空に浮かぶは大きい雲   作:あろえよーぐると

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暇が出来たので久々に投稿。中々、纏まらなくて別の話のアイデア浮かんだりしてました。


代表選抜戦終了(第21話)

 現れた巨人はぶちギレた歩太の伐刀絶技(ノウブルアーツ)によって跡形もなく消滅した。しかも今まで南郷寅次郎や西京寧々との鍛練でしか見せたことがない正真正銘のちゃんと考えて作った絶技を使って。

 

「アユ、タ……?」

 

 ステラは歩太を呆然と見つめていた。

 

 

◆◆◆◆

 

 あの後、巨人を消滅させて少し少し経った頃に東堂 刀華(とうどう とうか)御祓 泡沫(みそぎ うたかた)が救助として山小屋に現れた。事は既に終了しているものの、雨が長時間降り続いたので歩太達が下山出来たのは日が沈み始めてからだった。ステラの熱はもうすっかり良くなり念のため歩太に背負われている。

 大人しく背負われているステラは歩太が巨人を跡形もなく消し飛ばした能力について考えを巡らせていた。何だかんだと二年の付き合いで破軍学園に通ってからはルームメイトで訓練などでも同じ時間を共有していると思っていたがあの伐刀絶技は見たことがないし、純粋な自然干渉系の水使いができる芸当だとは考えられない。

 

 ……つまり、歩太は厳密には水使いではない?では本当の能力とはいったい……

 

 伐刀者としてはライバルは強ければ強いほどに燃える。しかし、乙女としては全く萌えないしスッゴく不満なステラであった。

 

「……私にくらい教えてくれたって良いじゃない

 

 誰にも聞こえない小さな声で呟いた後、歩太に不満を訴えるかのように彼の首に回している腕の力を強めた。

 

「ッ…ちょっとステラ、苦しい」

「フンッ、これくらい何ともないでしょ」

 

 ステラは言うことを聞く気がなく余計に回している腕に力を込めた。

 

「七星剣王のアユタ様ならこれくらい平気でしょ」

「ちょっと待って。いや本気で苦しいからちょっと緩めてさ。てか色々当たってるから違う方向でもヤバい」

「なっ!?何言ってるのよ、この変態!!」

 

 歩太は自身の背中で暴れるステラの耳元に口を近づけて…

 

「      」

「ッッ!?……バカ…」

 

 ステラは顔を真っ赤にして歩太の背中に顔を押し付けた。

 

 さて、今は下山中で歩太達二人だけではない。空気になっているが救助として駆けつけてくれた刀華と泡沫も一緒にいる訳でやや距離が離れていて話の内容は分からずともイチャついてるのは見てれば明らかに分かる。

 

「おいおい、イチャイチャするのは良いけどあまり見せつけられるといい加減、砂糖を口から吐きそうだぜ」

「お二人が仲が良いのは知っていましたがこれはちょっと…」

「「あっ、すみません…」」

 

 二人は素直に謝った。

 

 

◆◆◆◆

 

『ではこれより、任命式を開始する。名前を呼ばれたものは壇上へ上がるように』

 

 理事長の新宮時黒乃がよく通る声で一人一人、代表の名前を読み上げていく。

 

『二年Aランク、出雲歩太』

『一年Aランク、ステラ・ヴァーミリオン』

『三年Bランク、東堂刀華』

『一年Bランク、黒鉄珠雫』

『三年Bランク、貴徳原カナタ』

『一年Fランク、黒鉄一輝』

 

 選ばれた選手達は集まった全校生徒の方を向き、壇上に横並びする。

 

『ここに並ぶ六人を正式に我が破軍学園の七星剣武祭代表と認める!』

 

 

 これより始まるは己の力と誇りをかけた真剣勝負の大会。

 

 しかし、裏で蠢くは怪しい影が一つ…

 

『フフフ、じゃあ破軍のオーダーも固まった訳ですね。《紅蓮の皇女》、《雷切》、《深海の魔女(ローレライ)》…そして《七星剣王》とはずいぶん豪華なメンツですねぇ』

「ええ。破軍学園の最強メンバーが出揃ったって感じよ」

『今回に限って豊作とは運が良いのか悪いのか…』

「どうでもいいわよ」

『冷たいですねぇ。まあいいです。それでそっちの準備は万端ですかね』

「ええ、問題ないわ。計画に支障はなし。──いつでも殺れるわよ」

 

 有栖院は普段、歩太達に見せている親しみやすい顔とは似ても似つかない冷たい表情をしていた。

 

『ともあれ、これで前夜祭の準備は出来たというわけだ』

 

 通話相手は(あざけ)るような笑いを漏らしながら、どこか恍惚とした声音で呟く。

 

『役者は出揃った。みんなはそう思っているでしょう。

 

 だけど、それは間違いだ。まだ『主役』が登場していない。

 

 その存在に誰も気づいていない。だから彼らに教えてあげよう。

 

 今回の七星剣武祭の主役は、ボクたち《(あかつき)》なのだと』

 

 

 舞台は全国へと動き始める。

 

 

◆◆◆◆

 

 7月下旬。梅雨も終わり、青空に白い入道雲が見える季節。

 歩太達は8月半ばから開催される七星剣武祭に向けて巨門学園と合同強化合宿をしていた。

 本来なら各校独自に強化合宿を行うのだが、破軍学園は『奥多摩巨人騒動』があった。あの一件は未だ解決していないので安全性のために毎年使っていた奥多摩の合宿場を使わず他校の合宿場を合同ですることになった。

 

 巨門合宿場の模擬戦用リング。

 

 紅蓮の炎光と黄金の雷光が激しくぶつかり合い、火花を散らす。

 

 紅蓮の炎を纏い、大剣を振るうは

 

 《紅蓮の皇女》ステラ・ヴァーミリオン。

 

 強力無比な剛力と圧倒的な魔力にものを言わせた防御と機動力。攻・守・速とありとあらゆる能力が、才能が、非常に高い次元でバランス良く備わっている。故にAランク騎士。

 

 対するは猛攻を真正面から凌ぎ、降り落ちる剛剣を殺すしなやかな防御。守り一辺倒にならず素早く反撃を繰り出す技の冴えを持ちしは

 

 《雷切》東堂刀華(とうどう とうか)

 

「シッ!!」

 

 刹那を競う剣戟の中、刀華が技を見せる。双方の刃が火花を散らしてかち合った瞬間、生じる衝撃をいなすように手首を捻る。

 刀身を滑らし衝撃を剃らされたためにステラの身体が大きく傾く。

 

「くっ!」

 

 しかしステラも一流の騎士。その程度でバランスを崩すようなことはなくしっかりと身体を地面に縫い付ける。だが、僅かな隙が生じる。それを見逃すほど刀華は甘くない。

 すぐさま固有霊装(デバイス)である《鳴神(なるかみ)》の刃を腰に下げた黒塗りの鞘へと戻す。そしてスタンスを広く取り、鞘に雷の力を流し込む。

 

「《雷切》ッ!」

 

 放たれる一撃がどういうものか彼女は知っている。抜き放てば敵を一撃で斬って落とす刀華の切り札──《雷切》。

 

「受けて立つわッ!」

 

クロスレンジにおいて圧倒的な力を誇るそれをステラは真っ向から立ち向かう。固有霊装《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を振り上げ上段に構える。

 魔力が高まり紅い光が身体を包み──全力で振り下ろす。

 

「新技よ?《暴激竜の逆鱗(タイラントブレイク)》!!」

 

 一切合切を凪払う剛剣は《雷切》を撃ち破り圧し折った。

 

「これで三勝二敗。ようやく勝ち越せたわ」

 

 

◆◆◆◆

 

「だぁーー負けたぁああ!!」

「まだまだ負けてはやれんさ」

 

 歩太とステラは食堂で食事をしていた。怒りと食事量は比例するのかステラは暴食をしている。

 

「やっとトウカ先輩に勝ち越せて調子良かったからそのままアユタに挑んだのに…」

「丁寧に返り討ちしたな」

「もう食べないとやってらんないわっ。デザート貰ってくる!」

「いってら。……アイツ、自分がどれだけの成長スピードで強くなってるのか実感してないんだな…」

 

 ステラは刀華に勝利した後、勢いそのまま珠雫をしごいていた歩太に挑戦状を叩き付けた。のらりくらりと攻撃を避けられ、緩急を繰り返す動きで斬り刻まれ敗北した。しかし、刀華との戦いを経て目が鍛えられ、いつもよりも動きが見えていた。

 

「…絶対、負かしてやるんだからっ」

 

 ステラはデザートを大量に乗せたお盆を持って歩太の元に向かった。

 

 

 

 

 

 




◼️ステラのオリ技
・暴激竜の逆鱗(タイラントブレイク)…上段に構えて力と魔力を貯めて振り下ろすシンプルな脳筋技。

 原作に赤座なんて牛蛙いましたが、今作のイッチーはスキャンダルが見つからず泣く泣くスルー。どこぞの七星剣王がパパラッチ引っ捕らえて暗躍したっぽいとか…
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