どうやら吸血鬼になったみたいです 作:やきとり
「三人ともそろそろ館の外に出てもいいかもしれんな」
夕食が終わった後のとーさまからの話は私たちの外出についてだった。実は私たち三人は未だに館の外に出たことはない。この館は十分広いし欲しいものは買ってきてくれるので特に外に出る必要もなかったのだ。このお屋敷(紅魔館という名前らしい)から外を見たとことはあるけれど北側は湖があってそれ以外には植わっている木が邪魔でよく見えないので外に出たいとは思っていたのでこれはうれしい提案だ。
「うん 出てみたい!」
レミねぇもうれしいようで小さい翼をパタパタさせている。
「そうか それなら 明日の夕食後に館の近くを散歩するといい」
「「「はーい」」」
私たちの返事を聞いて満足そうなとーさまは執事のハンスを呼ぶ。ハンスは立派な髭がトレードマークでスコットランド出身の妖怪だそうだが今はこの紅魔館の管理をしている。
「ハンス 実は明日レミリアたちに館の周りを散歩させようと思うのだが 護衛を何人か見繕っておいてくれ」
「承知しました」
ハンスが下がると私は食堂を後にして書庫に向かう。書庫は紅魔館の地下にあって文字通り本が保管されている部屋だ。その蔵書の規模は歴史が長いだけあって相当なもので一生かかっても読み切れないのではと思えるほどなのだが、なんでもこれは先々代の当主であるひいおじいさまが相当な本好きだったらしく大量の本を集めたらしい。そのおかげでもともとの書庫の隣にあった大きな部屋との壁を取り払ってそこも書庫にしたらしくかなり広くなっている。
書庫について無駄に装飾が多い扉を開けると(というか開けてもらうと)きれいなに本が並べられた本棚・・・の横にうずたかく積まれた本の山が見えてきた。そうなのだ。ひいおじいさまは本が好きだったそうだがその後見向きもされずいつの間にか本の山になっていてよく使うものだけ本棚にきれいにしまわれるというところに落ち着いている。そしてこの本の山を整理していくのが最近の私の趣味である。
本の山の上から一冊本を取ってくる。もちろん背が二歳児程度の私には届かないのでものを動かす魔法を使っている。実はこの本の山を最初に見に来た時偶然手に取った本に魔法の各分野の基礎と便利な魔法が書いてあり、それを見て習得したのだ。その本にはそれ以外にも錬金術や魔法陣などの入門編のような内容がありそのおかげでこの本の山を分野別に分けたりすることが可能になっている。
「うーん、『魔法の動力についての考察』 これは魔法の理論の棚行きかなー」
一冊目に手に取った本は魔力と魔素とは何かについて理論的に書いてある本だったので魔法の理論を扱う本棚に入れるのが適切だろう。
「とその前に えいっ」
本の表紙の裏にある魔法陣に魔素を注いでおく。この魔法陣は本を火や水などや劣化を防ぐ効果があるのだが数百年に一度は魔素を注いでおかないと効果が切れてしまうのだ。魔素を注いだら次の本に取り掛かる。
「『妖精⑨ その知能に迫る』これってシリーズ物の九巻ってことかな? とりあえず生物の棚に入れとこう。次っ 」
やはり魔法陣に魔素を入れて次の本に取り掛かる。
「これは・・・ 題名すら読めない」
次の本はそもそも表紙に書いてあるのが何語かすらもわからないという謎の本だった。もしかしたら暗号なのかもしれないと思いながらもよくわからない本を集めた本棚に入れておく。
「お嬢様ー 本棚をお持ちしましたー」
そうこうしているとメイドのリリーが、腰を曲げて本棚を背中に載せて部屋に入ってくる。リリーは最近私付きになったメイドで魔界出身の悪魔なのだが全然そんな雰囲気はない。そんなリリーには本を整理するための本棚を取ってきてもらっていたのだ。新しい本棚はこないだ片づけて空いたスペースにおいてもらうか。
「リリーお疲れ あっちの隅に置いといてもらえる?」
「ひーっ あそこまでですか これ重いんですよー」
リリーが悲鳴を上げるので本棚を魔法で移動させる。さすがに本とよりもかなり重いので魔力を込めて慎重に魔力でしっかり魔素を操って運ぶ。うーん、確かに重い。結構な量の魔力を使ってしまった。ただ、私の魔力はこの半年間成長期なのか日に日に多くなっているのでこのくらいはなんともない。
「ひえーっ さすが吸血鬼魔力の量もけた違いですねー それでお嬢様 この本棚は何の本を入れるんですか?」
リリーは力の強い『名前付き』の悪魔のはずなのだがどうも小物っぽい発言が多い気がする。もしかしたら生まれつきの気質なのかもしれない。生まれついての小物か、うーん字面がひどいな。
「そこには聖書とか宗教関連の本を入れる予定かな。あそこに山になっているの」
「えっ この書庫聖書なんておいてるんですか? 悪魔の館なのに?」
「まあ 特に信じても嫌ってもいないからね。別にいいんじゃない」
「そんなもんですかね。 じゃあ私はあの本を本棚に入れておきますね」
そう言ってリリーはそそくさと本棚のほうに向かっていく。しかし思い通りにさせるつもりはない。
「リリー そっちはいいから次の本棚を持ってきてくれ。まだ三つほどあったでしょう?」
そう言いながら本棚に魔法で本を詰め込んでいく。
涙目に私に悪魔―と叫びながら部屋を出ていく