ウルトラマンイカロス   作:リョウギ

5 / 40
第5話「幽谷の双閃」

その日、NEXT GUYSは水星付近の惑星軌道を周回する調査衛星ガーゴイルIIが記録したあるデータが議題となっていた

スライドに映し出されているのは宇宙空間の画像

その中央部には裂け目のようなものが写っている

 

「次元の裂け目…?」

「はい。まぁ便宜的に呼ぶとすればですが」

 

ケリスが端末を操作しながら裂け目の調査結果を表示していく

 

「この空間の先だけ次元位相がズレているのが確認されてますね。要するにこの空間の中身は次元がめちゃくちゃに交差してるような状態…と言ったところでしょうか」

「次元が交差している…なんか……凄すぎてよくわからなくなってきました……」

「実は、この裂け目の先に似たものは既に観測された記録はあるんですよね」

 

ケリスがスクリーンに映る裂け目に並べて新たな画像を映す

その画像に映っていたのは、ぱっくりと宇宙空間に開いた円形の穴だった

 

「《ウルトラゾーン》、かつて我々の前身であるGUYSが調査した異次元空間ですね」

 

しばらく画像を悩ましげに見ていた剛が口を開く

 

「ウルトラゾーン……確か怪獣墓場にも通じていた空間だったか?」

「確かに、GUYSの観測記録だと入ってすぐの空間は死んだ怪獣たちが浮かぶ、宇宙飛行士の間でもまことしやかに語られていた怪獣墓場とほぼ同じようなものだったと記録がありますね」

「それが太陽系に開いた、か……」

「現状では似たもの止まりですがね」

 

そう、今一番の問題はかつて開いたそれよりも地球に近い場所でその裂け目は口を開けていたのだ

太陽の重力圏からギリギリ外に位置する地点、辛うじて水星の公転軌道からも逸れた位置にその裂け目は開いていた

 

「今のところ要観測状態ではありますけど、様子としてはそこまで異常はありませんね」

「怪獣墓場ってことは、死んだ怪獣が流れ着くってことですよね?」

「だねぇ。研究者たちの言葉を借りると、他世界解釈に基づいて様々な並行世界から死んだ怪獣の概念が流れ着く世界ってとこだから。概念だから生き死にとか関係ないキングジョーみたいなロボット怪獣も見られてるし」

「……その…死んだ概念、ということなら大丈夫だと思いますが…その集まった怪獣たちの概念って、墓場から抜け出すことってないのでしょうか…?」

 

花の問いにケリスが頷く

 

「事例はあるね。シーボーズはこの怪獣墓場から出現した怪獣だったりするし。あとまぁ、GUYSの先輩達が遭遇したレッサーボガールのいる惑星とかあるからそういう所から現れる怪獣はいるかもしれない」

 

そう答えたケリスは剛に向き直り、提案を告げる

 

「隊長、ひとまずの危機は確認できませんが件の空間異常の調査自体は必要と考えています。正式な計画書は後ほど提出しますが、調査の許可を上と掛け合ってはいただけませんか?」

「わかった。調査の打診は私から行っておこう。ケリスは調査計画の準備を頼む」

「G.I.G」

 

剛に敬礼を返したケリスはそのままコンソール操作に移り、計画の立案を始める

それを確認し、ちらと空席ー謹慎中の翔真がいつも腰掛けている位置を見やり剛が口を開く

 

「危険性が今すぐは確認できないが、だからといって危険が今すぐ現れないとも限らない。準警戒態勢を維持して裂け目から目を離さぬようにしておこう」

「「G.I.G!!」」

 

と、ふと思い出したように剛が輝に尋ねる

 

「……翼くんはどうしたんだ?会議にいないようだが?」

「あぁ、翼さんですか。あの人でしたら確かー」

 

「開発途中のメテオールの最終調整があるらしくて朝から向こうに付きっきりのようです」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

日向重工 秘匿野外試験場

 

隠匿メテオールフィールドの展開により周囲から発見されなくなっているこの試験場に今、ウルトラマンイカロスが立っていた

そのコクピットにはもちろん翼が立っていた

いつもとは異なり、イカロスの背中にはケーブルがジョイントされており、その周囲には重機が並びイカロスへと装備の装着作業を行なっている。間も無く装着が完了、左腕に新たな青い装甲が追加された

 

『翼、準備は完了したわよ』

「わかった。試験開始といこう」

 

翼が頷くと、イカロスが起動しその隣に設置された大型のコンテナから伸びる柄のようなものを握る

 

『ロック解除、コンテナ展開開始!』

 

コンテナ部分のボルトが解除され、勢いよく開く

コンテナから現れたのは黄金の刀身に青い柄を持つ長大な剣だった

鍔の部分には青い円形のクリスタルがはめられている

 

『シミュレーター起動、プロトマケット怪獣解放』

 

剣を携えたイカロスの目前に、マケット怪獣が出現する時と同様に緑の粒子が渦巻き、怪獣の形を成していく

 

現れたのは五角形のようなボディに鳥のようなどこか愛嬌のある顔を持つ怪獣

レジストコード《宇宙大怪獣ベムスター》がそこに現れた

 

「光線技が効かない怪獣の代表格。申し分無い相手だ」

ーシェアッ!!

 

イカロスが手にした剣を構える

マケットベムスターが咆哮、こちらに突進してくる巨体を剣の腹で受け押し除ける

よろけたマケットベムスターに斬撃を放ち、その体にダメージを与える

 

ーシェアァッ…‼︎

 

手にした剣を正面に構え、柄を引き抜くようにスライドし戻す

鍔の部分にはめられたクリスタルが回転し青い雷光のような光を放つ

同時に剣身に光り輝くエネルギーが迸り、刀身が黄金に輝く

 

「はぁッ!!」

ーシェアァァァァッ!!

 

低く、居合のような体勢で剣を構え、振り抜く

放たれた黄金の斬撃がマケットベムスターを肩から腹にかけて袈裟に切り裂く

ダメージを受け、よろめいたマケットベムスターは限界を迎えたようで緑の粒子に霧散していった

 

「擬似タイマーリアクター感度、出力共に良好、計算上火力の98%まで出力を確認。十分ね」

「はい。これならこのまま実戦投入も問題なさそうです」

 

試験場仮設テント内のコンとアルミル、他数名の職員が満足げに頷く

 

「ウルトラマン本人サマのご感想としてはどうかしら?」

『そうだね。今のところは問題は無さそうだ。事前に訓練したのもあるけど、思ったよりも動ける』

 

イカロスが手にした剣ーウルトラマンイカロス専用メテオール実体剣・イカロスナイトソードを改めて眺める

 

「じゃ、テストは成功ってことでいいかしら?」

『そうだね。実戦はどうなるか未知数だが、問題なく起動・運用できるのは確認できたからもちろん成功だ』

 

翼の満足気な返事を聞いたコンは周囲の職員に指示し、撤収を開始した

翼の乗るイカロスも地下へと格納されて行った

 

 

「次元の裂け目の調査?」

 

地下指令室でスーツに着替えた翼がコンからタブレットを受け取り、着信履歴から剛のメールを眺める

内容としては今朝方確認された太陽付近の次元の裂け目、分析から怪獣墓場に繋がると判断されたものの調査に向けてNEXT GUYSで計画が進み始めた、というものだ

 

「目下のところ、似た空間異常の形跡からGUYSが70年前に遭遇したウルトラゾーンの怪獣墓場に繋がってるって推測がされてるわ。現状はその空間異常が繋がってるだけだけど、念の為にと大規模調査が検討されてるってわけ」

「なるほど…確かに怪獣墓場に繋がってるとするなら、大規模調査を行えば貴重な研究資料になりそうだし、この機は確かに逃せないね」

 

渡されたタブレットのメールに手短に確認と承認の返答を送り、改めて添付された資料を確認する

宇宙空間にぱっくりと開いた裂け目からは、宇宙のものとは違うどこか不安感を掻き立てられる闇が広がっていた

 

ビーッ!ビーッ!

 

画像を眺めていた翼の耳にけたたましいサイレンが響く

 

「怪獣か⁉︎」

 

素早くコンがディスプレイに中継映像を映し出す

何者かの攻撃を受け、爆炎を上げる市街地

砂煙を掻き分け、現れてきたのはー

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ポイントD5 市街地

放たれた光弾が着弾、ビルが崩れ砂煙を上げる

突然の襲撃に昼下がりの市街地は大混乱の様相を呈し、人々の悲鳴がこだましていた

 

『ハハハッ、脆いですねぇ。下等種族の技術ではこれが限界でしたか?』

 

砂煙の中から現れたのは巨大な球形の影

球状の特徴的な黒鉄の鎧からは巨大な角飾りが4本伸び、所々の装甲はひび割れ、隙間や胸部中央の大穴を埋めるように紫の禍々しい結晶が満ちている

 

『ウルトラマンが出てこなければただ蹂躙されるだけの愚かな存在たち。実に哀れですね。そんな下等種族に預けるにはやはりこの星は惜しいですね』

 

鎧から覗く小さな頭から見える不敵な笑みを浮かべる目が人間たちを嘲笑う

と、その目線が上空に現れた『客人』に向けられる

 

「あいつは…」

「ドキュメント:GUYS、私たちの前の代に同種族出現が確認された異星人…レジストコードは《光波宇宙人 リフレクト星人》」

 

ガンフェニックスレガシーの操縦席から侵略者を見下ろしたケリスが情報を読み上げる

 

「対象は誘電体多層膜ミラーに酷似した構造の特殊装甲を纏っていて光線の類は全く通用しません」

「わかった。輝、花、光線兵器は使用せずに実体弾でのみ攻撃することに留意し、散開して攻撃開始!」

『『G.I.G!!』』

 

分離し、こちらに迫る戦闘機4機を見たリフレクト星人は薄く笑った

 

『久しぶりですね。ようやくの到着ですか』

 

「攻撃開始!」

 

それぞれからミサイルが放たれ、リフレクト星人に迫る

が、リフレクト星人は悠々と両手を掲げて回転、着弾していくミサイルを撃ち落とす

 

「くっ!?」

『光線の効かない私への戦術としては悪くありませんね。次はこちらから!!』

 

回転の勢いそのままにリフレクト星人の右手甲から光弾が放たれる

4機はそれぞれ散開し、回避していくが花の乗ったガンパンツァーを光弾がかすめ、姿勢を崩す

 

「きゃあッ!!」

 

火花を上げる操縦席で頭を抱える花

脱出の暇もなくパンツァーは墜落してー

 

ガシッ!!

 

ーいかなかった

不安定だった機体は軽い衝撃と共に安定し、異変に気づいた花が正面を見上げる

 

「イカロス…!」

 

操縦席越しに見えたその姿は、あのウルトラマンの姿だった

ガンパンツァーを安全な地面に優しく置くと、イカロスはリフレクト星人に向き直る

 

「来てくれたか…‼︎」

 

安堵する剛の目にいつもと少し異なる銀色の巨人が映る

 

『現れましたか、ウルトラマン…おや?メビウスでは無いのですね』

 

リフレクト星人は眼前に現れたイカロスに首を傾げる

イカロスはそれに油断せず手にしたイカロスナイトソードを構える

 

「光線技の効かないリフレクト星人になら、このセイバーカスタマイズが有利に立ち回れるはず…‼︎ いくぞ!」

ーシェアッ!!

 

翼の決意がイカロスに伝わり、裂帛の掛け声を上げる

 

『なるほど、剣で私に挑もうとはこちらもいい選択ですね。ならば私も礼儀に習っておきましょう!』

 

リフレクト星人も同様に右手甲から細長い実体剣を展開、イカロスの剣を迎え撃つ

 

ギャリィィィィンッ!!!

 

巨大な刃が撃ち合い、火花を散らす

鍔迫り合いから離れ、二度三度剣が交わっていく

イカロスの剣道にも似た剛毅な剣閃

リフレクト星人の流れるようなしなやかな剣閃

それぞれの剣がせめぎ合う

 

ージェアッ!!

『ぬぅッ!?』

 

イカロスの一撃がリフレクト星人の剣を跳ね上げ、その胴体が晒される

 

「もらった!!」

ーシェアァァッ!!

 

その隙を逃さず、イカロスが剣を振り抜く

 

ギャリィィィィンッ!!

 

その一閃は、リフレクト星人の体に虚しく受け止められた

 

「なっー」

『ーおやおやぁ?』

 

リフレクト星人が左の手甲でイカロスナイトセイバーを押し返す

 

「そんな……威力も鋭さも十分だったはず!?」

『やれやれ、少々警戒しましたが警戒するにも値しない程度のものでしたか』

 

躍起になってイカロスが二度三度リフレクト星人に斬りつける

が、もう避けるそぶりすら見せなくなった星人の体にその剣撃は虚しく弾かれる

 

『無駄ですよ』

 

飽きたとばかりに吐き捨てるとリフレクト星人はイカロスナイトセイバーを左手甲で押し返し、その反動で回転しながらイカロスを斬り捨てる

 

「ぐぁぁっ!?!?」

 

衝撃によろめいたイカロスはそのままビルを巻き込み倒れ込む

起き上がりかけたイカロスの首元にリフレクト星人がその剣を押し当てる

ふぅ、と明らかな落胆を含んだ嘆息が溢れた

 

『興が削がれました。その命、預けておきましょうー』

 

とリフレクト星人は踵を返す

 

『ーと言うとでも思いましたか!?』

 

が即座に振り返り、トドメとばかりに剣が振り上げられる

襲いくる一撃に翼がめを伏せる

 

が、衝撃はいつまでたっても来なかった

 

『なにぃッ!?』

 

リフレクト星人の驚愕の声が響く

それもそのはず、リフレクト星人の一閃は、他ならぬウルトラマンイカロスの掲げた剣に防がれていたのだ

 

「なっー」

 

コクピットにいた翼も驚愕の表情を見せる

しかしそれは、イカロスが動いたことに向けられたものではなかった

 

今イカロスのコクピットには翼では無いもう一人が立っていたのだ

 

老獪な雰囲気を放つその闖入者の動きをまるで翼がいつもやるようにトレースし、イカロスが素早くも鋭く重い蹴りでリフレクト星人を跳ね除けながら立ち上がる

 

『ぐっ!?今更なんのつもりですか!?』

 

激昂した様子のリフレクト星人に相対したイカロスは、先程までの剣道のような構えーではなく、切先を下に向け姿勢を低くした独特な構えを向ける

 

ーシェアッ!

『フッ!!』

 

再び双閃が火花を散らす

だが、その様相は先ほどまでとは明らかに違った

 

最小限の動きでリフレクト星人の剣はいなされ、的確な一撃が逆にその体を打ち据える

軽い斬撃のはず、だが今回はその体にダメージが蓄積されていく

 

ーイィアッ!!

 

鋭い逆袈裟がリフレクト星人の胴体に走る

たまらず吹き飛ばされたその胴体には、深々と刀傷が走っていた

 

(そんな!?さっきは斬れもしなかったのに!?)

 

『バカな!?私の体に傷が…!?』

 

翼と同じく驚愕の表情を見せたリフレクト星人はすぐさま苛立つかのように手甲から覗くてを握りしめる

 

『この傷、覚えていなさい…‼︎ 借りは必ずや返しますよ!』

 

と捨て台詞を残し、リフレクト星人は姿を消した

 

激闘の後には、ウルトラマンイカロスただ一人が立っていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

日向重工 地下指令室

 

「あんたは、誰?」

 

翼と共にイカロスのコクピットから降りてきた男にコンがトライガーショットNEXTを突きつける

男は眉一つ動かすことなくコンと、その隣に並んだ翼を見据える

 

「突然の来訪については詫びよう。そして改めてこちらの名を」

 

淡々と男の口から告げられたのは

 

「俺の名は、ウルトラマンヒカリ。かつてこの地球にも来訪したウルトラマンだ。この姿はかつてこの星で体を借りたセリザワ・カズヤという男の姿を借りている」

 

「なっー」

 

再びの驚愕に翼たちの表情が固まる

 

ウルトラマンヒカリ

かつての怪獣頻出期にウルトラマンメビウスやGUYSと共に戦った、人類が初めて目にした青いウルトラマン

一時期ハンターナイトツルギとしてボガールのみに固執していた過去を打ち払い、光の戦士として地球を守り抜いてくれた存在

イカロスナイトソードにはナイトビームブレードを用いた戦闘を得意とした彼のデータが参照されている

 

「ウルトラマンヒカリ、ですって…⁉︎ い、今更ウルトラマンが何しにこの星に来たのよ⁉︎」

「無論、新たに迫る脅威からこの星を守るためだ」

「怪獣頻出期も始まってそろそろ一月にもなるのに、悠長な登場ね」

「既に向かったはずの同胞がいたが、彼からの応答が無くなったことを確認してからの急行だった」

 

あからさまな警戒を向けるコンを無視して、セリザワーヒカリは翼を見据える

 

「そういうことだ。後の任は俺が行う。あの機械仕掛けはもう使うことは無いだろう」

 

と、ドックに格納されたイカロスを睨みヒカリが告げた

 

「ま、待ってください!!なんで、僕はまだ戦えます!」

「リフレクト星人を倒せなかったキミが、か?」

 

ヒカリの言葉に、翼が言い淀む

 

「僕は…まだ諦めてません。今は僕が、この星を守るウルトラマンのー」

「キミはウルトラマンでは無い」

 

わかりきった答え。だが、今の翼には何よりも重い言葉だった

 

「キミはただ、ウルトラマンの形と力を宿した機械に乗った人間だ。かつて心を通わせ、人間にその力を貸した同胞もいた。だがキミはそれですら無い」

 

「ーあの機械仕掛けは、カラータイマーから確かにウルトラマンの力が感じられた。俺の同胞の体を、キミは利用している」

「それは、違う…‼︎ これは、これは爺ちゃんと僕の約束でー」

「その約束は、同胞の亡骸を使う理由として俺が受け取れるモノなのか?」

 

翼は、言い返せなかった

 

「ウルトラマンになったつもりのキミでは、リフレクト星人を倒すことは不可能だ。それ以上の脅威なら尚更な」

 

そう言い残したヒカリは指令室を後にした

 

翼は、ただ立ち尽くすことしか出来なかった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

リフレクト星人の襲撃から翌日

それは正午ちょうどに起こった

 

『ごきげんよう、地球人の諸君。私はリフレクト星人だ』

 

街頭、民家のテレビ、スマートフォン、ありとあらゆる電子媒体の画面が唐突にあの侵略者の顔を映し出した

 

「こいつは…電波の発信源を探れ!!」

「G.I.G!」

 

それはフェニックスネストの指令室も、日向重工の社長室もどうようだった

 

『先日は突然の来訪で驚かせてしまってすまないね。一刻も早くこの星を君たち下等な種族から解放してあげたかったのだよ』

 

『さて、改めて要件を伝えよう。私の望みはこの星の侵略であるが…それとは別に目的がある』

 

ニヤリと無機質な顔を歪めリフレクト星人が告げる

 

『私の体に、一度ならず二度も傷を付けた狼藉者…ウルトラマンメビウスの首が欲しいのですよ』

 

 

「電波の発信源…特定できませんでした…」

「……クソッ!!」

 

剛が珍しく悪態をつく

リフレクト星人が地球人に突きつけたのは明日の正午までに『ウルトラマンメビウスの身柄の引き渡し』を行うこと

それができねば今度こそ本格的な侵略として手始めにフェニックスネストへの侵攻を始める、と

 

「ウルトラマンメビウスの引き渡し…不可能ですよね?」

「当たり前だ。可能だとしても、そんな要求飲めるわけが無い!」

 

勿論ながら、今の地球にウルトラマンメビウスはいない。引き渡し自体が不可能なのだ

 

「しかし、何故メビウスなのでしょうか?イカロスではなく」

 

花が当然の疑問を口にする

確かにリフレクト星人の要求は随分と不可解ではある

侵略が大目的だとしても、いないはずのメビウスを次点に据えるというのは理知的な言動の目立つリフレクト星人には不釣り合いなチグハグさに思える

 

「……隊長、前回の戦闘時にアーカイブした画像から比較してみたのですが」

 

ケリスがモニターに映し出したのは今回現れたリフレクト星人の画像。それに並んで映し出されたのは70年前に出現したドキュメントGUYSに記録のあるリフレクト星人の画像記録

そして付随記録として当時のリフレクト星人をウルトラマンメビウスとウルトラマンレオが撃破した瞬間の映像記録が再生され、2人のキックがリフレクト星人を貫いた瞬間で静止する

 

「今回出現した個体、前回の個体と比べて大きな相違点として胸部などに生えた結晶がありますが、この結晶化部位がどうも前個体がウルトラマンたちに破壊された部位と共通しているようなんです」

 

ケリスの操作により各部位の拡大比較が映し出される

胸部は勿論ながら、左腕の手甲も半分が結晶に置換され、破壊部位はメビウスが蹴り割った部位と共通しているのがわかる

 

「気味が悪いくらい一致しているな……」

「それに先ほどの放送での発言、『私の体に二度も傷を付けたウルトラマンメビウス』という言葉は前個体の戦闘記録と共通しています。これらから推察するに、今回出現した個体はあり得ないことだとは思いますが……前個体と同一の個体であると考えられます」

 

ケリスの推論に輝が眉をひそめる

 

「つまり……こいつは、蘇った個体ということ?そんなめちゃくちゃな……」

「……ウルトラゾーン…」

 

はっ、と気づいたように呟いた花の言葉に剛もようやく得心がいったように頷く

 

「そうか、怪獣墓場から蘇った個体ということか…⁉︎」

「現状はどこまでも推論ですが、隊長と花ちゃんの言う通りその可能性が一番濃厚ですねぇ。どこまでもタイミングが完璧すぎますし」

 

それを聞いて剛は手を叩き、表情を整える

 

「敵の正体は目星がついた。が、ヤツは光線技の効かない厄介な性質を持つ以上それをなんとかしなければこちらからの有効打は生み出せない……タイムリミットである明日の正午、おそらく再びヤツが姿を表すだろうその時までになんとか作戦を練り直そう」

 

剛の言葉に一同が頷く

その中心にいた剛は謹慎中故に空席となっていた翔真の席と、昨日から音沙汰が無い翼の通話窓に不安そうな視線を送った

 

 

翼は一人、社長室で項垂れていた

 

『ウルトラマンになったつもりのキミでは、リフレクト星人を倒すことは不可能だ。それ以上の脅威なら尚更、な』

 

ヒカリの残した冷ややかな言葉が何度も頭の中を巡る

冷ややかだが、それでもどこまでもどうしようの無い事実だった

 

勝てるはずだった

イカロスナイトソードは訓練でも想定以上の成果を確認できた

その力を使いこなすために剣道の訓練も重ねて、異星人たちのデータから模倣したホログラムとの対人訓練も重ねていた

それなのに、リフレクト星人にはその刃は届かなかった

ヒカリがイカロスを操縦した時はその刃が届いたのに

 

それは、翼がイカロスを操るに値していないというどこまでも残酷な事実だった

 

「剛隊長へ一言入れなくていいの?昨日からずっと連絡なしのままだと心配するんじゃない?」

「……ああ、わかってる」

 

コンの言葉にも上の空に答える翼に郷を煮やし、コンが口を開きかけたその時ー

 

ビーッ!ビーッ!

 

あの時と同じように警報が鳴り響き、備え付けの電話が鳴り響く

流石に顔を上げた翼が電話を取り応える

 

「何があったんだ?」

『社長!秘匿野外試験場に落下物!生体反応があることから宇宙怪獣かもしくは異星種族の可能性があります!』

 

秘匿野外試験場のメテオール迷彩は成層圏まで展開されている

故に、真上から飛来したものはNEXT GUYSにも感知されることが無い

それを聞いた翼は立ち上がり、社長室を出る

 

「ー行くつもり?リフレクト星人はどうするの?」

「……まずはこちらが先だ。有線電源で出ればリアクターへのチャージ時間も短縮できる……この会社も、みんなも守らなきゃいけないんだ…」

 

沈痛な面持ちのまま、翼はイカロスに乗り込みに向かった

気の乗らない表情のままコンもそれに続いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

地下からのリフトに持ち上げられ、秘匿野外試験場にイカロスが現れる

その手には縋るようにイカロスナイトソードが握られている

 

『あ?なんだ?この星にもオレらみたいな巨体種族がいたのか?』

 

秘匿野外試験場に立つもう一人の人影がイカロスを睨む

 

そこに立っていたのは、紅い武者のような甲冑に身を包んだ人型の宇宙人だった

その背には日本刀に似た刀が二振り背負われている

 

「こいつは…ザムシャー族!?」

 

イカロスの記録映像越しに相対する紅い武人を見たコンが驚く

 

宇宙剣豪 ザムシャー

リフレクト星人と同じく70年前の頻出期に現れ、メビウスとの果し合いを繰り広げた『宇宙の剣豪』

今そこにいる個体はそのザムシャーと同種族の宇宙人と思われる

 

『誰だか知らねぇがこのオレ、ホムラザムシャー様に逆らおうってんならやめときな。ここいらでオレに勝てるようなヤツなんていねぇし、弱いヤツと撃ち合っても面白くないからな』

 

しっしっ、とイカロスに手を振りながら武人ーホムラザムシャーが告げる

 

「どういう理由があれ、ここに居残るなら追い出すまでだ…‼︎」

 

その言葉に従わず、イカロスー翼が刃をホムラザムシャーに向ける

 

(僕だって、イカロスだってまだ戦える……戦えるんだ!)

 

『……オイオイ、やる気か? めんどくせぇが…痛い目見ねぇとわからんタチなら、ちょっくら揉んでやるか…‼︎』

 

ホムラザムシャーがその背に負う刀を引き抜き、大上段に構える

 

ーシェアァァッ!!

『セェェェイッッ!!!』

 

巨体の振るう業物がぶつかり、それを起点に肉薄

2体の視線が剣閃に交じり火花を散らした




ホムラザムシャーとの決闘
しかしやはりイカロスの刃は届かない

迫るタイムリミットの中、NEXT GUYSと並ぶ防衛組織AGISが強力な兵器による市街地をも巻き込む作戦の強行を開始する

翼の剣に足りないモノはなんなのか
過去の約束を辿る時、その答えに辿り着く

次回 ウルトラマンイカロス
「翼、真なる飛翔へ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。