聖杯戦争?どうでもいい。いちごタルトちょーだい? 作:エクソダス
「じゃあ、この話はこれでおしまい。本題に入るわ」
遠坂が、一口お茶を飲んでから言葉を続けた。
「バーサーカーに殺された衛宮くんがどうして生きてるのかって話だけど───」
「…遠坂が。助けてくれたんじゃないの?」
てっきりずっとそう思っていた思っていた。
だから士郎は生きているのだと。違うというのか?
「衛宮くんの体が勝手に治り始めて……、十分もしたら外見は元通りになったの」
「……え?」
「衛宮くんだけじゃない…零先生、貴女もです」
十分で元通り?
冗談を言っているようには聞こえない。おそらく本当のことだろう。信じられないことだが。
「でも二人とも意識が戻らなかったから、セイバーと二人でここまで運んできたってわけ」
「遠坂さんが、魔術使ったんじゃないの?」
「はい、違います」
「………?」
零は頭を傾げる。
え、私の体超速再生したの?怖いんだけど。私漫画のキャラじゃない。マジで九尾封印されてる?いやーん。
零は少し頭が痛くなってきた。
「衛宮君が治ったのは、多分サーヴァントの影響でしょうね」
そういって、遠坂は仮説を話し始めた。
「見たところ、セイバーには自然治癒の力があるみたいだから。あなたにもそれが流れてるんじゃないかな?普通の場合と魔力が逆だけど」
召喚されたのだから、基本的には士郎が魔力を供給するのが普通なのだろう。
「つまり……川の水が下から上に流れてるようなもんか」
「そう、上手い喩えね」
「じゃあ、士郎の傷、多少ほっといても治る…?」
「大雑把には…、セイバーの魔力をどうやって使ってるのかはわかりませんが」
士郎が治った理由は分かった。けど私はどうなる?
零は自分の体に妙な奇妙さを覚えた。ただセイバーの魔力が直してくれたと思えば合点がいくが…、おそらくそれはないだろう。彼女とは何も契約も結んでいない。
「甘い考えは持たないほうが良いわ、衛宮君、またあんな傷をおったら次はもう助からないはずだから」
「……ああ」
「零先生も」
「……ん」
「勝手にケガをしてセイバーに負担をかけるなんて、申し訳ないにもほどがある」
「バカね!そんな理由じゃないわよ!」
突然、遠坂が激怒し始めた。
ダンっと机をたたいて乗り出している。
「断言してもいいけど貴方それ絶対なんか使ってるから!寿命とか勝負運とか預金残高とか…」
「……お金はかんけーなくね?」
零はぽかーんと口を開く。
「関係あるわよ!魔術ってのは金くい虫なんだから!使えばどんどんお金が減ってくものなの!そうでなければ許さないんだから!特に私が──!!!」
「え、えと…、お金に困ってる?せんせー、助けよっか?」
顔を赤くし、恐ろしいほど激怒している遠坂に。零は優しく背中をさする。
お金に関しては何気に問題だ、学生だと特に…だ。年頃の女の子がお金に困るなんて結構苦痛だ。
「……す、すいません取り乱しました」
「いつも頑張ってるんだね、よしよし」
零は優しく遠坂を抱きしめて頭をなでる。
聖杯戦争や殺し合いなどどうでもいい。自分はただの教師なのだ。
だから、零は優しく遠坂を支えるだけだ。
「や、やめてくださいっ!」
「…むぅ」
「…まぁ、お金の話は置いておくとして。次は真面目な話だけど」
こほんと咳ばらいをし、遠坂は零に抱きしめられながらも話を続けた。
「衛宮君。あなたこれからどうするつもり?」
「…聖杯なんて得体のしれないもの、興味ないんだ。殺し合いはできるだけ避けて、ほかの連中が争うのをやめさせたい」
「……人殺しをやめろって?衛宮君…あなた魔術師のくせにまだそんな正義感振り回しているわけ?」
「…当然だろう。相手を殺すための戦いなんて、俺は付き合わない」
「…ふぅん」
遠坂は少し面白そうな顔をする。
本当に士郎はいい子だ。誰よりも優しく、正義感があり。そして何よりそれを行動に移すことができる。
零は少し優しく笑う。
本当に、かわいい生徒だ。
────
──
─
その後、遠坂に手を組む交渉を持ちかけられるが、士郎はその交渉を破棄した。
すぐに方針を決めるのはたしかに愚策だ。士郎は少し考える時間が必要だ。
遠坂を信頼していないわけではないが、セイバーに無断で交渉はできないと判断したらしい。
零としては組んでほしかった部分はあるが、自分は一応部外者だ。なにも口出しできない。
「………」
セイバーは家の隣の道場にいた。
静かに正座していて、まるで静寂に溶け込んでいる清らかな水を思わせる。
「……目が覚めたのですね、シロウ。そして……」
「零だよん」
「レイ」
少し妙な声のトーンに、零は苦笑いをするが、すぐにセイバーに近づき、優しく微笑む。
「…なんです?」
「よかった…………無事で」
「…………そちらも」
そっけないが、拒絶されるか無視されるよりは断然いい、すこし打ち解けれたかな?
「セイバーはここで何を?」
「体を休めていました。私にはシロウの手当てはできませんから、せめて自身を万全にしておこうおもいまして」
「そ、自己管理、えらいえらい」
そうやって零はセイバーの頭を撫でようとするが、ひょい、っと後ろへ後退してしまった。
せんせーかなし(´・ω・`)
「………」
「…?」
気づくと、士郎が黙ったままだ。
なぜか考えるが、理由はすぐに分かった。目が泳いでいる、明らかに照れている。
まあ、セイバーは圧倒的に美人だし、正直私よりかわいい。しかも今までは鎧しか着ていなかったので、いまは清楚な服を着ているのでよく似合っている。
「コクっちゃえよ」
「コクんねーよ!!」
「? 何の話です?」
二人の会話についていけず、セイバーは?マークを浮かべる。
しかし、すぐに士郎は咳ばらいをし、本題を切り出す。
「…いいかな、セイバー。こうやって落ち着いて話すのは初めてだけど──」
「シロウ、話の前に、昨夜の件について言っておきたいことがあります」
が、すぐにセイバーは士郎の話を遮る、おそらくセイバーとしては昨日の士郎の行動が気に入らなかったのだろう。
「シロウ、マスターがあのような行動をしては困る。戦闘は私の領分なのですから、シロウは自分の役割に徹してください」
「な、なんだよそれっ!」
「そしてレイ、貴女もです。貴女は部外者なのですから、あんな真似は困ります」
おそらく、零がかばった件も気に入らないのだろう。『あなたは部外者なのでかかわるな』そう言っているのだ。
「あの時はああでもしなきゃ…、セイバー、切られてる」
「その時は私が消えるだけです」
「貴女がよくても、私がダメなの」
零はそういうと、強引にセイバーの頭をなでる。
「年頃の子を助けない大人なんて存在の意味はないよ。セイバーは。なにも気にしなくていい」
「……」
セイバーは無言のまま、何も言葉をはっしない。彼女にとっては『助けられる』なんて珍しい、いや、もしかしたら初めての経験だったのかもしれない。
「……とりあえず、シロウ、貴方に話を戻します。サーヴァントは絶命しても本来の場所に帰るだけですが、シロウは死んでしまったら次はありません。繰り返しますが、あのような行動はしないように」
「───っ!バカ言うな!」
その言葉を聞き、士郎は思わず声を荒げる。
「あんなに血を流してたくせに……、女の子を助けるのに、理由なんているもんか!」
「……!」
セイバーは少し驚いた表情をした後、士郎をじっと見始めた。
なんだろう、士郎はやはりハーレム主人公の素質があるのかもしれない。この性格で小説の主人公にしたら違和感ないぞこれ。
「……と、とにかく。うちまで運んでくれたのは助かった」
「…ありがとね」
「……サーヴァントがマスターを守護するのは当たり前ですが、感謝されるのはうれしい。お二人とも優しいのですね」
「……」
「美女に赤くなってる、エッチなことはせんせーのいないところでね」
「しねえよ!!」
「?」
突然の零の小粋なジョークに、士郎は顔を真っ赤にし、セイバーは無邪気に首を傾げた。
「は、話を戻すぞ!」
士郎は顔を赤くしながら切れ気味に話しを切り出した。
この程度で恥ずかしがるなど、無様。( 一一)
「俺がお前を呼び出したのはただの偶然だ、セイバーも知っての通り俺は半人前の魔術師なんだ。…未熟なマスターだけどそれでいいのか?」
「もちろん、契約を交わした以上、私はシロウの剣です。私のマスターは貴方ですシロウ」
セイバーはそう断言する。
どうやら、サーヴァントとマスターの関係は、零の思っている以上に強固なもののようだ。
「ですがシロウ。私のマスターに敗北は許しません」
その瞬間、セイバーの目が変わった。
どこか闘争心に満ちていて、年相応の目つきではない。
まるで自分から戦場を望んでいる兵士のような……。
「貴方に勝算がなければ私が作る。可能であるすべての手段を用いて、貴方には聖杯を手に入れてもらいます」
「……あなたも、聖杯がほしいの?セイバー」
零は少し悲しそうな顔で、セイバーを見つめる。
彼女がどんな生き方をしてきたのか知らないし、知る由もないが。人間の本質は欲望、それは変わらない。セイバーは聖杯を手に入れて、何の価値を見出すのだろう。
「ええ…、もとより、私達サーヴァントはそのために召喚に応じるのです」
零の言葉に肯定し、セイバーは話を続ける。
「聖杯戦争に勝利したマスターのサーヴァントだけが、その見返りとして聖杯で望みをかなえることができる」
「…ちょっとまってくれ。『可能であるすべての手段』って言ったな?それは手段を選ばないってことか?…たとえば……無関係の人を巻き込むような」
零もそこは疑問に思っていた。
セイバーのあの言い方だと、言峰や遠坂と同じく『何をしてでも勝つ』ということだ。それはつまり、他人を犠牲にする行為も…。
「シロウ、それは可能である手段ではありません」
「? 何をしてでも、勝つんじゃないの?」
零は想定外の答えが返ってきて、零は目を丸くする。
彼女もまた聖杯をめぐる一人の生き物、何をしてでも手に入れようとすると思っていたのだが。
「私は私が許す行為しかできない。剣を持たぬ人間に傷を負わせるなど…、騎士の誓いに反します」
「……そっか」
この子は欲深いだけの人間とは違う。
どこかまじめで優しくて、正義感がある。どこか士郎に似ているかもしれない。
「………ごめん」
「……なぜ、あやまるのですか?」
突然零に謝られ、セイバーは目を丸くする。
「私が、あの時助けようとしたのは。貴女の騎士の心に泥を塗る行為。ごめん」
「……」
そう、セイバーがただの騎士と仮定するなら、何かを守るために騎士になったんだと思う。
その女の子が、見知らぬ他人に助けられかけたなど、気分を害する事であろう。だから素直に謝った。
「……優しい方」
セイバーを見ると、セイバーは優しく微笑んでいた。
まるで天使のように、まるで、私の記憶の片隅にある。
あの金髪のリボンをつけた少女のように………。
────
──
─
「ごきげんよう、リィエル」
「?」
私がボーっと外を眺めていると、金髪のリボンを付けた少女と、銀髪の白猫のようにリボンをひょこひょこ動かす少女が話しかけてくる。
「今。ちょうど昼休みになったんだけど、リィエルはお昼ご飯どうするの?」
「必要ない。私は三日間食べなくても平気」
私は面倒なので、軽くあしらった。
「えっ?だ、駄目だよ。それじゃあ体に良くないよ?」
金髪の少女は心配そうに見つめてくる。
とはいっても、今回は軍からの食糧はもう食べてしまった。
「私たち、今から学食に行くんだけど。リィエルもいかない?」
「……学食?なにそれ?」
「うーん。ご飯食べるところ…かな。どう?」
「…………」
私は動揺した。この時初めて同い年くらいの女の子に誘われたのだ。
自然と瞬きの回数もおおくなる。
「………ん、わかった。いく」
「ふふっ、よかった。じゃあ、早速行こう?」
────
──
─
「………ふっ」
「?」
自分の前世の記憶か何かか、それとも夢に出てきた幻かは分からない。
ただ、零はこのセイバーという少女に、少しだけ親近感を覚えた。