空に浮かぶは大きい雲   作:あろえよーぐると

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ステラ「歩太の攻撃の方が厄介だって言ってたけど…?」

一輝「うん。見えない攻撃をされたことがあったんだ。微妙な湿度変化の違和感に気づかなかったら避けられなかったね。だから、仮に桐原君の能力が初見であっても空気の流れを掴んで対処できただろうし、最終的に捕まえられたはずだよ」

ステラ「…やっぱりイッキも大概ね」



代表選抜戦(第14話)

『続いての試合はこの選抜戦、初戦以外すべて無傷で相手を沈めてきたダークホースッ!現在八連勝無敗中の《落第騎士(ワーストワン)》黒鉄一輝選手ッ!対するは破軍学園生徒会役員の一人にして七星剣舞祭代表有力候補、二年Cランク《速度中毒(ランナーズハイ)兎丸 恋々(とまる れんれん)選手!こちらも同じく現在八連勝無敗!

 しかししかし去年の年末に発表された校内序列は第三位!つまり彼女はこの学校で三番目に強い学生騎士なのです!兎丸選手が順位通りの強さを見せつけるか、それとも今日もまた《落第騎士(ワーストワン)》が武術では異能に勝てないとという我々の常識を蹂躙するのか!』

 

 試合は始まり兎丸はステップを踏みながら一輝に話しかけてくる。一輝はそれに応じ、もし自分が兎丸を捕まえることができたら負けを認めて欲しいと提案する。兎丸はプライドを刺激され提案を了承した。

 兎丸の能力は『速度の累積』。先程から一輝に話しかけながらステップを踏んでいたのは初速を稼ぐためだ。ステージを縦横無尽に加速しながら駆け回り一輝の背後から強襲。その速度は音速に達しマッハ2を超えた。

 

 しかし、一輝は兎丸を視線に捉えて彼女の拳を避ける。すれ違い様に兎丸の服の襟首を掴み、向かってきたスピードを利用してその場で独楽のように身体を一回転させ地面に叩きつけた。

 背中を殴打する衝撃に息を詰まらせる兎丸に一輝は刃の切っ先を突きつけ、

 

「僕の勝ち、だね」

「…………」

 

 兎丸は何が起こったのか分からなかったが自分が負けたことだけは理解して頷いた。

 一輝は九連勝と、また一歩選抜代表への道を進むのであった。もちろん、ステラや珠雫、アリスも一試合も落とさず連勝無敗を更新している。歩太も勝ち進んでいるが全て相手側の棄権により今現在一試合も戦っていない。そのことを特別顧問として呼ばれている姉弟子に「カワイソー」とゲラゲラ笑われ青筋を立てていた。

 

「あのやろう……ッ」

 

 

 

 試合を終えていつものメンバーで揃い本校舎にまで続く道を歩く。ここまで全員無敗で勝ち進めているため他の生徒の視線がチラチラとこちらを向いている。

 

 容姿、実力ともに高く。Aランク騎士に恥じない圧倒的実力差をもって相手を蹂躙する。

 《紅蓮の皇女》ステラ・ヴァーミリオン

 

 無表情で相手を溺れさせるという独特の戦い方から付けられた名前。

 《深海の魔女(ローレライ)黒鉄 珠雫(くろがね しずく)

 

 Fランクという低い能力にも関わらず武術でもって相手を沈めてきた。

 《落第騎士(ワーストワン)黒鉄 一輝(くろがね いっき)

 

 遠目から見れば高身長、泣き黒子がついてるイケメン。しかし実際は気遣いできる母性高めな男の身体に生まれた乙女。

 《黒い荊(ブラックソニア)》アリスこと有栖院 凪(ありすいん なぎ)

 

 昨年に行われた七星剣武祭で一年生ながら見事に勝ち進み優勝したAランク騎士。

 《七星剣王(セブンスワン)出雲 歩太(いずも あゆた)

 

 話題性抜群の四人が集まれば視線が集まるのは当然だろう。しかし、四人は気にせず歩いていく。そんな中、気になる視線があるため向けられている一輝に歩太が話しかける。

 

「なあ、一輝。ここんとこ毎日だけど、そろそろ何とかした方が良くないか?」

「ああ、あれのことだね」

「お兄様、アレ、とはなんですか?」

「うん。実は僕、なんかストーカーされてるみたいなんだ」

「「はぁああッッ!?」」

「す、すす、ストーカーってアレよね!?一日中その人の後をつけ回したり、勝手に部屋に入ってきたり、手紙にヒゲ剃り入れて送りつけたりする、あのストーカーよね!?」

「ぶふぉっ!…ちょっ、ヒゲ剃りて……」

「ステラさん。カミソリの刃です。ヒゲ剃りのまま入れてどうするんですか」

「身だしなみに気をつかえってことかしら。親切なストーカーねぇ」

「ううううるさいわね!ちょっと分解し忘れただけでしょ!ていうか今そんなことどうでもいいし」

「そうですね。お兄様、詳しく聞かせてもらってよろしいでしょうか?」

 

 ここ一週間、一輝の背中から同じ視線が張り付いてるの感じていたらしい。放っておいたら解決すると思っていたが未だに視線が剥がれる気配がないのだ。アリスや歩太は気づいていたが本人が無視していたため、何も言わなかった。

 しかしさすがにしつこいと感じ、歩太が一輝に解決の催促をしたのだ。一輝は物腰の柔らかさや顔立ちから女性にそこそこ人気がある。そのため好意を抱かれることもあるだろうし、応援もされるようになった。

 

「とりあえず害意はないんだから理由を聞こうぜ」

「うん。いい加減、理由が気になるところだし」

 

 歩太の言葉に同意を示し石畳の道の端にある茂みの中にいる人物に意識して少し大きめの声をぶつける。

 

「ねえ、そこに隠れてる人。ずっと僕をつけてるみたいだけど、何か用かな?」

「ひゃわわあぅ!!」

 

 すると茂みから弾かれたように飛び出してきたのは驚いたことに清楚な黒髪の真面目そうな美少女だった。その両手には葉っぱのついた木の枝が握られている。

 

「えっ。ベタすぎね?」

「ベタね」

「えぇ。ベタですね」

「えっ、そうなの?普通じゃない」

 

歩太、アリス、珠雫とステラ以外は同じ感想を抱いた。女生徒は突然居場所を言い当てられたことに目を回して動揺。すぐさま踵を返して一輝達から逃げ出したが、この先には小さな池があった。慌てていたため池を囲む石に蹴躓き、頭から突っ込もうとするが、歩太が素早く回り込みそれを防ぐも男に耐性がないのか顔を赤くして口を鯉のように開け閉めをする。

 とりあえず落ち着いた場所で話を聞こうとその場を移動した。

 

 

 




七星剣王になった歩太は例外として学校内序列には入っていません。
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