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それは突然のことだった。
「──なっ!」
宿の部屋でいつでもフェジテを出ていくことができるように支度をしていた春虎は、街中で感じるはずがない霊気を捉えた。
竜気
超越生物である竜だけが発することができる陰の気だ、そんなものを纏っている存在が危険でない筈がない。
「落ち着け、北斗」
隠形したままの北斗も感じ取ったのか、身をよじらせて興味を示す。相手に万が一でも悟られたくなかった春虎は北斗をやんわりと諫めた。
竜気を纏った何者かは移動し続けている。その進む先にあるものは──魔術学院。
まだ相手に敵意があると決まったわけではない。しかし春虎の頭の中で警鐘がガンガンと鳴っている。そして最悪なことに、この手の直感が外れたことはないのだ。
すぐさま鴉羽織を纏い、ありったけの呪符を手に春虎は部屋の窓から飛び出した。
鴉羽織をはためかせ商店街の空を飛んでいくと、すでに魔術戦が行われた痕跡を視えた。警戒しながら近くに降り立つと、そこには全裸にひん剥かれボコボコにされた男が気絶した状態で縛られて転がっていた。股間には男には不名誉な張り紙が貼られている。
春虎の中でシリアスな空気が崩れていきそうになるのを必死に食い止めて、男を観察する。
「……またおまえらかよ……!」
身体に彫られた蛇が短剣にからみついたような入れ墨を見て思わず呻くように言う。間違いなく『天の智慧研究会』のものだった。
この男が竜気を纏った者とどういった接点があるかはわからない。しかし戦闘があった場所は魔術学院から近い場所にある。無関係とは思えない。
春虎は再度飛翔する。縛られていた男には万が一目を覚まし暴れられても面倒なので、最近作ったオリジナルの呪術をかけて放置しておいた。
途中でグレンが走っている姿を空の上から見かけた。消耗の度合いや魔力の質から見て、戦闘があった場所に残されていた魔力の痕跡は彼のものだろう。
いっそのこと事情を話して協力してもらおうかと思ったが、上手いこと説得して力を貸してもらえるイメージが湧かない。結局そのまま追い抜いて先へ行く。
自身の見鬼が魔術学院を捉えた時、春虎はその異変に気付き思わず息をのんだ。
学院に張られていた結界が昨日までに比べて明らかにおかしい。学院の敷地内を見鬼で視ることはできず、学院内の式神を操作することもできない。たった一夜でここまで変えてしまえる人物に感動すら覚える。春虎でもこの結界に侵入するには、間違いなく数時間はかかるだろう。
学院の正門近くで追っていた相手を発見した。地上に降りると隠形の効力を上げて気づかれないようにして、近くまで忍び寄って二人の男の姿を確認した。
一人はチンピラのような男、もう一人はアタッシュケースを持ちコートに身を包んだ男だ。最初に感じた竜気は後者の男が纏っている。戦闘になれば春虎も切り札を何枚か切らなければいけないかもしれない。
いや、よく見るともう一人いた。二人の男の傍に誰かが倒れている。
「──っ!」
その倒れている男からはまだ霊気を感じることはできたが、それはあくまで残留霊体にすぎない。時間が経てば消えてしまうだろう。
最悪だった。守衛の男が一人死んでいた。いや、正確には殺されていたのだ。
余計なことをせず、真っ直ぐにこちらに向かっていれば、犠牲者を出さずに済んだのにもかかわらず。
チンピラのような男が一枚の符を取り出して呪文を唱えると、二人は死体など意に介さず結界の中へと入っていく。
二人の姿が完全に見えなくなると、春虎は姿を現して死体の下に駆け寄った。
「……ごめんなさい。おれが遅かったせいで」
手を合わせ冥福を祈ると、春虎は自分の侵入を阻む結界の解除に取り掛かった。
相手は簡単に人を殺せる連中だ。この学院にどんな用があって来たのかは知らないが、ロクでもないことに違いない。
一瞬だが二人が持っていた符を視ることができた。わずかに視えた符の術式から解除コードを構築し、結界を破壊する。時間はかかるが春虎にはそれができる。
見鬼で視える結界を構成する術式に介入し、呪力で力ずくでこじ開けた。結界の破壊と並列に、わずかにできた歪みから呪力を流し込み、学院にある式神を起動させ学院の偵察を実行する。
視覚と聴覚だけを共有した式神は、先に学院に侵入した二人を追って飛んでいく。
結界の影響で精度の悪くなった見鬼で学院内を見て回ると、本来ならある筈がない呪力の反応を視つけた。
その呪力は、彼女たちにお守りと称して渡した呪符にこめられたもの。
「今日は休日だろ!なんでお前たちがここにいるんだよっ!」
この10日間、彼女たちがお守りを肌身離さず持ち歩いていたことを春虎は知っている。
すなわち、システィーナとルミアが今この学院にいるということだ。
春虎は知らないが、システィーナたちのクラスは前任の講師が失踪したことで授業が遅れているため、その穴埋めのために学院に来ていた。
式神に呪符がある場所に向かわせると、グレンが担任のクラスの者たちが二人の男に脅されているのが見えた。その内容を聞いてみると、彼らの要求はルミアの身柄らしい。知っている名前が思わぬところから上がったことで春虎も驚愕する。
男の一人がルミアを教室から別の場所に連れていく。現状簡易式しか操作できない春虎には助けることができない。
相手の目的が何か見えないまま事態は悪化していく。
「クソッ、つーか頑丈すぎんだよこの結界!」
見ていることしかできない春虎は、その苛立ちを結界にぶつける。
作業を始めて数分経つがいまだ結界は破壊出来ていない。本来陰陽師にとって呪術は、術式が視えている以上知識があれば対処することができるものだ。これは魔術師にはない利点なのだが、この結界の厄介な点は常に結界に魔力が供給されていること。ただでさえ複雑な術式の解除に手間取っているのにもかかわらず、供給された魔力のせいで解除したところも片っ端から修復されていく。
いっそのこと、リスク度外視で北斗で結界を壊そうかと考えだす春虎。その時春虎の見鬼に後ろからやってきたグレンの魔力が引っかかる。
このまま顔を合わせようかと思ったが、グレンの持つ魔力を視て身を隠す。
息を切らして正門にやってきたグレンは、逡巡の後にポケットから符を取り出し呪文を唱える。
ガラスが砕けるような音を立てて結界は壊れた。
そのままグレンは校舎の方へ走っていく。その後ろを春虎も隠形したまま結界の中へ入る。次の瞬間には結界は再構築されていた。
「……おれの努力は何だったんだよ」
あっけない結末に春虎から愚痴がこぼれる。
だがそんなことも言っていられない。本来首を突っ込まなくてもいいのに、こうして事態の中心まで来てしまったのだ。もうこれ以上誰も犠牲にはできない。
ただ問題なのは、春虎もまた追われる立場にあるということだ。これまで姿を隠してきたのはその為だ。この事件はいずれ帝国の師団も関わってくるだろう。しかも相手は『天の智慧研究会』だ。自身の存在が露見すればますます活動の幅は狭くなるだろう。
しかし四の五の言っている場合ではないのだ。これまでさんざん理由を付けて逃げてきたが、そろそろ本気で向き合わなければならない。
「頼むから、協力してくれよ?」
春虎は、学院に隠していたもう一体の簡易式を起動させた。
☆ ★ ☆
自分の通っている学校にテロリストがやってくる。そんな思春期拗らせた妄想をしたことはないだろうか?
現実で本当に起きているんじゃねえよ、とグレンは心の中で絶叫する。
今朝寝坊したせいで授業に遅刻しそうになっていたグレンは、道中でからんできた『天の智慧研究会』を殴り飛ばし、武装解除という名目で服をひん剥いた後に学院へと走った。
全裸にした男から出てきたいかにも重要そうな符は貰っていくと、なんとそれは学院を乗っ取ったテロリストの下へ行くために必要なアイテムだった。
「いったい俺が何したっていうんだよ畜生!」
学院の中に入ったグレンは生徒たちのいる本館へと走りながら叫んだ。
相手の目的が何なのかはわからない以上、ひとまず生徒を避難させようと思った。
その時だった。
『グレン=レーダス、聞こえているか!?』
「うおッッ!?」
自身の耳のすぐそばで男の声がして思わずのけ反る。
横を見ると白い小鳥がグレンの隣を飛んでいた。
「な、お、おま、使い魔!?」
『頼む、グレン=レーダス!おれと協力してほしい!このままだとお前の生徒が危険だ!』
突然現れた存在にいきなり協力を求められ戸惑うグレン。しかし話の中に生徒のことが出てきたことですぐに冷静になる。
小鳥と向かい合って右手は切り札に手を伸ばし、左手は相手に向け魔術を打てるというアピールをする。
「おい、テメエはどこの誰で、何が目的でここにいる!?」
『……信用できないのは分かっている。でも今は足を止めないで聞いてほしい』
「これだけ聞いて一言目がそれの時点で、怪しい奴だって言ってるモンなんだよ!」
帝国に属する者ならもっと大勢で来ている筈だ。つまり相手も学院にとっての招かれざる客、下手すればテロリスト共の罠だという可能性もありえる。
『……っ!悪いが今は顔を出せない。事情は後で話す!だから今はっ!』
「だからテメエの話なんて……」
『アイツらはルミア=ティンジェルが狙いなんだよ!』
「はぁ!?なんでアイツが……!」
『事態はもう最悪なんだ!裏切ったりしない、だから頼む!あんたの力を貸してくれ!』
小鳥から聞こえる声は切羽詰まっている。どうやら本気で助けたいと思っているらしい。
「──だあああぁぁぁッ!!!俺は何処に行けばいい!?」
『助かる!まずは2年2組の教室だ!』
その言葉を聞くとグレンは再び走り出す。
ここに二人の利害が一致した。
グレンの前方を飛びながら、小鳥は自身の持つ情報を伝えていく。
『侵入した敵は二人、一人はチンピラみたいな奴でジンと呼ばれていた。実力もたいしたことはない。もう一人の方はレイク、こいつはかなり強い』
「他にはッ!」
『レイクはルミア=ティンジェルを拘束して移動中、もう一人の方は……ってマズッ!』
「どうしたッ!?」
小鳥から焦る声が聞こえてきてグレンも怒鳴るように尋ねる。
『ジンがフィーベルを連れて教室から移動してる!先にそっちを叩くぞ!』
「クソッ、なんで白猫なんだよッ!」
悪態をつきながらもグレンは走る速度を上げる。
グレンの魔力容量は決して多くはない。こんなところで身体強化に魔力を回す余裕はない。
息を切らしながらもグレンは本館にたどり着いた。
「で、白猫は今どこにむかっている!?」
『ちょっと待ってくれ、ここは……、魔術実験室だ!』
「トラップはなんかあるか!」
『……確認した。ここには何もない』
小鳥の返事を聞くと、グレンは息を整えながら校舎の中へ足を踏み入れる。
普段の学院では考えられないほど辺りは静まり返っていた。
足音を立てて奇襲をかけられないよう気配を殺してグレンは進む。
しかし小鳥からはボリュームの落ちた切羽詰まっている声が聞こえてきた。
『最悪だ、フィーベルが男に……っ!』
「だいたい分かった。間に合うか?」
かつての経験からそういうことが起きるかもしれない可能性は想像していた。それでも自分の知る少女が手籠めにされかけているという事態に思わず拳に力が入る。
小鳥の方からはいつだって事前に警告が飛んできた。故にシスティーナはまだ無事だという確信を持って尋ねる。
『まだ大丈夫だ。すまない、こっちは監視の目をつぶしていて手が離せない。それまでは持ち堪えてくれ……!』
小鳥の奥の相手が表舞台に出てくるにはまだ時間がかかるらしい。そもそも信用しきれていない相手に生徒の身を任せるつもりはないのだが。
早歩きで廊下を行くと、ついに二人のいる教室が見えて来た。
中から男の下卑た声と、少女の涙混じりの声が聞こえてくる。
「なあ、襲われそうな女の子の体も心も助けられる方法を知っているか?」
小鳥にそう尋ねるが、答えを聞かずにグレンは教室の扉に手をかける。
こうするのさ、と呟いて、思いっきり扉を開いた。
扉の先には悲鳴をあげる少女に覆いかぶさる男という光景。はっきり言って事案である。
全員の視線が自分に集まっているのを確認すると、グレンはあえて気まずそうな顔を作り、「お邪魔しました」と言って扉を閉めようとする。
「逃げるな閉めるな助けなさいよ──!!!」
自分が襲われそうだというのに、少女は思いのほかキレのあるツッコミを自身の担当講師に叩き込む。
グレンはほんの一瞬で、シリアスな空気を消し去り元の日常の空気に戻してみせたのだ。
☆ ★ ☆
そこから先はあっという間だった。
グレンの繰り出す怒涛のボケに混乱させられる二人。ジンの方は我に返り攻撃を仕掛けようとするが、グレンの策に嵌り一方的にボコボコにされ気絶。システィーナも思わず同情するような有様だった。
その一連の流れをグレンの道案内をしていた式神から見ていた春虎は舌を巻く。
グレンの固有魔術【愚者の世界】
これによってジンは魔術を封殺されていたが、魔術が使えなくなっただけで魔術そのものを打ち消していたわけではない。もしそうなら近くにいた春虎の式神も無効化されている筈だからだ。
ならば考えられるのは魔術の起動の阻止。春虎の見鬼にはジンの肉体で魔力が精製されているのが視えていたので、術式に魔力が流れることを阻害するというのが正しいだろう。
グレンの愚者のタロットカードのように魔術にも媒介となる道具があれば、呪文を唱えなくても効力を発揮出来るものがあるということがわかったのはひとつの発見である。
(それにしても……)
気絶したジンの服を剥いで縄で縛り、体にイタズラしているグレンを見ながら春虎は考える。
グレンの実力は春虎にとって間違いなく脅威になるものだ。
学院に潜入する前にみせた観察力、卓越した格闘能力、特定範囲の魔術の起動を封殺することで魔術を多く行使出来ないという欠点を補える固有魔術、ひとつだけならともかく全て備えているグレンは、敵対すれば春虎にとってセリカ=アルフォネアより恐ろしい相手である。
東京には数多の陰陽師がいるが、呪術で自身の肉体を強化して戦う相手はまずいなかった。陰陽師の戦い方は呪術の打ち合いが基本、接近されても問題ないように護法式を用意するのが定石だ。直接戦っているのは刀を振り回している『神通剣』の小暮や『鬼喰い』の鏡、あとは鬼の生成りであるケンカの得意な冬児くらいである。
もしグレンと戦うとして、呪術を封じられてしまえば春虎は簡単に制圧されるだろう。ケンカ慣れしているとはいえ相手は軍隊格闘術を修めた相手だ、太刀打ち出来る筈がない。
春虎にとってグレンは、初めて現れた天敵だった。
「さーて小鳥野郎、そろそろテメエについて聞かせて貰おうか」
ジンへの制裁に気が済んだらしく、どことなく満足気な顔をしたグレンが小鳥の式神に問いかける。グレンの発言で拘束を解かれたシスティーナも存在に気が付いたのか、警戒して小鳥の式神から距離をとる。
『小鳥野郎ってお前……、まあ何も明かしてないからしょうがないけど』
「嫌だったらさっさと正体表せ。ついでにテロリスト共の情報も寄越せ」
ここまで来てしまったのだ。ある程度は自分の素性を出さないとこれからの信頼関係に不具合が出る。
『話してもいいけど、おれの存在についてはここだけの話にしてくれよ?』
「嫌だ、って言ったら?」
『おれのことに関する記憶をすべて消す』
「──っ!、……おっかねえなオイ。わかった、お前もいいな白猫」
「へ!?は、はい、わかりました」
突然話を振られたシスティーナも慌てて返事をした。
その場にいる全員が同意したことを確認して、春虎は話し始める。
『おれは──」
その時突然金属音が鳴り響き、春虎は出鼻をくじかれた。
「あー、悪い、セリカからの連絡だ」
『タイミング悪いなぁ。……わかっているな?』
「言わねえから安心しろって」
グレンは頷いて、ポケットから半欠けの宝石を取り出しセリカと交信を始める。
その間に春虎は小鳥を操作してシスティーナの傍まで飛ばし、コミュニケーションを取ろうと試みる。
『あー、フィーベルさん、でいいんだよね?』
「は、はいッ!その……、助けて頂きありがとうございます」
『君を助けたのはそこのグレン先生であっておれじゃないよ。すぐに助けてあげれなくてごめん』
「あ、いえ、そんなお気になさらくても……」
どことなくぎこちない会話を繰り返す二人。
その時春虎は床に見覚えのある物が落ちているのを発見した。
嘴でつまんでシスティーナの下に持っていく。
『これって君のじゃない?』
「え、あっ、ありがとうございます!」
彼女の手に落としたのは春虎が渡したお守り。システィーナがここまで連れてこられた時に、場所を探知するのに使っていたものでもある。どうやらジンに拘束されていた時に落としていたらしい。
システィーナも見つかったことに喜んでいる。
『いつも身に着けているの?』
「はい、これは友達と一緒にお揃いで買ったものなんです。それに、大事にしないとまた変なことになりそうで……」
『変なこと?』
システィーナは頷くと、小鳥に顔を近づけ声を潜めて話し始める。
「実は一度、このお守りに八つ当たりしたことがあるんです。そしたら次の日にはお守りの厚さが半分になっていて……。それ以来、大事に持ち歩くようにしているんです」
『へ、へぇー、ソウナンダ……』
厚さが薄くなった原因とこうして話をしていて、もっと言えばこの小鳥の式神の式符は彼女のお守り袋に入っていたものだったりするのだが、残念なことに彼女は気づかない。
次があるなら怖がらせないようにしようと誓う春虎だった。
「話はもういいか?」
グレンの方もセリカと話は終えたらしく春虎たちの下へやってくる。
「セリカとの話ついでに状況整理もするぞ」
そう述べるとグレンは簡潔に話し始める。
「いいか、学院にやってきたテロリストは3人。一人は学院の外で倒して、もう一人はそこに伸びてるわけだが、最後の一人がルミアを捕まえている。間違いないな?」
「はい、その男がルミアを連れて一番最初に教室から出ていきました」
「よし。次に人質になっているのが俺のクラスの奴ら50人くらい。勝手に動いたりしていると思うか?」
「それはないと思います。最初に私たちと相手の実力差を見せつけられていますから……」
「その判断で合っている。下手に動いて殺されるよりはマシだ」
さて次に、と一呼吸をおいて再度グレンは話し出す。
「救助や増援が来るかっていう話なんだが、残念ながら来ない」
「そんなッ!?どうしてですか!?」
「この学院にある転移方陣は他の重要な場所と繋がっているからな。この学院が占拠された時点で攻め入られないようにしている。外から入ろうにも結界が固すぎてまず来れない」
『あー、すまない。転移方陣ってなんだ?』
「んー、そうだな……。要は距離が離れているA地点とB地点を一瞬で移動できる装置のことだ」
興味深い話が聞けた春虎は、そのことを頭の隅に刻み付ける。
「セリカにも言われたんだが、一番安全なのはこのまま何処かに隠れていることだ」
「えっ……、そ、それじゃあルミアは、ルミアはどうするんですかッ!?」
「わかっているから、とりあえず落ち着けって」
友の心配をするシスティーナに、グレンも手を前に出して制止のポーズをとる。
「で、ここからが相談なんだが。小鳥野郎、ウチの生徒を助ける気はまだあるか?」
『あぁ、もちろんだ』
グレンの質問に春虎は即答する。
「らしいぜ?こいつもいるなら、これでルミアを助けにいけそうだ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
泣いて喜ぶシスティーナを、グレンは眩しいものを見るかのように見つめる。
「そういえば、お前はいつになったらこっちに顔を出すんだ?」
気を取り直して、グレンは春虎との共闘を前提に作戦を練り始める。
『実を言うと学院のセキュリティが結構厄介で……。おれの痕跡が残らないように破壊工作しているんだがもう少しかかりそうだ』
「えっ、破壊工作って……、アナタ何やってるんですか!?」
「あー、言い忘れていたが白猫。こいつは今は俺たちに協力しているが、どっちかというと正体は犯罪者側だぞ」
「ウソでしょ!?」
ははは、と小鳥から笑い声が聞こえてくるのに対して、システィーナは裏切られたような顔をしている。完全に良い人だと思っていたらしい。
まあとにかくだ、とグレンが強引に話をまとめにかかる。
「まずはルミアを助けるためにも最後の一人を制圧、無理そうなら暗殺する。わかったな白猫、小鳥野郎」
暗殺という物騒な言葉にシスティーナは身を震わせ、春虎は覚悟を決める。
『わかった、基本はこういうのが得意そうなお前に任せる」
グレンの過去に何があったのか感じ取りはじめたシスティーナの前に立ち、小鳥の式神は宣言する。
それと、と付け加えると、
『あと、小鳥野郎ていうのも言いにくいだろうからな。改めて自己紹介しよう。おれは「オイオイ、お前等でレイクの兄貴を殺そうってか!?笑わせんな!」──なんで邪魔するの……?』
カッコよく名乗りをあげようとしたら目覚めたジンに思いっきり邪魔された。春虎は正直かなりイラっとしている。
「だいたい暗殺なんて言葉がでてくる時点で、そいつはオレ達と同じ「はいはいちょっと黙ってましょうね~」もがぁっ!?」
そのまましゃべろうとしたジンだが、途中でグレンに脱がされた服を口に突っ込まれることで無理矢理黙らされる。
システィーナも春虎を可哀そうに思ったのか、「三度目の正直って言いますし」と言って小鳥を慰めている。
春虎は泣きそうになった。
『そうだよな!変にカッコつけようとしたのが悪かったんだよな!』
「そ、そうそう!普通が一番なんだって!」
変なテンションになっている春虎と、それを気遣うグレンをシスティーナは何とも言えない目で見ている。
気を取り直して、テイク3
『改めて、おれは──』
その時、部屋の中心に魔法陣が現れ、そこからさまざまな武具を持ったボーン・ゴーレムが大量に登場した。
ガシャンガシャンと音をたてるせいで、春虎の言葉は途中からかき消されてしまう。ジンは口に服が詰まった状態で、「
『なんでだよ……』
小鳥から聞こえてくる春虎の悲壮な声に、グレンとシスティーナは思わず顔を背ける。というかグレンは完全に笑っている。
『せめて、せめて名乗らせてくれよ──!」
二度あることは三度あった。
本編で出てる通り、春虎にとってグレンは最大の天敵です。護法式無しで戦った場合ほぼ100%負けます。
セリカにも3割取れるというのに……。