目を覚ますと医務室のベッドの上だった。まだ頭がボヤけているせいか現状を把握できていない。ベッドの脇にあるテーブルの水を飲み、徐々に覚醒していく。
そして自身が試合をしていたことに。脳が完全に覚醒して試合の内容を思い出すのであった。
「私はこの一撃に全てをかけるッ!」
「ーーー《雷切》ッッ!!」
歩太の身体を斬り裂いた。
かに思われたが刀華の刃からは斬った感触がなかった。驚愕して思考に空白ができてしまい慌てて立て直そうするがその隙は大きく、気づいた頃には彼女の身体は斬り裂かれる。
「《
渦潮のように水を渦巻かし、その流れに乗り中心にいる相手を斬り刻む技だ。
「なん…で……ッ?」
刀華は途切れかかる意識の中、疑問を口にした。何故、自身の刃が届かなかったのかと。
「《
刀華の意識は次第に消えてゆく。
「言ったでしょ?例え決勝で当たっても勝つのは俺だって」
七星の頂きは遠かった。
「そっか。負けちゃったんだ…」
彼女の心中は悲しみにくれることはなく、清々しい気持ちであった。もちろん負けて悔しく思う。だが、それ以上にあの時の刀華は昨日までの自分の限界を超えた全力だった。まだまだ強くなれる可能性を見つけて負けたのだ。騎士として嬉しくないはずがなかった。
早朝。破軍学園の敷地内を
一輝が走り終えてしばらく経ったあと、歩太が到着した。歩太は一輝と仲を深めてから暇な時は手合わせはしていたが、一緒に走ることなどしなかった。だは何故この時間にいるのか理由がある。
「ハァ…ッ…ハァ…ッ…ゴール………ッ」
コヤツは一輝のトレーニングに興味を持ち、次の日から20キロ走を一緒にし始めたのだが、初日は半分で
しかし、涼しい顔して自分より走りきるもんだから少し不満だ。
「ハァ…ッ…フゥー…なんでアユタは平気なのよ?」
「自分、鍛えてますから」
「ムキーッ!絶対追い付いてやるんだからねッ!」
「まぁまぁ水分でも取りなさいな」
歩太に宥められながらスポーツ飲料を渡されるステラ。さりげなくタオルも添えてるところが
一年目は何のチャンスも与えられないまますべてが過ぎ去っていった。だが今年は違う。新理事長、
「何か嬉しそうだな。イッキ」
「そう見える?実は会いたい人がいてさ」
「あぁ。
「うん。どうも新入生として入ってくるらしいんだ。四年前、僕が実家を飛び出したきりご無沙汰だったから、久しぶりに会えると思うと嬉しくってね」
……うん、向こうも嬉しいと思う…よ?
歩太は声に出さず答えた。
「楽しみだなぁ」
「へぇ~、イッキって妹さんがいたのね。それで何でアユタは妹さんことを知ってるのかしら?」
「七星剣武祭で優勝した後、色々あった1つに黒鉄の妹に一週間ほど修行をつけて欲しいと依頼があってな。軽く
焦ることなく歩太はただ事実を述べる。一輝も補足する。
「確かに珠雫の手紙にもそんなことが書いてあったね」
「ならよし」
「よしじゃねーよ。ステラの朝飯、生野菜な」
「ちょっと!?今日は3種類のオムレツとスフレパンケーキって言ってたじゃない!?」
「一輝、朝飯食うか?和食の準備もできてるぞ?前に仕込んだ漬け物がそろそろ食べ時でなぁ…」
「ちょっと心が惹かれるね」
「あと昨日から漬け込んだ煮卵もあるぞ?」
「うん、お呼ばれしようかな」
「ねぇ、ちょっと無視しないでよっ!?」
胃袋掴まれたヤツは大抵負ける。
黒鉄妹
「やっと。やっとお会いできますね、お兄様。もう誰にも私達を引き裂くことなどできない。これからはずっと一緒にいましょ?」