アポロデラス撃破から数日後
NEXT GUYS附属病院の一室
一人の病院着を着た女性は生気の篭っていない目で窓の外の景色をベッドから眺めていた
フェニックスネスト。NEXT GUYSの基地が見える
それを静かに見据え、女性は項垂れた
「今日も面会は難しい感じ?」
「はい。友好種族同盟からの通告で
受付の女性が付け加えて告げる
「それに……彼女自身が面会を望んでいませんので」
それを聞いてコンははぁ、とため息をこぼす
「わかったわ。また出直す」
待合室まで引き返したコンは翼に合流する
「今日もダメだった?」
「ダメね。取り付く島もありゃしない」
コンが肩を竦め、翼が頬をかく
「……蛭子さんから面会をOKしてくれたら顔合わせくらいはできると思ったけど…それも難しいかもしれないな」
頭を抱える翼の隣でコンは不機嫌な表情を見せていた
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「八坂 蛭子さんの身柄については友好種族同盟とNEXT GUYSの連名で要注意人物として拘束させていただきます」
更に数日前の友好種族同盟会議にてリブラが告げる
アルドやレジアがやはりと険しい顔を見せ、翼が目を伏せる
「彼女は異次元人ヤプールと共謀していました。明確に彼女自身の憎悪を持って、破壊活動も行った。彼女を野放しにしておくことは非常に危険だと判断せざるを得ません」
居並ぶ面々が反論できず押し黙る中、翼の側に立っていたコンが円卓に手をつく
「あいつはなんて言ってるの?」
『それを聞いてどうする?』
リビオスが厳格な声で問う
「あいつの意志を無視した決定なら、私は納得できない。変わろうとしてる存在をこの同盟は無下に押さえつけないはずでしょ?」
『今回は特例中の特例だ。あのヤプールの息がかかっていた存在…放置すればどんな災いを招くかわかったものでは無いだろう』
「だけど……ッ!!」
コンが言葉に詰まる
彼女自身も理解しているのだ。ヤプールがどれほど恐ろしく狡猾な存在なのか、そんなヤプールが娘と呼ぶような存在に「何か」があるだろう可能性が高いことも
「……もう少し、もう少しだけ時間を頂戴…あいつと話をするまで…」
絞り出すようなコンの言葉を聞いたリビオスが嘆息しながらもリブラに目線をよこし、リブラが頷く
『……無駄だろうが、いいだろう。1ヶ月だ、それ以上は待てん』
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窓の外を病院着の女性が見つめる
玄関から浮かない様子の二人組が病院から離れていく姿が見える
思わず窓を開けようとして伸ばす手が止まり、引っ込められる
『化け物!!あなたなんか娘じゃない!!!』
『気持ち悪い!!こっち来ないでよ!!』
『私たちを騙していたなんて、これだから宇宙人は…‼︎』
聞こえるはずのない声が響き、女性ー八坂 蛭子は布団を被り耳を押さえる
その様子を側に立つ黒い影が見下ろしていた
「……どうしたらいいのよ…蛭子…」
すっかり日も暮れた道を並んで帰る翼とコン
頭を抱えながら唸るコンに翼が声をかける
「僕も何か手伝えないだろうか…僕の言葉なら、あの時みたいに彼女に届くかもしれない」
「……それはいいわ。これは私たちの問題だから」
「でも…」
「ーいいから私に任せといてよッ!!」
あまりの剣幕に翼が足を止め、驚いた顔を見せる
ハッ、と気づいた表情を見せコンが気まずそうに目を伏せる
「……ごめん…でも、蛭子のこと放っとけないって思ったのは私だから……だから、だから私が何とかして蛭子を…」
「ー私がどうかしましたか?」
くすくす、と笑い声と共に響く有り得ない声に翼とコンが振り返る
夜の帳が下り、灯る街灯の下
黒い着物に身を包む一人の女性が立っていた
「蛭……子……?」
コンの言葉に蛭子は三日月形に口を歪め、邪悪に微笑む
「ーええ、蛭子ですよ。ヤプールの娘の、ね」
そう愉快そうに告げ、蛭子は黒手袋に包まれた右手をこちらに向ける
何かに気づいた翼が咄嗟にコンを庇う
「コン!!」
その肩口に蛭子の手から放たれた光球が命中、血飛沫が飛び散る
「ぐっー⁉︎」
「翼!?蛭子あんた何して…‼︎」
「何して?お父様の願いの成就のため、邪魔な存在を消すだけですよ」
くすくすと笑いながら蛭子が当たり前のごとく答える
「……冗談でも言っていいことと悪いことがあるわよ、蛭子…‼︎」
「冗談?私が冗談を言う人だと?」
微笑む蛭子は生気のこもっていない目でコンを見据える
呆然とするコンを庇い立った翼が蛭子にトライガーショットを構える
「ダメッ!!!」
コンが翼の腕を押さえ、銃口を下げさせる
それをジッと見た蛭子は面白く無さそうにはぁとため息を吐くとコンたちに背を向ける
「蛭子…ッ」
「私の答えはこの通り示しました。私はヤプールの娘、八坂 蛭子。あなたがた愚かな人類を滅ぼす、ヤプールお父様の遺志を継ぐものでございます」
蛭子は優雅に一礼する
「ーそれではお二方、ご機嫌よう…」
その姿が夜闇に消えるように揺らぎ、消える
翼がメモリーディスプレイを取り出して連絡しようとする手をコンが再び押さえる
「……待って…お願い…」
「……だけど…」
翼の言わんとしていることをとっくに理解しているコンが唇を噛みしめ、力無く手を離す
「……蛭子……」
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執務室で書類に向かっていたリビオスのもとに入り口の扉を乱雑に開いたコンがつかつかと歩いて行き、デスクにバンッ!と手を叩きつける
『……何度も思うが、礼儀を知らんな貴様は』
どこ吹く風といった態度のリビオスを睨みつけコンが低い声で告げる
「ー蛭子を処分するって、どういうことよ…!!!」
『……先日報告があった。ヤプールの娘を名乗る存在の襲撃を受け、NEXT GUYS分所の隊員たちが負傷したと。監視カメラの映像には、確かに八坂 蛭子の姿が残っていた』
「そんなの、あいつって保証はー」
バンッ!!!
今度はリビオスが机に書類を叩きつけ、体を乗り出してコンを見下ろす
『あの女は危険だ。これ以上、我々としても看過はできない』
リビオスの凄んだ一言にコンは何か反論しようとするが、口がぱくぱくと動くだけで何も言葉が出ない
『交流の可能性がある貴様や翼にすら何も話さない。挙句、こうして被害報告も出ている。やはり、異次元人の残した禍根は全て断つのみだ』
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友好種族同盟本部の休憩室
一人腰掛けたコンはただ俯いていた
そこに現れた翼は、缶コーヒーをその前の机に置くと隣の椅子に静かに腰を下ろした
声をかけるわけでもない。ただ翼は黙って缶コーヒーを飲みながらそこにいた
「………あいつを、助けるのは無理なの…?」
いつもとは違う、消え入りそうなコンの声が響く
「……助けるって…一人にしないって言ったのに……私は……なんにもできやしない……」
やけを起こしたように、コンが自分の頭を殴りつける
「私じゃ……無理なのかなぁ……」
コンの声に嗚咽が混じり始める
「私じゃ………翼みたいになれないのかなぁ……」
不意に、コンの本音が漏れ出した
静かにそれを聞いていた翼が缶コーヒーを置き、ゆっくりと口を開く
「……僕も、どれだけ頑張ってもコンにはなれないな」
翼の言葉を聞いたコンが顔を上げ、翼を睨む
「……バカにしてんの!?あんたが私になる必要なんか無いじゃない!!」
コンは翼の胸ぐらを掴み、声を荒げる
「夢を叶えて…ウルトラマンになって…皆が驚くメテオールも開発できて…ッ!!!なんでもできるあんたが!!!私みたいな半端ものになんて、なる必要がーッ」
翼がコンの肩を掴んでまっすぐその目を見据える
「……だけど、僕にはキミのような楽しめる趣味がない」
「……はぁ…?」
「料理も苦手で、キミがいないと冷凍食品とかくらいしか食べないだろうな。それに気を抜いたら同じ料理ばかりになりそうだ。あと、僕はキミのような行動力もない。行動する前に色々考えすぎて、そのせいで色々大変なことだってあった。極めつけに…」
翼はコンの頬を優しく撫でる
「ー僕はよく表情が固いって言われるから、キミみたいに誰かを元気にする笑顔はできないな」
コンが目を見開く
「コンが、僕のようになりたいと思ってくれてるのは……正直少し照れくさいけど、とても嬉しい。でも、だからってコンが僕になる必要はないんじゃないかな?」
翼がコンの小さな体を抱きしめる
「少なくとも、僕はありのままのキミに何度も救われたんだから」
微笑んでそう告げる翼
その胸に顔を埋めて、コンは嗚咽を漏らして肩を震わせる
「……バカッ、バカ翼……なんなのよ…ッ!!なんなのよあんたは…」
「なんであんたは……いつも私が一番欲しい言葉をくれるのよ…」
「まぁ、伊達にキミのことを一番愛している身ではないからね」
コンが体を起こし、顔を拭うと缶コーヒーを開けて豪快に飲み干す
「私らしく……上等!!」
空き缶を豪快にゴミ箱に投げ捨て、コンが自分の頬を叩く
決心を固めたように歩みを進めていくコンの背を、翼は満足そうに見送った
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NEXT GUYS附属病院
薄暗い病室の中で、項垂れたままの少女はじっとベッドに座り込んでいた
『ちょっと!?困ります!!!患者さんはー』
『ああもう、うっさい!!あいつとは知り合いだから大丈夫よ!!』
『いやそういう問題じゃ!?』
いやに騒がしくなった病室の外に気づき、扉の方を見る
と、ほぼ同時にガラッと扉が勢いよく開いて病室に一人の女性が入ってくる
その顔を見て蛭子は目を見開いた
「コン、さん…!?」
「久しぶり、蛭子」
気楽に手を上げて挨拶してきた蛭子から身を庇うように布団をたくし上げる
それを見ながらコンが手を振り上げる。蛭子がビクッと体を震わせる
蛭子の目の前には、シュークリーム屋の箱がぶら下がっていた
「食事制限とかはないんでしょ?一緒に食べるわよ」
箱を開けてコンが蛭子の隣に座ってシュークリームを食べだす
看護師はコンのことを警戒しながらも部屋の外から様子を見るに留めている
「ここの最高においしいんだから。私なんか、週3は食べてるわよ」
蛭子にも勧めるが、手に取ろうとしない
「………なんできたんですか?」
蛭子がかすれた声で聞く
「んー?ほっとけなかったから」
なんでもない、という風にコンが指についたクリームを舐めながら答える
「……こんな、私を…?」
蛭子はコンを睨みつける
「帰ってください!!!あなたなんかに、私のことなんかわからないッ!!!」
「ええ、わからないわ」
「ならー」
「ーだから、教えて。本当のあんたを」
コンの言葉に蛭子が固まる
「本当の……私……?」
「そ。私はさ、あんたのことはヤプールの娘時代のことしか知らないのよ。だから、教えなさい」
コンがまっすぐと告げる
蛭子の唇が震える
「ー私、私…は…」
開こうとする口が閉じられる
『ーこの、バケモノがぁ!!!!!』
あの声が脳裏に響く
本当の自分を見て、皆がそれを口にした
今までは耐えられた。もう慣れてしまったから
でも、今はダメだ
今、この人から…この人たちからその言葉を言われてしまったら
そんな絶望は、耐えられるわけがなかった
コンが鼻を鳴らし、箱に入っていたシュークリームを指差す
箱に入っていたシュークリームが浮かんでそのまま蛭子の口にぽすっと入っていった
「む、むぐ!?」
蛭子が目を白黒させる
「見ての通り、私バケモノなの。ヤプールの娘ってバケモノなこと気にしてるんだったら、んなの知ったことじゃないわ」
コンが悪戯っぽくニッと笑う
「バケモノどうし、モンスタートークでもしちゃう?」
がお、と手振りを見せてコンがおどける
目を見開いてそれを見ていた蛭子が噴き出す
蛭子は口元にひっついていたシュークリームに齧り付く
一口、二口、がつがつと頬張っていく
その頬には大粒の涙が伝っていた
「ぅあ……ぁあ……ッ!!」
コンが嗚咽を漏らす
自分はなんてバカだったのか
この人たちが。私がとても眩しく感じた優しさを持ったこの人たちが
私のことをバケモノなんて言うはずなかった
なんて、なんて簡単なことだったんだ
シュークリームを食べながら号泣する蛭子をコンが抱きしめ、その背を優しくさする
堰を切ったような涙は、小さな子供だった頃を思い出したかのようにしばらく続いていた
ようやく落ち着いた蛭子は涙を拭いながらコンに向き直る
「……聞かせてくれる?あんたのこと」
「……はい。私、はー」
「ーヤプールお父様の大切な愛娘、でしょう?」
聞こえるはずのない同じ声色に二人が振り向く
蛭子が座るベッドの前に、黒い着物を纏う蛭子が立っていた
「あなた、は…!?」
「出たわね、偽蛭子!!!」
トライガーショットを構えるコンと蛭子を見比べて、黒蛭子はあはははははははははは!!!!と狂ったように笑う
「偽物ぉ?偽物はそっちでしょう?」
黒蛭子は目を見開く蛭子を指差して告げる
その表情が獰猛な怒りを滲ませた
「ーヤプール様に愛されておきながら、ヤプール様を見限って人間にのこのこ戻ろうとしている失敗作が…!!!」
黒蛭子の目が赤く輝き、大きく開かれた口から何かが飛び出す
「蛭子ッ!?」
蛭子を庇ったコンの左肩に黒い矢羽のようなものが突き刺さり鮮血が飛び散る
「く、ぁッ…!?」
「コンさん!?」
チッ、と黒蛭子が舌打ちを漏らす
「もう面倒だ。失敗作のお前ごとNEXT GUYSを壊滅させる!!そうすれば…我が使命は果たされるッ!!!!」
黒蛭子の体が赤く輝きだす
ベッドを支えにしたままコンがメモリーディスプレイを開く
「あんたの手口…人間に化ける、口から矢を放つ、そしてヤプールへの執着……ッ!!ドキュメントTACに記録が残ってるわよ……」
「レジストコードは、一角超獣バキシム!!!」
黒蛭子がはっ、と鼻を鳴らす
「バキシム?あんな不出来な失敗作と並べるな!!!我が名はー」
「一角紅蓮超獣!!!バキシマムだァァァ!!!!」
声高に吠えた黒蛭子の姿が燃え盛る炎と変わり、病室の窓を破って飛んでいった
外に出た赤い炎は、そのまま空に吸い込まれて怪光とともに空がガラスのように割れ砕ける
ーグァァァオォォォォォォッ!!!
咆哮と共に赤い装甲を纏う超獣バキシマムは空を割り砕き、地上へと降りたってきた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
屋上へと出てきたコンと蛭子がバキシマムを見据える
ーグァァァオォォォォォォッ!!!
バキシマムはその頭部の大角ー一角紅蓮ミサイルを炎を纏わせながら放ち、辺りを蹂躙する
紅蓮の炎と共にミサイルが通り過ぎた地点が爆発を起こす
「こいつ…ッ!?これじゃあ病院が…ッ」
焦るコンの隣で蛭子が顔を青ざめさせ、へたり込む
「……私の、せいだ…私が……ヤプールの娘だから……」
蛭子の頬をコンが双方から掴み持ち上げる
「違う!!!」
コンがはっきりと告げる
「これはあのバキシマムとかいうヤツのせい。あんたは、ほんとにヤプールの娘なの?」
コンのまっすぐな言葉に蛭子が首を振る
「私は…蛭子。サイコキノ星人の血が流れてるだけの…蛭子です…!」
きょとん、とそれを聞いていたコンが笑う
「なーんだ。私と似たようなもんじゃない。じゃあほんとに妹分みたいなもんなのね」
コンが蛭子の頭を優しく撫でる
立ち上がったコンがメモリーディスプレイと緑色のカプセルを取り出す
「メテオール規約7条、危機的状況において使用許可を取ることが不可能な場合は特例として解禁する……プラスして、スポンサー特権ってヤツでスペシャルなの出してやるわ!!!」
メモリーディスプレイにカプセルを差し込み、バキシマムに向けてトリガーを引く
《REARISE》
メテオールを行使する緑の粒子が渦を巻き、バキシマムの前に緑の体色と赤い目を持つモグラのような怪獣が出現する
ーギュイィィィィィィッ!!!
「私の護身用スペシャルマケット怪獣、アングロスよ!行きなさい!」
ーグァァァオォォォッ!!!
バキシマムが腕の爪から炎の弾丸を放ちながら迫る
マケットアングロスはそれを弾きながら進撃し、ショルダータックルをかます
よろめいたバキシマムに背を向け、アングロスは地面を猛烈な勢いで掘り返して土塊をバキシマムに浴びせかける
ーグァァァオォォォッ!?!?
土塊を払おうとするバキシマムの動きがピタッと固まる
コンが手を向け、その動きを留めていたのだ
「こんの……ッ!!」
身動きが封じられたバキシマムにみるみる土塊が集まり、その体の身動きを完全に封じる
「ハァッ、ハァッ……ッ!!!」
コンが息を荒げ、頭を押さえる
鼻血が一筋伝うのを拭い、メモリーディスプレイを構える
「アングロスッ!!!やっちゃいなさいッ!!!」
ーギュイィィィィィィッ!!!
コンに応え、アングロスが尖った口を何度も何度もバキシマムに突き立ててダメージを与えていく
が、アングロスの体が突如緑の粒子と化して霧散する
メテオールの制限時間60秒が過ぎたのだ
「く、そ……ッ!」
コンがふらつき、膝を突いて倒れふす
ーグァァァオォォォッ!!!
バキシマムは土山を吹き飛ばし、体の自由を取り戻すとコンと蛭子を見据え、病院へと真っ直ぐに向かってくる
ふらつく体を無理矢理起こそうとするコンの前に蛭子が両手を広げて立ち塞がる
【ドケ!!!失敗作ガ、何ガデキル!?】
「どきませんッ!!!」
蛭子が震える声を荒げる
「この人は……コン姉さんは、私のことを受け止めてくれた…!バケモノの私を、笑って受け入れてくれた…ッ!!!」
「私は、私は八坂 蛭子ッ!!!コンさんには、指一本触れさせませんッ!!!」
バキシマムが苛立たしげに爪を振り上げる
【ナラ、死ネッ!!!】
蛭子が目を瞑る
が、その爪がぴたりと止まった
「……え?」
呆ける蛭子の肩を優しく大きな手が支える
その指にはAの形を模したリングが輝いていた
「ーその優しさは、宝物だな」
蛭子の背後から現れた初老の男性は優しく微笑んで前に歩み出た
「あん、た……ここは、あぶな……」
「大丈夫、俺は超獣退治の専門家だ」
「それ……って!?」
立ち上がろうとするコンを制止し、初老の男性はバキシマムを睨む
「俺は、第二の故郷であるこの星に願いを残して去った。優しさを失わないでくれと」
「今やこの星は、多くの宇宙種族を受け入れ、共に歩まんとしている。衝突も、不理解もある。だが、この星には、俺が願った優しさが芽吹いている」
男性が目を細める
その威圧に、超獣たるバキシマムが怯む
「その優しさを挫かんとする貴様らが来るならば、俺もまた何度も戦おう!!!その優しさに、報いんために!!!」
男性が、両の手の指輪を合わせる
指輪が光り輝き、そこから光り輝く英雄が姿を現した
バキシマムの前に銀の巨人が降りたつ
その姿を見てコンが目を見開いた
「ーウルトラマン、エース!!!」
ーグァァァオォォォッ!!!
ーフゥンッ!!!
怒り、否怨念を含ませた咆哮を上げるバキシマムにエースが組み付く
何度もチョップを打ち込み、更に強力なキックを打ち込んで怯ませる
負けじと爪の火炎弾を連射するが、エースはバリアでそれを防ぎながら前進し、スラッシュ光線を放つ
バキシマムはその光線を片手で弾き、口から腕を合わせて紅蓮の火炎を放つ。エースはそこから飛び退く
ーイヤァッ!!!
腕を上下に開き、バーチカルギロチンを放つ
光の刃をバキシマムは爪で容易く砕くと、鼻からのバルカン砲と爪からの火炎弾を連射する
エースはエースブレードを出現させ、それを弾き落としていく
ーグァァァオォォォッ!!!
バキシマムは咆哮と共に一角紅蓮ミサイルを放つ
それをエースブレードで防ぐが、一角紅蓮ミサイルはそれを割り砕き、エースを大きく吹き飛ばす
ーグオッエァァッ!?!?
倒れふすエースを掴み起こし、爪で掴み掛かる
もがくエースのカラータイマーが赤く点滅を始めてしまう
「エースさん…!!」
エースにトドメを刺さんとバキシマムが爪を振り上げる
そこに青い光の流星が飛来し、バキシマムの巨体を吹き飛ばした
その光がターンして人の姿をとり、エースの隣に着地する
現れたのは、かつてコンたちと共に戦った青いウルトラマンーウルトラマンイカロスだった
「ウルトラマン……イカロス……!!」
イカロスはコンと蛭子を見遣り頷くと、エースの体を助け起こす
【ウルトラマン…ッ!!忌々しいエース!!!イカロスゥ!!!】
怨嗟の咆哮を上げ、炎のようなオーラを吹き上げるバキシマム
【貴様ラガ、何度現レテモ無駄ダ!!!我ラノ怨念ハ、幾度ダッテ蘇ル!!!我ラハ、不滅ダ!!!!】
バキシマムの言葉にイカロスが首を振る
『確かに、我々だけではお前たちとの戦いは終わらないかもしれない。だが、我々はその度に立ち上がる。それに……』
イカロスが病院の屋上を見遣る
倒れたコンに駆けつける翼の姿を見て、互いに頷きあう
『ー我々は、一人ではない!』
イカロスの言葉と共にNEXT GUYSの最新鋭機ーガンドラグーンが飛来する
『輝隊長、あの装備なら整備と動作確認を終えています。ガンドラグーンの合体形態で発動してください』
「G.I.G.!!任せてください!!」
コクピットの輝が自信満々にガッツポーズを取る
「行くぞ、ケリス!」
『オーケイ!』
「メテオール解禁!!!」
マニューバモードへとガンドラグーンが変形する
纏われた黄金のエネルギーが青い光へと変化していく
「「インビンシブルドラグーン・ディゾルバート、ディスチャージ!!!」」
ガンドラグーンそのもののシルエットが青いエネルギーの弾として撃ち出される
それはバキシマムに直撃し、その全身から紫のスパークが漏れ出し、もがき苦しむ
【グ、ァア…!?!?バカナ…異次元トノ、繋ガリ、ガァァ!?!?】
「かつて、CREW GUYSが怪獣頻出期に超獣たちの侵攻を食い止めるために使ったメテオール、ディメンジョナル・ディゾルバー。かつてのあのメテオールはフェニックスネスト主砲のフェニックスフェノメノン専用の大規模メテオールでした」
コンの体を支えながら翼が告げる
「……そんなメテオールを、ガンドラグーンに搭載しちゃうくらいには小型化・改良しちゃうんだもの。敵わないわ……」
乾いた笑みを漏らすコン
「あなたのおかげです。蛭子さん」
「私……の?」
「異次元工学について、教授からの講義を共に理解できるまで付き合ってくれた。そのおかげで、僕はあのメテオールの開発ができたんです」
翼に支えられたコンがサムズアップを見せる
「あんたが、今回のヒーローってことよ。蛭子」
【バカナ!?人間、ゴトキ、ガァァッ!?!?】
『ヤプール。人間は貴様が思うほど弱くはない!』
『間違えても、挫けても、人間は何度だって立ち上がる!ただ守る側だった我々の命を救い、共に戦うことだってできるまでに、進み続けられるのが人間だ!!!』
イカロスがイカロスブレスのレバーを二度引く
バキシマムが最後の足掻きと一角紅蓮ミサイルを放つ
ーシェアァァッ!!!
ーフゥンッ!!!
イカロスシュートとメタリウム光線が放たれる
迫り来る一角紅蓮ミサイルを吹き飛ばしたそれがバキシマムへと直撃、怨嗟の断末魔を放ちながら、バキシマムは果て爆散した
ガンドラグーンのコクピットからサムズアップと敬礼を見せる輝とケリスの姿を見て、イカロスとエースが共に頷いた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「久しぶり、翼」
「イカロス…!また、会えましたね」
青年の姿となったイカロスが笑顔で頷く
「エースさんが、察知したんだ。まだ地球にヤプールの残滓がある、と」
「そうだったんですね…」
イカロスの後ろから現れた男性ーエースの地球人としての姿・北斗星司が笑顔で頷く
「その正体は、先程のバキシマムだったらしい」
北斗は蛭子の姿を見遣る
「そこのお嬢さんからは、もう気配は感じられないからね」
コンがそれを聞いて胸を撫で下ろす
「友好種族連盟には、俺からも証言しておこう」
北斗はコンと蛭子の肩に優しく手を置く
「その優しさを、大切にしてくれてありがとう」
そう告げた北斗は二人に笑顔で軽い敬礼を贈ると、光となって空へと帰っていった
優しく互いに笑みを交わす蛭子とコンを、翼とイカロスは優しく見守っていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『八坂 蛭子の監視は解除とする』
「蛭子さん自身からの証言、そして光の国のウルトラマンエースさんからの証言を信じ、彼女はヤプールとの関係を絶っていると我々も判断しました」
リビオスが厳格に、リブラは優しく微笑んでそう告げる
それを聞いて蛭子と翼は表情を綻ばせ、コンはガッツポーズをして見せた
『………』
小会議室から退室するリブラに続くリビオスがコンを見下ろす
「……何よ?副議長」
『いや。少しだけだが……』
はぁと重いため息を吐きながら、どこか愉快そうな口調でリビオスが告げる
『ーお前も、どこか母親に似てきたな』
「ーえ?」
リビオスの言葉にコンが呆けた声を漏らす
小会議室を後にしたリブラとリビオスが通路を歩む中、壁に背中を預けたスーツ姿の女性が二人に気づき微笑む
「久しぶり。お二方」
『貴様…まさか地球に来ているとはな』
「ええ、驚きました。お久しぶりですわね」
「サイコキノ星人星間交渉人、カコさん」
カコ、と呼ばれた女性はイタズラっぽく微笑んで軽く手を振る
「ちょっと大事な用事があってこの星に来たのよ。頼まれてたヴァイロ星とスタンデル星の休戦交渉と、ワイルド星の惑星難民保護の相談ならもう済ませてきたわ」
「ありがとうございます。あなたのおかげで、惑星間の戦争が血を流すことなく解決できます」
「いいってこと。これが、私の精一杯のやりなおしだから」
フン、とリビオスが腕を組む
『貴様らが仕掛けたことで我らの星での戦争が悪化したことは、忘れてはいないからな』
「そんなこと言って…私のまだまだ不慣れな頃の交渉に一番親身に耳を傾けて信じてくれたのは誰だっけ?」
『ーッ、知らないなそんなことは』
リビオスがカコとすれ違う
「……信じてくれて、ありがとう」
『……フン。精々罪滅ぼしを続けるんだな』
カコの言葉にリビオスはどこか満足げに去っていく
その背を、微笑んでカコは見送った
「はーい、お久しぶり」
翼たちに合流したカコがヒラヒラと手を振りながら告げる
「な、は!?お母さん!?!?」
「お、可愛い娘はっけーん!会いたかったよ」
カコがコンを優しく抱きしめる
「もう着いたの!?早くない!?」
「娘の一世一代のことに急いで来ない母親はいないでしょ?ファントン星人の知り合いが快く送ってくれたのもあって結構早くこれたわ」
抱きしめていたコンを離すと、隣の翼や蛭子を見やる
「へぇ……いい男と友達、見つけたじゃない」
「お母さん!?!?」
翼が姿勢を正し、カコに向き直る
「えっと、改めて娘さんと婚姻を結ばせてもらった日向 翼といいます。中々ご挨拶が直接できず、すみませんでした」
「いいのいいの。私もそもそもひと所にいない仕事だし」
カコが翼の肩を叩く
「……色々見えたけど、あなたならうちの最高に可愛い娘を預けられるわ。翼くん」
「ーコンのこと、よろしくね」
翼はカコの言葉にしかと頷いた
「で、コン。結婚式はいつよ?」
「……そのことなんだけど…」
コンは蛭子に向き直る
「蛭子。私たちの結婚式…是非来てほしいの」
「私が…?いいのですか…?」
「いいに決まってるでしょ?私、あんたに絶対来てほしいってのもあって話とか色々したかったんだし」
コンが蛭子の手を取る
「それに、家族を結婚式に呼ばないのは変でしょ」
「…?それってどういう……」
「あんた、家族はもういないでしょ…?それは…辛すぎるって私思ってたの。ちょっとお節介かもだけど」
「………」
蛭子がコンの言葉に押し黙る
「……私は、そんな幸せになることなんか…」
「幸せになるのに、資格もなんも無いわよ」
「コンさん……」
コンが翼から封筒を受け取って手渡す
「……あんたが嫌じゃなきゃ、なんだけど…日向家の、翼の義理の子供として養子みたいな形が特例でできることになったの」
蛭子が丸く目を見開く
「それ……って……!?」
「……うちに来なさいよ、蛭子。私はそうしてくれたら嬉しい」
「僕も。家が賑やかになるのはとても嬉しい。それに、蛭子さんの支えになってあげたい思いは僕も同じだ」
微笑む二人を見て蛭子の封筒を持つ手が震える
封筒を抱きしめ、小さな肩を震わせながら、蛭子は口を開いた
「私が……こんな、こんな幸せに……家族になってもいいの、ですか?」
「あんたが嫌じゃなきゃ、大歓迎よ」
蛭子の頬を大粒の涙が伝う
嗚咽の中に、それでも朗らかな笑みがあった
「嬉しい…嬉しい……!私、私の……新しい…家族……!」
蛭子はコンに抱きつく
「こんな、私ですが……よろしくお願いします……ッ!!」
「これからは、ほんとの姉妹なんだから、たくさん甘えなさい」
コンは、泣きじゃくる蛭子の頭を優しく、ずっと撫でていた
その姿を翼とカコは誇らしげに見つめていた
「……全く、見ないうちにいい女になっちゃって」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
八坂家の墓と書いてある墓石に線香を供え、蛭子が手を合わせる
「……父様。私に、新しい家族ができました」
蛭子は墓石を撫でながら目を細める
「父様は、私にとってはお父様…ヤプールの計画の隠れ蓑だったのは本当でした」
「………でも、父様が私を家族にすると、優しく撫でて抱きしめてくれて……お仕事でほとんど会えなかったけど、大学にまで行かせてくれたことは……私にとって本当に、嬉しいことだったんです」
蛭子の目尻に涙が滲む
「……悪い娘でごめんなさい、父様…私は…そんな闇も影も抱いて…今度は、父様がなろうとしていた光に、なっていきます」
立ち上がり、微笑みながら少女は凛然と告げる
「だから……見守っていてください。
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とある結婚式場
新婦控室
「ふわぁ…」
照れくさそうに姿を見せたコンの姿ーウェディングドレス姿を見て、蛭子が目を輝かせる
「な、なんか恥ずかしいから、じっと見ないでよ、蛭子」
「コンさん、すごく似合ってます!!」
「あ、蛭子、呼びかた」
「あっ…コン、お姉様…うぅ…こちらもまだ慣れません…」
照れる蛭子の頬をムニムニと触る
「可愛い妹め、このこの〜」
「ふにゃうぅ〜」
蛭子の表情はだいぶ柔らかなものになっていた
「さてと、そろそろ新郎が待ってるわよ、コン」
カコがコンに呼びかける
「じゃあ、行かないとね」
「はい。いっぱいお祝いします!!」
「ありがと、蛭子」
カコに連れられる形でコンはウェディングロードをコンがゆっくりと歩いていく
両側のベンチにはNEXT GUYSの
A.I.G.I.S.からも何人かの隊員と隊長の
最前列で翼の父と共に見守る蛭子にコンがウインクを送る
「新郎、
「はい、誓います」
「新婦、日々野 コン。あなたはここにいる日向 翼を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います」
誓いの言葉に迷いなく返答し、二人が目配せして微笑む
ほとんど満席で並ぶベンチの中、最後尾の何故か空いているベンチにて、聞こえないはずの声が響く
「……ったく、立派になりやがって。うちの自慢の孫は」
「はぁ……お前の孫バカは死んでも治らないな」
「治るわけないだろ。私は世界一孫を愛してるんだから」
「お前らしいな。そういうところは」
白衣を着た二人の影に並び、もう一人の男がいた
男は、新郎と新婦ではなく最前列で笑顔で二人を祝っている蛭子に目を向けていた
フッ、しかめ面を綻ばして男が笑う
「……うちの娘を頼むぞ。泣かせたら、化けて出てやる」
皆の祝福の中、新郎と新婦は誓いのキスを交わした
あれよあれよという間に結婚式は滞りなく終わり、ブーケトスの時間がやってきた。女性陣が色めき立つ中、コンがブーケを投げる
女性陣たちが手を伸ばす中心に落ちようとしたブーケ
それが、どこからか吹いてきた風に運ばれて落下地点がずれる
小さなブーケを手にしたのは、女性陣から少し離れて見守っていた蛭子だった
「ー私のことはいい。幸せになれよ」
驚く蛭子は耳元で聞こえてきた声に振り向く
そこには誰もいない
が、蛭子は確かに微笑んだ
不器用なもう一人の父親らしい、その言葉に