ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

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最終三部作第一章「陽出づる黄昏」

人知れぬ山中

空から降り立ってきたそれは、見上げるような巨体をしていた

 

蒼と銀に染まる体の色は夜の闇にも映え、鮮やかに見える

その胸には青く輝く結晶が光り輝いていた

 

しばらく辺りを見回していた巨人だが、あることに気づく

 

『……ここは、そうか』

 

それに気づいた巨人は光に包まれ、体が縮小していく

 

人間大まで体を小さくした巨人は山中を散策し、ある村を見つける

 

『村か…今の僕の姿では、怖がらせてしまうか』

 

「そこにいるのは誰だ?」

 

異邦人の背後から突然現れたのは一人の地球人だった

着流を着ただけの簡素な格好の男性がそこに立っていた

 

『あ、いや僕は……』

 

慌てて立ち去ろうとする異邦人

 

「待ってくれ!」

 

地球人が異邦人を呼び止める

 

「……行くあてが無いなら、私の家に来ないか?見たところキミは異星種族…いや、もしやキミは、M78星のー」

 

今更ながら驚きつつも地球人は異邦人に握手を促す

 

『……何故あなたは、僕を見て驚かないんですか?』

「驚きはしたよ。地球でも伝説みたいに語られてるウルトラマンの一人に会えたんだから」

 

照れ臭そうに頭をかきながら地球人は微笑む

 

「でも、今困っているのはキミだろう?そう思ったら放っておけなかったんだよ」

 

あっけらかんと答えた地球人をしばらく見つめていた異邦人はしばらく思案していたが、地球人の手をとる

 

『……ありがとう。行く場あてはたしかになかった。しばらくこの星の周囲で調査したいこともあるから、もし場所を貸してくれるならありがたい』

「ああ、私の家で良ければいつまででもいてくれ。私以外は入らない離れが空いているしね」

 

異邦人は自分の胸に手を当て、その姿を地球人の青年に変える

 

「改めて、僕はM78星人。キミたち地球人にはウルトラマンと呼ばれてる種族だ。名前はーイカロスだ」

 

「イカロス……いい名前だ。私は昴、日向(ひむかい) (すばる)。しがない学者だ」

 

「学者…!僕も光の国で科学者をしているんだ。正確には、生物学者だけど」

 

「そうなのか!なんとも奇遇だな。私の分野は工学だが、色々と話を聞かせてはくれないだろうか?」

 

「もちろん!僕も、地球のことを色々聞きたかったんだ」

 

数十年前のある夜

蛍火村の山の中で人知れず、一人の地球人と一人のM78星人が友人となった瞬間だった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

イカロスキラーとUキラー・ダークネスの撃破の翌日

 

帰還したフェニックスネストは再び基地の形態に戻り、その指令室で作戦会議が行われていた

 

「アポロデラスは、我々宇宙警備隊がその存在を確認してからイカロスが率先して調査を行なっていた宇宙怪獣だ」

 

モニターに種々の映像を映し出しながらヒカリが告げる

 

「その実態は、恒星系G-54銀河系で発生した連鎖超新星爆発のエネルギーを取り込んだ宇宙植物が突然変異した結果誕生したものだと告げられている」

 

「連鎖超新星爆発って……宇宙が広いって言ってもまたとんでもない現象も起きてるもんだ……」

 

冷や汗を流しながらケリスが苦笑いを漏らす

 

「それ以外の情報はまだ少ない。アポロデラスを追っていたイカロスが、亡くなってしまってからはその消息も不明になり、調査続行が困難だとされたからだ」

 

ヒカリが一瞬沈痛な面持ちを見せる

それを見た翼も辛そうな表情になる

 

「だが、イカロスの残したアポロデラスの放つエネルギー情報を元に俺はこの太陽系を中心に調査を行なっていた。そしてー」

 

「つい先刻、この地球で反応が確認された」

 

ヒカリが剛たちを見据えて告げる

 

「地球で…?」

「ああ。今の今まで確認ができなかった反応が、突然に観測され始めた。まるで今まで休眠していたものが覚醒したように」

「……実際そうかもしれませんねぇ。話を聞く限り、レジストコード:アポロデラスは植物と類似した生体環を持つ可能性があります。例えば、イカロスとの遭遇戦で共倒れする際に緊急用の種子や休眠芽のようなものを地球に残して再生し始めていた、とか」

「その可能性は考えられる……だが、これ以上のことは俺からも確かかなことは言えない」

 

ヒカリが険しい表情で首を振る

 

「……ならば、我々にできることは最大限の警戒を敷いてその出現に備えることだ。そうだろう?」

 

剛の言葉にNEXT GUYSのメンバーと翼が頷く

 

「僕たちもいます!」

「ウルトラマンの助っ人がいるとは、頼もしい話だ。助力感謝する、メビウス、ヒカリ」

 

「ガンドラグーンとガンフェニックスは両機共に修理完了。量子加速器も整備が終わっています」

「装備面は問題なし……問題があるとすると、司令官を失ったままのA.I.G.I.S.のほうだが」

 

剛が華鈴(かりん)への通信を繋ぐ

 

『はいはい、こちら華鈴。どったの?剛隊長』

「A.I.G.I.S.の側はどうなっているか状況を聞いておきたくてね」

『状況ねぇ…考えうる限り最悪、って感じかな。まず…石動(いするぎ)司令が遺体で見つかった』

 

華鈴の言葉に皆が、特に翼が動揺を見せる

 

『八坂のヤツの通信やら何やらの記録を確認してたら石動司令の暗殺を伝えるような内容があってね。基地の近くの森林で遺体が見つかった』

 

「石動司令が……」

「………」

「そんな、石動さん……」

 

剛、翔真が顔を伏せ、花が手で顔を覆う

 

『八坂のヤツ……最初からこのつもりで事を動かしてたみたいね。クソ野郎が……石動司令が冷凍保存していたレブナントたちもみんな廃棄されたらしいし、先のスフィアとの対決でこちらの保有戦力が半減してるのも相まって痛手も痛手よ。石動司令が亡くなった事実で、あたしの部下以外は意気消沈してるし、あたしも部下たちも……クるものはあるしな……』

 

辛そうな声の華鈴はそれでも報告を続けてくれた

 

『八坂が回収させてた怪獣の死体に付着していた植物らしい構造体のサンプル解析も終わってたけど、地球上の植物と構造は似てるのに種子とかの遺伝子に関連した構造だけ地球のものとまるで一致しないらしいわ』

 

「……アポロデラスの一部と考えてほぼ間違いはないだろう」

 

『怪獣の体内にまで根を伸ばしてたってさ。怪獣たち、相当な苦痛を感じてただろうって』

 

華鈴の言葉にケリスが苦い表情を見せ、花が目を伏せる

 

「ー兆候自体の確認はいくつかされた。ならば、あとはいつアポロデラスが出現しても対処できるように警戒体制を崩さない事だ」

『G.I.G!』

「華鈴隊長はA.I.G.I.S.側の取りまとめを引き続き頼めるだろうか?」

『頼まれずともこんなの放っておきませんよ。任せておいてください』

 

緊急ミーティングが終わり、それぞれの持ち場に戻る中

 

「日向 翼。イカロスの様子を見せてくれないか?」

 

ヒカリが翼を呼び止め、その提案を翼は了承した

 

 

イカロスの機体は日向重工の地下ドッグに戻ってきていた

レジアの活躍により、友好種族同盟は翼の拘束命令を解いていたため、日向重工の閉鎖も解除されていた

 

それでも昨日今日の事件解決からまだ日が経っていないため、まだ世間の風当たりは強いままで迷惑電話や種々の嫌がらせは度々行われていた

 

その地下ドッグでイカロスを前に日ヒカリはホロボードを展開し、操作を行なっていた

 

「……結論から言おう。イカロスにはもう乗るな」

 

ヒカリは無常な通告を翼に突きつけた

 

「……やはり、機体は限界なのですね」

「ああ。イカロスのものを利用しているカラータイマー…タイマーリアクターといったか、あれはまだ万全の状態だが、機体の他のパーツが全て限界がきている。加えて、右腕の消失が痛い」

 

ヒカリは分析した事実を淡々と告げる

 

「修理するならば、全てのパーツの取り替えが必要だろう。だが、元々この機体の完成に何十年もかけたのならば、それも一筋縄ではいくまい」

 

翼が唇を噛み締めながら翼が頷く

 

「ならば、イカロスに乗るのはもう止めておけ。次にイカロスに乗れば、イカロスの機体もキミの命も危うい」

「……わかり、ました……」

 

ヒカリが翼の肩に手を置く

 

「キミの、キミたちの無念はわかる。アポロデラスこそ、キミたちにイカロス自身が託した倒すべき脅威なのだろう」

 

「だが、キミが無為に命を散らすことをイカロスは望まない。彼は、そんな心優しい男だった」

 

ヒカリの言葉に翼は黙って頷く

何よりも、ヒカリの言葉は翼自身がよくわかっていた

 

何よりも、翼が敬愛している昴がそれを望まないことを翼はわかっていたからだ

 

 

ヒカリが去り、社長室に戻った後、翼は首から下げたイカロスの起動キーとなる青い石ーカラータイマーの欠片のペンダントを一人手のひらに置いて見つめていた

 

「………」

 

近くのソファに腰掛けたコンもかける言葉が見つからず、押し黙ったまま翼を見つめていた

 

「……これでよかったんだ」

 

翼が自嘲気味に笑いながら呟く

 

(イカロスの遺体から回収されたカラータイマーからじいちゃんが機械のイカロスを設計し、僕が完成させて今まで戦ってきた。ウルトラマンの力と名を借りて)

 

ぐっと翼が青い石を握りしめる

 

(僕がその名前を借りるのは、仮初でもウルトラマンでいるのは、ここまでなんだ)

 

名残惜しそうに翼がペンダントをしまう

 

その瞬間、翼のメモリーディスプレイに通信が入ってきた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

イカロスキラーたちを撃破して翌日の昼下がり

フェニックスネスト内にはアラートが響き渡っていた

 

「東京地下、いや京都地下から…?いや、いやいやいや、日本中で反応が多数!!地下から高エネルギー体が上昇してきます!!」

「間もなく地上部に出現します!!」

 

地響きと共に地面から巨大な構造が持ち上がっていく

白い茎とがくを持つ巨大な植物じみたそれは天に向かって蕾を向け、都市のど真ん中に屹立した

 

フェニックスネストや日向重工のある東京他日本の各所に同じ植物体が姿を現していた

その植物体を中心に、地面の下から白い蔦と赤い花を備えた草体が露出、ビルや構造物、時には人や犬などの動物たちも飲み込みながら文明を侵食していく

 

「おいでなすったか…‼︎」

 

剛が立ち上がり、華鈴に通信を繋げながら指示を下す

 

「我々はガンドラグーン、ガンフェニックスで出撃。ケリスと花はヤツの分析を行い、ヤツが何をしようとしているかを調べてくれ。華鈴隊長は各地のA.I.G.I.S.支部と連携し、避難と対処を!」

『G.I.G. !!』

『了解っ!!』

 

剛の指示を受け、それぞれの持ち場へと向かっていく

 

 

「はじまったか……」

 

ヒカリがビルの上から巨大な植物体を見上げる

その隣にミライが並び立つ

 

「あれが…アポロデラス…」

「恐らくな。ヤツの全貌はまだ俺にもわからない」

 

ミライが左腕を構え、メビウスブレスを出現させる

 

「勝ちましょう。地球のためにも、イカロスと翼さんのためにも!」

 

ヒカリも右腕を構え、ナイトブレスを出現させる

 

「ああ、もちろんだ!」

 

 

飛んできたガンブレイバーと並ぶ形でメビウスとヒカリが姿を現す

 

ーシャアッ!!

ーフゥンッ!!

 

「力借ります。二人とも!」

 

ークォォォォォン……

 

メビウス、ヒカリ、ガンブレイバーの出現に植物体は鳴き声のような鳴動を響かせ、その根本から大量の蔦を噴出させ、集合。その形を変化させていく

 

ーギュルルルルルルル…

 

集合した蔦は白い外皮に各所に咲いた赤い花と鎌のような両腕を持つ恐竜型の怪獣となり、2体がメビウスとヒカリを睨む

 

「怪獣を作り出しやがった…‼︎」

 

ーギュルルルルルルルルル!!

 

現れた怪獣の片方が歩み出し、ガンブレイバーに目から放つビームでの攻撃をはじめる

ブレイバーはなんとかそれを回避し、巨大植物体に近付く

それを追撃しようとする怪獣をヒカリが押さえ、もう一体にもメビウスが攻撃をしかけ、押さえる

 

『怪獣は俺たちが押さえる!植物体の対処と調査を頼む!!』

「わかりました!花さん、頼む!」

「G.I.G.!!」

 

ガンブレイバーは植物体に肉薄。それに反応した植物体は蔦を伸ばしてブレイバーを攻撃してくるが、翔真の操縦でそれを回避。スキャンレーザーで植物体を読み込み、花がコクピットでタフブックを用いて解析を進めていく

 

ーギュルルルルルルル!!!

 

鎌のような腕での攻撃をいなし、その胴体にラッシュを決め怪獣を吹き飛ばしたメビウスがメビウスブレスを回転、左腕にエネルギーを迸らせる

 

ーセヤァッ!!

 

炎の如き輝きを纏う一撃が怪獣を捉え、その体を爆発させる

 

ーフゥアッ!!

 

ナイトブレードで鎌腕の片方を斬り捨て、よろめいたその体を一刀両断に斬り伏せる

 

2体の怪獣体が撃破されると共にその亡骸を地面から噴出した蔦が絡めとり、再び同じ怪獣体を生み出す

 

ーギュルルルルルルルルル…‼︎

 

『再生した⁉︎』

『こいつらは……本体ではないということか⁉︎』

 

 

京都市内の植物体周辺

 

ガンローダーからのバリアブルパルサーの直撃を受け、怪獣体が爆発する

 

「あの怪獣体、生体反応が薄すぎる……植物体にしっかり反応があるのを見るに、アイツらはアポロデラスの防衛組織…白血球もしくは兵隊アリみたいなものか……さしづめ、アポロレギオンとでも呼ぶか」

 

爆発した中から白い巨体ー新たなアポロレギオンが立ち上がる

 

「植物体は花ちゃんが調べてるし、私はこいつをどうにか押しとどめるの優先しようかなッ!!」

 

アポロレギオンの光線を掻い潜り、ローダーがバリアブルパルサーで攻撃しアポロレギオンを後退させていく

 

 

ーギュルルルルルルルルル!!!

 

札幌市に出現したアポロレギオンはその背から翼のような器官を形成し、飛行を始めた

 

ウインガーに肉薄してきたアポロレギオンを見て輝が毒づく

 

「そんなのアリかよッ!?!?」

 

追跡してくるアポロレギオンを振り払うように飛行しながら輝はビルを目指して飛行

 

「っしょぉっ!!」

 

ビルに激突するスレスレでウインガーは急上昇

突然現れたビルに驚愕し、アポロレギオンが一瞬止まるがその瞬間を輝は見逃さなかった

 

「食らえ!ウイングレッドブラスター!!」

 

ウインガーから乱れ撃ちされた赤い光線が何度も直撃し、アポロレギオンを貫き爆散させる

 

炎上しながら地上に落ちていく亡骸を素早く蔦が捕まえ、新たなアポロレギオンを形成していく

 

 

「兵隊らしい怪獣を生み出す以外は何も動きがない……あの怪獣たちが幼体で繁殖の最中なのか……?」

 

社長室のデスクにあらゆる端末を開いて各地から送られてくる映像やデータをまとめて確認しながら翼が思案する

 

現在各地のアポロデラスらしい植物体は怪獣体・アポロレギオンを生み出して近づくウルトラマンや防衛チームの戦力を撃退しているだけ

アポロレギオン一体一体も現状そこまで脅威ではなく、メテオールを使うことなく撃破できている

 

考えられることは二つ

あの生まれ続ける怪獣体がそもそもアポロデラスという怪獣の幼体であり、繁殖の真っ最中である可能性

もう一つは、あの植物体に意味があり、それを守護するために怪獣体が生まれ続けているのか

 

思案を巡らせる翼の下に花から新たなデータが届く

その解析結果からは植物体にエネルギーが集中し、それがどこかへと流出していることを示していた

 

「エネルギーが流出……各都市に出現した植物体……」

 

はっ、と翼は何かに気づく

 

「東京、京都、大阪、北海道、広島、福岡……この辺りは高純度エネルギー精製場や人口の流出入の多い地点が近い……ここは、現代文明のエネルギースポットみたいなものなのか…⁉︎」

 

翼がメモリーディスプレイを取り、剛に連絡を入れる

 

 

今しがた大阪に現れていたアポロレギオンを撃破した剛が通信に応える

 

「エネルギープラント?」

『はい。各地に現れた巨大植物体は恐らく本体から離れた地点に根を張り、エネルギーを吸収して本体へと輸送する』

「……となると、植物体とは別に本体がどこかに存在するのか?」

『今、輸送されているエネルギーの行き先を調べています。花さんが送ってくれた東京の植物体のデータからでも大体の位置はー』

 

と翼の言葉が止まる

 

「?翼くん?どうした?」

『ーなんで気づかなかったんだ……アポロデラスとイカロスがかつて戦った場所……じいちゃんがそれを看取った以上、それはそこに決まってるじゃないか……‼︎』

「落ち着け!エネルギーは一体どこにー」

 

『蛍火村ー』

 

それだけ告げ、翼からの通信が途切れる

 

「蛍火村だって…⁉︎ 各員に通達!!アポロデラスの本体の位置を翼くんが突き止めてくれた!!場所は蛍火村だ!繰り返ー」

 

ーギュルルルルルルルルル!!!

 

通信する剛の言葉を遮るようにアポロレギオンの咆哮が響き、突如飛来した何かを剛の乗るガンバスターはすんでで回避する

 

剛が見下ろした先には新しく生み出されたアポロレギオンが2体

だが、その片方の腕は鞭のように変形していた

 

 

ーセヤァッ!!

 

メビウスが振るうメビュームブレードを鎌状の腕で受け止め、もう片方の大剣型に変質した腕でその体を斬り裂く

 

ヒカリが交戦する個体は盾状に変化した両腕で器用にナイトブレードを受け流しながら3つに裂けた口から放つ鋭い舌の攻撃でヒカリに着実にダメージを与えていく

 

『復活する個体が変化している…⁉︎こちらの戦い方に合わせた形態へと進化しているのか⁉︎』

『このままじゃ、こちらが押し負ける…‼︎』

 

その上空で飛行型に変化したアポロレギオンを撃ち抜き撃墜した翔真が声を張り上げる

 

「ヒカリ!メビウス!!アポロデラスの本体の位置がわかった!!蛍火村だ!!そこに本体がいるはず!!」

 

『蛍火村……まずい、あそこは‼︎』

 

ヒカリが何かを思い出し、鍔迫り合いをしていたアポロレギオンを蹴り飛ばす

 

『メビウス!』

『わかった!』

 

メビウスもパンチでアポロレギオンを吹き飛ばし、二人並び立ったウルトラマンはそれぞれの力を解放

 

ーハァッ!!

ーフゥンッ!!

 

メビウスバーニングブレイブがメビュームバーストを、アーブギアを纏ったヒカリがナイトシュートを放ち、アポロレギオンを吹き飛ばす

 

『すまない!ここは任せる!!』

 

ヒカリとメビウスが飛び立ち、どこかへと急行していく

それに敬礼で応えた翔真と花が正面を見据える

 

ーギュルルルルルルルルル……

 

ヒカリとメビウスが倒したアポロレギオンが新たに角や装甲板を纏いながら復活する

 

「骨が折れそうなヤツらだ…だけど、踏ん張るぞ」

「はい!必ず人々も、この街も守ります!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

どこかへと向かう翼の肩を掴み、コンが壁に叩きつける

 

「どこ行くつもり?」

「……どいてくれ、行かなくちゃならないんだ」

 

翼は強情にもコンの細い腕を掴み、どかす

が、コンはその脚を踏みつけ止まらせる

 

「バカはバカでも、今度のバカは看過できないわ。行くな社長」

 

いつになく強い言葉でコンが翼を押しとどめる

 

「翼…イカロスで出るつもりでしょう?」

「……あぁ」

「もうあのイカロスは限界だって言われたでしょ?しかも、次にあんたが乗ったら無事でいられる保証はないって⁉︎ 死にに行くつもりのヤツを送り出せるわけないでしょうが!!!」

 

いつになく声を荒げて翼の胸倉を掴む

 

「僕は死にに行くつもりはない」

「屁理屈こねてるんじゃないわよ‼︎」

「屁理屈じゃない!」

 

翼も強い声で反論する

 

「僕も、イカロスも死なない。死なせない。蛍火村も、じいちゃんの家も守ってみせる」

 

真っ直ぐな瞳でそれを告げる翼

その胸倉を掴む腕が離される

 

「……言質とったわよ。死んで帰ったら覚悟しておきなさい」

 

「……必ず生きて帰る」

 

翼は決意と共に胸のペンダントを掴み、地下ドックへと降りる

 

 

イカロスのコクピットに乗り込み、認証キーである青いペンダントをコンソールに差し込む

 

「……行こう、イカロス。最後の戦いだ」

 

イカロスのシステムが起動し、コクピットの中心で翼が拳を握りしめる

 

「ーイカロス、テイク・オフ!!」

 

翼のコールに応じ、イカロスの瞳に光が灯る

 

地下ドックから迫り上がるイカロスが地上から出現し、飛び立つ

 

 

蛍火村周辺部

山々の間に大きく凹んだ窪地になった場所から地面を引き裂き、巨大な構造体が姿を現そうとしていた

 

ービキッ、ズズズ……ッ

 

大地から現れたのは巨大な蕾

高さだけでも100mは下らない。脈動する光の筋がいくつも入った赤い花弁の蕾が、白く太い蔦と共に姿を現していた

 

その目前にイカロスが降り立つ

 

「やっぱり……でも、まだ目覚めていない。今のうちに叩けばー」

 

欠損した右腕を庇いながらもイカロスが蕾に相対する

 

ービキビキビキッ、ガシャァアンッ!!

 

その背後の空間がガラスのように砕け散り、青紫の空間と共に異形が現れ、イカロスに組み付いた

 

ー■■■■■■■■■■■■■!!!

 

「なっ!?なんだ!」

 

組み付いてきたそれにエルボーを当て、更に回し蹴りを撃ち込みながら距離を取る

 

その姿は異形そのものだった

大まかな姿形は以前戦った白亜の巨兵・ギャラクトロンに似ていたが、そのボディはドス黒く変色。至る所が崩壊し、そこを補うように砲門や紫の結晶ーネクロヴァイスが歪に生えていた

その左腕はギルバリスのものとギャラクトロンのものが組み合わさった巨大なハサミ状になり、右腕はギャラクトロンMk-2のものを無理矢理継ぎ足したような人間状の腕が生えていた

 

【ゴ、ァァアァア……】

 

体中から血管のようにぶら下がる千切れたコードから紫の液体を滴らせながら異形の怪獣は確かに生物じみた妄念を感じる隻眼でイカロスを睨みつける

 

【ヒ、むかイ……ッバさァァァァ!!!】

 

歪な咆哮は確かに言葉を紡いでいた

その歪んだ声を聞いた翼はその怪獣の正体に到達する

 

「その声……まさか、八坂(やさか) 英輔(えいすけ)か!?」

 

八坂の変貌した怪獣ーグールギャラクトロンは悶え苦しむように身を揺らしながら左腕の巨大ハサミでイカロスの首を捉え、締め上げる

 

【ぉまエのォオ、おマえのせぃダァァッ!!オまぇトいスルぎさぇいナけれバァァァァッ!!!】

 

怨嗟の声を撒き散らしながらグールギャラクトロンは首まで裂けた口を紫の液体を散らしながら開き、そこから光線を放つ

右腕を失い満足に防御が効かないイカロスはその光線をまともにくらい、膝をつく

 

「こ、のォッ!!」

 

なんとか体勢を立て直し、その胴体にキックを当てる

ただその一撃でドス黒く変色したボディは崩れ、ネクロヴァイスが生えて傷口を埋める

 

【イダぃ…いダイよォオ…‼︎ なんデ、ボくガこんナァァッ!!】

 

目から紫の液体を溢れさせながら頭部から伸びるコードの絡まった尻尾を降り回すが、イカロスは左腕でそれを抱え込み、引っ張り転倒させる

 

ブチブチブチッと嫌な音を立て、尻尾がグールギャラクトロンの頭部から脱落する

 

【ぁガぁぁあアァァッ!!!】

 

悲痛な叫びを上げながらも立ち上がるグールギャラクトロン

油断せず膝を突きながらもそれに対しイカロスが構える

 

ーフゥンッ!!

 

その目前にヒカリが降り立ち、グールギャラクトロンを一閃し退かせる

 

「ヒカリ…‼︎」

『何故来た⁉︎次に出撃すればイカロス自体もキミも無事では済まないと言っただろう⁉︎』

 

ヒカリがイカロスの肩を支えながら叱責する

 

「黙って見ているだけは、やはりできなかったんです…それにここは、イカロスとじいちゃんの思い出の場所だから…」

 

そう答えるイカロスー翼をヒカリは黙って見据える

 

その背後で起き上がるグールギャラクトロンが再び光線を放とうと口を開くが、飛来してきたメビウスのバーニングメビウススピンキックが直撃し、右腕を吹き飛ばされながら転倒する

 

『ヒカリ!』

『助かった、メビウス!』

 

ヒカリはイカロスを助け起こすと後ろに下がらせる

 

『ここからは俺たちが代わる。無茶はするな』

 

壊れた右腕からコードを伸ばしながらグールギャラクトロンが立ち上がり、それにメビウスとヒカリが相対し構える

 

 

ークォオォォォォオン……

 

 

その時、不思議な咆哮が響いた

 

と同時にグールギャラクトロンの背後が眩く光、光そのものと言えるようなエネルギーの奔流が襲来し、グールギャラクトロンが巻き込まれ粉々に吹き飛ばされる

それでも威力は減衰することなく、メビウスとヒカリ、イカロスに迫りくる

 

ーフゥン!

ーセヤァッ!!

 

メビウスとヒカリが咄嗟にバリアを張り

 

ーシェアッ!!

 

イカロスもバックラーからシールドを展開し身を守る

 

が、一瞬の拮抗の後にそれぞれのバリアは砕かれ、膨大なエネルギーが三人を襲い、その体に火花を散らす

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

イカロスも威力を殺しきれず、余波が直撃した左眼が爆発し光を失う

 

一瞬のうちに焦土と化した山々

そこに倒れる三人のウルトラマン

 

ガシャン、とグールギャラクトロンの残骸らしいコードの絡まった青紫に輝く球体が落下する後ろで、開きゆく巨大な蕾から『それ』は姿を現した

 

兵隊と同じく恐竜のような体躯に口が確認できない尖った頭部

兵隊たちよりも光沢がある白金の体表の一部から赤い花弁が翼のように生えている

オレンジの発光体を腕と脚に備え、その背には後光のように円状に六つの翼型花弁が並び、その中央から伸びた管は元の巨大花に繋がって脈動する何かを体へと送り続けている

 

ークォオォォォォオォォォン!!!

 

生まれ落ちた白亜の巨獣ーアポロデラス・ラーは不可思議な咆哮を上げ、花から出てこちらにゆっくりと前進してきていた

 

『あれがアポロデラス…‼︎』

『気を抜くなメビウス…油断すれば一瞬でやられるッ‼︎』

 

アポロデラスは立ち上がる二人のウルトラマンに右腕を振りかぶり、振り下ろす

その腕の先から放たれたエネルギー波動が二人のウルトラマンに強烈な衝撃を与え、跪かせる

 

ーセヤァッ…‼︎

ーハァッ…‼︎

 

なんとか立ち上がり、メビウスとヒカリがアポロデラスへと突撃

両側からその肩を押さえ込み、胴体に蹴りを打ち込む

二人のウルトラマンの蹴りを受けても少ししか後退せず、アポロデラスは構わず進撃し、メビウスとヒカリに手のひらから放つエネルギー衝撃波を喰らわし、吹き飛ばす

 

『くっ!?』

『ならばッ!!』

 

メビウスがエネルギーを纏った拳を放ち、ヒカリがナイトブレードから光の斬撃を飛ばす

 

ークォオォォォォオォォォン!!

 

アポロデラスは咆哮を響かせると共に巨大な質量を持ったエネルギー波動を解き放つ

一波目でメビウスの光拳とナイトブレードの光刃を相殺し消し飛ばし、続く二波、三波が巨大な質量を持って二人の体を打ち据える

 

ーセェヤッ……

ーグゥッ……

 

メビウスが膝を突き、ヒカリがよろめく

メビウスのカラータイマーが無情にも点滅を始める

 

『アーブギアで守られた俺ですらこのダメージ……なんてエネルギーの奔流だ……‼︎』

 

アポロデラスの背後に閃く翼花弁がひらめき、展開

後光を示すような輪を形成したそれは熱を以て光輝き、それぞれから高質量、高熱量の大光線を放つ

 

なんとか体勢を立て直したメビウスたちは六条の破壊光線から身を翻し回避しつつ、メビュームスラッシュや光刃で攻撃を加えていくがアポロデラスの体へはバリアで弾かれて到達し得ない

 

その様子を光線を回避しながら見据えていた翼はあることに気づく

 

「あのバリア…まさか‼︎」

 

イカロスは残った左腕にバックラーを展開。フューチャーシステムを起動させる

イカロスの関節部やボディから火花が散った

 

短距離のテレポートを重ね、光線を回避しながらイカロスが向かう先はアポロデラスの背中側

 

「そこだァァッ!!」

 

最後のテレポートで背中側へと転移したイカロスはアポロデラスの翼花弁の一つに組み付く

 

ークォオォォォォオ!?!?

 

アポロデラスが初めて驚愕のような咆哮を上げ、身を捩る

取り押さえたイカロスの左腕が翼花弁の持つ熱量に耐えきれず赤熱し、融解していく

 

「その花弁のような翼を展開するために、ここにはバリアは張れていないッ!!その一翼でも、もらったァァッ!!!」

 

格納していた黒星丸を抜き、翼花弁の根元を狙い突き刺す

エネルギーに弾かれることなく刃が突き刺さり、アポロデラスが更に身を捩る

 

「おおおおおおおッ!!!」

 

裂帛の気合いと共に半分融解しかけていた黒星丸を振り抜く

 

翼花弁が一枚、アポロデラスの背から脱落し、その根元からエネルギーの塊である光が粒子となって溢れだす

 

ークォオォォォォオォォォォオ!?!?!?

 

苦悶の咆哮をアポロデラスが上げる

 

融解した黒星丸と左手のひらを脱落させ、イカロスが離脱する

 

『ー翼!!後ろだ!!!』

 

ーズギャァッ!!!

 

ヒカリの警告とほぼ同時にイカロスの胴と右脚をどこからか伸びてきた槍状の蔦が貫いた

 

「ーかはッ……」

 

胴体を貫いた蔦はイカロスのコクピットも貫き、そこに乗る翼の横腹を深く抉っていた

 

『翼さんッッ!!!』

 

だらりと脱力したイカロス

その体は宙に浮き、右脚が引き千切られる

 

蔦がしなり、その体を前方へ叩きつけるように放り投げる

 

イカロスの巨体は凄まじい勢いで地面へと叩きつけられ、二度三度バウンドして山肌に叩きつけられ、ようやく止まった

 

ークォオォォォォオォォォン!!!

 

アポロデラスの咆哮と共にその胸部が大きく裂けるように開き、白金の体皮の下から真紅の内組織と渦巻くコアのような器官を露出させる

 

そのコアのような部分に今までとは比べものにならないエネルギーが収束していく

 

『メビウスッ!!』

 

ヒカリの呼びかけに応え、メビウスとヒカリが共にイカロスの前に割り込み、最大出力でバリアを展開する

 

ーグルォォォォオォォォォオォォォ!!!

 

アポロデラスから極光が放たれる

理解の埒外の質量、熱量を持ったその光はメビウスとヒカリを容赦なく包み込む

 

ーセヤァァァッ!!

ーハァァァァァッ!!

 

全霊を込めたバリアすらも砕かれ、砕けた穴から流れ込む光線がメビウスとヒカリを焼く

 

その光は次第に収束し、焼け爛れた地表が露わになっていく

 

焼けた地面の境目地点に立つメビウスとヒカリはよろめき、地面に倒れる

そのカラータイマーの点滅は限界まで早くなっていた

 

 

ノイズの走るモニターを前にコンがコンソールを乱雑に叩く

 

「どうしたの翼!?翼ァッ!!」

 

冷や汗を流しながらコンは側の社員たちを見回し、苛立ちながら告げる

 

「映像復旧はできないの⁉︎イカロスの機体状況は!?」

 

そのコンの側でイカロスや翼の状況をモニターしていたアルミルが青ざめた顔で目を見開いていた

 

「コンさん……イカロスの機体損傷率80%……左腕損傷大、右脚欠損、戦闘の継続は不可能です……」

「……あのバカ…‼︎ もう帰投しなさい!!」

「……内部コクピットの翼社長のバイタルが……消失しています……」

 

アルミルの言葉にコンが目を見開き、愕然とする

 

「……どういう、ことよ、それ……」

「パイロットスーツの計測は届いています……でも、でも、脈拍も心拍も、生命兆候を示すバイタルだけ、計測できていなくて……」

 

アルミルを押しどかし、コンがバイタルの計測結果を穴が開くように見つめる

 

そして、その意味を理解したコンは糸が切れたように膝から崩れ落ちた

 

「……嘘、嘘よ。あいつは、あのバカは殺しても死なないようなヤツで……出る前だって、死なないって約束して、それで、それで……」

 

絶望した表情のままモニターに向き直る

外部カメラのいずれかにアクセス成功したのかモニターが切り替わり、そこに映し出されたのは

 

変わり果て残骸同然の姿になったイカロスの姿だった

 

「……は、ハッ、あ…翼、翼ァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

コンの悲痛な叫びが虚しくドック内に響いた




次回
ウルトラマンイカロス

最終三部作 第二章
「翳る世界、灯る光」
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