仕事に加え、父が舌癌を発症してしまった事もあり、そのせいでより多忙になってしまったために、中々執筆に時間を割くことが出来ませんでした。
今後もその関係で執筆がかなり遅れてしまうと思いますが、ご了承頂けると幸いです。
ビースト覚醒、日本語吹替版の担当が次々と判明してきましたね。バトルトラップ役の三宅さんとナイトバード役の柚木さんは、この二人に演じて欲しいな〜と思っていたら、まさかの起用に驚きました。
スカージ役がテラザウラーでお馴染みの飛田さんには更に驚きましたが、どう演じてくれるのか楽しみです。
本作もオリジナル展開満載です。それではどうぞ!
突如として神山全体を襲った振動。明らかに地震ではないその揺れに、グリムロックは司祭達の死骸の散乱する場を蹴り上げて、再び上空へと浮上する。
「「「「「グルゥオオオオオオオッ!!!」」」」」
直後、凄まじい唸り声を上げながら、巨大な生き物が地中から飛び出してきた。現れたのは金属で出来たミミズのような怪物。そう、ドリラーだ。
しかし、今回はオルクス大迷宮を襲撃した時とは異なる。あの時は一体だけだったが、今度は5体はいる。全長300m以上の怪物が、そんなにもいるのだ。彼らは、まるで飢えた軍隊アリの如く、地中を突き破って現れると、神山全体を喰らい尽くす勢いで掘り進めていく。栄華を誇った正教教会総本山は、見るも無惨に破壊されていった。
「「おうおう、コンズどもも容赦ねえな…」」
そう呟きながら、ノイントを仕留めたストレイフが近くに飛んできて、そう呟いた。無論、そう言ってはいるものの、正教教会に同情するつもりなど毛頭なかったが。
グリムロックもそれは同じだ。だが、厄介そうに顔を顰めており、胸部を展開して中にいる愛子にも目の前の光景を見せた。
「な、灘くん…あれは…!」
「おう。コンズどもの奴らも、大迷宮目当てに攻めて来やがった。見ての通り、無理矢理にでも掘り出すみてぇだがな」
ディセプティコンがわざわざ正教教会総本山を襲撃する理由。トータスの人間の拠り所を破壊する意味もあるだろうが、それよりも重要視しているのは、十中八九大迷宮の発見と攻略だろう。
マキシマル一行としては、正教教会が滅ぼうが、人類の拠り所が失われようがどうでも良かったのだが、ディセプティコン達が先に攻略するのを黙って見ているつもりなどない。そうなれば、グリューエン大火山の時と同じく、攻略が厄介になる。
仕方ないと言わんばかりに鼻を鳴らすと、グリムロックは胸部の愛子に語りかける。
「先生、悪いがもう暫く辛抱しろ。あのミミズの出来損ない共を片付けなくちゃならねえからな」
「わ、分かりました。気をつけてくださいね」
「「よし、じゃあ早く終わらせ───
───危ねぇグリムロック!後ろだ!」」
「グガァアアアアッ!!?」
「きゃあああああっ!!?」
だがその時、彼らの背後からミサイルが数発飛来してきた。咄嗟にストレイフが叫んだものの、完全な不意打ちを受けたグリムロックは避けられず、背中に被弾する。頑強なボディのおかげで致命傷にはならないが、爆破の衝撃に愛子が悲鳴を上げた。
直ぐに胸部装甲を閉じて愛子の安全を確保すると、グリムロックは後ろに向き直り、犯人の姿を確認する。彼の眼に映ったのは、本来なら装備している筈のない機関銃やミサイルポッドを装備したスペースシャトルが、凄まじいスピードで突進してくる姿であった。
突っ込んでくるスペースシャトルは、ギゴガゴゴと変形を始めると、グリムロック達にとって見覚えのある金属の巨人へと変貌を遂げる。そう、ディセプティコン輸送参謀アストロトレインだ!
「よおグリムロック、また会ったな。この前の続きといこうか!」
獰猛なるディセプティコンはそう告げると、まるで獲物を狩る猛禽の如くグリムロックに飛びかかる。そして2体の巨人は、取っ組み合いとなりながら高度8,000mもの高さを降下し始めた。
取っ組み合いになりながら、アストロトレインは両腕からプラズマチェーンソーを展開し、グリムロックの身体を斬りつける。痛みに顔を顰めながら、グリムロックも負けじとその剛腕でアストロトレインを殴りつける。グリムロックの胸部内にいる愛子は、急降下しながら激しい衝撃に晒され「うひゃあああっ!!?」と絶叫していた。
「「馬鹿!このまま墜落する気か!!?」」
だが、其処へストレイフが駆け付けると、その長い尾をグリムロックの胴体に絡めてアストロトレインから引き離す。アストロトレインは舌打ちすると、スペースシャトルへと変形してその後を追いかけ始めた。
「離せストレイフ!あの錆野郎に背を向けて逃げられるか!」
「「五月蝿え!空中じゃあ、お前より奴の方が有利だ!一度地上に降りて態勢を立て直した方が……グアアアアアッ!!?」」
怒るグリムロックを諌めるストレイフだったが、突如としてアストロトレインが迫る後方からではなく前方から一斉射撃を喰らい、苦悶の声を上げる。何事かと見ると、開かれたスペースブリッジから、まるで軍隊アリの如く何機ものオービタルアサルトキャリアーが襲い掛かってきた。
「生憎だったな。前回はシードの起爆が任務だったが、今回は明確にお前達マキシマルの始末を命じられてるんだよ。安心しな、後でお前達の残骸はジャンキオン共にでも売りつけてやる!」
追いついたアストロトレインは変形すると、そう嘲笑うように告げながら、機関銃を腕から展開し、グリムロック達へと発砲した。
次から次へと湧いて出る飛行艇の攻撃に加え、アストロトレインからの攻撃を受け、地上へ後退出来なくなったグリムロックとストレイフは、仕方なく二手に分かれて応戦する事にした。
ストレイフはビーストモードのまま、飛行艇を相手にドッグファイトを繰り広げる。巨体とは裏腹にアクロバティックな飛行で、飛行艇からパイロットを引き摺り下ろしたりして撃墜していくが、今回は敵の数が多過ぎる。おまけにダイナボットとしては華奢で装甲が頑強ではないというデメリット故に、避け切れない銃撃に苦しめられていた。
グリムロックの方も、重力魔法により上空を浮遊しながら、ディセプティコン達に応戦する。右手にオルトロスを装備すると、飛び交う飛行艇を撃ち落としつつ、左手はモーニングスターに変形させ、アストロトレインにも応戦する。前回のウルでの戦いでは、実質一対一の勝負だったこともあり互角に立ち回ったが、今回は慣れない空中戦かつ、敵の数が多い。
おまけに、今回のアストロトレインは前回よりパワーアップしているように見受けられた。口調も軍人気質な彼としては、やや気性の荒いような感じもする。そう考えていたグリムロックは、ふとアストロトレインを見ると、ある事に気付いた。
「…おいテメェ、前はそんな装備なかったよな。やけに気も荒くなってんのは、
グリムロックが指摘したのは、アストロトレインの胸部の中心につけられた装備だ。外見はクリエーション・マトリクスに酷似しているが、毒々しい緑色の輝きを放っている。かつてスラッグが言っていた、洗脳状態のストレイフに装備されていたという物に、非常に酷似している。
「ご名答、原始的な頭脳回路にしちゃあ冴えてるじゃねえか。コイツはこの惑星の産物、マトリクス・オブ・マリスだ」
その疑問に対して、アストロトレインは不敵に笑いながら答えた。その笑みに呼応するかの如く、胸部に装備されたマトリクス・マリスも妖しく光る。
「
「おいおい、仮にも俺達の同盟者と敵対してるなら、この世界の歪さは知ってるよな?野郎が好き放題したお陰で、このトータスには悪意や怨念が其処ら中に蔓延ってやがる。それらの強大なエネルギーを、俺達ディセプティコンは有効に利用させてもらう事にした。そうして開発されたのがコイツだ」
「ふん、嫌な廃物利用だな…」
目の前のマトリクスの紛い物が、エヒトの悪行の産物を利用して創られた事を知らされ、グリムロックは不快そうに顔を顰める。オルトロスの銃口を飛行艇からアストロトレインに向けると、彼諸共マトリクス・オブ・マリスを破壊しようとする。
だが、アストロトレインは余裕そうな態度を崩さず、言葉を続けた。
「前回ストレイフの野郎に装備させたのは試作体だったから、支配下に置くぐらいしか効果はなかったんだがな。今回はショックウェーブ達が改良を重ねて完成させたから性能は桁違いだ。こんな風にな!!!」
「うおっ!!?」
アストロトレインがそう語った次の瞬間、胸部のマトリクス・オブ・マリスから強力なビームが放たれた。禍々しい緑色の攻撃に、グリムロックは大盾を展開して防御態勢となる。ハジメによって鍛えられた特注の盾だけあり、防御力は絶大だ。
しかしマトリクス・オブ・マリスから放たれるビームはあまりにも強烈で、流石のグリムロックも防御するのが精一杯で、反撃の隙がない。胸部内に愛子を守っている状況では、下手に反撃に出れば大ダメージを喰らい、彼女の身も危険に晒しかねない。そんな彼の状況を嘲笑うかのように、飛行艇に乗ったディセプティコン達は、盾の死角から銃撃を行なっていく。頑強なグリムロックには大したダメージとはならないが、かなり不利な状況だ。
「オラオラどうした!ビビって守るだけしか出来ないか?臆病者のガラクタ野郎め!」
アストロトレインは反撃に出る事が出来ないグリムロックを嘲笑いながら、追い討ちをかけるようにビームの威力を上げてゆく。この戦いにおける自分達の勝利を確信し、彼は不敵な笑みを浮かべたが…
『これ以上好き勝手はさせんぞ!下郎が!』
「何ッ!!?クソッタレ!!?」
だがその時、凛々しい女性の声が響き渡るとともに、レーザーの如き黒い閃光の攻撃が、アストロトレインへと襲い掛かった。彼はマトリクス・オブ・マリスによる攻撃を中断して、何とか回避したが、何台かの飛行艇は避けられずに直撃して大破した。
アストロトレインは苛立たしげに、下手人の正体を確かめようと攻撃の来た方向を睨みつける。グリムロックもその方向を見やるが、彼の方は逆に、頼もしい援軍が来てくれた事への歓喜の表情だった。
現れたのは、グリムロックやアストロトレインに比べると小柄だが、飛行艇よりやや大きい体長7m程の黒竜。そう、ティオだ。彼女は翼をはためかせながら、飛行艇をその牙や鉤爪で次々に撃墜してゆくと、グリムロックの傍にやってきた。ストレイフも姪の援護のおかげで敵の猛攻から抜け出すと、同じく近づいてきた。
「待ってたぜ、ティオ。ありがとよ」
『間に合ったようで何よりじゃ、後で今度こそ乳揉み……ご褒美を所望する』
「「お嬢…頼むから空気読んでくれ…」」
「おう、考えとく」
「「オメーも余計なこと言うな!」」
こんな状況でも自らの欲望に忠実なティオと、それに応えるグリムロックにツッコむストレイフ。先程までピンチだったのが嘘のようだ。
対するアストロトレインは、苛立たしげに彼らを睨みつけるが、ティオの正体に気付いて嘲笑う。
「ハハッ!誰かと思えば、あの時の間抜けな竜人族か!漸く来てくれた援軍がそんな足手纏いとはお笑いだぜ!ディセプティコン共、さっさと片付けるぞ!」
その号令と共に、再び攻撃を開始するディセプティコン達。しかし、グリムロック達は臆す様子などない。特にティオとストレイフは、ウルで味わった雪辱を果たさんと、闘志を剥き出しにしている。
今ここに、リベンジマッチが始まった。
一方、頑強なグリムロックの胸部の中。そこで守られている愛子は、自らの無力さに打ちひしがれていた。
「灘君…」
元から人間ではなかったとはいえ、自らの教え子であり良き理解者であった彼が、今もこうして身を挺して守ってくれているというのに、自分はまたしてもこうして何も出来ずに守られている。おまけに今彼が戦っている敵は、生徒達の一部を殺した連中だ。そんな奴らを前にしているというのに、自分は敵討ちすらできない。
王国と教会に裏切られ、当初予定していた神を頼っての帰還など期待出来ない以上、自分達の手で前に進まなければならないというのに、何で有様だ。愛子は自らの不甲斐なさが悔しくて、思わず涙を零した。
「ふぇっ⁉︎な、何ですか⁉︎」
その時、急に愛子の傍で何かが光り、暗い胸部内を照らした。思わずビクッとなる愛子だったが、光る箇所を見るととそこにあったのは、いつも亮牙が持っているショルダーポーチの宝物庫だった。万が一彼女に何かあった時のために、一緒に入れておいたのだ。
恐る恐る光の正体を確かめようと、愛子は内心亮牙に謝りつつショルダーポーチを開けた。出て来たのはクリエーション・マトリクス。いつもより輝いており、両手に取った愛子はその美しさに感嘆してしまう。
「「「「「「彼を助けたいか、人間の娘よ」」」」」」
「ふぇっ!!?だ、誰ですか!!?」」」」」」
突如、気高い雰囲気を醸し出す六人の男の声が響く。思わずキョロキョロと辺りを見渡す愛子だったが、直ぐに自分が手に取ったこのアーティファクトから声が聞こえる事に気づく。
「「「「「「このクリエーション・マトリクスに其方の力を注ぐのだ。さすればグリムロックに、更なる力を与えられるだろう」」」」」」
「私の力を…灘君に…?」
力を注げと語るその声に、最初は戸惑いを隠せない愛子だったが、その迷いは直ぐに消えた。グリムロックが管理している物であるならば、危険な物ではない筈だ。
なにより自分達で運命を切り開くと決めた以上、やれる事があるならやらなければならない。たとえ種族が違っても、彼もまた自分にとっては守るべき大切な教え子だ。
「貴方達がどなたなのかは分かりませんが、その言葉を信じます。どうか私の力を以て、彼を守ってください!!!」
そう叫んだ愛子はギュッと目を瞑ると、両手から自らの魔力をクリエーション・マトリクスへ注ぎ込む。勇者である光輝に匹敵する強大な魔力が注ぎ込まれるとともに、マトリクスは更に美しく輝き出した。
そして若き女神の力は、大いなる奇跡をもたらす事になる。
最初に異変に気付いたのは、グリムロックだった。激戦でやや疲弊していた筈なのに、先程からやけに調子が良くなって来ているのだ。おまけにスパークの近くから、強大なエネルギーが感じられる。一瞬愛子の身を案じるが、彼女の生命反応は何の問題もなく、エネルギーはより強くなっている。
やがて溢れ出たエネルギーは、彼の全身を覆った。その色はクリエーション・マトリクスと同じ、美しい青色だ。それと同時に、全身に活力が漲ってくる。
「何だが分からねえけど、激ってきたぜ!
ダー!!!」
満ち溢れるエネルギーに、雄叫びを上げるグリムロック。そのエネルギーは彼だけでなく、両隣で飛翔するティオとストレイフをも覆ってゆく。すると、その時不思議な事が起こった。
『な、何じゃ一体……
ってのじゃあああああ!!?』
「お嬢⁉︎って俺もかよぉおおおっ!!?」
光に覆われたティオは、突如として本人の意思に反して高速で回転し始め、徐々に黒竜の姿からシルエットを変えてゆく。それに驚愕するストレイフだったが、彼の方は磁石のようにグリムロックへと引き寄せられていくと、ギゴガゴゴと変形、彼の背中へと合体する。アストロトレイン達は警戒を顕にし、彼ら目掛けて一斉射撃を行うが、エネルギーがバリアの役割を果たすのか全くダメージを与えられない。
やがて現れたのは、背中に巨大な一対の翼を有したグリムロックだった。両肩にはストレイフの頭部が大砲のように装備され、瞳は赤色から青色へと変わり、頭部に生えた角の後ろには、まるで古代ギリシャ兵の兜のようなモヒカン状の装飾が備わっている。
ティオも回転が終わり、その姿を大きく変えていた。黒竜の姿から、ドラゴンの頭部と両翼を彷彿とさせる造形の穂先を備えた、漆黒の三叉槍・ダイノランスへと変貌していたのだ。
名付けてこれ、マキシマル陸空騎士・グリムウイングである!
「最初に言っておく!今の俺はか〜な〜り強い!!!」
『ついでに言っておく!この姿は妾自身びっくりじゃ!!!』
「ただ背中にくっ付いただけだろうがぁっ!!!」
威勢よく啖呵を切るグリムウイングと、やや拍子抜けに続けるティオ。それが癪に触ったのか、アストロトレインは怒号を飛ばしながら銃撃を再開し、他のディセプティコン達も続く。
しかし、グリムウイングは物ともしない。ただ合体しただけでなく、防御力も格段に上がっているのだ。彼はお返しとばかりに、ダイノランスにエネルギーを込めると、大きく横薙ぎに振るった。
「
次の瞬間、薙ぎ払いによって幾つもの竜巻が発生し、ディセプティコン達に襲い掛かった。飛行艇達は慌てて後退しようとするが時既に遅く、なす術もなく竜巻に飲み込まれては破壊されてゆく。
「こんな微風程度で俺を止められると思ってんのかぁ!!?」
部下達が大打撃を受ける中、スペースシャトルに変形するだけあり、アストロトレインは耐え抜いている。両腕からプラズマチェーンソーを展開すると、グリムウイングへと突っ込んできた。
だがグリムウイングは焦る様子も見せず、大きく上半身を捻ると、ダイノランスを勢いよく敵目掛けて投げつけた。しかしアストロトレインも馬鹿ではない。寸前のところで躱し、ダイノランスはそのまま通り過ぎてゆく。
「ハハッ!馬鹿が!外し…「外しちゃいねぇよ」何……グワァアアアアッ!!?」
グリムウイングがそう告げた瞬間、躱した筈のダイノランスが背後から襲い掛かり、油断していたアストロトレインの胴体を貫く。金属生命体の中でもかなりの巨体を誇るが故に致命傷とはならなかったが、予想外のダメージに苦悶の叫びを上げる。
ダイノランスはそのままグリムウイングのもとへ戻るかのように見えたが、何と光の膜が目の前に現れ、その中に吸い込まれていく。見ると、同じような光の膜が、先程の竜巻から逃れられた飛行艇の前に出現している。そしてやはり、その中からダイノランスが飛び出して来て、容赦なく飛行艇を貫通・撃墜すると、別の光の膜へと飛び込んで、また別の飛行艇の前に襲い掛かる。これにより、何とか逃げ延びた飛行艇も、瞬く間に殲滅されてしまった。
これぞ、かつてサイクロナスとの戦いで、彼が使った戦法を参考に、同じく空間魔法を用いた新技「
「調子に乗るんじゃねぇっ!!!」
「こっちの台詞だ」
序盤とは打って変わり、自分の方が追い詰められいる現状に、アストロトレインは焦りと屈辱に顔を歪ませながらも、再びマトリクス・オブ・マリスからビームを放つ。だがグリムウイングも負けじと、両肩に装備されたストレイフの頭部の砲口から、クリエーション・マトリクスと同じ美しい青色のビームを放つ。
二つの青いビームは一点に集束して一つに纏まると、マトリクス・オブ・マリスから放たれた緑色のビームとぶつかり合う。最初は拮抗していたものの、徐々にグリムウイングが放ったビームの方が勝っていき、遂には完全に押し返すと、アストロトレインに直撃する。
「グォオオオオオオオッ!!?」
強烈な攻撃を受け、大きく仰反るアストロトレイン。胸部のマトリクス・オブ・マリスもかなりのダメージを受けたらしく、所々に亀裂が入っている。次の攻撃には耐えられないだろう。
飛行艇を掃討し尽くし手元に戻ってきたダイノランスを手に取ると、グリムウイングは自らのエネルギーをダイノランスへ注ぎ込む。今度はグリムロックのブレスと同じく紅蓮の炎が穂先に纏われ、赤く輝く。彼は両翼をはためかせると一気に加速、獲物に鉤爪を振り下ろす猛禽の如く、アストロトレインの胸部目掛けてダイノランスを突き出した。
「ウルでの借りは返すぞ───
───
「ぐぁああああああっ!!?」
強烈な刺突がアストロトレインの胸部に突き刺さるとともに、凄まじい爆発が発生。先程のビームの直撃もあって彼は防御体勢も取れず、爆発に飲み込まれた。
やがて爆煙から吹き飛ばされる形で姿を現したアストロトレインは、痛ましい姿になっていた。胸部のマトリクス・オブ・マリスが盾代わりとなったのか辛うじて生きているが、代償としてマトリクス・オブ・マリスは完全に破壊されてしまった。彼本人のダメージも酷く、胴体の装甲は損傷が激しく、身体に流れるエネルゴンが出血の如く溢れている。
グリムウイングはとどめを刺そうとダイノランスを構えるが、それに気付いたアストロトレインは最後の力を振り絞ってスペースシャトルに変形して退却する。
「サウンドウェーブ…!スペースブリッジを開け…!」
『了解』
逃すものかと追跡するグリムウイングを躱しながら、アストロトレインは息も絶え絶えにサウンドウェーブに通信を送る。直ぐに上空にスペースブリッジが出現して、彼はその中に逃げるように飛び込んだ。
「これで終わりだと思うなよグリムロック…!お前も仲間達も、この報いは受けさせるからな…!」
憎悪の篭った捨て台詞とともにアストロトレインは姿を消し、それと同時にスペースブリッジは閉じられた。敵の幹部に深手を負わせられたものの、仕留めるには至らなかった事に、グリムウイングは悔しそうにグルルルと唸る。
しかし、まだ敵は残っている。彼が次に狙いを定めたのは、今なお神山を食い尽くす勢いで掘り進む5体のドリラーだ。最早、正教教会総本山は、跡形もなく破壊し尽くされていた。
グリムウイングは神山に狙いを定めると、ダイノランスを投擲する構えを取る。槍全体に強烈なエネルギーが纏われると、彼はダイノランスを握り締めたまま、投擲するように腕を振るった。すると、ダイノランスを覆っていたエネルギーのみが、巨大な槍となって発射され、神山を破壊するドリラーへと襲い掛かった。
「
エネルギーの槍は神山に直撃すると、神山全体を激震させるような大爆発を起こした。巨大なキノコ雲と轟音に混じって、爆殺されたドリラー達の亡骸がバラバラになって吹き飛んでゆく。
長年に渡りトータスの人族を支配してきた正教教会総本山は、この日、呆気なく滅び去ったのであった。
〜用語集〜
・マキシマル陸空騎士グリムウイング
愛子がクリエーション・マトリクスに自分の魔力を注いだ結果、その強大なエネルギーに呼応してパワーアップしたグリムロックがストレイフと合体した姿。空中戦ではディセプティコンに劣るグリムロックと、他のダイナボットより防御力で劣るストレイフの両方の欠点を補っており、マキシマルの空中戦力としては最強となった。
武器は後述のダイノランスに加え、両肩にストレイフの頭部が砲塔のように装備されたダブルヘッドカノン。また、グリムロックの持つ炎の力と、クリエーション・マトリクスのエネルギーの力を使い分ける事が出来る。
モデルとなったのは『Transformers ENERGON』のグリムロックとスワープの合体形態・メガダイノボット。『ロストエイジ』の玩具シリーズ『ムービーアドバンスドシリーズ』におけるブラックナイトグリムロックとストレイフを合体させる俺変形も参考とした。
因みに名前の由来は『プライム』の玩具限定キャラであるプレダゴンのグリムウイングから。こちらは半鳥半熊のグリフォン、ウルサグリフに変形する。
・竜槍ダイノランス
クリエーション・マトリクスのエネルギーに呼応する形で、ティオが『竜化』の派生として変身した本作オリジナルの姿。グリムウイングのメイン武器となる。
本来はストレイフの風属性の能力を主とした技を放つが、グリムロックの炎属性の力を纏う事で強力な爆発を引き起こす事が出来る。なお、ティオ本人はこの形態を意外と気に入っている。
ティオの武器化は元から考えていたが、槍としたのは『ゴッド・オブ・ウォー:ラグナロク』のドラウプニルの影響が大きい。なお、名乗りのところはグリムウイング含め、仮面ライダーゼロノスのオマージュ。
・暴風覇王
ダイノランスを横薙ぎに振るうとともに、無数の竜巻を発生させ、敵を飲み込む技。
元ネタは『ゴッド・オブ・ウォー:ラグナロク』でのドラウプニルの必殺技「ヴィンドスヴァルの暴風」から。因みにヴィンドスヴァルとは「風の冷たき者」を意味する北欧神話の王の名前らしい。
・必勝の猟犬
空間魔法との組み合わせによる技で、投擲したダイノランスを空間魔法によって自在にテレポートさせ、瞬時に多数の敵を掃討出来る。
名前の由来はギリシャ神話に登場する猟犬ライラプスから。因みにティラノサウルスの仲間の肉食恐竜ドリプトサウルスは、かつてこの猟犬に因みラエラプスと呼ばれていた。
・羅化大者
穂先にグリムロックの炎属性のエネルギーを纏わせたダイノランスによる刺突で、貫いた敵に追加攻撃で大爆発を引き起こす技。
名前の由来は古代ギリシャ最強の軍事国家スパルタの別名。ラケダイモンから。
・亡堕葬槍
ダイノランス全体にエネルギーを纏わせ、そのエネルギーのみを投擲し、直撃した敵を大爆発で吹き飛ばす技。
名前の由来は「涙そうそう」から。エネルギーのみを投擲するという能力は、『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズにおける槍投げが元ネタ。
・マトリクス・オブ・マリス
第3章にてストレイフを操るのに利用されて以来、2年ぶりの登場。
エヒトの支配によってトータス中に蔓延る「悪意」や「怨念」のエネルギーから創られた代物で、使用者の悪意や凶暴性を増長させる効果がある。
今後、この負のエネルギーが物語に深く関わってくる…。
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