どうやら吸血鬼になったみたいです 作:やきとり
「おめでとう!ソフィア」
「おめでとう!」
「五十歳おめでとう」
「おめでとうソフィー」
「お父様、お母様、お姉様たちもありがとう」
魔法を覚えたり紫さんに会ったのは随分と昔のことになって今、私は五十歳の節目を迎えている。
吸血鬼というのは成長が遅い種族だ。精神はそれなりに早く発達するものの幼児のうちは体は五年で人間でいう一年分しか成長しない。そして、大体五十歳くらい人間でいえば十歳くらいまで大きくなると停滞期に入り体の成長が止まるのだ。なので五十歳になると幼児では無く半人前として認められるのだ。
一通りお祝いが終わるとお父様が口を開く。
「ソフィアも五十歳になったことだし、そろそろ三人とも狩りを覚えてもいいのかもな」
「狩り?」
フランねぇがどこか興奮したように聞き返す。最近、フランねぇはハンマーに飽きて剣のようなものを作ることにはまっているものの試す相手が不足しているらしく攻撃できる対象を求めているのだ。
「ああ、適当な村を襲っておいしそうな人間<<エサ>>を持ってくることだ。」
「へー、楽しそう~ そういえばルーミアもよく食事に行ってるって言ってたなー」
うーん、無邪気な顔で笑っているのに何だか恐ろしく感じる。というかフランねぇの作ってる剣って身長くらいあるし魔法とか纏わせてるからもしかしなくても人間なんて食べれないような肉片になっちゃいそうな気が・・・
「でも大丈夫なのですか? 教会の退魔騎士団がもし出てきたら 今のこの子達では・・・」
私がフランねぇに教われる人間(肉)の心配をしていると同じく心配そうなお母様がそう口にする。
「心配いらない。最近は王が変わるごとに教会も正統が入れ替わってて退魔騎士団も大陸のほうに行ったという話だ。その上、去年あたりに即位した女王とは宗派が違うようだし、相容れないだろうからしばらくは大丈夫だ。」
「そうだといいのですが・・・」
「それに、今のこの子達ならそうそう遅れは取らないよ。」
心配そうな顔のお母様とあまり心配していないお父様のやり取りからお姉様たちのほうに目を向けるとフランねぇは相変わらずおぞまし・・・いや、楽しそうに笑っておりレミねぇも何やら思索顔だ。
おそらくは最近身長で私たちに追いつかれたのでこの機会に姉の威厳(笑)を示そうとでも考えているのだろう。うーん、姿はそっくりなのに未だにこの姉とゲームのレミリアとが全くの別ものに思えてしまうのはこういうとこなのだろう。
そうこう考えているうちにお父様によるお母様の説得が終わったようで私たちは今度の狩りに同行することになった。それにしてもいよいよこの手で人間を殺すことになるのかー。今まで散々食べているので何をいまさらという感じではあるのだが・・・
「リリー 次を持ってきて」
「ひぇー もう次ですかぁー」
「いいから持ってきなさい!」
お父様からの狩りの話が終わった後、私は館の図書館に来ている。ここでの本の整理が最近の私の日課なのだ。
私が生まれてすぐのころにはうず高く積みあがっていた本は十年ほど前にはあらかた分類が終わったのだがそこで今度は別の問題が生じたのだ。それは本棚のスペースの問題である。もともと山と積まれていた本だがこれを本棚に入れていくとどうしても元より広い空間が必要になってしまう。そのせいでどうあがいても最後の一割くらいが収納できずにいた。困った私は本棚の間隔を小さくしたりして何とか本棚にすべての本を収めた。けれどそうすると今度は取り出したり戻したりするのが難しくなってしまったのだ。
散々悩んだ挙句、私が思いついたのが本一冊一冊に魔法陣を仕込み、題名を呼ぶと手元までくるシステムを作ることだった。そのための作業を現在行っているのだが魔法陣を仕込むためにはもちろん一回手元まで持ってくる必要があって・・・
その作業に従事しているのがリリーというわけである。
えっ 私? 私はほら魔法陣に魔力とか込めたりするのに忙しいし・・・
のろまなリリーが悪魔らしからぬ悲鳴を上げながら狭い本棚から本を引っ張りだしてくるのを楽しく観察しながら私は狩りについて考えていた。いや、より正確に言うと狩りで使う魔法についてである。
何を隠そう遠距離から放出系の魔法で大火力を打ち込むことと魔道具関連の二つが私の魔法のほとんどである。この二つ、特に遠距離からの固定砲台としてはノーレッジ先生にも引けを取らないと自負している。
一方で、残念ながら近距離での一対一での魔法の打ち合いや魔法による身体強化なんかはすこぶる苦手なのだ。狩りということはちゃんと消し炭にならない程度に威力を調整しなきゃなー。
私は先ほどフランねぇにしていた心配がブーメランになって自分に突き刺さっていることに気づいて苦笑いを浮かべるのだった。
咲夜さんに時間を止められていて気が付いたら半年たっていました。(すっとぼけー)
遅くなって申し訳ないです。
誤字報告下さった方、本当にありがとうございました。