どうやら吸血鬼になったみたいです 作:やきとり
早いものであの初めての外出から五年がたった。その間に背もすこし伸びて三歳児程度の大きさにもなりリリーとリビングアーマーがついてくれば外出も自由になった。それはレミねぇやフランねぇも同様で、レミねぇは占い師から買った(半ば奪い取った)水晶玉を使って占いのまねごとを始めて月に一回満月の夜に広場で占いをしている。満月の夜にするのはレミねぇ曰く月にはパワーがあるからだそうで実際問題広場で物が売り買いされる市場が行われるのは満月の日なのでそれ以外の日は客が少ないというのもあるのかもしれない。一方でフランねぇはハンマーを買った鍛冶師に感化されたのか屋敷の地下に鍛冶場を作りそこで剣やハンマーを作ろうと格闘している。初めての外出の時に買ったハンマーを身体強化して使ったところうっかり柄を握りつぶしてしまったのが残念なようでフランねぇが乱暴に扱っても壊れないハンマーを目指しているそうだ。ちなみに鍛冶場にはかなり魔法技術が盛り込まれており、ノーレッジ先生と私で様々な魔法をかけた力作だ。
ところで私はというとこうして夕食後にときどき外出するようになっている。そして何度も外出しているうちに友達もできたのだ。
「あっ ソフィアじゃん こんにちは~」
「やっほー ルーミアちゃん」
そう、私の友達のルーミアちゃんだ。ゲームの最初の敵だったので覚えていたのであってすぐ本人だと気が付き話しかけたら仲良くなったのだ。
「ソフィアはまた魔法の練習?」
「うん ルーミアちゃんはって食事の帰りかぁー」
「えっ なんでわかったのソフィアすごい!」
「まあ そりゃ 闇から手足が飛び出てるからねー」
ルーミアちゃんは人食い妖怪なのでときどき近くの村や町に言って人を食べるのだが、その食べ方というのがなんと彼女のお腹のあたりにある闇に吸い込まれるようにして食べるという方法なのだ。しかし、問題は食べかけのまま平気で移動するのでときどき食べられた人の手足が闇から突き出たりしているのことがあることだ。なんというかちょっとグロい。
飛び出した手足をルーミアちゃんは手で押し込む。
「あーほんとだ― よいしょ。そうそうソフィアー わたしも魔法の練習ついて行っていい?」
「いいよ。」
広場を抜け街(といっても壁はないし人は少ないので村に分類されるのかもしれないが)の入り口まではゆっくり歩き、街を出てからは二人で走る。私はまだ羽が未熟なので飛ぶことはできないが小さくても吸血鬼の足腰は強靭だ。そして宵闇の大妖怪と称されるルーミアちゃんもその外見とは裏腹に身体能力は非常に高い。
2人で整備されていない道を走り抜けあっという間に館から見える湖の反対側の岸辺にたどり着く。ここから見る湖は水や霧に月の光が反射してとてもきれいで私のお気に入りのスポットであり、魔法の練習をしている場所でもある。私の魔法は相変わらず放出系特化なのでそろそろ室内の練習場だといろいろ危なっかしいのだ。
「じゃあ わたしはこの辺から見てるね」
「うん」
ルーミアちゃんとは何度かこうして魔法の練習をしに来ている(ルーミアちゃんは見ているだけだが)のでお互いなれたもんだ。ルーミアちゃんに少し離れてもらって魔法の準備に入る。
今回練習する魔法は魔力の使用量が膨大なので成長途中の私だけの魔力で賄うことは難しい。そのため魔力を昨日のうちにためておいた魔晶石から魔力を引き出して使う。魔晶石は魔力をためることのできる鉱物で魔力をためることにおいては賢者の石をもしのぐといわれる鉱物だ。しかしこの魔晶石は魔力を極めてゆっくりとしか放出しないという性質があり一気に放出する魔法では使えないとのことだがなぜか私はその魔晶石から普通に魔力を引き出すことが出来てしまった。ノーレッジ先生もこれには首をかしげていたが別に悪いことでもないとのことだし高価な賢者の石を使わずともいいので最近非常に重宝しているのだ。
魔晶石を五つ私の周りに漂わせ前に伸ばした手の周りをまわるように回転させる。この時五つの魔晶石を手の先を中心とした正五角形の形に保ちながら回転させていく。こうしないと放出される魔力で軽い私は吹き飛ばされてしまうのだ。周囲からごっそりと魔素を集めていき魔晶石の五角形の内側を何度も通過させて練り上げていく。
今回の魔法は簡単に言えば火と太陽の魔素を一本に練り上げて打ち出し、あたったところに巨大な爆発を起こすという物騒なもので目標は湖の中ほどに浮かぶ小さな島の一つだ。目標の島はどの岸からも遠いので周囲に飛び火することはないだろうしとーさまにも許可を取っている。それにここの反対側の岸にはノーレッジ先生が万一に備えている。
どんどん魔力が練り上げられていく。そろそろなので防御用の魔法陣を起動し発射体制に入る。
「極大獄炎魔法メガフレア 準備よし いけぇーーーー 」
っとその時だった。目標の島の近くから水色っぽい服を着た女の子が叫びながらこっちに向かって飛んでくるのが見えた。しかしもう魔法の発動は止められない。
「くっ 外れてくれ!」
徐々に膨らんでいく光線を必死に女の子から離れるほうにそらしながら私は魔法が女の子に当たらないことを祈るのだった。