空に浮かぶは大きい雲   作:あろえよーぐると

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ステラ・ヴァーミリオンVS黒鉄王馬


前夜祭その5(第26話)

 黒煙を上げる破軍学園。

 その敷地内で繰り広げられる『破軍学園』対『暁学園』の戦い。ステラの《天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサルティオ・サラマンドラ)》と王馬の《月輪割り断つ天龍の大爪(クサナギ)》に声無き悲鳴を上げながら学園内の建物は砕け、或いは熱で溶かせれて悲惨さを増した。

 必殺技のぶつけ合いは互角。ならば地力による決着を。ステラは踏み込みと同時に魔力放出による加速。王馬はそれに悠然と構え待ち受ける。

 Aランク騎士同士の戦いは通常攻撃ですら並の伐刀者(ブレイザー)を簡単に沈めてしまう。二人の戦いが熾烈を極めるほど周囲の被害は甚大なものとなる。二人の周りには誰も居らず、気づけば建物は瓦礫と化していた。

 ステラには、目の前の敵を倒すために他の者達の様子など気にしてる余裕は無かった。

 歩太と一輝は彼女の刃に応対する時、無理に受け止めずに受け流す。もしくは避ける。だが、王馬は正面から堂々と《龍爪(リュウヅメ)》で受け止められる。そして普通の太刀より一回り大きいその野太刀から繰り出される斬撃はステラをもっても安易に受け止めようとするなら剣ごと叩き斬られるほどの力を秘めていた。

 

「フン…こんなものか」

「…なんですって?」

「こんなものかと言っている。出雲歩太と刃を交えておいてこの程度(・・・・)しか己の力を引き出せないとは……。貴様には失望したぞ《紅蓮の皇女》」

 

 表情を動かすこと無く冷徹な声でステラを避難した。その瞳はお前は出雲歩太に並び立つ資格はないと物語っているように見えた。

 

「そんなこと知らないわよ。でも、そうね……。ええ、良いわよ。トコトンやってやろうじゃない」

 

 ステラはその身から炎の鱗粉を撒き散らして怒りを露にする。

 

「我が身に宿(やど)せ──《炎竜の化身(ドラゴンフォース)》ッ!」

 

 ステラの身体全体が赤い光に包まれる。ステラはその状態を維持したまま王馬に近づき剣を振るう。その速度、膂力は先程よりもかなり強化されていた。

 

「多少はやる。だが、────まだ足りん」

 

 しかし、王馬の態度は変わらず。否、口元が僅かにだが横に伸びている。

 

「アタシをっ……舐めるなぁあああああ!!」

 

 最高ランクの騎士同士の戦いは第二局面を迎えた。餓狼の如く、どちらかを喰い殺すかのように激しさを増す。

 斬り合いだというのに、一振り一振りの衝撃が瓦礫を吹き飛ばし、大地を抉る。

 ステラはこれまで一度も王馬に攻撃を当てられないことを悔しく、腹正しく思っている。しかし、切り札を使ってすらまだ彼の身に自分の刃は届かない。どうすればいいか考え、出した結論は……

 

「がぁッ!?くっ────どりゃぁああぁぁっ!!」

 

 《妃竜の息吹(エンブレスドレス)》で最低限の守りはあるからと回避を止めて、攻撃に全振りすることにした。

 例え相手の攻撃を受けようとも最後に自分が立っていれば勝ちだ。そのためには攻撃を当てなくては話が始まらない。

 ステラは相手の刃をその身で受けつつ全力で振った一刀は初めて王馬に回避を取らせた。しかも、完全に避けきれたわけではなく……

 

「……浅くだが、斬られたか」

 

 代償は高くついたがそれでも初めて一太刀浴びせることができた。ここからは我慢比べだ。先に根を上げた方が負ける。ステラはそう息巻く。

 

「────まだ甘い」

 

 王馬は《龍爪》を下ろし、構えを解いた。ステラは己の魂の結晶である《妃竜の罪剣》を気にせず全霊をもって振るう。何度も。何度も。何度も。

 衣服が斬られるだけで傷つかず堪える様子がない。王馬は空いてる手でステラの大剣を平然と掴む。

 

「っ!?」

「多少はマシになるかと付き合ったが期待した程ではないな」

「このおおおっ!離せぇぇえええッ!!」

「出直せ、愚か者」

 

 終幕を迎えるべく振り上げた野太刀の銀閃の軌跡は吸い寄せられるようにステラに向かう。

 

「終わりだ」

 

「いや、間に合った」

 

 火花を迸らせながら王馬の斬撃を《雲龍》で受け止める歩太がいた。左の掌に水を生み出し彼に向けると、レーザーのように何物をも貫く勢いで放たれた。流石の王馬もこれには避けざる負えず、ステラの霊装を掴んだ手を離して距離を取る。

 

「アユタ……?」

「おう、歩太さんです」

「…そう。助けてくれてありがとっ。でもアタシのことは良いから他の皆の所に行って」

「断る」

「何でよっ!」

「今のステラじゃ王馬くんに勝てないから。さっきので分かってるだろ」

「っ!」

「ようやく現れたか、待ちくたびれたぞ。あの時の雪辱、今度こそ晴らさせてもらうッ」

「確か小学生の大会(リトルリーグ)以降、最後に会ったのは中学三年の冬だったっけ?」

「ああ、あの冬のことだ。貴様に勝つために己をさらに鍛え上げ、貴様に傲慢にも授けられた技も修得した」

「だろうね。じゃなきゃステラの剣を手で掴むなんて真似、出来る筈がない。てか、傲慢にもって酷くない?」

 

 ステラを余所に二人の会話は続いていく。その中でステラは気になることが一つあった。

 

「ねえ、アユタ。教えた技ってなんなの?」

 

 歩太が答えようとするがそれより早く王馬が口を開く。

 

「《心刀合錬(しんとうごうれん)》……霊装と身体を一つに通わせることによって己の身体すらも霊装と化す技だ。恩恵は主に2点。本来の身体能力に霊装の頑丈さが加わる。魔力制御が一段階、上のものとなる。……これらの意味を分からんとは言わせぬぞ」

「えっ。そんな技術、今まで聞いたことがないわよ!?」

「俺も奴から初めて聞いた。出雲歩太は伐刀者(ブレイザー)として誰よりも先に進んでいる。片腹なことにな」

 

 ステラはなんだか裏切られたような気持ちになり歩太に尋ねた。

 

「……ねえ、アユタ。何で教えてくれなかったの?」

 

 歩太は言葉を選ぶように静かに応えた。

 

「いつか教えようと思ってたよ。ただ地力で気づく可能性もあったし、そもそもステラにはまだ早かったから」

「そう……。つまり教える気はあったのよね」

「それは勿論」

「そっかぁ…。今まで何で歩太に勝てないのか分かったわ。武芸者としてだけじゃなく、伐刀者としても技術が上だったからなのね」

 

 いつも歩太に勝てない理由の一端が見えたことで安堵とともに笑顔を見せた。

 

「いや、フェアじゃないから今まで正式な試合とかで使ってないぞ?」

「えっ」

「王馬くんとは野良試合だったことと〝愚弟と同じく詐欺紛いの技ばかり使うペテン師めっ!〟って言われたからイラっとして、つい」

「いやもう、そこは〝そうだ〟と頷いておきなさいよ!」

「それが無かったら勝てないって思われるじゃん?普通に嫌だ」

「アユタも大概負けず嫌いねッ!?」

 

 ステラはもう王馬に負けた陰鬱な気持ちは吹き飛び、元通りになる。

 

「というわけでバトンタッチだ」

「ええ……。悔しいけど今のアタシじゃアイツに勝てないからここは任せるわ」

「他のメンバーの応援に行ってもらっていいか」

「わかったわ。負けたら承知しないんだからねッ!」

 

 そう言ってステラはこの場から離れていった。

 

「待たせたかな、王馬くん」

「かまわん。それとその舐め腐った呼び方は辞めろ。虫酸が走る」

「王馬くんが見解を改めたら辞めるよ、この脳筋」

「……」

「……」

 

 互いに霊装を構えて魔力を練り上げる。

 

「死ねっ」

「やってみ」

 

 二人は同時に斬り込んだ。

 

 

 

 




史上最強の弟子ケンイチより、心刃合錬斬(しんとごうれんざん)をちょっろとだけ変えて出しました。

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