イカロスとホムラザムシャーが撃ち合うその足元
秘匿野外実験場近くの山からヒカリはその戦いを見ていた
静かに腕に蒼く煌めくブレスーナイトブレスを顕現させ、変身しようと構える
「………」
が、変身が実行に移されることはなかった
ヒカリはただ、ホムラザムシャーと撃ち合うその銀色の巨体を黙って見上げ、ナイトブレスを納める
その瞳には呆れや怒りはこもっていなかった
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ギャリィィィィンッ!!
剣と刀がぶつかり、昼間ながら火花が辺りを明るく照らす
力強くそれでいて素早いホムラザムシャーの剣撃。イカロスは辛うじて受けることが精一杯だった
『オイオイ!威勢の良さの割には攻めが甘いなぁ!!』
「ーくッ!!」
ホムラザムシャーの挑発に負けじとイカロスが一瞬の隙を付き、その腹を蹴り袈裟にナイトイカロスソードを振り下ろす
よろめきながらもその攻撃に対応したホムラザムシャーは軽々とその斬撃を受け止め弾く
「またっ!?どうして!!」
今回は翼も実感を持って感じていた
自分の、イカロスの振るう剣撃があまりにも軽いことに
『かぁ〜ッ!なんだその一撃⁉︎ チビザンドリアスの翼の方がもっと力強いぞ?』
ホムラザムシャーが呆れたように刀を下げて首を振る
そんなホムラザムシャーに対して再びイカロスの剣撃が振われるが、ホムラザムシャーは今度は刀で受けることすらせず、左の手甲で打ち払いいなしていく。更に隙を見せたイカロスの胴に張り手をかまし、その体を吹き飛ばす
「ぐわっ!?」
エネルギーケーブルをたわませ、イカロスの体が山に倒れ込む
『弱い。弱すぎる。あの爺さんめデタラメ教えやがったな…』
「まだ…まだだ!」
ナイトイカロスソードを支えに立ち上がるイカロスにため息をこぼしながらホムラザムシャーは渋々刀を構え直す
『お前みたいな弱いヤツ、相手にするだけ無駄なんだが…まぁ暇つぶしぐらいにはしてやるよ。身の程ってのを教えといてやる!』
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フェニックスネスト 指令室
「……それは一体どういうことですか?
『言葉にした通りだよ。海野 剛隊長』
スクリーンに映し出された人と向かい合った剛が半ば語気を強めながら反論する
スクリーンに映し出されているのは、白衣を軍服のようなものの上から纏った初老の男性
厳しい顔つきをしたその石動と呼ばれた男は、ただ冷淡に話を続けた
『我々A.I.G.I.S.は次にあのリフレクト星人なる侵略者が現れるだろう明日正午、対象に向けてマリア改5号による殲滅を決行する』
石動の言葉に剛が生唾を飲み込んだ
防衛組織
Anti Invader force use Gear of Inner System、内惑星システム利用型対侵略兵装特務機関の略称を掲げるNEXT GUYSの互助組織にあたる防衛組織である
本来ははNEXT GUYSの管轄外の怪獣・侵略者への対応及び避難誘導、避難した民間人の保護を仕事としている。その実体はメテオールの改良や過去の作戦で使用された兵器の改良により武装し、地球に存在しうる人類の技術による防衛を最終目標に組織されたチームである
だがその実、急進的な考えのものも多く時折過激な作戦や過剰防衛に走ることもある危うい一面を持っている
その長官たる石動の言葉は、剛の想像を遥かに超えて過激な内容だった
「マリア改5号の威力はご存知のはず。アレを、市街地で使用すればどれだけの被害が出ることか…‼︎」
『光線を無効化する対象なら、対象が回避も防御も不可能な大火力により一気呵成に殲滅する。本来なら誘導が簡単な怪獣にのみしか検討できない作戦だが、避難が完了したあのエリアでならば実行は可能だ』
「それによって市街地にどれほどの被害が発生するのかと私は言っている!」
かつて妖星ゴラスの破壊に運用されたマリア1号。その威力の低減と共に爆発の収束処置を施すことにより、低い威力ながらも効果的な破壊効果を実現し地球上での運用も可能なように改良されたものがA.I.G.I.S.改良弾頭弾マリア改5号
低減、とは言われていても元は惑星を破壊する威力を有した兵器
使用すれば5000m四方は間違いなく壊滅することは運用実験で示されていた
『生じる被害は、建物とインフラの損害のみだ。復旧作業も、それまでの住民への補填も算出が完了、いつでも行えるようになっている。人的被害が生じないならば、紛れもない我々人類の勝利なのだ』
冷淡に告げる石動に対し、剛は唇を噛み締める
「……こちらから作戦に反対することはありません」
「隊長!?」
剛の返答に輝が驚き立ち上がる
「ですが、元々NEXT GUYSとA.I.G.I.S.は指揮系統を異とするあくまで互助の関係。そちらの作戦の妨害をしない段階での作戦実行権はこちらにもあります」
『………』
剛の言葉に石動が少し思案の様子を見せる
『無論。こちらからもそちらの作戦に反対はしまい。侵略者の掃討ができれば我々が反対する理由など無いのだから』
余裕すら見える様子で頷き、石動は冷ややかな目を剛に向ける
『すぐにでもこちらの作戦概要は伝える。その邪魔にならない範囲での作戦立案、期待していよう』
石動からの通信が切れる
立腹した様子で剛がデスクを叩きながら席につく
「……元々過激な側面もある組織とは認識してはいたが…ここまでのことに打って出るとは…」
「しかし、どうします? リフレクト星人の光線無効に加えて並のミサイル兵器ではダメージにもならないであろうあの装甲を突破するためには、どうしたら……」
ケリスの言葉に剛が腕を組んで唸り、輝も頭を抱える
「メテオール兵装ならもしくは……だが、それでも通用しない場合はこちらにももう撃つ手が……」
「……あの」
花が静かに手を挙げる
「……わたしに、作戦案があるのですが…」
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「誰か、誰かいないか!?」
リフレクト星人の襲撃により半壊した市街地に一人の声が響く
瓦礫の合間をかけていくのは謹慎を受けていたはずの翔真だ
謹慎は未だに解けていないため制服ではなく私服姿で半壊した街を駆けていた
「………う…」
翔真の耳にか細い声が響く
声の元を探し、瓦礫に向かう
瓦礫の隙間から小さな女の子の姿が見える
「待ってろ!すぐに助ける!!」
小さな瓦礫を押し除け、女の子に手を伸ばす
だがまだ届かない。大きな瓦礫もなんとかどかさなければ…
大きな瓦礫をどかさんと近くの石柱を手にてこの原理で動かさんとするがそれでもビクともしない
翔真の頭に先程のか細い声がよぎる
それと共に脳裏によぎったのは、ある少女の泣き顔ー
(俺はまた…助けられないのかよ…‼︎)
その時、翔真の背後から機動部隊が押し寄せ、瞬く間に瓦礫を撤去し閉じ込められていた女の子を救出、保護していった
「NEXT GUYS所属の立花 翔真隊員だな」
事務的な、冷淡な声が翔真の背からかけられる
振り返った先に立っていたのは軍服のような服の上から白衣を纏い杖を突いた壮年の男
「……アンタは?」
「
男は手短にそう告げる
「A.I.G.I.S.って確か…NEXT GUYSの互助組織の…」
「聞いていた通り勤勉な青年だな。要救助者の救助補助、感謝する」
「……俺は、俺に今できることをしただけだ」
それだけ答えた翔真が足早に立ち去ろうとする
すれ違い様に石動が口を開く
「キミは何故、NEXT GUYSに入隊した?」
石動の問いに翔真は立ち止まる
が、答えようとはしない
「助けたいものがある。後悔を二度はしたくない。キミの場合はそんなところだろうか?」
答えない翔真のほうを振り返ろうともせず、石動は前に歩み出す
「じきにキミは知るだろう。この地球を、人類を守りうる盾を。その時にまた会おう。立花 翔真隊員」
「………」
別れの挨拶がわりと石動が手を振る
「要救助者たちの捜索、保護が終わり次第ここら一帯は避難対象地域になる。キミも、速やかかつ堅実な避難を頼むよ」
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夕焼けの中、膝を突き項垂れるイカロス
その前で刀をしまいホムラザムシャーも腰を下ろす
『つまんねぇな…弱すぎる。こんなんじゃ暇つぶしにもなりゃしねぇ……』
イカロスのコクピットで同じように膝を突いた翼は反論する気力も無いようだ。肩で息をする荒い呼吸が静かに響く
『……空っぽなんだよ。お前さんの刀は』
あぐらをかいてイカロスに向かい合ったホムラザムシャーがそう呟く
『何にもありゃしねぇ。何にも感じねぇ。だから軽い。こんなんじゃせいぜい柔いケダモノくらいしか斬れやしねぇよ』
どこからか取り出した瓢箪に口をつけ、中に入ったものをあおる
「……空っぽ……だって…?」
翼がコクピットの床面を殴りつける
その動きにシンクロしたイカロスも地面を殴りつけ、土煙が舞い上がる
「日向重工のみんなでした研究と実践、今までのノウハウ、それに加えてじいちゃんたちから受け継いだイカロス……この全てを合わせて、それが空っぽだって!? 戦うことしか知らない中で、お前に何がわかる!?」
今まででは想像もつかなかった怒声を上げて翼が吠える
『それだけじゃ無い。守るための意志も、約束も!このイカロスにはある…それなのに、それなのに……ッ!!』
地下指令室でそれを静かに聞いていたコンが唇を噛み締める
我慢の限界を迎えたように、近場のマイクをふん掴み叫ぶ
『目ぇ覚ませ!!バカ社長!!!』
突然の大音量に翼が思わず顔をしかめる
『あたしたちの研究と積み重ね?先代の爺さんからのノウハウ?守る意志と約束?そりゃそいつにはそれが全部乗ってるでしょうよ』
『でも、そいつを動かしてるのは誰よ!? 他ならぬアンタでしょうが!!』
『言い訳なんかしないで教えなさい。そのイカロスには、アンタたちのもう一つの銀翼には、アンタ自身の何が乗ってるの!? 忘れてるなら、今すぐ思い出せこのバカ社長!!』
コンの怒声に、モヤモヤしていた翼の思考が落ち着いていく
同時にその脳裏には、ある情景が思い出されていた
10年前
ある病室には数人の人々に見守られベッドに横たわる老人がいた
コードや点滴をいくつも繋がれ、病院着から覗く体は痩せ細っていた
日向重工を発展させた男・
なんてことは無い老衰。いくら科学が発展しようと、まだ永遠に若く生き続ける理想は叶えられていないのだ
昴は延命も望まなかった。生きながらえても、それは自身の望みには到達し得ないと分かっていたからだ
「……翼は、いるか?」
しわがれた口が開かれ、ある名前が呼ばれる
側にいた一人が、小さな背中を押し、中学生ほどの少年がベッドに歩み寄る
「ここにいるよ、じいちゃん」
「おお、そこにいたか……よく来てくれたな…」
「当たり前だよ…家族じゃんか…」
涙を堪えながら少年ー翼が昴に向き合う
ゆっくりと、痩せ細った顔を翼に向け、老人はしっかりと目を開き続ける。同時に翼に青い石に紐を通したペンダントとカードキーが渡される
「翼、これを……」
翼はそれを受け取る
「私は、ついに彼との約束を果たせなかった……遠い遠いあの日……故郷を彼方とする友との……あの約束を……」
「そのカードキー……それは、私の会社の地下の、あの扉を開けるものだ……」
その言葉に心当たりがあるのか、翼は驚いたように目を見開く
「
昴が大きく咳き込む
翼が慌てて昴の肩をさする
「……翼、あの扉の先のそれを見て、もし……もし、お前自身が自分自身の生涯を捧げても良いと、捧げていけると誓えるならば……お前が、約束を果たしてくれ……私と彼の、約束を引き継いでおくれ……」
微笑みながら昴は告げた
それが昴の最期の言葉だった
昴の葬式後
翼は日向重工の地下に訪れていた
父である星夜に導かれ、約束の扉を開く
そこにあったのは、まさに秘密基地と言えるモニターや様々な機械が並んだ広大な部屋だった
部屋の様子に驚く翼の隣で星夜が機械を操作し、真正面のシャッターを開く
そこにはー祖父と共に語り合ったウルトラマンがいた
正確にはあの時共に見たメビウスとは違う、また別のウルトラマンだが、そこに彼は確かに立っていた
「ウルトラマンイカロス。父さんは、そう呼んでた」
星夜は翼の手を取り、窓にもっと近づいて共にそのウルトラマンを見た
よく見るとその巨人は機械でできているらしく、所々から機械のパーツのようなものが見えていた
「翼には、まだ話していなかったらしいから驚くのも無理は無いよな……父さん…翼にとってのじいさんは昔、ウルトラマンに会ったんだ。この地球の調査に来た、イカロスを名乗るウルトラマンに」
懐かしむように、星夜は続ける
「イカロスと父さんは短い間だが、とても親しい…それこそ友達になるほどに仲良くなった。そんなイカロスが、ある日地球に迫る大怪獣を命がけで倒して、瀕死の重傷を負って地球に落ちた。そこで父さんは彼と約束をしたんだ。『彼の地球への愛と、使命を受け継ぐ。彼をこのまま終わらせない』って」
翼は格納庫に立つイカロスを静かに見つめていた
「彼の残したカラータイマーをコアに、父さんは自分が乗り込んで戦うウルトラマンを作ろうと決めた。長い、長い年月を、生涯をかけてここまでできたが、まだこのイカロスは未完成なんだ」
星夜が翼の目線に合わせてしゃがみ、翼を向き合わせる
「翼、父さんも言っていたが…選んでいいんだ。父さんの夢と約束を受け継ぐのも、そうしないのも、今の翼なら選べる。そして何より父さんとの約束だからって、無理に受け継がなくてもいいんだ」
「………」
「お前の意志で、選んで欲しい。ウルトラマンイカロスの代わりとして、彼の意志を引き継ぐかどうか」
星夜の言葉にしばし黙っていた翼だが、まっすぐ星夜を見つめて迷わずに答えた
イカロスの冷たいコクピットの中、翼が薄く笑う
「ー僕は、守りたい。イカロスが守ろうとしたこの星、この星に生きる命だけじゃなく、ウルトラマンも、彼らとの絆も……ただ並んで戦うだけじゃない。ただ代わりになるんじゃない。いつかの未来、共に歩んでいく隣人として守りあうように…‼︎」
夜闇の中奮い立つ翼と一体化したように、イカロスも胸を張り立ち上がる
「……空っぽなのは、僕自身の心が入ってなかったから。忘れていたからだった。それじゃハリボテも同然だ」
立ち上がるイカロスを見たホムラザムシャーも気だるそうに立ち上がる
イカロスはー翼は彼を真っ直ぐに見据えた
「もう忘れない。ウルトラマンではない。ウルトラマンでなくてもいい。彼から、かつてのイカロスとの約束を紡いでいくのは僕自身だ。ここに立つのは、僕自身なんだ!」
その言葉を通信越しに聞いたコンが満足げに笑う
「遅いわよ。大バカ」
『……ちょっとは目の色が変わったみたいだな。いいぜ、こいつが正真正銘最後の一試合だ』
ホムラザムシャーが刀を抜き構える
イカロスもイカロスナイトソードを構え向き直る
ージェアッッ!!!
『ーセェイァァッ!!』
ギャリィィィィン!!!
剣と刀が再び交わり火花を上げた
『ーッ!?』
ホムラザムシャーが押され、後ずさる
それを逃さずイカロスは剣を振り上げ、袈裟に振り下ろす
『なろッ!?』
一瞬怯んだホムラザムシャーだが、背からもう一本刀を抜刀し、イカロスの胴に一撃を入れる
「くっ…ッ!?」
思わずのけぞり、イカロスが一歩下がる
二刀を構えたホムラザムシャーはイカロスを睨み
ーその刀を下ろした
パキンッ
その右手に握られていた、イカロスナイトソードを受け止めた刀が半ばほどから折れる
『……だぁーーーーくそ!負けた!!』
急に緊張を緩めたホムラザムシャーが刀を放り投げ、もう一本は背に収め大の字に倒れる
「………は?」
あまりのことに翼が呆けた声をあげる
『負けだよ負け。オレの負けだ。お前みたいな雑魚には2本抜かずに勝てるはずだしそうでないとならねぇ。なのに刀は折られるわ、咄嗟とはいえもう一本も抜いちまうわ、これが負け以外のなんだってんだ?』
ホムラザムシャーの言葉に翼も脱力し、再びイカロスと共に膝を突いた
『最後の一刀、まだまだだが悪くなかったぜ。なんせ前の刀を折った黒いキングジョーのボディから打った
「あの刀、キングジョーブラックのボディでできてたの…?」
大の字からあぐらを組み直し、膝を叩いて満足げに頷く
『これならあの爺さんの口車に乗せられて来た甲斐があるってもんだ。こんな辺境の星にも面白いヤツがいるもんだなぁ…』
ホムラザムシャーの言葉にコンが首を捻る
「地球のことを知る爺さん…?」
彼が爺さんと呼ぶその存在に心当たりがあった
正確には、ただザムシャー族という共通項だけではあるが
「……まさか、ね」
『しかし刀が折れちまったとなると、早めに打ち直しとかねぇとな…名残惜しいが、この星とも一度おさらばかねぇ』
立ち上がるホムラザムシャー
と、イカロスに歩み寄り折れた黒星丸をその目前の地面に突き立てる
「これは…?」
『記念にやるよ、それ。どうせもうオレには使い物にはならねぇ』
それだけ告げるとイカロスに背を向け、ホムラザムシャーが背を向ける
『楽しかったぜ。また試合おうや。今度はもっと強くなっとけよ』
それだけ言い残すとホムラザムシャーは一跳びに宇宙へと飛び去って行った
『一大事があってすぐで悪いけど、数時間後にはまだ倒さなきゃいけないかもしれないヤツいるの忘れないように。イカロスの整備も超特急で済ませておかないと』
「ああ、そうだね。イカロスを格納しないと…」
コンの言葉に答える翼の目には、確かな意志が燃えていた
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約束の正午
嫌味なほどに時間通りにリフレクト星人は最初出現した市街地と同じ場所に現れた
『おやおや?随分と豪勢なお出迎えですね』
その眼前にはガンフェニックスレガシーが待機していた
『何をするつもりかは分かりませんが、無駄な足掻きですよ』
余裕の笑みを浮かべるリフレクト星人と相対した剛が睨み返す
「敵対星人の思い通りにはさせん。マリア改5号も使わせない!NEXT GUYS、サリーゴー!! そして、メテオール解禁!!」
『G.I.G!!』
剛の号令と共にガンフェニックスレガシーが分離、マニューバモードに変形する
「スペシウム弾頭弾、ファイア!!」
レガシーウインガーから放たれたスペシウム弾頭弾がリフレクト星人へと向かう
『無駄だと言っているのに…ッ!?』
前回同様に振り払おうとしたリフレクト星人の動きが止まる
その体を後ろからアギラが羽交い締めにしていたのだ
身動きの取れないリフレクト星人にスペシウム弾頭弾が全弾着弾、爆炎を上げる
「ブリンガーファン、ターンオン!!」
更に追い討ちとばかりにブリンガーファンにより爆炎が拡散、リフレクト星人が炎の中に閉じ込められる
すかさず地上にいた輝がキャプチャーキューブを照射、破壊エネルギーが余すことなくリフレクト星人を中心に閉じ込められる
花が提案した作戦はここに成功した
『こざかしい!!』
が、リフレクト星人は怒声と共にキャプチャーキューブを破壊する
その体は焦げ痕や傷が見られるが、それ以上に目立ったダメージは見られない
「これでもダメか…アギラ!」
失敗した場合の2次作戦、アギラによる格闘戦が始められる
タックルをかますアギラだが、リフレクト星人はよろめいただけで怯まず手甲から光弾を放ちアギラを吹き飛ばす
同時にメテオールの時間制限によりその姿が霧散する
『下等種族が…!!根絶やしにしてくれましょう!!』
激昂するリフレクト星人
その目前に、再び銀色の巨体が舞い降りた
ーシェア…ッ!!
ウルトラマンイカロスが、その手にイカロスナイトソードを手に舞い降りた
『ハハッ、メビウスの代わりにでもなるつもりですか?残念ですが、何度挑んでも結果は同じですよ!』
「それは実際に戦わないと、わからないのじゃないかな?」
リフレクト星人の挑発に翼が冗談めかして応える
剣を構えた両者が再びぶつかる
リフレクト星人の流麗な剣技に対し、更に重みを増したイカロスの剣がぶつかり火花を散らす
だが、前回のような接戦ではない
一太刀、また一太刀と打ち込まれるその太刀は確実にリフレクト星人を押し込んでいく
リフレクト星人の攻撃を弾き上げた返す刀でイカロスの斬撃が唸る
『ガッ、ァァァァ!?!?』
その斬撃は、今度は確かにその硬質な鎧を切り裂いた
「決まった!」
地上から見ていた輝が思わずガッツポーズを決める
鎧に深々と入った傷をあり得ないといった様子でなぞり、膝を突く
『バ、バカな……⁉︎私の、私の体に……ッ⁉︎ 何故だ…⁉︎』
項垂れ、うわごとのように言葉を漏らすリフレクト星人にトドメをささんとイカロスが踏み込み始める
項垂れたリフレクト星人は、それを見るとすかさず地面を握りしめその砂をイカロスの顔面に投げつけた
「くっ!?」
翼の目が実際に塞がれたわけではないが、メインカメラが一時塞がれ視界が途切れる
素早く砂を払うとその先で立ち上がったリフレクト星人が今まさに手甲から光弾を放とうとこちらに腕を向けていた
咄嗟に防御姿勢を構えるーそれを見たリフレクト星人は嫌らしく微笑んだ
瞬間、その銃口は側にいた地上の輝に向けられ間髪なく放たれた
「ーえ」
「しまった!?」
なんとか輝の前に滑り込もうとするが、間に合わない
迫る光弾に輝が思わず顔を塞ぐー
そこに一閃の青い光が立ち上がった
恐る恐る顔を上げた輝
その視線の先には、青い巨体と胸に輝く青いカラータイマーが輝いていた
『お前は……ッ!?』
立ち上がった青い巨人は振り返り、リフレクト星人を睨む
「ウルトラマン……ヒカリ……!?」
輝が素っ頓狂な声を上げて驚く
現れた青い巨人ーウルトラマンヒカリはイカロスの方を見据え
『戦場では常に周りへの注意も怠るな』
と一言忠告を告げた
それと共にヒカリはイカロスの側に並び立ち、続ける
『……得たものがあったようだな。見事な一撃だった』
『あとは実戦で見て学びとれ。ついてこれるならば、だが』
静かに構えるヒカリに、イカロスー翼は確かな頷きを返した
二人のウルトラマンが並び立ち、リフレクト星人を見据えた
劣勢を察しながらもリフレクト星人は激昂し、二人に突進する
その突進をヒカリがいなし、腕を掴み勢いを利用して投げ飛ばす
怯んだところにイカロスのタックルが直撃、更にイカロスナイトソードの斬撃が一撃、二撃とダメージを与えていく
そしてそのイカロスの背をつたい、ダイブして来たヒカリの蹴りが大きくリフレクト星人を吹き飛ばす
負けじと長剣を伸ばし、ヒカリに斬りかかるがヒカリはナイトビームソードを伸ばすこともせず、最低限の体術で剣撃をいなしながらその胴体に打撃を叩き込み、弱らせていく
苦し紛れの一撃をしかと受け止め、ヒカリの肘鉄が長剣を根本からへし折る
動揺したその隙を逃さず、ヒカリの鋭い蹴りがリフレクト星人の巨体を吹き飛ばす
「すごい……」
歴戦の戦士たるヒカリの戦法に思わず翼が感嘆を漏らす
『決めるぞ!』
ヒカリの言葉に倣い、その隣にイカロスが並び立つ
よろめきながら立ち上がるリフレクト星人
その視界に二人の巨人が映る
かたやイカロスナイトソードの擬似タイマーリアクターを回転させ、そのエネルギーを解放するイカロス
かたやナイトビームソードを右腕のナイトブレスから抜剣し、構えるヒカリ
防御をーと思う思考すらもう遅い
ーフゥンッ!!
ーシェアァッ!!
一閃、青い光が逆袈裟に
二閃、銀色の光が袈裟に
リフレクト星人の体は次の瞬間にはクロス字に切り裂かれていた
『ば、バカな……私が……この私が……』
傷口からエネルギーをスパークさせ、リフレクト星人がうつ伏せに倒れ伏し沈黙する
「見事!」
「いよっし!」
「すごい…!」
「やったぁぁぁぁ!!」
自分のことのようにNEXT GUYSの隊員たちが歓声を上げる
イカロスが見上げる先、ガンフェニックスレガシーの中で剛が敬礼をイカロスとヒカリに送る
『ー日向重工で待っている。話がしたい』
イカロスと向かい合ったヒカリは一言そう告げると飛び去っていった
イカロスもそれに続き飛び立った
「ーマリア改5号を格納。本作戦は終了とする」
A.I.G.I.S.指令室にて、中央のコンソール前に腰掛けた石動が静かに告げる
コンソールに備えられていたマリア改5号の発射ボタンのカバーを閉じ、立ち上がる
「死体処理班、対象の除去を速やかに実行せよ」
インカムに声色一つ変えることなく石動が指示を下す
「対象の外装はできうる限り状態を保持して回収せよ」
指示を下した石動は指令室を後に、廊下を歩き新たな部屋へと入る
研究設備が所狭しと並ぶそこは石動とその研究チームの専用ラボラトリーであった
自身のデスクの側、保管棚のガラス戸をなぞりその中を一瞥する
そこに並ぶシリンダーには細々とした文言のラベルが貼られているが、共通して《GENE M》もしくは《GENE A》のラベルが貼られている
「……プロジェクト・レブナント。その記念すべき一例の完成は近い」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「試すようなことをして済まなかったな」
開口一番、ヒカリはそう告げた
日向重工近くの森林で再び顔を合わせた翼はいきなりの謝罪に面を喰らう
「そんな…‼︎ 僕たちのほうこそ、あなたがたの同胞の死を弄ぶようなことをしたととられても仕方のないことを…」
「最初に顔を合わせた時、キミの眼を見た。俺の知る、若い戦士のようなまっすぐな眼をしていた」
ヒカリは優しく微笑む
「キミが、邪悪なことに俺の同胞を利用しているわけではないことはその時には確信していた。その勘は、外れていなかったようだ」
ヒカリの言葉がなんだか照れ臭く思えた翼が思わず頬をかく
「話がしたいと言ったのは、キミたちとイカロスのことについてだ」
「もちろん、全てお話します。見せたいものがありますから、そこで」
翼がそう告げ、日向重工の裏手に足を向ける
ヒカリはそれに従いその後を追った
日向重工の裏 とある山道の奥
隠されるように、実際隠されていたそれが鎮座していた
「これは……墓標か?」
「はい。爺ちゃん…日向 昴が建てたものです。イカロスの死を弔う為に」
山の中に似つかわしくない立派な墓標
数十年はここにあるだろうそれはまるで新品のような光沢を保っていた
その前に、翼が花を手向け手を合わせる
「爺ちゃんが遺した手紙で僕も爺ちゃんとイカロスの関係を詳しく知りました。地球に調査と怪獣対策のために来たイカロスと何日も語り明かしたこと、いつの間にか親しい友になったこと、そして…彼を看取った時のこと」
翼が立ち上がりヒカリに向き直る
「彼は、最期まで地球を守りきれず済まないと謝っていたそうです。それを見兼ねた爺ちゃんが、そこで一つの約束をした…」
「……その意志を引き継ぎキミたちが形にしたのが、あの機体ということか」
ヒカリが墓標を見つめ直し、微笑む
「ーあいつらしい。どこまでも優しい最期だったんだな…」
「イカロスは、俺の友の一人だった。共に惑星を渡り生物を研究していた調査員の任に就いていたこともあり、よく議論も交わしたものだ」
ヒカリが翼に向き直る
「あいつの意志を継いでくれたこと。無下にしなかったことを感謝しよう。元々は俺があいつの任を引き継ぐ為にここに戻ってきたのだが、その必要はしばらくは無さそうだ」
ヒカリが墓標に向け手を合わせ、そのまま空を見上げる
「ーアポロデラス。あいつが遺したメッセージにあった、恐るべき存在の名前だ。俺は、俺にしかできない調査でこの太陽系を調べておこう」
「地球は頼んだぞ。日向 翼」
それだけ告げると、ヒカリは青い流星となって空へと飛び去っていった
翼はそれをいつまでも見送っていた
「ー絶対に、守ってみせます。この星も、紡いだ絆も」
ジョスン島から離れた東京に前触れもなく現れたのはウルトラマンすら苦戦した強豪怪獣、ゴモラだった
様子のおかしいその怪獣にNEXT GUYSが対処する中、日向 翼と石動 大智が邂逅する
そして動き出す石動の計画
プロジェクト・レブナントとは
次回 ウルトラマンイカロス
「神話の失墜」