王馬は《
奇しくもそれはステラが初手で己の必殺たる絶技を解き放ったように。王馬もまた、自身の必殺である絶技を至近距離でお見舞いする。
「《
その威力、ステラとの時とは比べ物にならない力を秘めていた。しかし相手は王馬が
王馬は
「《
荒れ狂う竜巻は、研ぎ澄まされた風の一太刀によって王馬ごと斬り裂かれた。深くもないが浅くもない傷が彼に刻まれる。手を当て自身が血を流しているの確めると傷の痛みか、身体をふらつかせてやや後退する。
「……うことだ?」
……水使いでは無かったのか?しかし今の攻撃は間違いなく王馬にとって間違えようのない、自身と同じ『風』の力。
王馬は傷の痛みではなく、予想外の出来事に動揺して思わず後ろに下がったのだ。そんな王馬に歩太は答える。
「俺の能力は自然干渉系なのは間違いないけど、一度も自分を『水』使いなんて言ったことはない」
「な、ならばなんだというのだ!?」
「今時は珍しい複合能力……自然干渉系『嵐』。水と風、そして雷を司る能力だ」
歩太の《雲龍》から雷が迸る。まるで歩太の感情に呼応するかのように音を鳴らせながら青白い光が強くなっていく。
「言っても否定されるだろうけど、今まで別に手加減してた訳じゃない。ただ、水の精密操作が一番の訓練になるからと使い続けてたらそれだけで勝ち続けて……今や七星剣王さ」
「何故、今使った?」
「来年の七星剣武祭には出る気が無いから。だから折角なんで今年は本当の能力を見せようかと」
刀身から漏れ出る蒼雷はスパークして今にも爆発しそうだ。
「あと、今回のことは流石にちょっと許せなくて憂さ晴らしも兼ねてる。だから喰らっとけ」
奥多摩に現れた岩の巨人を消し飛ばして以来、人前では決して使わなかった。
《断空牙》と同じ。出雲歩太が持つ、本当の
「《
「ちょっと待ちな、歩太」
「姉弟子…?」
雷龍の牙を王馬が受ける直前に、破軍学園臨時教師で歩太と同門の
「ウチもクソガキどもにお灸を吸えたい所なんだけどね。ややこしい事情があるみてーなんだ。だから、ここはウチの顔に免じて引いちゃくれーねーか」
「これでもけっこうキレてんだけど?」
「事情さえ消えりゃあ、その後でボコってもイイから、な?」
「……わかった」
「おう、ありがとよ。王馬ちゃんもそれで良いな?」
「………ああ」
歩太と寧音は王馬に背を向けて去っていく。そして、その場に立ち尽くし何かを考える王馬の表情には怒りが満ちていた。
「……っ」
怒りの理由は歩太に対してなのか。自分に対してなのか。ただ彼の手は、拳を握り血を流していた。
◆◆◆◆
暁学園による破軍学園襲撃事件は、全国に大ニュースとして報道された。この未曾有の蛮行を行った彼らのテロリスト行為に対して厳罰に処され、当然七星剣武祭にも出られないものだと誰もが確信していた。
だが、暁学園の『理事長』を名乗る人物。
彼は現職の内閣総理大臣、この日本の最高責任者だ。彼は清々しい笑顔でこんなことを言った。
「素晴らしいだろう。ビックリしただろう。連盟所属の学園など相手にならない。これが連盟の犬である七星に代わり、日本の未来を担う『国立・暁学園』の強さだ!」
様々な思惑が交差して、暁学園は七星剣武祭の『第八校目』の勢力として正式にエントリーされることとなったのだ。
◆◇◆◇
「すまん」
破軍学園襲撃事件のその後の顛末を語り、理事長の新宮寺黒乃は自らの無力を一輝と珠雫の二人に詫びた。
あの夜、一輝は《比翼》のエーデルワイスと。珠雫は暁学園の教師役をしていた
一輝は全霊をもって己の全てをぶつけるも敵わず、奇跡的に彼女の頬に一太刀を薄く浴びせることしか出来ず意識を失う。
珠雫は『摩擦』を自由に扱う能力を持つ相手に苦戦を強いられた。片腕を斬り落とされ、最後には身体を横に斬られて真っ二つになるも、自身の身体を気体化させて状態を元に戻すという荒業を披露。空間内を自身の水で支配し相手の肺に直接水を生成し爆発させて勝利を収めた。
「そんな、理事長が謝るようなことじゃありませんよ」
「ええ。ですが驚きですね。まさか裏にいたのがこの国そのものだったなんて」
「火種はあったんだ。それこそ第二次世界大戦後からずっとな。今回のような事件がいずれ起こるのは必然だったのかもしれんな」
珠雫の呟きに黒乃が今回の背景について説明した。
「ようするに月影総理の目論見は七星剣武祭という連盟が自らの成果を示すべき場で、彼らの成果を正面から否定して連盟から伐刀者教育の権限を取り上げようということですか」
「それはまだマシな方の予想だな。最悪、連盟との関係そのものを完全に断ち切ることが目的かもしれない」
相当イライラしているのか、理事長室の執務机の灰皿には大量の煙草の残骸が突き刺さっていた。
「ともかく暁学園の七星剣武祭出場はもう正式に決定されたものとなってしまった。彼らはほぼ全員、裏社会の精鋭だ。今年の七星剣武祭は例年のものとはまったくの別物だと言っても過言ではないだろう。そこで私達教師としては、改めて代表生の生徒達に参加不参加の意志を聞くべきだと思ってな。こうして足を運んで貰ったというわけだ」
一輝達はそこで自分達が理事長室に呼び出された理由を理解する。
「すでに貴徳原は出場を辞退している。そして東堂はまだ意識が戻らなく、このままだと出場は難しいだろう。お前達はどうする?」
「僕は七星剣武祭に参加します」
「いいのか?」
「はい。そもそも僕にはそこまで今年の七星剣武祭が例年と別物とは思えません。表の世界の騎士達だけで行ってきた祭典に裏の世界の実力者が乗り込んできた。それだけのこと。
むしろ日本で一番強い学生騎士を決めるのが七星剣武祭の趣旨なのですから、今年の七星剣武祭こそ本当の七星剣武祭の姿とすら言えるかもしれません」
一輝は瞳に確かな覚悟を宿し言う。
「望む所です。月影総理達が何を考えていようが、僕達学生騎士には知ったことじゃない。いつも通り正々堂々戦い、歩太とステラとの約束の場所を目指すだけです」
「もちろん、私も参加します」
「お前達の意志はわかった。出場の方向で調整させてもらう」
「「ありがとうございます」」
兄妹で礼を述べてから、気になったことを尋ねた。
「それで、理事長。歩太とステラは出場するんでしょうか?」
「今朝尋ねたら二人とも二つ返事だった。特にヴァーミリオンなんか『ここまでコケにされてオメオメ引き下がれるもんですか』と息巻いていたぞ」
七星剣武祭を前に波瀾の出だしで始まった。だが、一輝、珠雫。そしてここには居ないが歩太とステラもまた参加を決意して今回の大会に挑むのだった。
これにて前夜祭は終了です。次回は一話挟んでから七星剣武祭が始まる予定です。