どうやら吸血鬼になったみたいです 作:やきとり
「お父様、早く早く!!」
「フランドール、 狩りに出るのはもう少し夜が深まってからだと言っただろう」
今日は私たちの初めての狩りの日だ。昨日からどの剣を使おうかとワクワクしていたフランねぇは日が落ちるとすぐにお父様を急かしている。一方でレミねぇはさっきから一人でポーズを決めては何やらぶつぶつと言っている。一昨日、狩りの前にカッコいいポーズを決めるという妄想をしていたのでそれ関連なのかもしれない。
屋敷の玄関ホールには私たちの他にも屋敷で働いている多くの悪魔たちが来ており、防具のようなものを身に着けたり武器の手入れをしたりしている。そう言えばリリーも狩りについて来ると言っていたなとその姿を探すといつものメイド服姿で大きな盾を持って隣の悪魔と呑気に話している。
そんな悪魔たちの様子を眺めていると、いよいよ出発の時間がきたようでお父様が私たちを呼ぶ。
お父様は私たち三人を少し心配そうな顔で見た後、口を開いた。
「いいか、三人とも。今日の狩りはエサのことは考えなくていい。狩りの流れや雰囲気に慣れることを優先しろ。今日狙う村は大した警備もないと思うが、万一のこともある。安全を重視して戦え。」
「「「はいっ」」」
「それから、銀の武器には警戒しろ。銀による傷は再生しにくい上、厄介な魔法が込められていることもある。」
「「「はいっ」」」
「そして・・・
・・・するように。分かったな。」
「「「はい!」」」
「では出発だ。エレナ、館は任せたぞ」
長々とした注意の後、お父様はお母様にそう言うと今回の狩りに同行するメンバーに指示を出す。
「今回襲う村はカーライルの北のベレストフォード村だ。私が先頭を行く。お前たちはすぐ後ろについてくるように。悪魔たちはさらにその後ろからだ。」
言うや否やお父様が飛び立ち、それに続いて私たちも飛び立つ。
徐々に小さくなる紅魔館を後ろに私は今回の狩りがうまくいくことを願うのだった。
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カーライル近郊の村 ベレストフォード
俺の名前はハーマン。この村に配属された兵士だ。
こんなところで何をしているのかって?
そりゃここは国境付近の村だからな。監視ってやつだよ。
なんでも折角戦争が終わったのにあっちの国の王様がうちの王様を怒らせたらしく、またいつ戦争になってもおかしくないんだとか。まったく迷惑な話だ。
そういう訳だからこんな小さな村なのに夜も交代で見張りをしないといけないってことだ。
ただまあ、上官はそう言うものの俺にはこの暗い中で敵が来るとは思えないし、来たら来たで百人にも満たない小隊で何ができるんだ。
もう一人の今夜の見張りのニールなどは暇だからととうとう弓の練習を始めてしまった。
ニールはもともととある貴族の家の庶子だったと主張しており、弓は貴族のたしなみと言ってこのように時間があるときはいつも練習に費やしている。なんでも先代の王によって家が取り潰されたんだとかで、その時に持ち出したとかいう紋章入りの短剣を見せられたことがある。いけ好かないやつではないが戦場ではそれなりに頼りになるやつではある。
そんなことを思いつつ焚火に新たな薪をくべようとしたその瞬間だった。
何か冷たいものが背中を駆け抜けた。今まさに薪をくべようとしている焚火の炎が急速に小さくなっていった。
明らかに空気が変わったのを感じた。
それは戦場や野生動物と相対したときに感じるものと似たものであったが、それらの比ではなく冷たくてそして重いものだった。
俺は慌てて槍を掴んで近くの壁を背にして警戒する。
少しの静寂の後、壁の裏側の空がパッと明るくなる。
「あっ ドゴォォォォォン
次の瞬間、ニールのものらしき声とそれを覆い隠すような衝撃が鳴り響く。
さらにそれに続いてこんな場面に似つかわしくない幼い声と咎めるような低い声が聞こえてくる。
急いで建物の影から様子を伺うと、まず真っ先に目に入ってきたのはまるで燃えているかのように輝く巨大な剣だった。その剣は大きさに不釣り合いなほどに小さな金髪の少女いや少女の形をした化け物に握られていた。そして化け物の前には衝撃と熱で黒焦げになったナニカがあり、その周辺にもナニカの断片と思しきものが飛び散っていた。
そこから先は地獄だった。村人が、小隊の仲間たちが衝撃に気が付き出てきて碌な抵抗もできずに化け物に叩きつぶされていく。さらに先ほどの化け物以外にも同じく少女のようななりをした二体が片方は手に持った槍で、もう片方は魔法によってまるで単調な作業のように殺していく。
さらに戦闘の音がここ以外からも聞こえてくることから化け物はこの三体以外にもいるのだろう。
「くそったれめっ」
俺にはあの化け物が何者かは分からないが自分が逃げ切れそうにないことくらいはわかる。
そうか、俺は死ぬのか・・・
そう認識すると、急に体が軽くなったように感じた。さっきまで恐怖で足がすくんでいたのが嘘のように感じる。覚悟を決めた俺が足を踏み出そうとしたとき、目の前に銀色の短剣を見つけた。
「ニールのものか・・・」
それはいつかニールに見せられた短剣だった。俺は本能的に槍から手を離し、その短剣を手に取る。
化け物たちを見ると幸運なことに、ちょうどこちらと反対側を向いているようだった。
(今しかない)
そう思った俺は短剣構えて走り出した。
目標を一番こちらに近い位置で魔法を放っていた化け物に定めると飛ぶように駆ける。
「ソフィー 後ろ!!」
金髪の化け物がこちらに気づくがもう遅い。驚きながら振り返る化け物に向けて力を振り絞って短剣を突き出す。
「うおおおおーーーーーーーーー」
次の瞬間、体の内側から壊されるような感覚と共に俺の体は吹っ飛んだ。
最後に見た光景は驚いた顔の額に短剣が突き刺さった化け物とこちらに向かって手を握るような仕草をしている化け物だった。
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カーライル:イングランドとスコットランド国境付近の街
歴史関連は適当です。