伐刀者ランク:A
伐刀絶技:月輪割り断つ天竜の大爪(クサナギ)
二つ名:風の剣帝
ステータス
攻撃力A 防御力A 魔力量A 魔力制御C 身体能力A 運C
相対するは自分と同じAランク騎士。力量がどの程度か不明だが、只者でないのは理解できる。故にステラは
「
────《
両手に持つ《
「フン…」
対して王馬は周囲の気温を跳ね上げる程のステラの本気に犬歯を覗かせた野蛮な笑みを浮かべ、自らの最強の伐刀絶技で応じた。
「こんなつまらぬところで終わってくれるなよ?」
奇しくも構えはステラと同じ。大振りの刀剣を両手に持ち、刃を立て、同じく全霊の魔力を注ぎ込む。
《風の剣帝》黒鉄王馬の能力は自然干渉系──『風』を操る。
その力により生まれた暴風は《龍爪》を中心に竜巻と化し、周囲の大気を喰らう。
圧縮に圧縮を重ね、もはや質量すら有した荒れ狂う暴風の剣を解き放つ。
「《
双方の刀身は50mを超える、規格外の範囲攻撃。ほぼ同時に振り下ろされ衝突した。
瞬間。互いを削り合うように火花を散らし、灼熱の嵐となり周囲に破壊をもたらしながらせめぎ合う。
二人以外、その場にいた全員が、魔力で身を守り身体を丸めて辛うじて踏ん張ることがやっとだった。少しでも気を抜けば、遥か彼方まで吹き飛ばされてしまうため必死に自分の身を守る。
並みの騎士は目を開け目撃することすら叶わない次元の戦いがそこにあった。
◆◆◆◆
学園に続く何もない坂道を氷でサーフボード状の板を作り、滑り下りる珠雫は有栖院を見失わず追いかけていた。
有栖院が連れ去られる瞬間、珠雫は彼の身体に目に見えないほどに薄い魔力の糸を巻き付けた。その糸はあらゆる物質を突き抜け、真っ直ぐ有栖院に伸びている。
途中で信号待ちをしていたバイク乗りが目に入り、これから向かう先に何が待ち受けているのか未知数なので少しでも魔力を残しておくために借りることにした。
《
そこに一輝が現れ珠雫の変わりにバイクに跨がり彼女を背中に乗せて、バイクを走らせ一直線に有栖院が連れ去られた先の暁学園に向かう。
珠雫に従いバイクを走らせ、山道を抜けた更に奥に暁学園はあった。そのままバイクで乗り込んだ瞬間だった。
「ッッッ!?!?」
突然の圧迫感。臓腑を全て押し潰されるような重圧に、一輝はタイヤを滑らせながらバイクを急停車させた。
「お、お兄様!?どうしたんですか!?」
武人として未熟な珠雫には分からなかった。しかし、一輝には理解出来てしまった。
「………」
故に、彼女に言葉を返す余裕がなかった。ただ一輝は総身を凍てつかせるような恐怖を押し殺し、呼吸を落ち着かせながら右手に《
暁学園本校舎屋上に白い輝きがある。夜闇に薄ぼんやりと輝く純白。
まるで
「敵っ!?」
珠雫もその存在に気づき、《宵時雨》を構えるが、彼女には興味を示さず。
白く輝く人影はその美しい双眸は真っ直ぐに一輝だけを見つめていた。
「………」
一輝は決意した。
「珠雫。アリスはこの学園の中だね?」
「え、ぁ、はい。その通りです」
「だったら先に一人で向かっていてくれ。ここは僕一人でいい」
「いえ、コレは向こうから仕掛けてきた戦争です。一対一に拘る必要は──」
「頼む、珠雫。いってくれ」
幾つか言葉を交わし理解した。ここに居られると一輝は珠雫を守りきれないと。あの純白の女は、それほどの敵なのだと。
「……わかりました。お兄様。
兄にその場を託し、一人で暁学園本校舎の中に入る。
「珠雫を素通ししてくれるんですね」
「ええ。中にはヴァレンシュタイン卿もいらっしゃいますので。それにここで二人まとめて倒すのも、貴方を倒してから追いかけるのも、時間としてはあまり変わりませんから」
「でしょうね。貴女にとっては」
一輝は呻くような声で、言葉を
仮にも学園を名乗るからには教師役がいると予想していた。恐らくAランクは間違いないだろうと覚悟していた。それでも一輝の予想を遥かに超えた人物だった。
「剣の道を志す者ならば、貴女の二つ名を知らない者はいません。神聖さすら感じさせる純白の装いに、翼を思わせる一対の剣。強すぎるあまり『捕らえる』ことを放棄された『世界最悪の犯罪者』……」
彼は知っている。
「そして同時に、全ての剣の道の果て。その頂点に立つ『世界最強の剣士』……」
彼女がいったい何者か。
「《
「確かに。《比翼》は私の通り名で間違いありません。しかし、わかりませんね。私の正体を知って尚、何故剣を抜くのですか。剣を交えねば相手と自分の力量差も分からない程度の剣士ではないでしょう。そうでなければ、それほど怯えるはずもない」
「……見透かされないように強がってるつもりだったんですけどね」
確かに怖い。しかし恐怖心に勝る理由がある。ここに留まるわけがある。
「世界最強の剣士ともあろうお方が、剣を抜いた敵に戦意を問うのですか」
一輝は精一杯の空元気で表情に笑みを浮かべ、鴉の濡れ羽色の切っ先を純白の剣士に突きつける。
純白の騎士は静かに頷く。
「確かに。この問答は不要でしたね」
高く聳える校舎から音もなく純白の騎士が地に降り立つ。
「我、
一対の剣にて天地を分かつ者。
我が名は《比翼》のエーデルワイス。
幼き少年よ。世界の広さを知りなさい」
世界最強の剣士、エーデルワイス。彼女と対峙した一輝は、青いオーラの猛りを身に纏う。
「おおおおぉぉっ!」
一分間。それが自分がこの世界最強を相手に戦いうる限界時間だと判断した。そしてそれは正しかった。
風を巻いて攻め込んでくるエーデルワイスの斬撃。彼女の両の剣を振るった瞬間、自らの双眸がその斬撃を見失ったからだ。
「ッ──!?」
慌てて自らの身体を後ろへと飛ばす。その刹那、一輝の鼻先の大気が裂けた。途轍もなく鋭い斬撃だと理解するがあまりにも早く、鋭すぎるが故に肉眼で捕らえることが出来ない。
辛うじて捉え得たのは、規格外の速度で刀身が
一瞬でも気を抜けばそこで首を飛ばされると理解。一輝はこの戦いにおける呼吸を放棄した。文字通り、息を吸う暇なんてないからだ。
エーデルワイスの二刀から繰り出される閃光が如き斬撃の対処に全神経を動員。第七秘剣《雷光》の速さを以て迫る斬撃を迎え撃つ。それだけでなく彼女の視線の動きから斬撃の軌道を逆算し、何とか防ぎきる。
次々と手を考える一輝だが、その全てが通じない。問題なく対処された上で此方を刃が襲う。
額を斬られ血が両目に入るも相手の呼吸、太刀筋、テンポ、足捌きから視界がなくとも敵の二手三手を読める洞察力で対応。視界不良など問題ない。
「やりますね」
さしもの世界最強も『心眼』の域に達しつつある一輝の感性に感嘆の声を漏らす。だが、斬撃の手を緩めはしない。
相手の隙を無理やり作り活路を見つけようとするが、その尽くを正面から向かい撃たれる。
一輝は全身至る所の皮膚が筋肉が裂け、血飛沫が舞う。彼女には触れることすら出来ない。
自らの尺度では測りきれないほどの強さを前に一輝は愕然とする。
「あっ」
不可視の純白の刃が《陰鉄》の刀身ごと一輝を斬り裂いた。身に受けた傷は深くはない。だが魂の結晶である霊装を破壊されたことにより意識と身体が崩れ落ちる。
一輝の身体が地面に崩れ落ちようとしたその刹那。
「ぅ、ぁ……ぁ、ぁ、ぁぁああああっ!!」
「ッ!?」
あろうことか一輝はあらん限りの力を絞り出し、砕かれ宙に舞う《陰鉄》の刀身を掴みエーデルワイスに再度斬りかかった。その刃は軽々と防がれる。
「……まだ続けるのですか?」
彼女は一輝と珠雫を無力化する気でも殺す気はない。だが奥にいるヴァレンシュタインは子供だろうが容赦しない。一輝が粘ればその分、珠雫の危険が高まる。一輝もそれは分かっている。
「貴女を通せば……、珠雫は助けて貰えるかもしれません。でも……、それを珠雫が望まない、アリスは助からない!」
「あの少年は闇の世界の咎人です。その末路も致し方ないこと」
「かもしれません。でも珠雫はそれを望まない。望まないから、ここに来た!そして僕は珠雫の望みに付き合うと約束した!」
だから、
「ここは死んでも譲れない!」
己を兄と慕い支えてくれた。勿体無いくらいに出来の良い妹の、たった一つの望みを叶えるために。
「命を賭けるには、十分過ぎる理由だ……!」
それに命を賭けられなくて、何が兄か!
「僕の
命ある限りここは通さない。強い意志と決意を持って一輝はエーデルワイスの前に立ち塞がった。
多分、次で前夜祭終わります。