違いがあってはならない兵器だ。疑わしきとはいえ、彼が友好種族にそれを行使しているのは紛れもない事実なのだ…』

『ミスター・エルゼア、ミスター・ファノア……』

 

その言葉を聞いていたリブラが唇を噛み締めながらラーフに告げる

 

「……疑わしい以上、ラーフ代表たちの言う通り彼を自由にすることはリスクを生むと考えます」

 

「ー日向 翼を拘束。ウルトラマンイカロスの技術は封印するものとします。但し彼を拘束するのに止めなさい」

 

リブラの苦渋の決断を聞いたラーフの目が少し笑ったように見える

 

『お任せを。私の私兵団なら確保も容易です』

 

 

ノワール星人と格闘するイカロスの様子はラーフにより街頭モニターに中継されていた

 

『我々友好種族同盟代表は今までウルトラマンイカロス、日向 翼と何条かの契約を結びその力の行使を許してきた。だが、彼は今非警戒種族のノワール星人へと手を出し、我々との契約を反故にした』

 

実名付きでの公表に地球人も異星種族も俄に騒がしくなる

中継を終わらせ、ラーフが腕を広げながら告げる

 

『これより、ウルトラマンイカロス及び日向 翼は我々が身柄を拘束し、その力の行使はこれより永久的に許されることは無いだろう。彼の拘束に関しては、我らの私兵団及び我々が新しく認可した戦力、ウルトレイダー・ツキカゲを使うA.I.G.I.S.との合同作戦で行う』

 

『友好種族の同志諸君。日向 翼を万一発見した場合はキミたちのご協力もお願いすることになるやもしれない…我々の手で、友好種族の安寧を取り戻すのだ!!』

 

 

『見たまえ、日向 翼。キミの愚かな決断で、感情で、キミは今世界を敵に回したのだ』

 

ノワール星人と格闘を続けるイカロスのコクピットに直接一部始終の映像を流しながら英輔が告げる

 

『感情とは不完全、不確定。故に最善から外れる、故に歯車が破綻する。だから人間は愚かなままだ』

 

『人類が次のステージに移るためにはその不完全さが邪魔なのだ。だからこそ、機械仕掛けの絶対神が必要なのだよ。僕が生み出し、海祢 帝が生み出した最高の頭脳を持つツキカゲが!!』

 

英輔の告げた名前を聞き、翼はやはりと唇を噛む

 

「利用したのか…帝のAI技術を…‼︎」

『人聞きの悪いことを言うな。彼の夢も、僕の夢と同じように叶えてあげたのだよ』

 

【……ぁあぁ……あぁ……‼︎】

 

ふらふらとよろめくノワール星人に黒いモヤが纏わり付き、その体に入り込む

 

ノワール星人の体が不気味に、不可思議にぐちゃぐちゃと歪んでいく

 

膨れ上がったその体の姿が見たことある姿へと変化していく

 

石動(いするぎ)さんの……レブナントシリーズ!?」

 

その姿はレブナントGそのものだった

目は赤く変色し、ネクロヴァイスが体から生えていたがその姿はそのものといっていいものだった

 

『僕が生み出した凶獣、フューゼクスは素晴らしいだろう?融合獣ガディバの因子とコンピュータウイルスを合成させたこいつは食らった生命体をデータとして分解し、融合・記録する。そして融合した生命体に生体データを転写してより強力で凶悪なモンスターにするのさ』

 

レブナントGに似たソレは口を大きく裂きながら開き、腕が裂けた中からギザギザに歪んだ爪が露出する

 

ー■■■■■■■■■■■■■!!!

 

獣とも、人間や異星種族の断末魔とも似ても似つかない身の毛のよだつ声を上げ、フューゼクスは咆哮する

 

「食らわせた……じゃあ、石動さんのレブナントたちは…」

『いい養分になってくれたよ。獣の癖に神話を崩すなんて戯言で作り出された欠陥品でも、こうして役に立ってくれるとは素晴らしい』

 

英輔の答えに、翼は拳を握りしめる

 

「お前だけは……お前だけは絶対に許さない……‼︎」

ーシェアァァッ!!

 

翼の怒りが乗り移ったかのようにイカロスのタイマーリアクターが一瞬輝くとともにフューゼクスへその拳を撃ち込む

が、その拳が直撃するよりも早くフューゼクスの胸から生えたディノゾールリバースに酷似したレブナントDの首が噛みつき拳を止める

 

ー■■■■■■■■■■■■■■!!!

 

フランベルスに酷似した剣爪に変化した左腕の斬撃がイカロスの装甲を深く抉る

 

バチバチと千切れた回線がスパークし、コクピット内にも耳障りなアラートが鳴り響く

 

ー■■■■■■■■■■■■■!!!

 

レブナントGに酷似したフューゼクスはゴボゴボと全身を泡立たせ、その姿を崩壊させ変貌させていく

 

黒い芋虫状の姿へと変貌しなフューゼクスは体から何本もの鎌足を生やせ、体の先端部をビリビリと裂き開く

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

耳障りな歪んだ咆哮を上げ、フューゼクスはイカロスの方を向く

その体が泡立ちゴツゴツとした機械じみた腕が生え、そのガントレットから伸びた砲門がイカロスに弾丸を放つ

 

ーシェアッ!!

 

腕を交差させ弾丸を防いだ

フューゼクスの生えた腕の根元に顔じみた構造が作り出される

 

【……オレみたいな、ヤツKILLして、HEROだと、思ってるか?】

 

ガピヤ星人ガイスと同じ声でゲハハハハと笑い声を響かせる

 

ーシェアッ!!

 

イカロスが放つ光弾と光刃

それを胸辺りに生やした花のような構造でそれを吸収し、フューゼクスは鎌足を伸ばし袈裟にイカロスに振り下ろす

 

受け止めたイカロスに鎌足から新たに腕が伸び、イカロスの首を掴み上げる

 

「くっ、そ……ッ!!」

 

鎌足から伸びる腕の根元に新たな人面瘡が形成され歪んだ言葉を吐き出す

 

【力を振り回すのは、快感だろう、私も、理解できる、からな…‼︎】

 

ノワール星人と同じ声を鎌足ごと振り払い、イカロスがフューゼクスに掴みかかる

 

その頭部から新たな頭部が分離し、額から炎を放つ

 

ーシェアァァッ!!

 

炎に焼かれるイカロスを見下ろす首が少女の声を零す

 

【……私を、お母さんを、お父さんを、助けてくれなかった、】

 

皐月の声で鳴く蛍が強酸の涙を流す

 

【……あなたが、ウルトラマン、なんか、じゃない】

 

「八坂ァ…‼︎ お前は、お前はどこまでッッ!!!」

 

翼の怒りを乗せたイカロスの拳がホタルンガの首を吹き飛ばす

が、その根本が急速に変異し触手となってイカロスの腕を掴み、拘束する

 

ー■■■■■■■■■■■■■■!!!

 

裂けたフューゼクスの口から高熱、冷気、さまざまな光線が出鱈目にゼロ距離で放たれる

 

イカロスの銀のボディから無数の火花と爆発が起こり、装甲の破片が飛び散る

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

あまりの衝撃にコクピット内壁に翼が叩きつけられ、イカロスも大きく吹き飛ばされる

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

ーシェア…ァァ…

 

なんとか立ち上がるイカロス

その胸のタイマーリアクターは高速で点滅していた

 

なんとか戦おうと一歩、また一歩と踏み出そうとするが

 

ーシェアァ……

 

そのタイマーリアクターの光が消え、イカロスの目からも光が失われる

銀色の巨体が脱力し、膝をつく

 

「エネルギーが……クソッ!!」

 

動かなくなったイカロスをフューゼクスの触手が打ち据えて横転させる

 

「ぐぁっ‼︎」

 

倒れ伏すイカロスを覆うようにフューゼクスが這い寄り、口を裂き開く

 

ーキュアァァァァァァ!!!

 

そこに突撃してきた青い影がフューゼクスを吹き飛ばす

 

ー■■■■■■■■■■!!

 

立ち上がるフューゼクス

その目の前に降り立ったのは一体の怪獣

 

まるでエイに人間の体が生えたような姿のその怪獣はイカロスの前に立ちはだかり、フューゼクスを睨む

 

ーキュアァァ……‼︎

 

額に備えたオレンジのクリスタルと赤い瞳を輝かせ、その怪獣はフューゼクスを睨んでいた

 

「あなた……は……」

 

その怪獣の姿を目にした翼は何かに気づいた素振りを見せるが、その意識は闇に飲まれてしまった




凶獣フューゼクスの前にエネルギーを失い倒れるイカロス
孤立する翼とイカロスの前に思いもよらぬ助っ人が現れる

英輔の行いに怒りを抑えられない翼
己が生んだ機械の神に酔いしれる英輔

揺れ動く人々と世界の狭間で影は静かに蠢いていた

次回ウルトラマンイカロス
「終末の魔笛」
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