ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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第31話「黒き絶望と少女の夢」

むかしむかし、ある一人の女の子が産声を上げました

 

地球人と、地球人とよく似たある宇宙人の間に産まれた

小さな小さな女の子

 

父親と父親の愛した人との間に産まれた女の子

 

許されない行為から産まれた女の子

 

女の子は母親と引き離され、父親とその妻に引き取られました

 

妻は、女の子を愛してくれませんでした

父親は、女の子を妻と一緒になって「化け物」と罵りました

 

2人に乱暴されて錯乱した女の子

生まれつき持っていた力の暴走で家に火を点けてしまいます

 

「化け物」「人殺し」「呪ってやる」

 

最後に聞いた2人の言葉はどれも恐ろしい言葉でした

 

女の子は一人になってしまいました

女の子は大人を信じなくなりました

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『ハハハハハ!ハハハハハハハァッ!!』

 

狂ったような蛭子の哄笑を響かせながらイカロスキラーの鉤爪がイカロスのボディを切り裂き火花を上げる

 

「蛭子さん!目を覚ましてくれ!!」

 

その連撃を掻い潜り右腕を押さえ、イカロスキラーを押さえ込もうとするが、接近したイカロスの胸にパンチを放ちながらその首を掴み締め上げる

 

『目を、覚ます?なんのことですかぁ?』

「キミは…キミはヤプールに操られているんじゃないのか⁉︎」

『お父様が、私を操る?あは、あははははははははは!!!』

 

イカロスキラーが首を締め上げる手を放ち、イカロスの肩を掴み渾身の力を込めて袈裟に切り裂く

 

『お父様は私の願いの後押しをしてくれただけ。お父様は、お父様は私にこの腐り切ったゴミみたいな世界を、人間を滅ぼす力をくれた!!非力な私にぃ!!』

 

『お爺さまから約束と力を受け継いでようやく夢に至った、貴方のようにィィィィィィ!!!あはははははははははははは!!!!』

 

愉快そうに笑う蛭子に共鳴するようにイカロスキラーもその身を震わせながら天を仰ぐ

 

『見て!!このお人形さん(イカロスキラー)は、貴方のイカロスが使う技も使えるのですよ!!アポロニウムシュートォ!!!』

 

イカロスキラーが両の拳を突き合わせ、エネルギーを収束

イカロスが使うものとほぼ同一の必殺光線を放つ

 

ーシェアァッ!!

 

イカロスもそれに応じてアポロニウムシュートを放つ

 

二つの光線は衝突、一時的に拮抗するがほぼ同じ威力故に爆発し、両者を吹き飛ばす

 

「やめろ、やめてくれ!!」

 

イカロスがナイトイカロスソードと黒星丸を取り出しながら立ち上がる

操り人形のように無理矢理立ち上がったイカロスキラーも両腕からブレードを展開、獣のように飛びかかる

 

『何故?何故やめなければならないのですか?これは私の夢なのです。貴方も、翼様も、素敵だと笑ってくれた、私の素敵な素敵な夢が今叶っているのです!!』

 

イカロスの剣撃よりも激しく剣を振り回し、何度もイカロスのボディを切り裂く

何度も、何度も何度も何度でも

 

『ギガレゾナンスバーストォォ!!!』

 

切り裂き吹き飛ばしたイカロスにイカロスキラーのギガレゾナンスバーストが放たれる

 

防御する暇もなく直撃したイカロスの体がショート、スパーク

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

コクピットもあちこちがショートし、やかましい警報が鳴り響く

翼と共に膝をつくイカロスを見下し、その肩を蹴り地面に転がして更に力いっぱい踏みつける

 

『我が娘の言葉は紛うことなき真実だ。日向 翼』

 

イカロスキラーの背後に浮かび上がる巨大ヤプールが邪悪な笑みと共に告げる

 

『産みの親を奪われ、父とその妻から虐げられ、預けられた施設で同じ子供たちからも裏切られた。故にその娘は望んだのだ人類の破滅を。醜い支配種気取りの滅亡を!!』

 

『紛れもない、娘の本心からの夢なのだよ!!』

 

踏み付けにしたままのイカロスの胸部装甲ーアーマードエグゼスを掴み、無理矢理引き剥がす

 

『お父様ァ‼︎ こちらを…‼︎ お父様が欲していたモノです!』

 

巨大ヤプールの幻影にイカロスキラーが引き剥がしたアーマードエグゼスを捧げる

 

『よくやった我が娘よ。暗黒宇宙大皇帝の鎧を用いた装甲……欠片とはいえ、あの暗黒の遺物が含まれるならばその能力は本物』

 

『メフィラスやグローザム用の鎧があったように、この欠片を我々専用の鎧として、我らの怨念を融合する!!!』

 

巨大ヤプールの念動力で持ち上げられたアーマード・エグゼス粉々に粉砕

内部にあったアーマード・ダークネスの欠片へと巨大ヤプールの怨念が集結し、それを中心に空間が大きくひび割れる

 

砕け散った空間から黒い巨体が姿を現す

 

ーギャォォォォォォォォォォォン!!!

 

空間を砕き、巨体が地表に降り立つ

歪な巨獣の降臨に大地が悲鳴を上げるように鳴動する

 

黒い鎧を纏ったような巨体

兜を被ったような頭部の目に該当する4筋の裂け目が赤く輝く

 

その巨獣は、かつての絶望の象徴だった

 

【八坂 英輔が手に入れたUキラーザウルスの検体から仮の体を復元し、我々とアーマード・ダークネスの欠片を以て肉体とする!!】

 

【これぞ、暗黒究極超獣 Uキラー・ダークネスだ!!!】

 

ーギャォォォォォォォォン!!!

 

Uキラー・ダークネスの肩から黒い鎧の一部たるトゲのミサイルが放出

街に雨のように降り注ぎ、爆発と共に次元が砕け、赤い裂け目がいくつも現れていく

 

ーきゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

ーうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

【叫べ!喚け!!愚かな人間ども!!!】

 

ー助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

ーウルトラマン!!ウルトラマぁぁぁぁン!!!

 

【いくら助けを乞おうが救いは現れない!!】

 

【貴様らが信頼したイカロスは張子の翼!!!】

 

【新たに現れたツキカゲも、我らの駒でしかなかった!!】

 

【貴様ら人間に残されたものは、紛れもなく絶望だけだァ!!!】

 

ーフハハハハハハハハハハァッ!!!

ーギャォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 

ヤプールの哄笑と共にUキラー・ダークネスの咆哮がこだまする

 

『お父様ァ…‼︎ 破滅が、ようやく…‼︎』

 

イカロスを踏み付けながら恍惚とした蛭子の声が響く

脱力したイカロスのタイマーリアクターが点滅をはじめていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

両親を亡くした女の子はある施設に引き取られました

その施設は女の子を地球人として迎えました

 

女の子は、化け物と呼ばれたくなくて黙っていたのです

 

施設の中で女の子には友達がたくさんできました

 

女の子は幸せでした

 

みんな女の子とずっと友達だと言ってくれたからです

 

ある日

山で迷子になった時、崖から落ちた親友の子を守るために女の子は黙っていた力を、超能力を使ってしまいました

 

友達を失いたくなかった女の子は黙っていてとお願いし

親友の子はもちろんだよ、と笑いました

 

次の日に女の子が「化け物」であることは施設中に広まっていました

 

親友だった子は、女の子を隅から見て友達と笑っていました

 

「化け物」と呼んだ、あの大人たちと同じ目で

 

施設の大人も女の子にきつくあたるようになりました

 

友達はみんないなくなりました

 

女の子はまた一人になりました

 

『辛かっただろう。愚かな人間たちと共に生きるのは』

 

施設の中庭で一人ゴミに塗れた女の子の前に黒衣のおじさんが会いに来てくれました

 

『安心しなさい。お前は私の娘になる』

『少しだけ、まだ時間はかかるがね』

 

おじさんはーお父様は私の頭を優しく撫でてくれた

手がゴミで汚れても気にせずに、何度も優しく

 

『いつか私は、この世界を。愚かな人間を滅ぼそう』

『お前を傷つける愚かな人間たちは、みんないなくなるのだ』

 

ーああ、それは。とても素敵だ

誰も信じていない。誰も彼もを憎む女の子はおじさんが大好きになりました

 

おじさんがーお父様が、お父様が提示してくれた夢が私の夢になった

 

世界をー人間を滅ぼすことが

 

『お前は私を信じなさい。私だけを、信じていればいいのだ』

 

ーはい、お父様。私の愛しいお父様

 

それから女の子は誰も憎まなくなりました

誰も恨まなくなりました

 

「だって、お父様と私でいつかぜーんぶ」

 

「ー滅ぼしてしまうんですから」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「蛭子……なんで…あんたが…」

 

モニターでイカロスたちの戦いを見守っていたコンが膝から崩れ落ちる

イカロスは倒れ、かつて共に過ごした一人の少女が今侵略者として、倒すべき敵としてそこにいる

 

コンの精神面にも大きな負担がかかっていたのだ

 

「コンさん、気をたしかに持ってください!」

 

コンの肩をミライが支える

 

「……ミライ……」

 

ミライに支えられてコンが立ち上がる

 

「ー僕が行きます。コンさんは、『俺たちの翼』を頼みます」

 

呆けたままのコンの肩にミライが手を置く

 

「コンさん。信じたいと願ったものを信じてください。例え何度裏切られても、何度失ってしまうとしても!」

 

それだけ残したミライは格納庫から走り出していく

 

一人残されたコンは深く深呼吸をし

 

ーパンッ!!!

 

と両頬を叩いた

 

「……まだ立てるわね。私」

 

奥で作業を続けるアルドたちや樹、ニゴに声を上げる

 

「急いで確実に仕上げるわよ!!翼が戦ってるんだから、私たちも負けるわけにはいかないわ!!」

 

ーオォォォォォォォォ!!

 

コンの声かけに皆が応えた

 

 

アルドのものとは別の秘匿格納庫

アンヘル星人のSPを多数連れてラーフは苛立ちながら宇宙艇の準備をしていた

 

『クソッ、クソッ!!八坂(やさか) 英輔(えいすけ)め話が違うではないか…‼︎』

 

宇宙艇には次々とケージが搭載されつつあった

 

「そこまでです。ラーフ代表」

 

背後から現れた何者かがラーフに銃を突きつける

ラーフは素早く振り返り同じく銃を突きつける

 

『……レジア代表。これは一体どういうつもりです?』

「貴方の勝手もこれまでです。これまでのことも含めてリブラ議長に報告。貴方の身柄も拘束します」

 

ラーフは苛立たしげに顔を手で覆うと、咄嗟に取り出したスイッチを押す

と同時にケージの二つが粉砕され、機械改造されたケルビムとテレスドンが現れる

 

『勝手…?知るかそんなこと‼︎ 友好種族同盟のヌルいあり方を変えてやろうとしてやったのに、どいつもこいつも役立たずばかり!!』

 

今までの丁寧な口調を投げ捨て、ラーフが叫ぶ

 

『お前のせいで俺たちの星で運用しようとしていたメカレーター2体がパァだレジアァ…‼︎ だが、ここでお前を殺せば、俺のやったことはー』

 

ーキュアァァァァァァ!!!

 

そこへ飛来してきたレイジャーシーナが2体のメカレーターを吹き飛ばし薙ぎ払う

 

「シーナ!!!」

 

レジアの体が光輝きシーナと一体化

人間のような体を持つレイジャRへと変身し、尾の一撃でメカレーターたちを吹き飛ばす

 

『少し眠っていて!!』

 

レイジャRが放つ音波によりメカレーターたちは活動を停止し、倒れふす

 

『バカなァァッ…‼︎』

 

怖気付いて逃げようとするラーフの背後にレジアが現れ、手を捻り上げ取り押さえ、メカレーターのコントローラーを奪う

 

ラーフを守ろうと前に出ようとするSPたちをシーナが威嚇して転ばせる

 

「ここまでよラーフ」

『うるさい…うるさいッ!!無能な友好種族同盟どもが…俺が、俺がウルトレイダー・ツキカゲの軍隊でより強固な支配と戦力を作り出そうというのに…‼︎ イカロスを排斥してその技術を更に有用に使ってやろうというのにィイイ!!!』

 

ーピッ

 

「はーい、今のよかったよラーフ代表。真実味しかないいい独白だった。まぁ、真実なんだから当たり前だけど」

 

跪くラーフの隣に録音機をちらつかせながらもう一人の人影が現れる

肩口をくすぐる栗色のクセ毛のラフな格好の女性が現れていた

 

「レジア代表、ありがと。これで真実を発表できる」

「こちらこそ感謝を。蛭川(ひるかわ) (あや)

 

レジアの協力者ージャーナリスト・蛭川 綾は録音機を手にこの場から離れる

 

ラーフは肩を落とし、脱力する

 

『終わりだ……この星はヤプールが滅ぼす……ウルトレイダー・ツキカゲが相手の手に落ちた今、イカロスごときは……』

「いいえ、彼は勝つわ」

 

レジアは首を振り、確固とした瞳で告げる

 

「私は、彼が勝つ未来を信じる」

 

 

ーギャォォォォォォォォン!!!

 

Uキラー・ダークネスが歩みを進めるごとに大地が、空がひび割れ、赤い異次元空間が現れていく

 

そのUキラー・ダークネスをビルの上から見据え、ミライが左腕を前に構える

 

その手に現れたメビウスブレスに右手を当て、回転させる

 

「メビウゥゥゥゥゥゥス!!!!」

 

光り輝くメビウスの輪がミライを包み、その体を銀と赤の体を持つウルトラマンの姿へと変える

 

ーシャッ!!

 

ウルトラマンメビウスがUキラー・ダークネスの前に立ち塞がった

 

『ヤプール…これ以上お前の好きにはさせない‼︎』

 

【現れたなウルトラマンメビウス。イカロスを処刑した後ノコノコとやってきた貴様らを葬る予定だったが、もう現れてくれるとは願ってもいないことだ!!】

 

ーギャォォォォォォォォン!!!

 

Uキラー・ダークネスが咆哮、メビウスへと突撃する

メビウスはその突撃を受け止め、蹴りや拳を叩き込むが、Uキラー・ダークネスは怯みもせずに突撃を続ける

 

ーギャォォォォォォォォン!!!

 

肩から放たれるミサイルーダークネススティンガーがメビウスに降り注ぐ

体を翻し攻撃を回避するメビウスにUキラー・ダークネスの体から伸びる触手が襲来し、その体を押さえ込む

更に残る触手からメビウスに光線が放たれ、ダメージを与えていく

 

「メビウスさん…」

 

イカロスキラーに踏みつけられたままのイカロスのコクピットで翼の悲痛な声が響く

 

ーシャァッ!!

 

メビュームブレードを伸ばし、Uキラー・ダークネスの触手を振り払うメビウスがイカロスを見る

 

『翼さん!!信じることを諦めるな!!』

 

Uキラー・ダークネスの強靭な腕の一撃を受け止め、その巨体を押さえながらメビウスはイカロスに、翼に言葉を届ける

 

『イカロスキラーの中のその子を、キミが願う未来を!!』

 

Uキラー・ダークネスの腕の一撃にメビウスが膝をつく

 

『何度裏切られても、何度挫けても…‼︎』

 

『信じたいものを信じ抜くことを、諦めるな!!』

 

ーシャァッ!!

 

Uキラー・ダークネスの腕の拘束を振り払い、距離を離したメビウスがメビウスブレスを回転、必殺光線メビュームシュートを放つ

が、光線はUキラー・ダークネスの目前に開いた異次元空間に吸い込まれ、そのまま撃ち返される

 

ーヘァッ!?

 

メビウスの体が大きく吹き飛ばされ、ビルに叩きつけられる

 

「信じたいものを…信じる…」

 

イカロスを踏みつけ続けるイカロスキラーを翼が見据える

 

『アハハハハハハ!!ハハハハハハハァァァァッ!!!』

 

狂ったように笑い続ける蛭子

その笑い声に翼の知る蛭子の笑みが重なる

 

「……う、おぉ…‼︎おおおおおお!!!」

 

気合いを声に乗せ、イカロスはイカロスキラーの脚を掴み持ち上げ、踏み付けから抜け出す

 

立ち上がり、イカロスキラーをイカロスが睨む

その中で恍惚の笑みを浮かべる蛭子を翼が睨む

 

「そうだ……僕は諦めない…諦めてたまるか!!」

ーシェアァァッ!!!

 

イカロスが駆ける

 

「滅びなさい!!何もかも!!」

ーウゥゥゥゥアァァァァ!!!

 

イカロスキラーが吠えたける

 

巨人を模した2体が激突。目線が衝突する

 

「蛭子さん…キミの夢はたしかに本物なのかもしれない…」

『ハハハハハ!!翼さんにもやっと理解してもらえましたかァ?』

「だけど、だけど僕は大学で研究に打ち込むキミも、僕と初めて会った書店で楽しそうに本を読むキミも、嘘だと思えない‼︎」

 

イカロスがイカロスキラーを吹き飛ばし、バックラーを左腕に装備。フューチャーカスタマイズに変身する

 

「蛭子さん、キミは本当にこの世界の滅びが、人類の滅亡が望みなのか!?本当にキミにとって、人類は愚かでしかないのか!?」

 

ーシェアァッ!!

 

構えたイカロスを見据え、イカロスキラーが内部の蛭子とシンクロしたかのように身を震わせる

 

「ええそうです‼︎私の中で人類は愚かでしかない‼︎ それに嘘も偽りもありはしなァァァァァァァァいッ!!!」

 

イカロスキラーが再びブレードを展開。光刃を乱射する

それをバックラーから展開したバリアで防ぎ、イカロスはー翼は蛭子を見据える

 

「僕は、僕はキミを信じる!ただ滅びを願うだけじゃない、キミを‼︎」

 

イカロスがバックラーを体の前に掲げる

バックラーが光り輝き、緑色に輝く粒子が噴出。イカロスの隣に何かを構築していく

 

構築が終わり、緑の光が払われ現れたのはもう一人のイカロスだった

 

「マケット・ドッペル、生成完了…‼︎」

 

現れたもう一人のイカロスは気怠そうに首を鳴らし、肩を回す

 

『ったく、よりにもよってこっちがボロボロな時にこれ使う?普通』

 

現れたマケットイカロスから聞こえてきた声はコンのものだった

 

「ごめん、コン。ここはキミの力を借りたくて」

『OK、やってやろうじゃない。私もあいつにはガツンと決めてやりたかったし!!』

 

マケットイカロスがイカロスキラーを指す

 

『ナーヴトレーサー感度良好!いつでもやれるわ!』

「ああ、行こう。彼女を止めに!!」

 

「何をしようと無駄です!!私の夢を止めはしない!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

女の子はお父様と出会いすぐにある男に引き取られました

 

「神を作り出す」そんなことを言って研究を続ける愚かな男です

 

でもそんな愚かな男は女の子を大事に、男手一つで育てました

 

「キミみたいな子供を生まないためにも、神による支配はいるんだ」

 

男はそう言って研究を続けていました

愚かだな、と思っている女の子はいつの間にか

男の真似をして勉強と研究をはじめていました

 

ある日女の子はお父様が言っていた男に会いました

 

死んだウルトラマンを利用し、紛い物を作り操る愚かな男です

 

「勉強熱心なんだね。八坂さん」

 

男は女の子の夢や頑張りを誉めてくれました

女の子の話を優しく隣で聞いてくれました

 

それでも女の子はお父様が一番でした

どれだけ優しい男でも、化け物と知ればあの目で見るだろうとわかっていたからです

 

人間は皆愚かだから

人間は皆繰り返すから

 

そう、思っていたのに

 

またある日に女の子は先の愚かな男と共にいた女性に会いました

 

感じの悪い不機嫌な様子で何故かこちらを目の敵にする女性

女の子もこの女性は嫌いでした

 

「休みの暇潰しに付き合ってくれたお礼よ。受け取っておきなさい」

 

温かな手で女の子に女性はプレゼントを渡してくれました

 

ただ買い物を共にしただけなのに

 

こんな私にお礼を言ってくれた

 

この人も、私と同じはずなのに

なんで、なんであの男は拒絶しないんだ

 

女の子はやはり愚かだと、思いました

愚かだと、思いたかった

 

思わせて欲しかった

 

「人間は愚かです。誰も彼も同じ」

 

「同じなんです。同じ、はずなんです」

 

「滅ぼさないと、いけないんです」

 

「どうせまた、絶望するから」

 

「どうせまた、一人になるから」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

イカロスとイカロスキラー、メビウスとUキラー・ダークネス

それぞれの激闘をビルの屋上からただ眺めていた(みかど)は柵に手をつき項垂れる

 

「俺は……あんなものを作ってしまったのか……」

 

最高のAI。技術の到達点

ヒトが操るイカロスに対し、AIが制御しどんな存在にでも対応するツキカゲ

 

今度こそ勝ったと思った

今度こそ自分の行いが報われたと思った

 

でもそれは、ただ悪魔を生んだだけだった

 

ーシェアァッ!!

 

二人のイカロスがイカロスキラーに連携攻撃を仕掛ける

イカロスキラーはAIによるアシストと共に二人の挟撃に対抗しているが、それでもイカロスたちの連携はその予測すら凌駕して食らいついていく

 

「なんでだ……なんで折れないんだ……翼ぁ…‼︎」

 

こんな時にも、帝の中には劣等感が渦巻いていた

消そうとしても後から後から湧いてきてしまう

 

『キミの夢がこんなものであっていいはずがない‼︎』

 

翼の言葉が頭に響く

 

「……当たり前だ。こんなもの、俺の作ったものじゃない‼︎」

 

帝はタブレットを取り出し、何かの操作を始めた

 

 

ーシェアァァッ!!

ーウゥゥゥアァァァァ!!

 

二人のイカロスの攻撃を受け止め、力任せにイカロスキラーが押し退ける

 

『ァァァァ!!!アポロニウムシュートォォォ!!!』

 

苦し紛れに放たれたアポロニウムシュートが二人のイカロスを吹き飛ばす

エネルギーが迸り、イカロスの銀のボディがスパークする

 

『消えろ、消えろォォォ!!お父様と私の邪魔をするなァァァァ!!』

 

半狂乱になりながら突撃してくるイカロスキラーの胸元にレーザーが直撃、その進軍を止める

 

「今のは…‼︎」

『あんたに呼ばれる前に当然、終わらせてるわよ。あいつらまで来たのは予想外だったけど』

 

立ち上がる二人のイカロスとイカロスキラーの間に空から降りてきたのはガンウインガーとガンローダー。レガシーではない、かつての精鋭たちが乗っていたファイヤーシンボルが刻まれた機体だった

 

『間に合ってよかった。まだちょっと痛むがーいって!?』

『強がんなよ翔真。あたしらまだボロボロなのは一緒』

『あはは…病院抜けてきゃいましたからね…』

 

ウインガーとローダーに乗っていたのは翔真と華鈴、そして花だった

 

「みんな…‼︎」

『怪我人なんで大したことはできないけど、後は頼みます。ウルトラマン‼︎』

 

翔真の声にイカロスがー翼が頷く

更に必殺光線を放とうとするイカロスキラーにマケットイカロスが肉薄。その動きを止める

 

『愚かな人間を何で守るのですか!?貴女だって、貴女だって化け物と呼ばれるでしょう!?虐げられてきたはずでしょう!?』

 

『翼様だって、翼様だって今もこうして人間に裏切られているというのにィィィィィィ!!!』

 

『疑問形になってきてるわよ蛭子。それ、あんたもわかってきてるからなんじゃない?』

 

『愚かな人間も多いけど、信じられる人間だっているかもしれないって!!』

 

マケットイカロスを通したコンの言葉にイカロスキラーが一瞬フリーズする

 

『違う、違うちがうチガウちがァァァァァァァァうッ!!!私の夢は、お父様の夢は変わらないィィィィィィィィィィィィィィィ!!!』

 

イカロスキラーがマケットイカロスに何度も鉤爪を振り下ろし、その体を吹き飛ばす

 

よろめきながらも構えを崩さないマケットイカロスだが、その体が緑色に光りながらボヤけ始める

 

『……30秒ちょい、か。そんなものよね』

 

マケットイカロスの体が維持しきれなくなり崩壊を始めていく

 

『蛭子。あんた私を化け物とか言ったわね』

 

『バカね。そうだとしてもー』

 

揺らめきながらマケットイカロスの姿が消える

最後のその数瞬、コンは蛭子に笑って告げる

 

『そんな化け物のことも命懸けで守るし、笑って手を掴んでくれる。そんな大バカがあんたの戦う日向 翼という男よ』

 

マケットイカロス消失の揺らめき

一瞬イカロスキラーの視線が切れたその一瞬に

 

ーシェアァァッ!!

 

本体のイカロスが右拳を振り抜いて肉薄してきていた

 

『ァァァァァァァァ!!!』

 

奇襲を防ごうとするが、イカロスキラーの体が一瞬硬直する

 

《制御コンピュータ:アメノサカホコ 機能停止》

《コントロールをマニュアルのみに変更》

 

海祢(かいね) (みかど)ォォォォォォォ!!!』

 

蛭子の怒声と共にイカロスキラーの体に衝撃が走る

イカロスキラーの胸の中心を、イカロスの拳が貫いていた

 

 

ーシャアッ!?

 

Uキラー・ダークネスの一撃に吹き飛ばされたメビウスが膝をつく

その胸のカラータイマーが赤く点滅していた

 

【終わりだ!愚かなウルトラマンメビウス!!】

 

Uキラー・ダークネスの発光体が発光。それらから破壊光線がメビウスに向け放たれようとしていた

 

ーフゥアッ!!!

 

空から蒼い一閃がUキラー・ダークネスに襲来、その巨体を一瞬押し返す

 

『ヒカリ!!』

 

現れたのはウルトラマンヒカリだった

 

『待たせたなメビウス。彼らを助けていて、少し遅くなった!』

 

Uキラー・ダークネスの反撃をナイトソードでいなし、ヒカリが後退

そこを目がけて翡翠に光り輝く光線がUキラー・ダークネスに直撃し、大きくその巨体を後ろに吹き飛ばす

 

【次から次へとォオ!!!】

 

怒り狂うヤプールが見上げる先

メビウスとヒカリの後方にフェニックスネストがホバリングしていた

 

『フェニックスネスト…‼︎』

 

かつて共に戦った仲間たちといた場所ー不死鳥の砦

メビウスたちを助けたフェニックスネストには、今地球を護る男たちが乗っていた

 

「ギリギリ一発もってくれたか…‼︎」

「まぁこれ以上は機体も砲身も持ちませんから私たちは見学ですが」

「あとは頼みます!ウルトラマンメビウス!ヒカリ!」

 

フェニックスネストに乗る剛たちの言葉に二人のウルトラマンが頷く

 

『隊長!みんな…‼︎』

『よかった…無事だったんですねみんな…』

「ああ。ウルトラゾーンの崩壊に巻き込まれた時はどうなるかと思ったが…中で出会ったウルトラマンが助けてくれたんだ」

「中での戦闘でガンフェニックスレガシーとガンブースターはロストしちゃったけどね」

 

ーギャォォォォォォォォォォォン!!!

 

相対する二人のウルトラマンにUキラー・ダークネスが怒りの咆哮を上げる

 

【何故だ……何故、愚かなままの人間に我々が負ける…‼︎ 愚かなままの人間を貴様たちは守り続ける!!】

 

【メビウス…‼︎ ヒカリ…‼︎ 貴様らは70年前にもこの星で何度も裏切られ、何度も人間に失望したはず!!その愚かさすら変わっていないというのに!!!】

 

ダークネス・スティンガーが再び二人のウルトラマンに放たれる

その弾幕を二人のウルトラマンがバリアを合わせて防ぐ

 

『たしかに、お前たちの言う通り、愚かな面を持つ人間は今もいる。その愚かさは変わらないのかもしれない』

『だけど、愚かさ以上に変わらないものもある!それが、誰かと結んだ繋がりだ!!』

 

『かつて復讐に囚われた俺をこの星の人々とメビウスが変えてくれた。拒絶していたはずの人々が青い体の俺を受け入れてくれた!今も変わらず、俺は一人ではない!!』

『リュウさんたちと繋いだ絆は今も僕の心に炎を灯してくれる!それに劣らない硬い絆を、誓いを、翼さんたちは見せてくれた!!』

 

『その変わらない、暖かな繋がりは積み重なって、たしかに未来を、人々を変えていくんだ!!』

 

バリアと爆炎が晴れていく中、メビウスの体が赤く暖かな炎に包まれ、ヒカリの体を清らかな青い光が包む

 

メビウスが約束のファイヤーシンボルを刻んだバーニングブレイブになり、ヒカリが復讐を超え身に纏ったアーブギアを装着し、巨悪に立ちはだかる

 

【ほざけぇぇぇぇ!!!】

 

ヤプールの怒号と共にUキラー・ダークネスが迫り来る

それをメビウスとヒカリは共に受け止め、コンビネーションパンチとキックで巨体をよろめかせる

 

ーセェヤッ!!

 

燃えたぎる炎を纏ったメビウスの左拳がUキラー・ダークネスの体を打ち据える

 

ーハァッ!!

 

その背を借り、飛び出したヒカリの鋭い斬撃がたしかにダメージを与えていく

 

【無駄だ!!この体は、この鎧は、仮初とはいえアーマード・ダークネスに守られている!!アーマード・ダークネス以外にこの体に傷はつけられない!!】

 

Uキラー・ダークネスの触手が二人のウルトラマンを掴み上げ、イカロスの方に投げ飛ばす

 

 

イカロスの拳が突き刺さったイカロスキラーはしばらく動きを静止させていたが、糸が切れた人形のようにがくり、と肩を落とし、目の光が失われていく

 

脱力したイカロスキラーからイカロスが拳を抜く

 

その手には、手足にコードが絡まったボロボロの着物姿の蛭子が収められていた

気絶しているだけのようで息はしている

 

蛭子を無事なままのビルの屋上に置く

そのイカロスの下に二人のウルトラマンが着地し並ぶ

 

【アーマード・ダークネスの一部すらもたない貴様らに、この私は倒せない!!】

 

三人のウルトラマンに迫るUキラー・ダークネス

そのヤプールの言葉に何か気づいた翼は前に歩み出る

 

「メビウス、ヒカリ!僕に策があります!」

 

そういうが早いか、イカロスは左手の手甲を外し右腕のものとジョイント。長い槍のようにして構え突撃する

 

【そんなもの、無駄ー】

 

イカロスの槍がUキラー・ダークネスの鎧に直撃

その鎧を槍が貫いた

 

【な、ば、バカなァァァァ!?!?】

 

『そうか、イカロスのあの装備はアーマード・ダークネスを応用した装備…‼︎紛い物とはいえ、それを元に再構築したヤプールの鎧には有効なのか!!』

 

【ぐぁ、あァァァァァァァァ!!!】

 

ヤプールの断末魔にも等しい咆哮

苦し紛れの一撃が限界を迎えていたイカロスの装甲を砕き、その右腕を切断する

 

イカロスの離脱と共に脱落する槍

だが、Uキラー・ダークネスの胸には大きな穴が開いていた

 

『翼さん!あとは僕たちが!!』

 

よろめくイカロスを支え、下がらせてメビウスとヒカリが前に歩み出る

 

ヒカリが右腕を掲げ、メビウスがメビウスブレスから炎を解放

 

ーセェヤッ!!

ーハァッ!!

 

メビュームバーストとナイトシュート

二人のウルトラマンの必殺技が正確にUキラー・ダークネスに開いた大穴を捉える

 

ーギャォォォォォォォォォォォォォォォォン!?!?

【ぐぁあァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!】

 

Uキラー・ダークネスの断末魔とヤプールの断末魔が重なり響く

砕け散っていく体をなおもヤプールは前進させながらイカロスたちを睨む

 

【変わらぬ絆…だと…ならば我らの怨念もまた変わらぬ…‼︎】

 

【何度滅びようと、何度潰えようと…我らは現れる!!貴様らウルトラマンを、愚かな人間を滅ぼすその時までぇ…!!】

 

崩れ去るUキラー・ダークネスの体から巨大ヤプールが炎に包まれながら現れ、嗤う

 

『ヤプール死すとも、怨念死せず……ッ!!』

 

怨念の籠った言葉を最後に巨大ヤプールの体が爆発

虹色の光を放ちながら粉々に砕け散っていった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

アルドたちの秘匿格納庫

 

帰投した翼の前にコンとミライの姿になったメビウスとセリザワの姿を借りたヒカリが現れる

 

「ありがとうございます、メビウス、ヒカリ」

「僕たちはただ、少し力を貸しただけです」

 

と微笑むミライの側で同様に微笑んでいたヒカリが顔を険しくし、翼たちに告げる

 

「日向 翼、メビウス。俺が探していたイカロスをかつて葬った怪獣が見つかった。いや、灯台下暗しだったというべきか……」

 

ヒカリが改めて告げる

イカロスとの約束に繋がる話に翼も表情を強張らせる

 

「イカロスを葬った怪獣、超新生命体アポロデラスは、この星に根付いていた」

「えっ…⁉︎」

 

「そしてその覚醒の時が迫っている。恐らく…この翌日にでも」




次回
ウルトラマンイカロス

最終三部作 第一章
『陽出づる黄昏』
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