空に浮かぶは大きい雲   作:あろえよーぐると

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《倉敷 蔵人》(くらしき くらうど)
固有霊装:大蛇丸(おろちまる)
伐刀者ランク:C
伐刀絶技:蛇骨刃(じゃこつじん)
攻撃力B 防御力B 魔力量D 魔力制御F 身体能力B 運D


剣士殺し(第16話)

『さあ皆様お待たせしました!七星剣武祭三回戦第二試合のお時間です!青コーナーより貪狼学園二年・倉敷蔵人選手の入場です!二年生ながら学園のエースにして天性の反射神経である《神速反射(マージナルカウンター)》による鉄壁の守りと鋭い攻撃が特徴です!続きまして赤コーナーより破軍学園一年・出雲歩太選手の入場です。彼は一年生にして初出場ながらもここまで危なげなく勝ち進んできた今大会唯一のAランク騎士!その実力は未だ底を見せない!両者共に一体どんな試合を見せてくれるのでしょうか!それでは試合を開始いたします!』

 

 LET's GO AHEAD!!

 

 歩太はこれまでの第一、第二試合を魔力で水を生み出し操る異能で相手を蹂躙してきたが、この試合では《雲龍》を鞘から抜き身体を半身にして構えたままだ。蔵人は訝し気に思い頭を捻る。それを見た歩太は刀から左手を外し、人差し指を数度曲げて蔵人を挑発する。蔵人は獰猛な顔をして歩太に襲い掛かる。

 

「上等だ、オラァ!」

 

 蔵人は歩太に斬りかかるも難なく受け止められ手首の返しで蔵人の《大蛇丸》は流され、そのまま首をめがけて歩太の刃が閃く。上半身をのけ反らすことで刃を躱し、素早く状態を戻して再度斬りかかり後ろに下がり避けられるも連続の突きを蔵人は放つ。

 歩太は体捌きと《雲龍》で受け止め、後方へ大きく距離を取った。

 

「澄ました顔に一撃食らわしてやろうかと思ったが中々やるじゃねぇか。それにこちらの首を遠慮なく刎ねようとする容赦のなさも悪くねえ」

「どうも」

「だが一つだけ解せねえ。異能を使わねぇことだ」

 

 その質問に歩太は三つ理由があると答える。

 

「まずは異能だけが強いAランク騎士と思われたくないのが一つ、倉敷パイセンの異能に遠距離攻撃が無いのが二つ、そして最後の理由。

 

 斬り合い…好きなんでしょ、パイセン?」

 

 蔵人は歩太が挑発的に言った言葉の意味を理解した。つまり、このクソ生意気な後輩は異能を使わず自身の土俵である斬り合いで勝てると言っているのだと。

 

「嘗めたこと抜かしてんじゃねーぞ、コラァアアッ!!」

 

 蔵人は《大蛇丸》の刃を伸ばし、鞭のようにしなる刃を歩太に振るう。歩太はしゃがみ、回り、受け止めながら捌く。繰り返し避け続け次第に《雲龍》のみで捌く。そして力を込めて《大蛇丸》を大きく逸らした歩太はそのまま蔵人に速度をもって向かった。

 蔵人は舌打ちしながらも刃の鞭を振るうが効果がないと分かり長さを通常の状態に戻し待ち構える。近づいてきた歩太に開始直後に繰り出したものより素早く鋭い伸び縮みする突きを連続でお見舞いする。

 歩太はジグザグに躱わし近づく。距離を詰められ突きから斬撃に変える蔵人。自身の間合いに入ったことで歩太も刃を振るい始める。

 お互いの間合いが交じり斬り合いに発展する。激しい斬り合いに観客は盛り上がり声を上げて両選手を応援し始めた。

 蔵人は斬り合いの中、疑問に感じる。お互いの間合いに(とど)まりながら斬り合っているのに、どちらもまだ有効打を与えていない。死の危険と隣り合わせな近距離でのヒリつく斬り合いは蔵人の望むところで、土俵でもある。

 それなのに何故こちらの攻撃も当たらないのか?斬撃は蔵人の興奮を現すかのように速度を上げ、自身のこれまでの中で一番のノリだ。その速度に相手は着いてきているのだ。

 蔵人の中に一つの考えが浮かび、確信する。

 

「まさかテメェも持っていやがるのか、《神速反射》をッ!?」

「まぁ一応」

 

 歩太は前世?の記憶を思い出し拾われてから騎士を目指すために異能は勿論のこと、身体も鍛えることにも余念がなかった。

 身体を鍛える際にしっかりとした知識を学ぼうと考え、前世では凡そ理解できなかった医学書を読み漁り知識を蓄え身体に関する情報を仕入れていた。

 人は生まれつき足が速いもの、遅いものがいるように身体的に個人差がある。鍛えて強化することはできるがそれぞれの上昇限界を超えることはできないのでそれをどうにかしたかった。最初からアプローチの方向性は決まっていた。

 それは異能による限界突破と強化だ。魔力、異能は思いや考えによる意思で方向性を固め、成し遂げようとする意志よって形を成し顕現する。

 どこぞの農民はTSUBAME斬ろうとして刀を振るい続け、何の異能も使わず多重屈折現象という頭おかしいことしたのだ。それに比べれば充分に論理的だ。ならばできるはずだと意思を固め意志を持って実行したのだ。水の異能で脳の処理速度、身体から脳へ脳から身体への伝達速度、臓器関連、骨密度、筋肉の量と質。これ等を順番に確実に強化して成功した。

 後にBランク騎士で水の自然干渉系の《白衣の騎士》という異名を持つ、通称《薬師》と知り合い情報交換や、共同研究などで正確性が増し自他共に調べて異常なしの太鼓判を押す異常な身体になっている。

 

 興奮止まぬ斬り合いの均衡が遂に崩れた。歩太の斬撃が蔵人の身体を傷つけ始めたのだ。それは歩太の剣速が上回っていることを示し、蔵人が追い詰められていることを示している。

 歩太の刃が徐々に深く入っていくが蔵人は焦りを見せず、嗤う。自身の命が危ぶまれているというのに剣速をさらに上げて嗤う。神経は研ぎ澄まされ魂はこれ以上無いくらいに燃え上がらせて嗤う。しかし、届かない。追い付かない。それでも嗤う。

 歩太は斬り合いの中、蔵人の刃を《雲龍》でしっかり受け止め左手に持つ鞘を魔力で強化し強く振るい《大蛇丸》を折った。蔵人は意識が途切れそうになるが宙を舞おうとする刃を掴み両手で斬撃を繰り出しながら吼えた。

 

「ぉぉぉおおおおおおッ!!」

 

 すると《大蛇丸》と折れた刃は姿を変えた。新たな形となった二刀の《大蛇丸》を蔵人は振るい歩太を攻撃するも、体力と血を多く失っているため身体がブれる。歩太は霊装の変化に驚きながらも蔵人の腹に蹴撃を当てて吹き飛ばす。蔵人は倒れず着地し、歩太を見て嗤う。

 

「やっとだ…やっと澄ました顔に当ててやったぜ」

 

 歩太の両頬に薄く斬り傷がある。蹴りを放つ瞬間に斬られたのだ。水の異能で瞬時に治してから思考を高速させる。どうしたもんかと。

 

 こっちは体力、魔力ともに充実している。先程までの斬り合いも魔力による身体強化をしているように見せてその実、肉体の素の力しか使っていない。それも半分の力も出していないので余裕があるのだ。

 事故などで記憶を失った伐刀者の霊装が変わったという事例があることは知っている。

 しかし自身の魂である霊装の形が変わる現象は希なのだ。それが目の前で変化するなどホントびっくりだ。動揺が収まらない内に蹴ったから攻撃喰らってしまったし。反省はしよう。でも致命傷じゃないからセーフだセーフ。

 さて、改めてどのような勝ち方が良いだろうか考えよう。観客も倉敷パイセンも盛り上がっていてボルテージは最高潮なわけで、そんなところに水の異能で押し流すなんてことしたらブーイング待った無し。手合わせなら遠慮無くするのに……

 

 歩太は納刀し居合の構えをとる。蔵人もボロボロの身体を気力で奮い立たせ歩太に刃を向ける。会場にいる全員がこの一撃で全てが決まると理解した。

 両者、同時に踏み出したと思った瞬間には交差した後だった。静まり返った会場に《雲龍》を納刀する音が響き渡り、蔵人は膝から崩れ落ちた。

 

『……決まったぁあああ!!息を詰まらせるほどの接戦をぶち破り三回戦を制し勝ち進んだのは出雲歩太選手ッ!!』

 

 

 

 荒れ果てた道場の中、自身が持ち込んだソファーに寝転がり眠っていた蔵人は目を覚ます。

 あの日。人生の中で一番熱く燃え上がらせた、悔しくも最高の瞬間を夢見たせいで起きたばかりだというのに身体が疼いて仕方ない蔵人は、この前ファミレスで会った剣客を思い出した。

 

 あれは中々の実力者だと。この高ぶりはそこらの雑魚相手では余計に疼いてしまうが、あいつならば満足できそうだと考えがよぎる。今から破軍学園に乗り込んでやろうかと危険な思考を巡らせていると道場の入口が騒がしくなり静まったと思ったらお目当ての存在が現れた。

 

「ハハッ。おいおい、おもしれぇことになってきたな」

「お邪魔するよ」

 

 そこには綾辻絢瀬が連れてきた黒鉄一輝がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日はどうやら良い日になりそうだ。

 

 

 




 眼球痛めてたので極力細かいものを見ないようして癒してました。申し訳ない。
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