数十年前 蛍火村周辺のある山地
ーズドォォォォォォォォォォォンッ!!!
凄まじい衝撃音と爆炎が夜の静寂を引き裂いた
爆煙の中から現れたのは青と銀の体のウルトラマンーイカロス
そして、彼が追っていた白銀の体を持つ怪獣ーアポロデラス・インティだった
イカロスの胸のカラータイマーは既に赤く点滅し、荒い呼吸と共に肩が上下していた
ーシェアッ!!
イカロスはアポロデラスに向けスペシウム光線を放つ
が、アポロデラスはそれを高密度のエネルギー波動で打ち消しながら更にイカロスにダメージを与える
その一撃は胸に煌めくカラータイマーをひび割れさせた
ーグゥオァッ……!?
よろめき膝をつくイカロス
それでもなお健在なアポロデラスを睨み、イカロスは意を決したように左拳を握りしめ胸の前でかざす
その拳が空色に強く輝き、その輝きがイカロスの全身へ伝染していく
ーシェアァァッ!!
エネルギーそのもののようになったイカロスはアポロデラスへと突撃。それを防ごうと生み出されたアポロデラスのバリアに衝突するが、渾身のパンチでそれを打ち砕き、アポロデラス本体と衝突する
青白いスパークと共にイカロスとアポロデラスが爆発する
ウルトラマンタロウがかつて使ったものと似たイカロスダイナマイト。イカロスの全霊を賭した一撃にアポロデラスは半身を失いよろめく
アポロデラスはその体を蔦へと変貌させ、地面に潜っていった
それを追おうと歩み出すイカロス
だが、彼はもう限界を迎えていた
胸で点滅を続けていたカラータイマーの光が消え、イカロスが前のめりに倒れ伏す
「イカロス!!!」
その戦いを見ていた昴が倒れたイカロスの頭部へ駆け寄る
『昴……か……すまない……』
「もういい!喋るな!!早く、早く人間の姿に戻ってエネルギーを」
『そんな余力も……もう、ない……』
イカロスの弱々しい声に昴は全てを察し、愕然と膝をつく
『すまない……昴……僕は、キミたちの……この美しい星を……守ってやれなかった……』
『アポロデラスは……恐らくまだ、生きている……あの怪獣の存在は……脅威そのもの、だというのに………』
拳を握りしめ、涙を拭った昴が立ち上がる
「イカロス……イカロス!私はキミのことを忘れない…キミの成し得なかったことをなかったことになんかしない……‼︎ キミの名を私に貸してほしい……」
「キミが守りたかったこの星は、私が守り抜く。キミの力と共に!」
そう告げた昴に少しだけ頭を向けたイカロスはふっと笑い告げる
『もちろん……キミになら、僕の名を預けられる……』
『この星でできた……かけがえのない友よ……この星を…美しい地球を……たの、む……』
その言葉を残し、イカロスは事切れた
半ば壊れたカラータイマーがその体から落ち、カラータイマーの欠片が昴の足元に転がると、イカロスの体は青い粒子となり空に霧散していった
昴はカラータイマーの欠片ー透き通るような青い石を拾い、握りしめる
「……ああ、必ず、必ず果たしてみせる……私の代で不可能でも、私の子孫に託していくとも……遥か彼方の、私の親友よ……」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『ぬおぉおおおおお!!!!』
イカロスに迫るアポロデラスの触手をホムラザムシャーが割り込み、斬り捨てる
ークォォォォォォォォォォ!!
アポロデラスがその左手を払い除ける
その手から生み出されたエネルギー波動がホムラザムシャーを脇に吹き飛ばし、イカロスへの道を開き新たな触手が伸ばされる
その触手は空中で何ものかに押さえられたように静止する
イカロスの目前、その空中に現れた蛭子が両手をかざし、全霊の念動力で触手を押さえていたのだ
「ーッう……‼︎」
念動力を使いこなしてるわけではない蛭子に少なくないダメージが入り、苦痛に顔を歪ませる蛭子の鼻から鼻血が垂れ、目からも血涙が流れる
ークォォォォォォォォォォ!!
アポロデラスは鬱陶しげに新たな触手を呼び出し、蛭子を無造作に払い除ける
「かはっ……⁉︎」
強かに触手に打ち据えられた蛭子が森林の中に叩きつけられる
そこでアポロデラスの体が急に倒れ込んだ
バリアを解いていた前方から、両腕を失ったツキカゲが再起動し、突進していたのだ
苛立たしげに半壊したツキカゲを触手で絡めとり、ありったけのエネルギーを注入して赤熱化、爆発させる
倒れたアポロデラスが立ち上がらんとする中、大破したイカロスのタイマーリアクターに青い輝きが戻る
瞬間、空から眩く輝く光球が降り立ち、イカロスの体を包み込んだ
目が覚めた翼は眩い光に包まれた空間の中にいた
「ここは……?」
途方に暮れる翼の背後から一人の人物が現れる
「翼」
自分を呼ぶ、懐かしい声に翼が目を見開き振り返る
そこに立っていたのは白衣を着た初老の男性
翼の尊敬する祖父ー
「……じいちゃん…‼︎」
「……大きくなったな、翼」
昴は驚く翼の肩に手を置き、その頭を撫でる
その手の温かみに翼は昔を思い出す
そして、涙ぐみながらそれを堪えて昴の胸に抱きついた
大きくなった孫の背中を祖父はただ優しく撫でていた
昴から離れ、落ち着きを取り戻した翼は申し訳無さそうに俯く
「ごめん、じいちゃん。僕は……じいちゃんが託してくれた約束を果たすことができなかった……」
その言葉を聞いた昴は微笑み、首を横に振る
「いいや。まだ終わってなんかいないぞ、翼よ」
「……え?」
『その者の言う通りだ。日向 翼よ』
光の空間の空から荘厳な声が響く
声と共に現れたのは白銀に輝く体とマントを纏う伝説の巨人だった
「貴方は…‼︎ ウルトラマン、キング…⁉︎」
数回地球に現れた記録のあるその伝説の巨人の名を翼が呼ぶ
キングは片膝を突き、翼の方を見下ろして告げる
『キミの命は、あの時ほとんど尽きていた。だが、ある者がキミを救ったのだ。それがそこにいるキミの祖父、日向 昴。そしてもう一人』
キングは右の掌を開いてみせる
そこには輝きが戻ったイカロスのタイマーリアクターが握られていた
『ーウルトラマンイカロスだ』
「イカロス…が…?」
キングはゆっくりと頷く
『日向 昴と日向 翼、キミたちが死したイカロスのカラータイマーを基に組み上げた機械のイカロス。それに託した思いや願いの積み重ねが、そしてキミたちを信ずる人々の想いが、今奇跡を起こしたのだ』
『確かに命の火が消えていたウルトラマンイカロス、その魂とも言えるカラータイマーをもう一度輝かせるという奇跡を』
キングが立ち上がり、手にしたタイマーリアクターを目前に浮遊させ、頭部の前で両腕を組む
キングの体が青く輝き、組んだ腕から青い光線がタイマーリアクターに向けて放たれる
タイマーリアクターは一際強い光を放ち、キングと向かい合う位置へ飛んでいき、光の人型を作り出す
「ーッ」
奇跡の光景に翼が息を呑み、昴が目尻に涙を浮かべ頷く
キングと向かい合う形で翼と昴の目前に立っていたのは
青と銀の体を持つウルトラマン
昴の親友であるウルトラマンイカロスその人だった
「……おかえり、イカロス」
微笑みながら告げる昴を見下ろし、イカロスが頷く
『ーただいまだ。昴』
イカロスは翼の方を見、膝を突き語りかける
『翼。心からの感謝を。キミが昴の想いを繋げてくれたから僕は再び命の火を燃やすことができた』
翼が首を振る
「僕は何もしてません。ただ、じいちゃんの夢見た未来を僕も見たかった。貴方が美しいと言ってくれたこの星を守りたかった。ただそれだけですから」
『いいや。キミは、それだけ大きいことを確かに為したんだ。名を借りた日向 翼じゃなく』
イカロスが胸に手を当てる
『ー紛れもない、ウルトラマンイカロスとして』
その言葉に翼の目から堪えていた涙が溢れる
イカロスは今一度立ち上がり、キングと向き合う
『ウルトラマンキング。僕に力を下さい。この星を守るための力を』
イカロスの言葉にキングは頷き、小さな光球をイカロスに渡す
光球はイカロスの右腕に装着され空色のブレスーイカロスブレスへと変化して輝きを放つ
『決着をつけてくるといい。勇ましき戦士よ』
イカロスが再び翼に目を向ける
『翼、もう一度共に戦って欲しい』
「ーもちろん。共に戦おう!」
イカロスの突き出す拳に翼も拳を突き出し応える
その拳に昴も右手を重ねる
「私も共に行こう。成長した孫の姿を見ておきたいしな」
翼と昴の右腕にイカロスブレスが現れる
翼と昴は並び立ち、イカロスブレスを回転、上下反転させ下部のレバーを引く
イカロスブレスの宝玉が煌めき、空色の光が溢れ出す
レバーを引いたまま腕を突き上げ、弓矢を放つように手を離す
「「イカロスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」」
二人の姿が光に包まれ、そのままイカロスと一体化し、白銀と空色の光が辺りに溢れ出す
ーシェアァァッ!!!
白銀の光を放ち、青銀の巨人が飛び立った
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
光球が一層眩く輝き、アポロデラスがたじろぐ
その輝きが晴れていく中から光り輝く巨人の姿が露わになっていく
『ーへっ、真打登場ってわけだ』
ホムラザムシャーが座り込みながら微笑む
「……目覚ますのが、遅いのよ……」
その様子を映像で見ていたコンが大粒の涙を拭いながら叫ぶ
「行っけぇぇぇぇぇぇぇ!!翼!!あんたの翼なら、どこまでも行けるわ!!」
アポロデラスの前に立ち上がる青銀の巨人
機械の体ではない。確かに生きたウルトラマンとして
ウルトラマンイカロスが光の中から現れた
その体にはかつては存在してなかった翼のような紋章が刻まれていた
中継を見ていた群衆たちが俄に歓声を上げる
「イカロスだ!!」
『すげぇ!!本物のウルトラマンになってる!!』
「あの翼ってヤツがやりやがった!!」
『ウルトラマン…俺たちのウルトラマンだ!!』
A.I.G.I.S.基地も驚愕に包まれていたが、一人冷静に微笑んでいた男がいた
「……やっぱりお前は、どこまでも高く飛ぶんだな。翼」
『すごい……‼︎』
リブラの横で目を輝かせるレリア
友好種族同盟代表は静かに微笑み頷いた
「奇跡を起こしたんですね。翼さん」
すんでで念動力で勢いを殺し、それでも強かに打ちつけられた蛭子は森の中でよろよろと上体を起こし木陰の中すら眩しく照らすその優しい光を見つめる
「……やはり、翼様は……暖かいのですね……」
それだけ呟き、今までと違うどこか憑き物の落ちたような笑顔を浮かべ、蛭子は気を失い倒れた
イカロスのインナースペース
青い光に包まれたその中で翼と昴が視線を合わせ頷く
「行こう、イカロス!じいちゃん!」
「ああ!」
ーシェアァァッ!!
ークォォォォォォォォォォアァァァァァァ!!
駆け出すイカロス
それに対抗し、エネルギーボールを生み出し放つアポロデラス
イカロスはイカロスブレスのオーブを回転させ、ブレスから翼のような光弓を展開する
「「イカロスアロー!!!」」
下部のレバーをトリガーにし、イカロスが光矢を放つ
アポロデラスはそれをバリアで防ぐが、そこにイカロスが追いつきバリアに拳をぶつける
バリアが揺らぐが砕けはせず、アポロデラスは両の腕からエネルギー光線を放つ
腕を組んで光線を防ぎ、その勢いを利用してイカロスは後方へ宙返りをして着地する
「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
『頑張れ!ウルトラマン!隣のザムシャー族のも負けるな!』
「そこだ!踏ん張れ!!」
『俺たちもついてる!!頑張ってくれ!!!』
聞こえないはずの声がこだまする
遠く離れたところでイカロスを、翼を支える声が
「翼ァッ!!負けたら許さないわよッ!!」
「日向 翼!!行けッ!!」
かけがけのない相棒と友の声が響く
響いた声がイカロスたちが戦う場に光の雨となって暖かな光を満たしていく
その光の中からイカロスと並び立つ形で三つの光の柱が立ち上がった
ーシャアッ!!
ーハァッ!!
ウルトラマンメビウスとウルトラマンヒカリが眩い光と共に現れる
『イカロス…⁉︎ イカロスなのか!?』
驚愕するヒカリにイカロスが頷く
『ああ。心配をかけたな、ヒカリ』
そう答えたイカロスとヒカリが硬い握手を交わす
『暖かな光……地球の皆さんの想いが、僕たちに力をくれたんです!』
並び立つ三人のウルトラマン
それに更に並ぶように一際眩い光を放ちもう一人新たな巨人が姿を現す
紫と赤、銀の混ざった体色を持つそのウルトラマンを見たヒカリが驚きを見せる
『ウルトラマンティガ……‼︎ 神秘の光を纏う光の巨人‼︎』
新たに現れたティガもアポロデラスへと構えをとる
それに倣い、イカロスたちも改めて構える
【偉業 力 神秘 願望 解析 吸収 進化】
『……アポロデラスが言葉を…⁉︎』
イカロスの言葉にホムラザムシャーが座り込んだまま答える
『なんか機械じみた変なの食べてから喋り出しやがったんだよなコイツ…変なもん食って腹壊したのか?』
ークォォォォォォォォォォアァァァァァァ!!
ホムラザムシャーの言葉を遮るようにアポロデラスが光球を乱れ撃ちする
四人のウルトラマンはバリアを張り複合させ、それを受け止める
『アポロデラスの放つエネルギー質量が減っている…?』
光球を防ぐ中イカロスが違和感の正体に気づく
過去戦ったアポロデラスは移動体でエネルギー蓄積量が今よりも少なかったとはいえ、今よりも苛烈なエネルギー密度の攻撃を放ってきていた
だが、今アポロデラスが放つエネルギーはそれでも膨大だが移動体の時よりも軽く感じるのだ
「進化……機械を食べた……まさか、アポロデラスは自己進化を無軌道に続けているのか⁉︎」
翼の気づきに昴が頷く
「なるほど、今まで蓄えては放つだけだったエネルギーを別の場所に使いだして一撃の質量は減っているというわけか!」
『ならば今ヤツへのエネルギー供給を断てば、ヤツへも攻撃が届くようになるはず…‼︎』
「でも、そうなると各地の植物体を撃破しないとー」
『話は聞かせてもらったぜ!!』
どこからかイカロスたちの元へ声が響いてくる
『貴方は…?』
『通りすがりの風来坊……いや、ウルトラマンさ。それよりもさっきの話だが、植物体とかいうのなら任せな』
ーゼェェヤァァァッ!!
右手に出現させた光の丸鋸ーゼットシウム光輪でアポロアポストルたちを斬り裂き、返す刀でオーブが腕を広げ闇と光のエネルギーをチャージしていき腕を振り上げる
『ゼットシウム光線!!!』
暴力的な破壊エネルギーを纏う光線がアポロアポストルたちを吹き飛ばす
再生していくアポロアポストルとその奥に鎮座する植物体を見やり、オーブが肩を回す
『東京に生えてるヤツは俺が切り倒してやる!』
オーブのインナースペース
ガイはオーブの姿が描かれたカードを取り出し、リングに通す
《覚醒せよ!オーブオリジン!!》
「オーブカリバー!!」
オーブリングから出現した大剣ーオーブカリバーを手に取り、ガイがその円環を回して引き金を引く
オーブカリバーの円環内のエンブレムが輝きを放ちながら、吹き抜ける風のような澄んだ笛の音が響き渡る
オーブの姿が赤と銀、黒のカラーリングの「本来の姿」へと戻っていく
オーブ本来の姿にして最強の姿ーオーブオリジンが降臨
オーブカリバーで光の円を描き、構える
『銀河の光が、我を呼ぶ!!!』
オーブの前にアポロアポストルたちが復活を果たすが、そこに後方から追いついてきたレギオノイドとブレイバーの援護射撃が突き刺さる
並び立つレギオノイドたちとガンブレイバーの姿を見やり、オーブが頷く
『頼もしい仲間もここにいるしな。それにー』
『ーイカロス、あんたが繋いできたものもここにあるじゃないか』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
広島の植物体前
ーGoAAAAAAAA……
アポロアポストルの集中攻撃を食らったレブナントFがよろめき、共に戦っていたベリル星のロボーヘルズキングも膝を突く
ーデヤァッ!!
トドメのエネルギー砲を放とうとするアポロアポストルの砲塔に空から舞い降りた赤い巨体のキックが命中し、半ばから折れる
宙返りした赤い巨体が大きな振動と土煙と共に着地、レブナントFとヘルズキングの前に立ち上がる
ーデュアッ!!
ウルトラマンガイアがアポロアポストルに対し構えをとる
『ここは僕が!任せてくれ、イカロス!』
ガイアー高山 我夢がそう告げ、スプリームバージョンへと変身する
アポロアポストルの突進をパワフルに受け止め、その巨体を持ち上げ振り回し、投げ捨てる
ーGoAAAAAAAAAAAA!!!
よろよろと立ち上がるアポロアポストルをレブナントFの斬撃とヘルズキングの射撃が仕留める
並び立つ二体に頷き、ガイアは植物体に突撃していく
福岡の植物体前
ワイヤーアームに捕らわれていたレブナントGを青い剣撃が解放する
そのまま華麗に振るわれた青い剣撃はアポロアポストルを退け、胸元を貫き爆散させる
青い巨人ーウルトラマンアグルがその手から伸ばしたアグルセイバーを振るう
『こちらは俺がやろう。イカロス……本体を逃すなよ』
ールアァァッ!!
再生するアポロアポストルを前に構えるアグル
それにレブナントGと友好種族同盟の操作するロボットー大鉄塊が並び立つ
『ぐうっ!?』
パワーで押し負けたキングジョーブラックがよろめく
対峙するアポロアポストルの延長されたワイヤーアームの先にはガンローダーが捕縛されていた
「くそっ…⁉︎こいつ人質まで取るのかよ…‼︎」
キングジョーブラックに乗るリビオスは人質にされたケリスを攻撃できずに押されつつあったのだ
ーサァッ!!
そのアポロアポストルの腕を掴み、何者かがワイヤーを引きちぎる
ークオォォォ!?!?
拘束の解けたガンローダーからケリスは予想外の姿を目にし、驚きながらも微笑む
「また会えるとは思ってなかった…前は花ちゃんが世話になったね。ウルトラマンエックス!」
側に並び飛ぶガンローダーに頷き、ウルトラマンエックスがアポロアポストルを見据える
『イカロスー翼や花と結んだ絆が教えてくれた。この世界の危機を』
「エックスがお世話になったし、ここも同じ地球。なら、放っておくことなんてできないからな!」
ーイィィィッサァァァァッ!!
エックスのカラータイマーが輝き、構える
『別宇宙のウルトラマンとの共闘……なるほど、たぎるではないか』
リビオスが不敵に微笑む
ークオォォォォォォ!!!
腕と肩の巨砲からアポロアポストルがエネルギー弾を放つ
それをエックスが前に歩み出て防ぐ
「『ベータスパークソードォォォ!!!』」
光り輝く光刃が爆炎を斬り裂く
エックスの姿が重厚な鎧を纏う姿にー彼らの地球の希望の力の結晶を纏うベータスパークアーマーに変化する
「行こうエックス!」
『ああ、キミたちも共に!!』
「もちのロン!」
『ああ!!』
札幌で
「キミは…ウルトラマンジード!!」
現れたウルトラマンージードがウインガーたちを振り向き頷く
『僕にも翼さんたちの声が聞こえました!共に戦いましょう!』
ジードのインナースペースでリクが新たなウルトラカプセルを取り出し、起動してライザーにセットする
「融合!」
「アイ・ゴー!!」
「ヒア・ウィ・ゴー!!!」
ライザーでカプセルを読み込む
《ウルトラマンベリアル!》
《ウルトラマンキング!》
《我、王の名の下に!!!》
リクの目の前に神々しい光を放つ杖のようなデバイスーキングソードが現れ、それを掴んだリクはライザーから取り出したウルトラマンキングのカプセルをキングソードに装填する
《ウルトラマンキング!》
「変えるぜ、運命!!」
キングソードの前でリクが左手をかざし、両手を広げながら叫ぶ
「ジィィィィィィィィィド!!!」
《ウルトラマンジード!》
《ロイヤルメガマスター!!!》
キングソードを手にし、黄金の鎧とマントを身に纏う奇跡のジードが輝たちの前に降臨する
「よォォォしッ!!俺も負けてられるかぁ!!」
キングソードを手に突撃するジードと共にガンウインガーが飛翔
その援護射撃に続けてジードがキングソードを一閃し、アポロアポストルにダメージを与える
大阪の植物体の前でアポロアポストルたちの相手をしていたレギオノイドたちが吹き飛ばされ、機体の各所から火花を上げる
レギオノイドたちを庇うように前に出たバスターの射撃で後退するも、残りの一体が腕の大砲をバスターに向ける
「くっ!?」
万事休す、と目を逸らす剛
ーダァァァァァァッ!!!
が、砲門は下から突き出された光の拳にへし折られアポロアポストルも大きく吹き飛ばされる
「この光は…‼︎」
光の中から巨人ーウルトラマンダイナが姿を現した
『世話が焼ける後輩だ。ここはオレに任せな!』
ダイナが頭の前で腕を組み、開く
銀と青の姿ーミラクルタイプに変化したダイナが三人に分身し、アポロアポストル二体を囲み、連続してキックを浴びせる
翻弄されるアポロアポストルたちは背中越しに結合し、回転しながらエネルギー弾を乱射し始めるがダイナたちはそれを受け止め、収束。レボリュームウェーブカウンターバージョンとして打ち返し二体を撃破する
植物体の前に今まで翼が、仲間たちが縁と絆を紡いできたウルトラマンたちが立ち塞がる
『オーブスプリームカリバー!!』
ーデヤァッ!!
ールァアッ!!
「『ベータスパークアロー!!』」
『ロイヤルエンド!!』
ーデュアッ!!
ウルトラマンたちがそれぞれの渾身の必殺技を放つ
「我々も続くぞ!メテオール解禁!全力でウルトラマンたちを援護する!!」
『G.I.G.!!』
「ブレイジングデトネイター!!」
「最高出力、バリアブルパルサー!!!」
「スペシウム弾頭弾ファイヤ!!」
「バスターキャノン、フルファイヤ!!」
ウルトラマンたちの必殺技で軋みを上げる植物体に更にダメ押しとNEXT GUYSとA.I.G.I.S.の最大火力に友好種族同盟のロボットたちの一斉攻撃が突き刺さる
巨大な植物体も流石に耐えきれず、その構造をぼろぼろと崩壊させていく
それを見守りながら剛が一人こぼす
「後は頼んだぞ、翼くん!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
各地の植物体崩壊と同時にアポロデラスの背面から背後の巨大花に繋がるケーブルたちが一気に爆発して弾け飛ぶ
ーグォォォオォォォオオオォォォォォォォォォ!?!?!?
アポロデラスが悲痛な悲鳴と共に前方によろける
背部の巨大花も生気を失ってぼろぼろと崩壊していく
「やった!」
「これなら、ヤツのエネルギーは有限だ!」
『ああ!ヒカリ、メビウス、ティガ!!全力で攻めるぞ!!』
イカロスの言葉に三人が頷き、アポロデラスへと駆ける
ーギュアァァァァァァオオオォォォォォォ!!!!
アポロデラスが今まで発したことの無いような声で咆哮する
稀有な現象の中産声を上げたその超生命は新たな「目的」と、併せてあるデータを得てそれを自分の中に感じていた
自身の得たものを奪いゆくものへの「憤怒」と「恐怖」
アポロデラスの内を芽生えたての感情が支配していた
駆けていく中でメビウス、ヒカリは強化形態となり、イカロスとヒカリは空へと飛翔する
アポロデラスと衝突せんとした時、ティガは即座にパワータイプへと変身し、そのエネルギーを纏う巨体をメビウスと共に押さえ込む
手のひらからエネルギーを纏う打撃を放つが、メビウスとティガはそれを受け止め、渾身の拳を胸に撃ち込み吹き飛ばす
翼と昴がイカロスブレスのレバーを引っ張り、そのままブレスを回転させる
「「イカロスブレード!!」」
イカロスのブレスが回転し、青い光の剣が伸びる
『ヒカリ!』
『ああ、合わせるぞイカロス!!』
ナイトブレードを展開したヒカリが頷き、イカロスと共に地上へと急降下
イカロスの斬撃とヒカリの斬撃が交互にアポロデラスに襲いかかる
『『ハァッ!!!』』
青い二人のウルトラマンの斬撃が重なり、バリアを張るアポロデラスをバリアごと吹き飛ばす
素早く側転で移動したイカロスとヒカリ。その後方からメビウスがメビュームバーストを、ティガがデラシウム光流を放つ
ークオォォォォォォォォォ!!!
パワー自慢の必殺技を二つ同時に受け、アポロデラスのバリアが悲鳴を上げ割れ砕ける
が、まだその本体まで攻撃は届いていなかった
ーフゥンッ!!
ーテァッ!!
その隙を縫うようにヒカリとスカイタイプにチェンジしたティガが駆ける
ヒカリの斬撃は受け止めるが、スカイタイプの高速攻撃が脇から本体に着実にダメージを与えていく
ーテァッ!!
アポロデラスの後方へ回ったティガが後方からランバルト光弾を放ち、背中の光輪を破壊する
ーギュオォオァァァァァァァァ!?!?
苦悶の声を上げるアポロデラスの前にヒカリとメビウス、そしてイカロスが並び立つ
インナースペースの翼と昴がイカロスブレスのレバーを一回引き戻す
「「イカロスブラスター!!!」」
ナイトシュートとメビュームシュートを構える二人に合わせてイカロスがイカロスブレスを一回引き戻し、光を纏う右手を後方に引く
ーハァッ!!
ーセヤァッ!!
ーシェアッ!!
二条の光線と光拳がアポロデラスの胸部へと命中する
張り巡らされたバリアの耐久は既にほとんどなく、一瞬で砕け散りその胸部に直撃、爆発する
インナースペースの二人がブレスのレバーを二回引き戻す
「「イカロスシュート!!!」」
前に歩み出たイカロスとそこに並び立つティガが頷き合い、アポロデラスを正面に捉える
ブレスのレバーを二回引き戻したイカロスがその腕を上下に開き、両腕を正面に伸ばし交差したティガがその手を広げ、光を集めていく
ーシェアァァッ!!
ーテァッ!!
十字に腕を組んだイカロスのイカロスシュートとL字に腕を組んだティガのゼペリオン光線がアポロデラスの体に突き刺さり、溢れ出したエネルギーがスパークする
ークオォォォォォォ………
絶大なダメージにアポロデラスが遂に膝を突く
【生存 優先 繁栄 撤退 潜伏 修復】
アポロデラスの体が蔦へと分解、あの時のようにまた地下へと逃げ伸びようとするのをイカロスは見逃さなかった
『もう逃しはしない!』
「ああ、ここで必ず倒す!」
「イカロスの因縁はここで終わらせる!」
イカロス、翼、昴がイカロスブレスのレバーを三回引き戻し、ブレスのオーブに触れる
イカロスのブレスから翼のような紋章が浮かび上がり、イカロス自身の体が青く輝く
『「「イカロスウイングバーストォオ!!」」』
ーシェアァァァァァァッ!!
青いエネルギーを纏うイカロス。その背から白銀の翼が伸び、拳を突き出しながら高速で突撃する
逃亡を始めていたアポロデラスの胸部にイカロスの拳が突き刺さり、その体を青い閃光が貫く
アポロデラスを貫通し、光から元の姿に戻ったイカロス
光の羽根が舞い散る中その拳には機械的な構造と有機的な構造が混ざった球体型のコアが突き刺さり、火花を上げていた
バチバチとスパークしたコアは損傷に耐えきれなくなり遂に爆散
心臓を失った本体もぼろぼろと崩れ去り、残った余剰エネルギーが爆発し火柱を上げる
超新星爆発から生まれた驚異の怪獣が遂に最期を迎えたのだ
爆炎の中からイカロスの姿が現れる
「いよっしゃァァァァァァァァ!!!」
「やりました!!翼社長!!!」
それを見ていたコンとアルミル、日向重工の社員たちが大きな歓声を上げる
各地でも避難していた人々がウルトラマンたちを見上げ、大きな歓声を送っていた
その群衆たちは地球人だけではない。ウルトラマンを恐れ警戒していた者が多かった異星種族たちも多くおり、地球人と一緒に歓声を上げていた
各地にいたウルトラマンたちもイカロスたちの勝利を感じ、飛び去っていく
その姿を見送り、NEXT GUYSとA.I.G.I.S.、友好種族同盟の異星人たちは皆敬礼を送る
A.I.G.I.S.指令室でも華鈴が敬礼を送る中、イカロスの勝利を見届けた帝が優しく微笑み、どこかへ姿を消した
「まさかお前が木を斬るのを見ることになるとはなぁ、ガイ」
オーブの去る姿を見ていたジャグラーはニヤニヤと笑い、踵を返した
「この宇宙の地球も中々楽しめたぜ。今度こそじゃあな」
魔人の姿となったジャグラーは手を振りながら闇の中に姿を消した
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
イカロスのうちにある光の中
全てが終わったその後、昴はその右腕のブレスを光へと返し、翼へ向き直る
「お別れだ、翼」
理解はしていたことだった
死んだはずの祖父がここにいる。それはきっと永遠じゃないのだと
「……じいちゃん、結局僕は、じいちゃんとイカロス、みんなに助けてもらわないと何もできなかった……ごめん、じいちゃんが信じてくれた僕になれなくて……」
俯きながらそう告げる翼の顔を上げさせ、その額を昴が指で弾く
「痛ッ⁉︎」
「馬鹿者。そんなことはない」
カッカッカッ、と笑いながら昴は翼の頭を両手でくしゃくしゃと撫で回す
「お前が何度転んでも立ち上がり続けたから、私も、イカロスも、他のみんなもお前に付いてきたのだ」
翼の顔を暖かな手が包む
「他でもないお前だから、皆が集まったんだ。本当によくやったよ翼は。私が思っていた通り、強くて優しい男になってくれた」
涙ぐむ翼の顔を見て昴も涙を流し、その大きくなった背を強く抱きしめ、ぽんぽんと背を叩く
翼を離し、その瞳を見据えながら告げる
「一つ、腹ペコのまま学校へ行かぬこと。今のお前なら仕事場だな。腹が減っては戦はできぬ…腹を鳴らしていてはできるものもできん」
「一つ、天気のいい日に布団を干すこと。太陽の匂いをいっぱい蓄えた布団は気持ちいいぞ!いい一日はいい睡眠と目覚めからだ」
「一つ、道を歩くときには車に気をつけること。車だけじゃない。お前が傷ついて悲しむものはたくさんいる。悲しませてやるなよ、大事な仲間や家族を」
「一つ、道の上を裸足で走り回って遊ぶこと。楽しむ気持ちを、夢見る気持ちを決して忘れるなよ翼。その心はお前の翼になる」
鼻の頭をかき、最後に昴が改めて微笑む
「そして……一つ、他人の力を頼りにしないこと。頼りにしないのは誰とも協力しないことじゃない。誰かと手を繋ぐこと、誰かを信じることは恐れるな。そして、自分の力も信じ抜け」
「お前と、お前の仲間たちなら例え蝋の翼でも太陽を超えてどこまでも行ける。昴星よりも高い宇宙の彼方までも、遥か遠くのウルトラの星にでも!」
そう告げた昴は翼に背を向ける
「ーじいちゃん!!」
その背に翼が声を届ける
「僕は、僕はもっと高くまで飛んでみせる!!もっと色々なものを見て、色んな人と手を繋いで!!だから、だから……」
大粒の涙を流しながらも笑って、胸を張って、昴に声を届ける
「見ていて…じいちゃん!!」
昴が振り返り、大きく頷く
「ーああ、いつまでも見守っているよ翼。私の自慢の孫よ!!」
現実へと戻った翼がいなくなった中でイカロスが昴に声をかける
『ほんとそっくりだな。昔の昴をそのまま見ているみたいだ』
「はっはっは、そうだろうそうだろう!私に似てるが、私以上にいい男になったよ。翼は」
『はははっ、羨ましい限りだ。僕にはまだ息子も妻もいないが、あんな家族ができたなら、きっと楽しくなりそうだ』
笑っていた昴が顔を改める
「すまなかった。結局私一人では、キミの使命を継げなかった」
『謝ることじゃない。翼がキミの意志を受け継いでくれた』
イカロスが昴を見据える
昴の姿は光の粒子になり今にも消えようとしていた
『昴、今度は僕がキミの意志を継ぐ番だ。キミと、キミの自慢の孫のこと。僕がウルトラの星に伝えていくよ』
『友として僕らを受け入れ、尊重してくれたかけがえのない地球人であり、遥か彼方の親友であるキミたちのことを』
イカロスが差し出した手を、昴が固く握りしめる
「ああ、頼んだ。我が親友、イカロスよ」
微笑む昴
その姿が光の粒子と変わり、空へ登っていく
それをイカロスは最後まで見送っていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
コンや日向重工の社員たち、NEXT GUYSやA.I.G.I.S.の隊員が並ぶ下へスーツを着た姿の翼が戻ってくる
照れ臭そうに頬を掻きながら笑って告げる
「ただいま、みんな」
思い思いの言葉を皆が駆けながら近寄る中、誰よりも早く飛び出したコンが翼の肩を殴りつけながら抱きつく
「こんの、大バカ翼ッ!!!死ぬなって言ったのにいっぺん死にやがって……ッ!!!」
涙声で怒るコンを優しく抱きとめ、翼が笑う
「ごめん、コン。キミには本当に心配ばかりかける」
「いっぱいかけてもいいわよ……迷惑だってかけていい……でも、でも……勝手に死のうとするなんて許さないわよ、バカぁ……」
涙ぐむコンの顔を上げさせ、その顔を見据えた翼
その小さな唇に翼は自分の唇を優しく重ねた
周囲の皆が大きく沸き立ち、花と樹は思わず手のひらで顔を隠し、ケリスや輝、華鈴はひゅーひゅーと口笛を吹いて茶化している
「ッッッッッッッ!?!?な、な、な、にゃにしてんの!?」
珍しく顔を真っ赤にし、大慌てで翼から離れるコン
「今なら僕も胸を張って言えそうだったから……」
自分からしといて翼も顔を真っ赤にしながらコンに告げる
「僕の人生には、キミが必要だ。これからもずっと。だから…」
「ずっと僕の側にいてくれ、コン」
真っ赤になった顔を手で扇ぎながらコンは悪戯っぽく、満面の笑みを浮かべて答える
「あんたみたいなバカで、それでも真っ直ぐで面白いヤツ、放っておけるわけないでしょ」
翼の手をコンが掴む
「頼まれても、一生離してやらないわ。覚悟しなさい」
翼のネクタイを引っ張り、今度は翼の唇をコンが奪う。最初は驚きながらも、翼はその小柄な体を優しく抱きしめた
今度は誰も茶化すことなく、皆が祝福の拍手を送っていた
『良かったな、翼。いい人と出会えて』
どこからかイカロスの声が響く
翼の右腕のイカロスブレスが輝き、分離してイカロスが姿を現した
その姿を見上げる翼とコンの隣からミライーメビウスとヒカリが前に歩み出る
膝を突き、姿勢を低くしたイカロスが翼に告げる
『しばらくお別れだ、翼。光の国で今までのことを報告したり、体を癒す必要があるから、僕は一度帰らなきゃいけない』
「そうか……」
『悲しむことはない。必ずまた僕はこの星に来る。この美しい星と、キミという新たな友に会うために』
イカロスが拳を翼に突き出す
「……僕も遥か光の国に僕たちが会いに行けるように、ここで頑張ります。また、必ず!」
翼が小さな拳を突き出し、イカロスの指にぶつける
メビウスとヒカリも本来の姿に戻り、イカロスに並ぶ
『翼。ありがとう』
ヒカリがそう告げ、翼が頷く
三人のウルトラマンにそこにいた皆が敬礼や手を振るなどして見送りを送る
それを受け取ったウルトラマンたちは背を向け、彼方の空を見上げて飛び立っていった
銀色の翼たちが描く軌跡を見えなくなるまで翼たちは見守っていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
五年後
「うわぁぁぁぁぁぁぁ遅刻だぁぁぁぁぁぁッ!!!」
騒がしく起き上がりバタバタと花が支度を始める
「お姉ちゃん、寝坊助なのはほんと変わらないね…なんか心配になってきたよ私……」
カジュアルな普段着に着替えていた樹は呆れた表情で姉を見ながらゆっくり朝食を食べていた
「あ、樹そういえば今日が初だっけ⁉︎ ごめんこんな日に…」
「気にしなくていいの。お姉ちゃんはお姉ちゃんで、頑張ってよ。今日から保護区に出来そうな星を調査するんでしょ?レジアさんに迷惑かけちゃダメだよ」
「わかってるけど……いざとなると緊張するな…」
花が着た白衣のような制服の胸元に「LGL」という見慣れないロゴのワッペンが光っていた
「大丈夫。お姉ちゃんならできるよ。必ず」
「ーありがとう、樹。行ってきます!」
大荷物を抱えた花が出かけていく
花はあれからレジアのスカウトを受け、レジアが組織した新たなチームLGL「生命保護研究部隊」の副隊長に任命されていた
怪獣たちを研究し、保護。もしくは人間のいない自然豊かな星へ移住させる研究を日夜スパークドールズのグビラをお供にして続けている
毎日毎日色々と忙しく家を留守にすることも多くなったが、夢に向かって努力する花はどこか満足げで、樹もそんな姉を見れるのが嬉しかった
A.I.G.I.S.新指令部
「いよっす副隊長!」
「……やめてください華鈴隊長。その呼び方結構くすぐったいんですけど……」
照れ臭そうに振り返る青年ー翔真が渋い顔をする
「事実だろ〜?あたしからのラブコールに応えてここにきてくれた翔真くん?」
悪戯っぽく笑いながら華鈴がうりうりと翔真に肘を当てる
それを鬱陶しそうにいなしながら共に歩いていく
翔真は新司令官の華鈴からのスカウトを受ける形でA.I.G.I.S.へと戻ってきていた
曰く「華鈴さんはすぐ手が出るから任せきりにしていたら危なっかしい」とのこと
なんだかんだいいコンビで仕事しているらしく、翔真も毎日訓練でしごかれながらもいい顔をする男になったとは華鈴談である
二人も隊員が抜けたNEXT GUYSだったが、存外賑やかさは変わっていなかった
何故なら、新たな隊員が今日から着任し四人隊員が集まるからだ
NEXT GUYSの隊服を着た小柄な女性隊員が敬礼する
「ほ、本日より着任となりました!
そう、樹が新人隊員としてNEXT GUYSに着任することになったのだ
レリアやニゴたちとの交流で異星種族たちも守りたいと思った樹はあの頃から一念発起し、勉強を頑張って試験に合格。晴れて隊員資格を得ていたのだ
「よろしく樹ちゃん。これからは同じ隊の仲間ってわけだ」
「花ちゃん出てって男所帯だったからありがたいわぁ…よろしくね樹ちゃん」
輝が笑顔で手を上げ、ケリスが悪戯っぽく笑いながら手を振る
「輝隊長、ケリス先輩!よろしくお願いします!」
「な、なんか知り合いから隊長って呼ばれるとくすぐったいな……」
「いい加減慣れな輝〜?いや隊長?」
アポロデラスの一件の後でNEXT GUYSで大きく変わったことと言えば剛隊長の引退と輝の隊長就任だろう
「もう私もいい年だからな」と笑ってあっさり引退した剛元隊長に流されるままに隊長に任命され、最初こそ困惑したりしていたが今はもうすっかり隊長としてしっかりやっている
副隊長であり、交際相手ともなったケリスがサポートしているのもあるだろうが、剛元隊長の人選は正しかったようだ
奥のデスクに腰掛けていたもう一人も立ち上がり、樹に歩み寄る
『久しぶりだな。樹くん』
青い瞳のギギ人ーXY0025、ニゴがそこにいた
ギギ人特有の白黒スーツの上にNEXT GUYSのバッジを付けている
彼は樹よりも前にNEXT GUYSに就任していたのだ
「今日からよろしくお願いします。ニゴ先輩」
改めてニゴにも挨拶する
新生NEXT GUYSも愉快な仲間が揃っていた
「うまくやってるようで何より。まぁ、輝たちなら大丈夫だろう」
報告書を読み、男性が微笑む
ここはNEXT GUYSの総監室。そのデスクに腰掛け
「怪獣頻出期は去りましたが、異星種族との交流はまだまだ色々と課題はありますから、精鋭が集まるのはありがたい話です」
デスク側に控えていた真田補佐官も微笑む
「これからを担う若者たちを支えるのが私たち年寄りの仕事。いい年になった今なら、私みたいなのはこういう仕事が向いていますわ」
「この設計はやり直しだ。大宮」
眼鏡をかけた白衣の男性が女性にレポートを返す
「ど、どこがダメだったでしょうか
「全体的に色々とダメだ。添削箇所は付箋を付けておいたから直しておくように」
白衣の男性ー海祢 帝は落ち込む女子学生に振り返らず告げる
「……特に直すべきなのは、レポート内のキミの姿勢だ」
「姿勢…ですか?」
「最大効率、最善の答えを見つけるのを悪いとは言わない。だが、そこに自身が望む未来のない、ただのテンプレートの連続は最大効率、最善だとしてもそこに魂は宿らない」
帝の助言を聞いた学生はレポートを見返し、もう一度ノートやパソコンを見返し真剣な眼差しで何かを探し始める
「……キミの魂が宿ったレポートを楽しみにしている」
海祢 帝は藤沢超常科学大学にてAI工学の教授として教鞭を振るっていた。相変わらず堅物なのは変わっていないようだが、人嫌いなところはだいぶ治っているようだ
彼は今でもAIの研究に励んでいる
今度は翼に負けないくらい、人の心を動かせるAIを。人の助けになるAIを作り出すために
友好種族同盟の定例会議
『では、ミアダ星からの報告を終わります』
ミアダ星代表として新たに着任したレリアが頭を下げる
「ありがとうございます、レリアさん。宇宙怪獣たちの渡りの時期になりましたか…」
『報告された星域はちょうど本日から私たちが向かう惑星の近くですね……私と花で調査してなんとか被害が出ないようにできないか試してみます』
「よろしくお願いします」
リブラからの言葉に立体映像で映し出されていたレジアが頷く
『足りない物資があれば私どもにすぐ知らせてください、ミス・レジア。私どもと日向重工の製品の中でも特に優れたものを選び届けましょう』
『それはありがたい。その時には頼むよ、アルド代表。そして翼代表』
レジアが微笑みかける先
地球代表の席に座る青年ー日向 翼が柔和に微笑み会釈した
その隣の席に腰掛けるのは彼の妻ーコンだった
長く伸ばした髪を三つ編みに編み、肩から下ろしており少し大人びた雰囲気になっていた
そんなコンが不機嫌そうにアルドを睨む
「ちょっとアルド。せめて納期とかはちゃんと考えなさいよ…いきなりの注文でこの前も大変だったんだから」
『いやはや……その節は申し訳ない』
軽い態度で平謝りするアルドをコンが更に睨みつける
「まぁまぁ…でもアルド代表、コンの言う通り納期には余裕を持って欲しいですね」
『ああ、わかってるともミスター・翼……あの時はほんとに色々と危急だったんでね』
コホンとアルドが咳払いする
友好種族同盟はあの後様々な改革が行われた
違法行為を犯したラーフは無論ながら、高齢だったファノアとエルゼアも代表から下り、新たにミアダ星の代表として皇女レリアが、そして新たに地球代表の席が設けられ、イカロス等の功績から翼が代表者として選ばれたのだ
同盟を結んだ星だけでなく、様々な惑星で怪獣被害や侵略者に怯える人々を積極的に保護していく方向に方針も変えられ、元軍人のリビオス主導の下で同盟部隊も育成されている
日向重工はアルドが取締役を務めるおもちゃ会社及びマーキンド星人シハルが代表を務める工業製品製作会社と提携を結び、メテオール技術を新たに重機や移動手段に応用する研究をはじめていた
アルドたちと共に惑星開発に必要な重機等の開発に勤しむ中、翼は新たに星間飛行を可能にする飛行機の開発にコンと技術主任となったアルミルを始めとした社員たち一丸で取り組んでいる
光の国ーM78星雲とも交流が可能になるような、そんな新たな「夢の翼」を作り出すことを新たな夢として
「積もる話もあるようですが、定例会議はお開きにしましょう」
リブラが手を叩き、会議の解散を告げる
集まっていた代表たちが退席し、翼とコンも退席する
「全くアルドのやつ…軽口だけは一丁前なんだから…」
少しイラついた様子でコンが愚痴る
そんなコンが少し顔を赤くしながらチラ、と翼の方を見る
「……あのさ。翼」
「なんだい?コン」
なんて事のないような顔をする翼の前に左手を持ち上げる
翼が指まで絡ませてしっかり繋いだ手を
「これ……なんのつもり?」
しばらくぶんぶん振り回すが、翼は涼しい顔をしたまま離さない
「何って、そりゃ今コンは大事な時期だから。怪我とかしたら大変だろう?」
「どんだけ過保護なのよあんたは…心配しなくても簡単に転んだりとかなんかー」
そう言いかけたコンの足が軽くもつれよろめく
素早く翼がその手を軽く引き、肩を抱いてお姫様抱っこのような姿勢になる
「ほら、何が起こるかわからないだろう」
「……まぁ、そうね」
転んだことといきなり至近距離で抱きしめられたことでコンが顔を真っ赤にさせ、照れながらお腹を少しさする
大事な時期というのは、何を隠そう。コンの体に新たな命が宿っていたのだ
まだ数ヶ月も経っていないから目立ってこそないが、妊娠していることは確か。だからこそ翼は過保護なまでにコンのことをいつも以上に気遣っているのだ
それが嬉しいながらも照れくさいコンはこうなる度に毎度顔を真っ赤にして耳たぶをつまんで照れ隠しをしていた
「ただいま」
「おかえりなさい!翼様、コン様ー」
新たに購入した一戸建ての新居に帰ってきた翼とコンを新たな家族がエプロン姿で出迎える
「待った。蛭子、呼び方」
「あ……えっと……翼兄様、コン姉様……」
コンの指摘に口元を覆い、大きめの眼鏡を直しながら言い直す
旧姓八坂 蛭子。現在は日向 蛭子が笑顔で二人を迎え、コンの手を取り支える
「よろしい」
とコンがニッと悪戯っぽく笑い蛭子の頭を撫でる
「う…姉様は意地悪です…」
照れ臭そうにしながらも嬉しそうに蛭子が笑う
八坂 蛭子は重傷を負い、しばらく入院していたがなんとか一命は取り留めていた。無理に念動力を使ったために角膜は傷つき、視力が低下した為に眼鏡が手放せなくなったが
ヤプールにまがいなりに協力していた為にリビオス等は重い処罰を提案していたが、それを押し除けて手を取ったのはコンだった
「イカロスの通信通して色々聞いたから。今度は私が手を伸ばす番だって思っただけよ。あんたみたいに」
照れ臭そうにコンは後にそう翼に言っていた
コンがその手を取った時はなんで、どうしてと怒りも混じらせ錯乱し暴れていたがそれでも手を離さなかったコンのことを信じ、そして今まで抱えていたものが決壊したように大声で泣き出した
コンはそんな蛭子に付き添い、ただ黙って胸を貸していた
諸々の後に翼とコンを監視係とする事で蛭子の身柄は自由となり、翼の提案から身寄りのない蛭子は日向家に翼の義理の妹として迎えられた
色々とリハビリや休息を経て2年前からは友好種族同盟の設立した異星種族とのハーフである孤児や怪獣災害で親を失った子たちを集めた施設で先生として働いている
「二度と私のようなヤプールの娘を生まない為に、私は誰かの光になってあげたいのです。闇を抱いても輝いていけるように」
そう蛭子は笑顔で翼たちに語っていた
「今日は和風なのね。蛭子の得意分野ってわけだ」
「新鮮な鮭が買えたので、奮発してみました」
「美味しそうだ。早く食べようか」
私服に着替え、翼たちが席に着き手を合わせる
「「「いただきます」」」
夕飯を食べながら三人が談笑する
地球人、異星人、地球人と異星人の間に生まれた子供
様々な境遇で時にぶつかっていたはずの皆が同じ机を囲んで笑って話し合える。翼や昴が願っていた未来は確かに一つ一つ叶い始めていた
談笑の間、ふと翼が食卓の側の棚を見る
小さな頃の翼と昴が共に写る写真と、その側に飾られた青い石のペンダント
かけがえのない祖父と友の思い出を見やり、翼は優しく微笑んでコンたちとの談笑に戻る
そんな翼を見た写真の中の昴が一際明るい笑顔で笑ったように見えた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
蛍火村 共同墓地
日向家の墓の前に立つ白い上着を着た優しそうな雰囲気の青年が手にしていた花を墓に供える
「えっと…確か昴が言ってたな。地球のお墓参りの時はこうして…」
と記憶を辿りながら手を合わせ、目を瞑る
墓参りを済ませた青年は懐かしむように墓石を撫でる
「ただいま、昴」
微笑み、青年が立ち上がる
墓地から出た青年に蛍火村の老人が声をかける
「おや、見ない顔だね。こんにちは」
「こんにちは、お婆さん」
青年は老人に元気よく挨拶を返す
「お墓参りかい?」
「はい。友人に会いにきました」
「そうかい。それはご苦労様」
青年が辺りを見回し、老人に微笑む
「いい村ですね」
「だろう?夏には蛍も見れるんだよ」
「蛍……昴と共にいた時にも見れてなかったな…」
「昴…もしかしてあんた、日向先生のお知り合いなのかい?」
青年がその問いに答える
「はい、彼は大切な親友です」
遥か遠く
M78星雲から来た友はそう誇らしげに笑った
ご愛読いただきありがとうございました