聖杯戦争?どうでもいい。いちごタルトちょーだい? 作:エクソダス
とりあえず妄想を小説にして、気が向いたら続きかきます。
私は何をやっているんだろう…。
書類をトントンと叩きながら、その女性はため息をついた。
「……」
青髪で少し髪がボサボサなその女性は、書類を机の引き出しにしまった後、アホ毛をぴょこぴょこと動かしながら職員室を去ろうとする。
「あ、お疲れ様です」
「……ん、お疲れ様です」
青髪の女性はそう言いながら手をフリフリと振って、職員室を後にする。
そのあとその女性は更衣室に入り、黒をベースにした奇妙なコートを羽織って荷物を整える。
「……」
その女性は何処からかいちごタルトを取り出して、頬張り始めた。
この青髪の女の名前は…
性格は大人しく、面倒見が良い…。少し天然な所もあるが、それを含めて生徒にとても人気がある。
「零さん、そろそろ帰るよ?」
更衣室を出て、外の校門近くまで行くと、赤髪の少年が零を呼び止めた。
彼の名は衛宮士郎。零の住んでいる家で一緒に暮らしている少年だ。
「…ん」
零は少し微笑んで、士郎の横に立つ。
「少し感心しない、今何時だと思ってる?」
そういって零は周りを見渡す、周りはかなり暗く、生徒が下校していなければいけない時間なのは一目瞭然だった。
「あ~、ちょっと弓道部の手伝い」
「…また頼まれごと?」
零の見立てだが、この士郎という少年はかなり正義感が強いタイプの人間だ。苦笑いをしている士郎に、零はため息をついた。
「はあ…、はい。お疲れ様タルト」
そう言いながら、零は何処からかいちごタルトを取り出して、士郎の前に出した。
「…いつも思うんだけど、なんでいちごタルト」
「?」
「いや…『お前は何を言っているんだ?』って顔されても…まあいいや」
士郎は少しジト目になったが、すぐにいちごタルトを手に取り、頬張り始めた。
「ん、いちごタルトを食べる人に悪い人はいない」
「変わった価値観過ぎるな…」
その意味不明な零の発言に、士郎は苦笑いをした。
───
「それで零さん、どうだ?」
「何が?」
「記憶だよ、何か思い出せたか?」
その士郎の発言に、零は首を振る。
「そっか…」
「……士郎が気にすることじゃない」
肩を落とす士郎に、零は優しく背中をさすった。
話に合った通り、この女性…
「……」
零は士郎に微笑んだ後、ポケットから唯一の手がかりのカードを2枚、空に掲げる。
その2枚のカードは…。
1枚は《愚者》、もう一枚は《女帝》と書かれている。
「記憶、戻るといいな」
「……ん」
零は小さな声で答えた。
正直零は不安でいっぱいだ。自分が何者かわからないのが怖いし、早く記憶を戻さなければ、居候させてもらっている衛宮に申し訳が立たないから、その焦りもある。
「どんなことでも俺は手伝う。いつでも頼ってくれよ?」
「…ありがと」
零はそう呟いた。
不安はいっぱいだが、この少年といれば何とかなる気がする…、そう信じている。
「今日は、私の食事当番、だったね。リクエストある?」
「あ~、じゃあいちごタルト以外で」
「え?」
「だって、普通に夕食でも『はい、いちごタルトおたべ?』って言ってきそうだし」
「…士郎、私のことなんだと思ってるの?」
士郎とそんなくだらない話をしていた…、その時──。
ヒュッッ…。
「…?」
「ん?どうした?零さん」
校舎の裏側から、風を切る音が聞こえた。
そしてその後、何か戦っているような音が聞こえる…。おそらく音からして剣と槍、その二つがかち合っているような……
……いや、待てそもそも──。
「…何の音だ?」
士郎もこの異常な音に気づいたようだ、じっと音のする所を見つめている。
「…ちょっと行ってくる、先帰ってて」
「あ…、俺も行く!」
零が足早に校舎の裏に足を運び始めると、士郎も零を追ってついてくる。
(嫌な予感がする)
零のこの予感に確証はない。しかし見過ごしたらとんでもないことになる気がする…、危なくなったら士郎だけでも逃がせばいい。
──────
「…っ」
息を殺して音の原因を見ると、零の予想通りのことが行われていた。
素人でもわかる、この二人かなりの手練れだ。隣を見ると士郎がかなりおびえてしまっているのがわかる。
(…どうする?どうすればいい)
反対に零はかなり冷静だった、零自身も不思議だが、この状況にほとんど動揺していない。
まるでこのような光景を
「…士郎、落ち着いてこの場から逃げ──」
危ないことを察知し、零が士郎をこの場から逃がそうとした…その時。
パキッ
士郎が小枝を踏んでしまった。
「っ!!」
ギロッとその音に反応して、青い服の男がこちらを睨んでくる──まずい!!
「士郎!!逃げて!!!」
零はいつもは叫ばないが、今だけは無我夢中で叫び声をあげて、士郎の背中を押した。
「──っ!!!零さん!!!」
「大丈夫!!!すぐ行く!!」
そう言葉を発した直後──、零の首に目掛けて槍が容赦なく突き殺そうと襲ってくる。
「っ!!!」
零はどうにか槍の刃がないところを掴み、その槍を制止させる。
「ほう、姉ちゃんやるな」
そう言いながら青い服の男は槍をもっと押してきた。
(…っ!!なんて力)
抵抗も空しく、零は槍を放すと同時に2、3歩下がってから尻もちをついた。
「──零さん!!!」
士郎が尻もちをついた零に向かって悲痛な声を上げる。
「っさっさといけ!!!」
「だ、だけど!!」
「士郎がいても邪魔なだけ!!零先生に任せなさいっ!」
そう言いながら零はグッとサムズアップした。
そのサムズアップを見た直後、士郎は走って逃げてくれた。
「先生としてのプライドって奴かい?泣けるねぇ~」
そう言って茶化す青い服の男に少しばかり怒りを覚えた。
「…さっさと殺しに来い青い服、あれは見られたらまずい物、なんでしょ?」
そう言いながら零は、見下すように青い男をにらみつけた。
─────
「っ!!」
零は逃げた、必死に逃げた。学園の中に逃げて、ロッカーを倒したり、本を投げて応戦したが──。
「ふっ」
ことごとく避けられ、障害にはなりえていない。
(…落ち着け…落ち着け)
この状況でどうしたらいい?どうしたら…、どうしたらいいの…。
いつ殺されるかわからない。震える手を抑えながら零は逃げ続けるが──。
ついに教室へと逃げ込んでしまった。
「くっ…!!!」
行き止まりだ、しかもここは4階なので窓から逃げることもできない。
「チェックメイト…だな」
そう言って青服の男が教室に入ってくる。
「悪いな姉ちゃん、アンタに恨みはないが…あれを見られたからには生かして返すわけにはいかないんだ」
そう言って青服の男は槍をもう一度構えた。
どうする、どうする──
どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする。
「あ…あ…」
どれだけ考えても、この状況を打破できるやり方が思い浮かばない──ダメだ。
「じゃあな」
グサッ!!
突如──。
零の腹部に激痛が走る、震えながら零は腹部を見ると……そこには槍が突き刺さっていて血があふれ出している自分の腹部があった。
「あ……ぅ…」
零は力なくその場に倒れてしまった。
─────
『やあ。死んでしまうとは情けない』
真っ白な空間、目の前にはどこか見覚えのある女性が立っていた。
その女性は自分と同じ青い髪を、頭の後ろでまとめて垂らしてる。背中にまとっている変な模様の入ったマント。腰には
「だ…れ?」
『ああ、僕は ひめ ただのひめだよ?』
そう言いながら、目の前の女性は微笑んだ。ひめ?一体何の冗談?
「ここ…は?」
『ここは君の心の中の世界。君の本当の記憶が封印されている場所』
そう言いながらそのひめと名乗る女性は零に近づいてきた。
『僕のことはどうでもいい、実際重要じゃない』
ため息をついた後、ひめは話を続けた。
『さっき、君はどう思った?どう感じた?』
「……」
認めない…認めたくない、この感情を…認めてなるものか。
「どうも…思ってない!」
零は声を震わせながら、そう断言した。
『そうかい、まあいいさ。いつまでその拒否反応を続けるか…、苦しいが見届けよう』
そういって、その女性は床に──
ぐさっ!
と鈍い音を立てながら、
『この剣には、君の一部の記憶が入っている…あの少年を助けたいんだろう?』
「…」
そうだ…。
ここで道草を食っている暇はない。士郎が危ない、早くいかないと…早く助けないと……
───瞬間、もう一度腹部に痛みが走った。
血は出ていないが、そこにはひめの手によって、
「あ……が…」
『さあ、目覚めるんだ』
『
────
零が起き上がると、そこは教室だった。どうやら一命は取り留めたらしい。
「……」
虚ろな顔の零は一度、腹部を触った後、手を前に出して…何かの詠唱をし始める。
「《万象に希う・我が腕手に・剛毅なる刃を》」
ドンっ!!
零が詠唱した後、辺り一帯に紫電が走る。
そして、次の瞬間。
零の手にかなり大きな大剣が生成された。
これこそが、この零という者の本当の記憶。
リィエル=レイフォードの十八番──
「……士郎、今行くよ《我・秘めたる力を・解放せん》」
次に零が呟くと、零は恐ろしい速度で移動し、教室を後にした───。