どうやら吸血鬼になったみたいです 作:やきとり
「やーっ」
掛け声とともに手のひらから光の玉が次々生まれては的に向かって飛んでいく。
そんな私を見ていたレミねぇほほを膨らまして少し不満そうに話す。
「ソフィそんな掛け声じゃなくってもっとかっこいい名前を付けなさいよ!何なら私がつけてあげる・・・うんっそれがいいわ」
どうやら素晴らしいセンスをお持ちのレミねぇは私が魔法に名前を付けていないことがお気に召さないようだ。たしかゲーム内のレミリアは攻撃にスペルカードという形で名前を付けていたがそれと似ているのかもしれない。でもゲーム内のレミリアはそんなに”個性的”なネーミングセンスはなかったような気がするがレミねぇとくればまあ名誉のためにあえて言わないけれどちょっとあれである。時間が解決してくれることを祈ろう。
まあ確かにレミねぇの主張も間違っていない。かっこいい必要はないが名前を付けることは一連の魔法の発動操作の定着の助けになる。だけれどそうだからと言って恥ずかしい名前を付けるのもなんだということで掛け声でごまかしているという次第だ。何しろレミねぇの妹であるネーミングセンスの面で自分を信用しきれなかったのだ。そういうことで先生を盾にしてレミねぇから(正確にはそのステキなセンスから)逃れることにしよう。
「大丈夫だよ、レミねぇ それに相手が次何が来るかをわかってしまうから魔法の前に名前を言うのは不利になることもあるってノーレッジ先生が言ってたよ」
「うーん そうねぇ。でもやっぱり・・・」
レミねぇはノーレッジ先生の言葉とだけあって納得はしていないがひとまず落ち着いたが、すぐにかっこいい名前を思いついて私を感動させれば名前を付けるようになるのではと思い立ったようでいい名前を思いつこうと「うー」「うー」とうなりだした。そんなレミねぇを横目に見つつ再び光の玉を打ち出す。魔法を習い始めた当時は一個出すのがやっとだった光の玉は三年たった今では十個以上を同時に作り出して操ることが出来るようになった。威力のほうもはじめは木でできた板を的にしていたが今や魔法耐性の高い金属であるミスリルでできた的でないとすぐに砕いてしまうようになった。一方で魔力を体内で動かしての身体強化なんかはあまり得意ではない。魔力自体は動かせるようになったのだけれどなぜか魔力がだんだん溶けるようになくなってしまうという困ったことになってしまっている。身体強化と言えばフランねぇは早々に身体強化をマスターしたのち飽きたのか練習をしなくなってしまった。フランねぇとしては今まで簡単には壊せなかった鋼鉄製の人形(フランねぇが壊せないように防御魔法陣を重ねがけした特注品)の首をもぐという目的を達成したため満足らしい。
「レミリアお嬢様、ソフィアお嬢様 まもなく夕食のお時間です。」
また魔法の練習に没頭していたようで気が付いたら夕食の時間になっていた。最近はようやく水属性の魔力を操れるようになってきたので今日は岩に水をしみこませて内側から破壊することに挑戦していたのだけれどやはりまだ練習が足りないようでなぜか岩が内側から溶けて崩れ落ちてしまった。それはそうとレミねぇと共にダイニングに向かうことにする。
階段を上がって夕食に向かう。ちなみに私たち吸血鬼は昼過ぎに起きて夜明け前に眠るので夕食と言ってもどちらかというと一般的な昼食に近い。しかし最近は夜食(一般的な夕食に近い)の時はとーさまは他の吸血鬼や妖怪との付き合いが多く家にいないことも多い。なんでもここイギリス以外の国の妖怪と一緒になにかやろうといているようで忙しそうにしている。また、昼食はフランねぇが起きてこないことも多いので夕食が唯一家族が一堂にそろっての食事となる日が増えた。だからか何か連絡があるときは夕食後にすることが多い。そんなことを考えながらメイドさんに夕食の内容について聞く。
「今日の夕食ってなあに?」
「今日の夕食ですか? たしか農夫のもも肉のステーキだったかと」
どうやら今日はあたりのようだ。もも肉は農夫の中でも肩と並んでジューシーでブラッディなおいしい部位だ。やっぱり肉体労働で鍛えられているヒトの肉は引き締まってて食べ応えがある。こないだ食べた聖職者の肉は脂っこくていまいちな味だった。でもとーさま曰く大人の味だから子供にはどうもそれまだわからないのだそうだ。なんでもワインとよく合うのだとか。そういえば今さらだが私に人間の肉を食べることに対する忌避感は全くない。人間として生きたであろう記憶はあるのだけれど知識としての記憶で体験ではないし、どちらかと言えば吸血鬼の私が人間の記憶を覗き見ているような感覚なので吸血鬼の常識のほうが上に来るのだ。そういうことで私は夕食に胸を躍らせながら真っ赤な廊下を歩くのだった。
次くらいから館の外に出て登場人物も増えると思います。きっと 多分