空に浮かぶは大きい雲   作:あろえよーぐると

7 / 27
 理事長室の扉の前でばったり会った一輝と歩太の会話。

「あれ、一輝も理事長室に用があんの?」
「うん。ちょっと部屋割の件について聞きたいことがあってね」
「生徒会長と一緒だけどもしかして…」
「部屋が同じだったんだ」
「ラッキースケベでもした?」
「えっ」
「俺はラッキースケベされた」
「えっ!?」




破軍学園の事情(第7話)

理事長室には現在4人の生徒が訪れている。寮の部屋割に問題があったからだ。破軍学園理事長、新宮寺 黒乃(しんぐうじ くろの)は各々の意見を聞いている。彼女は以前からここの理事長をしていた訳ではない。前理事長(狸じじい)の不祥事が表沙汰になったからだ。前理事長は長らく破軍学園から七星剣舞祭(しちせいけんぶさい)で優勝者を出していなかったことが原因で退任させられる予定だった。

 しかしAランク騎士、出雲 歩太(いずも あゆた)を学園に迎え優勝したことによってその話がなくなり彼を救った。しかし彼はここにいない。

 

 

 

 歩太(イジメ撲滅マン)が原因だ。

 

 

 

 彼は一輝に話を詳しく聞き、優勝したことによってできたコネを使い教育委員会を動かした。本来であればそれくらいなら理事長自身の力で如何様にもできた。しかし、歩太が一番最初に話を持っていった相手が悪かったのだ。

 

 

 

 現総理大臣(元・教師)である。

 

 

 

 教師という仕事に誇りと責任を持っていたし、生徒も大事にしていた彼がそんな話を聞けば血が騒がないわけがない。総理になった今でも昔の教え子と交流があるグレートティーチャーだ。話はトントン拍子で進みあの狸じじいはクビになった。ざまぁみろ。

 

 そして新たに任されたのが元騎士である現理事長(元世界ランキング3位)だ。彼女は元々ここの生徒であり今では子を持つ母親だ。母校の教師が腐ってるのも許せないが子供である生徒をよってたかって大の大人がイジメに加担するなど万死に値すると言わんばかりに着任早々、狸じじいに味方したクズや仕事が適当なカスな教師どもの首を次々と切っていった。

 

 

 

「確かに去年までルームメイトは同性同士だったが今年からは違う」

 

 

 

 黒乃が理事長を主任してきてから学園の体制はガラリと変わった。中でも一番大きいのが完全な実力主義。徹底した実戦主義だ。伐刀者(ブレイザー)の強さに男女差などない。単純に強いか弱いかである。ならば男女関係無く、力の強いもの同士が同じ空間にいればお互いを意識して切磋琢磨と競う環境を意図的に作り出し誘発するのが目的だ。

 

 

 

「ということだ。納得したか?」

「納得できるわけないでしょうッ!?」

 

 四人の内の一人であるステラ・ヴァーミリオンは理事長室にある机を強く叩いて抗議を続ける。

 

「だ、だいたいアタシ達みたいな年代の男女が一緒の部屋で生活するなんて…ひ、非常識だわ!間違いが起こったらどうするんですか!」

「おやおや。ヴァーミリオンは年頃の男女が一緒にいるとどんな間違いが起こると思っているのかな?是非聞かせて欲しいな~」

「そ、それは…その、ぅぅ……トーカさんもなんか言ってよっ!」

「えッ!?そげなことふられてもこまるばいッ!?」

 

 顔を赤くしながら破軍学園、生徒会長東堂 刀華(とうどう とうか)は声を荒らげた。

 

「なんだ、二人して顔を赤く染めてムッツリなのか?なんなら東堂からでもいいんだぞ~」

 

 この女、実にイキイキとしている。雲行きが怪しくなってきたため出雲 歩太(いずも あゆた)黒鉄 一輝(くろがね いっき)の両名が口を開く。

 

「理事長、それセクハラっす」

 

「なに泥酔(でいすい)したオッサンみたいな絡み方してるんですか」

 

 黒乃は冗談だと言って薄く笑った。

 

「ともかくこれは決定事項だ。君たち以外にも男女でペアになってもらう者はいる。その全員に便宜を図っていては本末転倒もいいところだ。それにヴァーミリオン、君も皇女だからといって特別待遇は無しだ。気に入らないというなら、退学にしてくれても結構だぞ?」

「………」

 

 黙り込んだステラを見て黒乃は彼女に近づき耳元でささやく。

 

「ちなみに出雲は料理が旨かったぞ?」

「仕方ないですね。それが学園の方針なら従います」

「よし、話はまとまったな。これにて解散だな」

 

 ステラとて別に知り合いである歩太と一緒に暮らすのが嫌ではない。ただ色々と覚悟決めてこの学園に入って早々のハプニングにパニクっただけなのだ。断じて淫らな妄想をして興奮したわけではなし、皇女としての倫理観的にごく普通の抗議をしただけなのだ。別に食べ物で釣られたわけではない。学園の方針に仕方なく、そう仕方なく従うだけなのだ。SUSHIやテンプラ、スキヤキを前に屈したわけではない。

 

「ステラさん。いま涎を拭いましたけど、どうしたんでしょう?」

「腹減ってんじゃないですか?朝バタバタして俺も食べてませんし」

「なら皆で食事に行こうか」

「じゃあアタシッ、回るお寿司が食べたい!」

 

 

 




「ラッキースケベって女子でも起こすんだな。少女マンガとかでよくある展開なわけ?」

「知らないわよッ!私にあんなもの見せておいてその態度はどうなのよっ。反省しなさいよッ!」

「ガン見してたヤツが言って良い言葉じゃないかなぁ」

「いいから私に謝りなさいよ、今なら五分の四殺しで済ましてあげるからッ」

「えっ。誰が誰を?はははっ、ご冗談を」

「ぶっ殺スッ!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。