グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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ビースト覚醒、まさかの日本語版主題歌には驚きましたが、「War War!Stop it」へのリスペクトもあり、気に入りました。
覚醒オプティマスプライマルも、かなり劇中に近いデザインで、迷わず購入しました。
おかげで、映画公開当日には迷わず有給を取っちゃいました。


魂の魔法

 夜天を焦がす大爆発。ハジメがこの場にいたら、テレビの戦争系ドキュメンタリーなどで見た光景を思い出していただろう。だが、歴戦の戦士であるダイナボット達には見慣れた光景であった。

 聖教教会総本山は根こそぎ崩壊、侵攻していたディセプティコン達も殲滅した。大将であるアストロトレインを仕留めきれなかったのは悔しいが、ウルでの雪辱は果たす事ができた。上空を飛翔するグリムウイングは、アクロバティックに宙返りをすると、ギゴガゴゴと音を立てながら合体を解除し、グリムロックとストレイフに分離する。

 

「おいストレイフ、背中貸せ。ちょっと休む」

「「俺だって疲れてるっての。まあ、いいけどよ」」

「ティオ、ご苦労だったな。元に戻っていいぞ」

『うむ、叔父上には悪いが、妾も休ませて貰おうかのぉ』

 

 そう呟くと、グリムロックの手に握られていたダイノランスは再びクルクルと回転したかと思うと、人間態のティオへと戻る。彼女はそのまま、傍を飛翔するストレイフの背中に降り立った。

 グリムロックもまた、ギゴガゴゴと音をたてながら、人間態へと姿を変える。それと同時に胸部を展開して、中に入れて守っていた愛子を外へと出してやる。

 そして人間態に戻った亮牙は、胸部から出した愛子を優しくお姫様抱っこしながら、彼女の様子を確認する。彼の目に映ったのは、ショルダーポーチを背負い、普段より眩い光を放つクリエーション・マトリクスを握りしめたまま「ふええええ…」と疲れ切った感じで目を回している愛子の姿だった。

 確かに派手に動き回ったが、こんなにぐったりする程の衝撃を与えていただろうか、という疑問は湧いたが、もしかしたらそれだけではないのかもしれない。そう思いつつ、亮牙はゆっくりストレイフの背に降りると、抱き抱えていた愛子を優しく降ろす。その様子を、隣でティオが羨ましそうに眺めていたのは割愛しよう。

 

「おう、先生。しっかりしろ。終わったぞ」

「な、灘君…。よかった、無事だったんですね。…本当によかった」

「全く、流石はご主人様じゃ。まさか、妾を武器へと変えるだけではなく、あの強敵どもを蹴散らした末に聖教教会そのものを崩壊させるとは。天晴れ見事じゃよ」

 

 ぐったりとした様子ながらも、愛子は亮牙を見上げながら無事だった事に安堵する。ティオもさりげなく亮牙の隣に寄り添いながら彼を称賛する。

 

「なあ、途中からかなり力が漲ってきたんだが、アンタがマトリクスを使って手助けしてくれたのか?」

「か、勝手に灘君のポーチを開けちゃってすみません……けど、このアーティファクトから声がして……私の力を注げば、貴方達を助けられると……足手纏いのままでいるのは嫌だったので、何か力になれたらと……」

 

 亮牙の質問に対して、愛子はぐったりとしながらも事情を説明した。

 グリムロックの胸部装甲に守られていた愛子は、ウルの時と同じく何一つ力になれない己の無力さを責めていた。何か力になりたかったものの、魔法に関して高い適性は持っていても、碌な魔法陣を持っていない彼女に強力な攻撃魔法を行使することは出来なかった。

 そんな時に、ショルダーポーチに入っていたクリエーション・マトリクスが強く輝き始めたので、愛子はポーチを開けてマトリクスを取り出した。するとマトリクスから6人ほどの男の声で、自分の力を注ぎ込めばグリムロックを助けられると告げられたのだ。

 愛子には迷っている暇などなかった。その言葉を信じて、マトリクスを握りしめたまま、これまで魔法を使用してきた時を思い出しながら魔力を込めた。すると、彼女の魔力がマトリクスへと吸収されていき、更に輝きを増していったのだ。

 ちなみに、本来の愛子のステータスは以下の通りである。

 

畑山愛子 25歳 女 レベル:56

天職:作農師

筋力:190

体力:380

耐性:190

敏捷:310

魔力:820

魔耐:280

技能:土壌管理・土壌回復[+自動回復]・範囲耕作[+範囲拡大][+異物転換]・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作[+急速発酵][+範囲発酵][+遠隔発酵]・範囲温度調整[+最適化][+結界付与]・農場結界・豊穣天雨・言語理解

 

 これらの技能がマトリクスによって強化された結果、土壌回復の派生として「鉱石回復」が新たに発動し、金属生命体であるグリムロックの身体を大きく回復させた。加えて、範囲耕作の影響か、周囲にいたストレイフとティオまでも回復させていった。

 更に品種改良・混在育成が派生した結果、新たに「融合合体」という技能が発動。これにより、合体機能のなかったグリムロックとストレイフは合体してグリムウイングとなり、ティオも竜化が派生してダイノランスとなったのだ。

 

「そうか、成る程な」

「「…マトリクスは初めて見ただろうに、なんちゅう無茶するんだ。こちらのお嬢さんは…。まあ、グリムロックの恩師やってるだけはあるか…」」

「うむ。じゃがあのような姿に変わるとは、妾の長い生のうちでも思いつかんかった。流石、ご主人様の先生殿じゃ。感服じゃよ(それに妾もご主人様との合体技が使えるようになるとは!後でシアに自慢せんとのぉ〜♡)」

 

 愛子の説明を聞き終わり、三人はそれぞれ異なる反応を示す。亮牙は素直に愛子がしてくれたことに感心し、ストレイフはリスクも省みず無茶をした愛子に呆れる。ティオは愛子に感服していたが、内心ではシアに自慢するネタが出来たと喜んでいた。

 

「ふへへへ……私なんかでも、灘君達の力になれたのなら、何よりです……そ、そういえば教会の皆さんはどうなりました?イシュタルさん達以外にも、まだ中には沢山いたと思いますが…」

 

 愛子は疲れ切った様子ながらも、亮牙達の役に立つ事が出来たと悟り、満足そうに微笑む。だがすぐに、まだ生き残っていた筈の正教教会の残党がどうなったのか気になり、廃墟と化した教会に視線を彷徨わせる。

 だが、亮牙達はどうでも良いらしく、瓦礫の山々には視線も向けようともしない。

 

「知ったことか。どうせ生き残ってた奴等も、コンズの攻撃で全滅してるに決まってる。仮に生き残りがいたとしても、さっきまで殺そうとしていた敵に助けられたくねぇだろ」

「連中もまさか、地下から攻めてくるとは思いもしなかったじゃろうのぉ。おまけにあの一撃を受けては、助からんじゃろ」

「ま、まあ……そうですよね……あははは……」

 

 教会関係者達に対して容赦のない辛辣な物言いに、苦笑するしかない愛子。目の前で多少は顔馴染みだった人間が大量に死んだ事に、彼女とて思うところがないわけではない。しかしイシュタル達は、散々この世界のために行動した教え子達への恩を仇で返した挙句、愛子に対しても短期間とはいえ拷問にかけた。やや甘いところがある彼女としても、ここまで非道を受けては教会関係者達に同情など出来なかった。

 取り敢えず、亮牙達を助けようとして力を使い切ってしまい、未だぐったりしたままの愛子を、亮牙は優しく抱き寄せる。「ふぇっ⁉︎」と愛子がたじろぐのを横目に、彼は宝物庫のポーチにクリエーション・マトリクスを片付けると、神水の入った試験管を取り出した。

 

「ほれ、口開けな」

「ふぁっ⁉︎ふぁい…」

 

 亮牙の顔が間近にあるため、愛子は顔を真っ赤にしながらも、言われた通り口を開けて試験管を咥える。中の神水が口内へと伝わり、それをゆっくり飲んでいくと共に、弱り切った身体が徐々に回復していくのを感じた。

 愛子が回復したのを確認すると、亮牙は優しく笑いながら、いつもの調子で憎まれ口を叩いた。

 

「ったく、ペチャパイの幼児体型のくせして豊穣神なんかに祭り上げられたと思ったら、今度は勝利の女神になっちまうとはな。ほんとアンタには驚かされるよ」

「ぺ、ぺ、ペチャパイ!!?な、灘君!なんて失礼な事を言うんですか!!?た、確かにシアさんやティオさんに比べたら小さいかもしれませんが、女性に向かって容易くセクハラ発言しないでください!ましてや私は貴方の教師ですよ!」

「何だよ、そんなに気にしてるなら揉んでデカくしてやるぞ?」

「だ〜か〜ら〜!少しは胸から話題を変えてください!」

 

 気力が戻ってきた愛子は、セクハラ発言で揶揄ってくる亮牙に、いつもの調子で怒り出す。「うが〜!」と子どもっぽい雰囲気で亮牙に反論する姿は、教師と生徒と言うよりは、カップルが戯れあっているかのようだ。

 そんな中、亮牙は愛子の前髪をかき分けると、彼女の額をさらけ出す。

 

「とまあ冗談はさておき、今回はアンタのおかげで助かったよ。これは俺からの礼だ」

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

 

「ふぇっ?」

 

 一瞬、何をされたのか分からず愛子は呆気に取られる。やがて、額にキスされたと悟り、ハッと我に返った彼女は、羞恥やら何やらで顔を真っ赤に染め上げた。

 

「な、な、灘君!!?何ですか今のは!!?」

「俺なりの感謝のつもりだ。口じゃなくて悪いな。シアに申し訳ないからよ」

「いやいや!そうじゃないです!!?せ、先生にキ、キ、キスするなんて!!?」

「まあ、流石にエイリアン相手じゃ嫌だったか。悪いな」

「そうじゃないです灘君!そうじゃないですってば〜!私と君は教師と生徒〜!!!」

 

 真っ赤になりながら、口をパクパクさせる愛子。心なしか、亮牙の名を呼ぶ声に熱が篭っている。上目遣いに彼を見つめる瞳も熱っぽくうるうると潤んでいた。どう見ても、ただの羞恥心だけから来るものではなく、特別な感情が窺える表情だ。

 

「あ〜ん!シアや愛子殿ばかりずるいのじゃあ〜!妾も早くご主人様からのご褒美が欲しいのじゃあ〜!!!」

 

 そんな砂糖を吐きそうな光景を前に、ティオも遂に我慢の限界を迎えた。悔し涙を流しながら、その爆乳を押し付けるように亮牙に抱き着いた。早く自分にも褒美をくれと、まるで犬の如く息を荒げている。

 

「おう、ティオもありがとよ。そういえば、グリューエンでの礼も忘れてたっけな。ほらよ」

 

モミュモミュモミュ♡

 

「あんっ♡ああんっ♡そうじゃ♡これを待ち望んでおったのじゃあ♡あ〜ん♡もっと揉むのじゃあ♡何なら吸うなり好きにして構わんぞ〜♡」

「シアに悪いから、揉むだけで我慢してくれ」

「あ〜ん♡ご主人様のいけず〜♡でも気持ち良いのじゃあ〜♡」

「ちょっ!!?灘君!何やってるんですか!!?破廉恥ですよ!」

「何だよ、アンタも揉んで欲しいのか?」

「んにゃあああああ〜!!?」

 

 グリューエン大火山での活躍も労う意味合いで、ティオの爆乳を服越しに揉みしだく亮牙。労いとしては最低かつ下品極まりないが、当のティオは念願が叶ったと言わんばかりに歓喜する。

 愛子が堪らず顔を真っ赤にして亮牙を叱るが、逆に亮牙に揶揄われ、目をぐるぐるさせながら奇声を上げてしまう始末だ。

 

「「………お前らなぁ───

 

 

 

 

 

 ───他人の背中の上で乳繰り合ってんじゃねぇえええ!!!叩き落とすぞぉぉおおおっ!!!」」

 

 背中の上で馬鹿な事をしている連中に、遂にストレイフの怒りが爆発する。ここで振り落としても文句は言われないのに、怒鳴るだけで済ますあたり、彼の人柄が窺える。

 

「「ったく、俺の身にもなれ───

 

 

 

 

 

 ───おいグリムロック。誰かいる。明らかに普通じゃねえぞ…」

 

「何?」

 

 その一言に、あの爆発で生き残った者がいるのかと驚きながら、亮牙はティオの胸から手を離すと、ストレイフの視線を追う。するとそこには確かに、白い法衣のようなものを着た禿頭の男がおり、亮牙達を真っ直ぐに見つめていた。更にストレイフが「普通ではない」と言った通り、その体は透けてゆらゆらと揺らいでいた。

 禿頭の男は、亮牙達が自分を認識したことに察したのか、そのまま無言で踵を返すと、歩いている素振りも重力を感じている様子もなくスーと滑るように動いて瓦礫の山の向こう側へと移動した。そして、姿が見えなくなる直前で振り返り、亮牙達に視線を向ける。

 

「何だあのハゲ?あの頃のキ○タマみてぇな面しやがって」

「「あの頃のキ○タマって何だよ…。普通について来いって言ってる感じだぜ?どうする?」」

「…そうだな、さっさとハジメ達と合流すべきだが、元々、ここも攻略予定だったしな。野郎が手がかりになるなら、追いかけるべきか」

「「そうだな。では、追うとするか」」

 

 ストレイフは亮牙の判断に頷くと、翼をはためかせ瓦礫の山の上に降り立ち、背中の三人を降ろして人間態となる。

 

「あぅ、す、すみませんストレイフさん…。さっきは見苦しい姿を見せてしまって…」

「気にするな、お嬢さん。元はと言えばグリムロックが悪いんだ」

「おい、何で俺が悪いんだ」

「どの口が言ってる!他人の背中の上で嫁入り前の女子達に破廉恥な真似しやがって!」

「妾は気にしておらんぞ?寧ろご主人様にはもっと妾を堪能して欲しかったのぉ。愛子殿も同じであろう?」

「お嬢まで馬鹿な事言ってんじゃねぇ!」

 

 先程まで姦しく騒いでいた愛子が、羞恥と申し訳なさで小さな体を更に小さくして謝罪する。どうやら人前だった事を思い出し、恥ずかしくて堪らないのだろう。

 ストレイフは亮牙が悪いと分かっていたので、気にするなと声を掛けるが、そう簡単に割り切れるものでもない。なにせ、先程のやり取りで、愛子自身自分の気持ちを認めつつあり、それ故に、特に亮牙に対しては色々と思う所があるのだ。

 しかし、いつまでも縮こまっていられても困るので、亮牙はさっさと話題を転換する。元はと言えば彼が悪いのだが。

 

「先生、俺のそばから離れるなよ。あのハゲの正体を確かめに行くが、何があるか分からんからな」

「は、はい。分かりました。灘君に付いていきます!」

 

 最後の付いて行くという言葉に妙な力と熱が篭っていたような気がする亮牙だったが、敢えて気がつかない振りをして、禿頭の男が消えていった場所に歩を進めた。

 禿頭の男は、その後も、時折姿を見せては亮牙達を誘導するように瓦礫の合間を進んでいく。そして、五分ほど歩いた先で、遂に目的地についたようで、真っ直ぐ彼らを見つめながら静かに佇んでいた。

 

「テメェは何者だ?あの頃のキ○タマみてぇな面しやがって」

「頼むからキ○タマから離れろ…」

「……」

 

 禿頭の男は、亮牙の失礼な質問には答えず、ただ黙って指を差す。その場所は何の変哲も無い唯の瓦礫の山だったが、男の眼差しは進めと言っているようだ。問答をしても埓があかないと判断した亮牙は、仲間達と頷き合うとその瓦礫の場所へ踏み込んだ。すると、その瞬間、瓦礫がふわりと浮き上がり、その下の地面が淡く輝きだした。見れば、そこには大迷宮の紋章の一つが描かれていた。

 

「…テメェ、解放者か?」

 

 亮牙が質問したのと、地面が発する淡い輝きが彼らを包み込んだのは同時だった。次の瞬間には、亮牙達は全く見知らぬ空間に立っていた。それほど大きくはない、光沢のある黒塗りの部屋で、中央に魔法陣が描かれており、その傍には台座があって古びた本が置かれている。どうやら、いきなり大迷宮の深部に到達してしまったらしい。

 亮牙達は、魔法陣の傍に歩み寄った。亮牙は何が何やらと頭がこんがらがっている愛子の手を引いて、ストレイフやティオと頷き合うと精緻にして芸術的な魔法陣へと踏み込んだ。

 と、いつも通り記憶を精査されるのかと思ったら、もっと深い部分に何かが入り込んでくる感覚がして、思わず四人とも呻き声を上げる。あまりに不快な感覚に、一瞬、罠かと疑うも、次の瞬間にはあっさり霧散してしまった。そして、攻略者と認められたのか、頭の中に直接、魔法の知識が刻み込まれる。

 

「…これが魂魄魔法か?」

「う~む。どうやら、魂に干渉できる魔法のようじゃな…」

「ああ、漸くプライム達の言ってた魔法を手に入れたぜ」

 

 いきなり頭に知識を刻み込まれるという経験に、頭を抱えて蹲る愛子を尻目に、亮牙は納得顔で頷くと、脇の台座に歩み寄り、安置された本を手にとった。

 どうやら、中身は大迷宮「神山」の創設者であるラウス・バーンという人物が書いた手記のようだ。オスカー・オルクスが持っていたものと同じで、解放者達との交流や、この神山で果てるまでのことが色々書かれていた。その中には、なぜ映像体としてだけ自分を残し、魂魄魔法でミレディのように生きながらえなかったのかも、懺悔混じりの言葉で理由が説明されていた。そして、最後の辺りで、迷宮の攻略条件が記載されていたのだが、それによれば、先程のラウス・バーンの映像体が案内に現れた時点で、ほぼ攻略は認められていたらしい。

 というのも、あの映像体は、最低、二つ以上の大迷宮攻略の証を所持している事と、神に対して信仰心を持っていない事、あるいは神の力が作用している何らかの影響に打ち勝った事、という条件を満たす者の前にしか現れないからだ。つまり神山のコンセプトは、神に靡かない確固たる意志を有すること、のようだ。

 おそらくだが、本来、正規のルートで攻略に挑んだのなら、その意志を確かめるようなあれこれがあったのではないだろうか。愛子も攻略を認められたのは、長く教会関係者から教えを受けておきながら、そんな信仰心より生徒を想う気持ちを揺るがせなかったから、あるいは教会の打倒に十分手を貸したと判断されたからだろう。長年にわたりエヒトに毒されたトータス人達には実に厳しい条件だが、マキシマル一行には軽い条件だった。

 ようやく、神代魔法を手に入れた衝撃から立ち直った愛子を促して、台座に本と共に置かれていた証の指輪を取ると、亮牙達は、さっさとその場を後にした。再び、ラウス・バーンの紋章が輝いて元の場所に戻る。

 

「先生、大丈夫か?」

「うぅ、はい。何とか…。それにしても、すごい魔法ですね…。確かに、こんなすごい魔法があるなら、日本に帰ることの出来る魔法だってあるかもしれませんね」

「まあな。それに、この魔法さえ手に入れちまえば、もうエヒトは詰んだも同然だ」

「え?どういう意味ですか?」

「ああ。そう言えばそれについて話してなかったな…。まあ、ハジメ達と合流してから話すよ」

「あっ、そうです!王都が襲われているんですよね?みんな、無事でいてくれれば…」

 

 愛子が、こめかみをグリグリしながら納得したように頷く。その表情は、ここ数日の展開の激しさに疲弊しきったように疲れたものだったが、帰還の可能性を実感できたのか少し緩んでいる。だが、亮牙の言葉に、王都が現在侵攻されている事を思い出し、心配そうな表情で祈るように胸元をギュと握り締める。

 

「取り敢えずハジメ達と合流したら、直ぐに此処に戻るぞ。アイツらも魔法を獲得した後は、さっさとおさらばだ」

「…やっぱり、王都は見捨てるつもりですか?」

「当然だ。それとも、俺の手で滅ぼしてやろうか?」

「うっ……でも、天之河君達が聞き入れてくれるでしょうか?」

「その時はあの馬鹿共も見捨てるまでだ」

 

 そう言いながら、亮牙達は下山を開始した。といっても、神山から王都へ降りるための唯一の手段であるリフトは戦いの余波で破壊されてしまっている。そのまま飛び降りても構わないが、愛子もいるので、亮牙が空間魔法を使って王宮まで即行で移動する事にした。

 神代魔法の凄まじさに改めて驚かされる愛子を促すと、王宮にテレポートした亮牙達は、まず匂いを辿ってハジメと優香達がいる場所に向かう。

 そして、合流した先で見たものは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───光輝達を取り押さえる、()()()()()()()()()()()()()()と、

 

 

 

 

 

 全身火だるまとなり、既に息絶えた優香の姿。そして…

 

 

 

 

 

 異様な雰囲気の香織に片手で首元を掴まれ、腹を槍で貫かれたハジメの姿だった。

 

 

 

 

 

 亮牙がその光景を目の当たりにした瞬間、地獄の門が開いた。

 

 

 

 

 




「あの頃のキ○タマ」は、私も愛読している漫画『ドンケツ』が元ネタです。

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