グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

105 / 105
お待たせしました。遂に奴が登場します。

もう時期ビースト覚醒のDVDが発売ですが、皆様はどれを購入しましたか?


堕落せし者

「パーティに参加していいかな?あいにく招待状は持ってないけど!」

 

 その声を聞き、生き残っていたクラスメイト達は声のする方へ視線を向ける。そこに立っていたのは、まるでアクション映画の俳優の如く、ロケットランチャーを構えたハジメであった。

 

「ワッザ!?クローンヤ○ザ!!?」

 

 メルドと同じ顔の敵が無数にいる現状に、思わずハジメは素っ頓狂な声を上げる。だが素早く気持ちを切り替えると、宝物庫からガトリングを取り出し、ファクシミリ達へと照準を定める。何体かのファクシミリは一斉に「ザッケンナコラー!」と叫び、メイスを展開して突っ込んできたが、手遅れだった。

 

「レックンルール!!!」

 

ドルルルルルルルッ!!!

 

「「「「「グワーッ!!?」」」」」

 

「「「「「うわぁあああああ〜!!?」」」」」

 

「うぎゃあっ!!?」

 

 その一声と共に、ガトリングの銃身が回転し、無数の銃弾が真っ向から突進してきたファクシミリ達に襲いかかった。突っ込んでいった者達はあっという間に蜂の巣にされ、赤い血の代わりにエネルゴンを撒き散らしながら倒れていく。

 大半のクラスメイト達は地面に押さえつけられていた事が幸いし、流れ弾に巻き込まれる事はなかったものの、吹き荒れる殺戮の嵐に悲鳴をあげる。約一名、龍太郎は逃げようとしたところ、流れ弾が尻に直撃し悲鳴をあげる。

 

 

「ちょっ!?南雲!?いきなりロケットランチャーやらガトリング砲やらぶっ放さないでよ!?」

「この状況じゃ仕方ないでしょ!」

「あんたはシュワちゃんか!?」

 

 宮崎や菅原は突然の事態に唖然としつつも、慌ててハジメの名を呼ぶ声の方へ顔を向ける。そして、吹き飛ばされたファクシミリ達の残骸の隙間から、ここにいるはずのない親友の姿を捉えた。夢幻ではない。確かに、優香が慌てた様子でハジメにツッコミを入れていた。

 

「奈々!妙子!助けに来たわよ!」

「「優香(っち)!!!」

 

 優香は、広場の入口から兵士達に囲まれる親友達へ必死に声を張り上げた。そして、アーティファクトのナイフを構えると、巧みな手捌きでファクシミリ達目掛けて投擲していく。素早い動きに避けきれなかったファクシミリ達の身体をナイフが切り裂いていくが、致命傷には至らなかった。

 

「「「「「ザッケンナコラー!!!」」」」」

 

 意味不明な罵声を上げながら、再び動き出したファクシミリ達がメイスを振り上げ、優香へと襲いかかろうとする。だが、今回はそうは容易くはいかなかった。

 

「今だ!」

「食らえ!」

「「「「「アイエッ!!?」」」」」

 

 ファクシミリ達が応戦しようとして自分達の拘束を緩めた一瞬の隙をつき、遠藤や愛ちゃん親衛隊の面々が反撃に出た。各々が自分の持つアーティファクトを使ってファクシミリ達の拘束から逃れると、ハジメと優香の傍へと避難する。六人とも負傷してはいるものの、致命傷ではなさそうだ。

 ファクシミリ達はメイスを振り上げて襲いかかったが、寸前のところで光の障壁が六人を守った。そのうちにハジメが容赦なくファクシミリ達を射殺していく。

 

「な、なんでメルドが!!?これは一体どういうことです!?」

 

 遠藤達を守ったのは、彼女のすぐ後ろにいたリリアーナだった。自達を包むように球状の障壁を発動する。リリアーナは、戦死した筈のメルドが大量におり、光輝達を殺そうとしている状況にひどく混乱していた。障壁を張りながら、誰でもいいからと説明を求めて声を張り上げる。

 リリアーナは術師としても相当優秀な部類に入る。モットーの隊商を全て覆い尽くす障壁を張り、賊四十人以上の攻撃を凌ぎ切れる程度には。なので、ファクシミリ達の猛烈な攻撃を行ったところで、持ち堪えるには充分であった。

 

「こ…の…腐れキモオタがぁぁぁっ!!!」

「わっ、泥棒みたいな顔」

 

 そんな中、リリアーナの叫び声を遮るように、凄まじい怒鳴り声が響き渡る。声の主は恵里だ。但し今は、先程までの余裕に満ちた様子は一切なかった。

 ハジメの放ったロケットランチャーは、火力こそいつもより大分抑えていたが、顔面に直撃した事で恵里の髪はチリチリに焦げている。歯も何本かへし折れ、煤で真っ黒になった顔はまるでコントかアニメのようだ。憤怒の形相となった恵里だが、あまりにも惨めで滑稽な姿に、思わずハジメは吹き出してしまった。

 

「お前といい!あの半グレ野郎の灘といい!何度も僕の計画を邪魔しやがってぇ!」

「はぁ?僕ら君達に無関心だったじゃん。何を邪魔したってのさ?」

「黙れぇ!灘の腰巾着の分際でぇ!大人しく僕の思い通りにしていれば香織をくれてやったのにぃ!」

「いや、僕そんな事頼んでないし欲しくもないから。てか君が連んでた坂上君の方がよっぽど腰巾着でしょ」

「余裕こいてんじゃねぇぞぉ、キモオタがぁ!!!」

 

 売り言葉な恵里に買い言葉で返答するハジメ。それが癪に触ったのか、恵里は更に怒り狂う。マキシマルにそんな意図はなかったとは言え、これまで散々悪巧みを邪魔された事で腑が煮えたぎっているようだ。

 

「…この状況、中村さんが裏切り者で間違いないみたいね」

「ゆ、優香っち…どうして南雲っちと一緒に?イシュタルさんからは愛ちゃん先生と一緒だって聞いてだけど…」

「そんなの嘘よ!教会もあのディセプ何たらとグルなのよ!愛ちゃんは奴等に攫われて、灘が今助けに行ってる!」

「はぁ!?マジかよ!?」

「こんな時に嘘吐く余裕なんてないわよ!」

 

 清水と同じく敵に寝返ったクラスメイトがいる事は、あらかじめ分かっていたとは言え、露わになった恵里の本性を前にして、悔しそうに歯噛みする優香。そんな彼女から、教会の裏切りや愛子が攫われた事実まで聞かされ、遠藤や愛ちゃん親衛隊の面々は驚きを隠せない。

 なお、未だ逃げきれていないのは、光輝達勇者パーティの五人だ。鈴は親友だと思っていた恵里の裏切りに放心状態で、光輝は未だファクシミリ達に拘束状態、流れ弾が尻に直撃した龍太郎は「痛ぇ〜」と悶絶している。雫はニアに化けたプリテンダーに拘束されていたが、ハジメの銃撃でプリテンダーが射殺された事で、ファクシミリ達に袋叩きにされてぐったりしている香織の傍へ這うように駆け寄っている。

 

「どいつもこいつも、僕と光輝君の仲を邪魔しやがって!こうなったらぁ!」

 

 そうこうしているうちに、恵里は懐から何かを取り出した。何らかの液体が入った試験管のようだが、その中身は見るからに毒々しい紫色であった。ハジメはヤバい代物だと見抜き、銃撃して破壊しようとしたが、割り込んできたファクシミリ達への応戦で、恵里がそれを飲み干すのを止められなかった。

 

「ぐ…う…ヴェアアアアアアアアッ!!!」

 

 すると、みるみるうちに恵里の背中が盛り上がったかと思うと、衣服を突き破り、蜘蛛に似た四本の節足が飛び出してきた。口には吸血鬼の如く鋭い犬歯が突き出し、額にも蜘蛛のように無数の小さな眼が出現する。

 あまりにも醜悪に変貌したその姿に、優香達は「ひっ」と小さな悲鳴をあげ嫌悪感を露わにする。対するハジメは冷静だ。その変貌ぶりは、かつて倒したレイスや檜山と似ていたからだ。

 

「聞くまでもないだろうけど、ディセプティコンからの提供品かい?」

「そうさぁ!ショックウェーブが神代魔法とやらで開発した秘薬『アポミネーション』さ!容姿が酷くなるから使いたくなかったけど、お前を殺して光輝君を手に入れられるなら安いものさ!」

「呆れたもんだね。檜山と同じく、ディセプティコンの奴隷に成り下がるなんて…」

「あんな腰抜けのチンピラと一緒にするなぁ!その減らず口二度と叩けなくしてやるぅ!ホラ行けぇ!」

 

 既に理性を失いつつある恵里は、余裕を崩さないハジメの態度に激昂すると、ゾンビ兵にしたホセと居残り組達を差し向ける。かつてのクラスメイト達が生気の抜けた姿でこちらに迫ってくる姿に、優香達は戦慄するものの…

 

「舐めるな」

 

 ハジメはそう短く呟くと、独特の回転音と射撃音を響かせながら、ガトリングを連射する。ディセプティコン達との戦いで多用され、たった今ファクシミリ達を多数仕留めた破壊の権化を解き放たれて、たかだかゾンビ如きが一瞬でも耐えられるわけがなかった。

 電磁加速された弾丸は、一人一発など生温いと言わんばかりに全ての障碍を撃ち砕き、広場の壁を紙屑のように吹き飛ばす。ホセと居残り組達は、その貴賎に区別なく体を砕け散らせて原型を留めない唯の肉塊へと成り下がった。

 恵里は伏せた事で難を逃れたが、立ち上がろうとした瞬間、一瞬で間合いを詰めたハジメがその顔面を殴り飛ばす。亮牙達には大きく劣るとは言え、奈落の底と過酷な戦いで鍛えられた剛腕は、アポミネーションで身体的に強化されていた恵里の顔面に直撃、突き出た牙がへし折れて飛び散った。

 

「こ…の…巫山戯るなぁぁぁッ!!!」

「へっ?きゃあああああ!!?」

「「優香(っち)!!?」」

 

 痛みに悶絶しながらも、強化された肉体のお陰で何とか踏ん張った恵里は、すかさず口から蜘蛛の如く白い糸を吐き出す。しかし狙ったのはハジメではなかった。彼の後ろにいた優香だ。

 優香は、既に死んでいたとは言え、クラスメイト達を躊躇なく肉塊に変えたハジメに呆気に取られていた事が災いし、避けきれずに糸に捕まってしまう。親友の悲鳴に、宮崎と菅原が慌てて手を伸ばすが間に合わず、彼女は勢い良く恵里の足元まで引き摺り込まれた。

 

「お前も死ねぇぇぇ!!!」

 

 恵里は怒りに満ちた表情のまま、背中から生えた節足の一本を槍のように振り下ろし、優香を殺そうとする。避けきれないと悟った優香は、思わず目を瞑るが…

 

「させるか!」

 

ビュンッ!!!

 

ズサッ!!!

 

「グギャアアアアッ!!?」

 

 ハジメが隙だらけの恵里を見逃す筈もなかった。彼は片腕で優香を掴み引き寄せると、もう片方の手に宝物庫から取り出したテラクサドンを握りしめ、恵里の節足を叩き切る。傷口から血が飛び散り、恵里が苦悶の声を上げる。

 

「ったく、油断しないでよ!」

「ご、ごめん…////」

 

 片腕に抱き寄せた優香を叱るハジメ。優香はすまなそうに謝るが、何処か恥ずかしそうに顔を赤らめている。それを目にした恵里は、更に怒りを爆発させる。

 

「イチャついてんじゃねえそぉ!僕の恋路を邪魔しときながら巫山戯んじゃねぇ!!!」

「いや、してないから。被害妄想はやめてくれない?」

「殺す殺す殺す!お前だけは絶対殺してやるぅ!」

「やってみろ、蜘蛛野郎(ブラックウィドー)!!!」

 

 ハジメは抱き寄せていた優香を降ろすと、喚きながら更に攻撃を仕掛けてくる恵里に威勢よく啖呵を切り、迎撃態勢に入る。優香は場違いとは分かりつつも、その勇ましい後ろ姿に見惚れずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメと恵里が壮絶な死闘を繰り広げる一方、自分を囲んで棒で叩いていたファクシミリが応戦のために離れた事で、何とかリンチから解放された香織。だが、身体中の至る所を殴られた事で、全身に酷い傷を負っている。腕や足などは骨を折られ、曲がってはいけない方向に曲がってしまっている。

 

「香織!しっかりして!香織ぃ!」

 

 その傍では、同じく拘束から運良く逃れた雫が這うように近づいてきて、必死に体を揺さぶりながら声をかけている。本来、重症者にこんな事するくらいなら応急処置でも施し、適切な治療を処置すべきなのだが、戦闘職の雫には治癒魔法など使える筈もない。

 おまけに雫自身、心の拠り所であった親友の無惨な姿に、いつもの冷静さを失ってしまっていた。今もこうして、まるで怯える幼子のように泣き喚きながら、動けない香織の身体を揺さぶるだけだ。

 一方の香織は、辛うじて意識はあったのだが…

 

(な…んで…?…ハジメ君…)

 

 その視線は、自分の身体に縋り付いて泣き叫ぶ幼馴染でも、今なお囚われの身となっている他の幼馴染でもなく、裏切った友人と死闘を繰り広げる意中の男へと向けられていた。但し今回は、その勇姿に見惚れているわけではなかった。

 自分は今までずっと彼を想ってきたし、今もその気持ちに揺らぎはない。だがその彼は、敵に嬲られて死にかけている自分に見向きもしないどころか、気づいてすらいない。だというのに、今まで彼を見下してきたクラスメイトの女の一人には手を差し伸べ、今も裏切り者と敵を惹きつけながら、彼女を攻撃から逸らすように守っている。自分との扱いの差があり過ぎる。

 

(何で…?こんなに君を想ってるのに…何で私を見てくれないの…?その子も…この前まで君に辛く当たっていたのに…何で優しくするの…?何で…私を拒絶するの?何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で───

 

 認めたくない、無情な現実を前に、香織の心はズタズタに破壊されていく。嫉妬、怒り、悲しみ、絶望。普段の彼女らしくない、そうしたあらゆるどす黒い感情が次々と込み上げてきて、光を失った瞳から一筋の涙が零れ落ちた。

 

 

 

 

 

「憎め」

 

 

 

 

 

(………え?)

 

 ふと、香織の頭の中に、かつてホルアドで囁いてきた、あの謎の声が聞こえてきた。

 

「全てを憎め。お前を裏切った友人を。何の役にも立たない幼馴染共を。お前の愛する男に色目を使う女を。お前を拒絶した愛する男を。何より奴を唆した灘亮牙をな」

(………………憎む)

「そうだ。その憎しみは正当なもの。拒絶する事なく、ありのまま受け入れるが良い」

 

 再び響く悪魔の囁き。これまでの香織なら、憎しみなど無縁の感情だったが、今は違う。このトータスに来てから味わった理不尽の数々に、既に彼女の精神はすっかり疲弊しており、邪悪な感情に身を委ねていく。

 

(憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!全てが憎い!!!

 

「ならば俺に任せるが良い。お前はゆっくり休んでおれ」

 

 謎の声がそう呟くとともに、どす黒い感情に染まっていった香織の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪物と化した恵里と壮絶な死闘を繰り広げていたハジメは、突如として凄まじい殺気を感じ取った。目の前の恵里やかつて檜山が放っていた、粘着質なものではない。今まで感じた事のない、あまりにも強過ぎるプレッシャーが肌に伝わる。少なくとも、恵里から放たれているものではない。

 冷や汗を流しながら、思わず殺気の放たれた方を睨む。戦闘中に余所見など自殺行為だが、どうやら恵里もこの殺気を感じ取ったらしく、青褪めた顔で同じ方向に振り向いている。

 二人の目に映ったのは、先程まで倒れ伏していた筈の香織が起き上がっている姿だった。但し、様子が明らかにおかしい。変な方向に折れ曲がっていた筈の手足が嘘のように元通りに完治している。何より、二人が感じ取った、どす黒い殺気が彼女から放たれているのだ。

 

「か、香織…?」

「白崎…さん…?」

 

 今なおファクシミリ達に取り押さえられている光輝、必死にファクシミリ達に応戦していた優香、防戦一方のリリアーナ達も、当初は香織が無事だったのかと安堵するが、突如として雰囲気が変わった事に戸惑いを隠せずにいた。だが、傍にいた雫のみは、直ぐに分かった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

「貴方は…誰…!?香織は…」

 

 

 

 

 

「口を慎め、下郎」

 

「ガハッ!!?」

 

「「「っ!!?」」」

 

 普段の声ではなく、禍々しい男の声でそう吐き捨てたかと思うと、香織は雫へ手を翳す。その瞬間、見えない何かに押し潰されるような凄まじい圧力が雫に襲い掛かり、彼女は容赦なく地面に倒れ伏し動けなくなった。

 ハジメも恵里も優香達も、今までの香織からは想像もつかないような行動と、まるでサイコキネシスのような技に思わずギョッとなる。当の香織は、真紅に輝く瞳でハジメを睨みつけたかと思うと…

 

ビュンッ!

 

「なっ!?うぐっ…!!?」

 

 瞬間、香織の姿が消えた。思わず目を見開くハジメだが、当の香織は一瞬で彼の目の前に現れたかと思うと、ハジメの首元に掴みかかった。片手だけだというのに、明らかに普段の彼女からは考えられない凄まじい怪力で首を絞められ、ハジメは苦しそうに踠く。

 

「おいおいおい!負けヒロインの分際ででしゃば…「喧しい」ひでぶっ!!?」

 

 とっくにくたばったと見做していた香織がいきなり乱入してきた事で、恵里が食ってかかったが、彼女もまた香織が手をかざしたかと思うと、勢いよく吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。

 香織はフッと鼻を鳴らすと、これまでハジメが見た事ない邪悪な笑みを浮かべながら口を開く。

 

「…さてと。地球人如きの身体を借りねばならんのは気に食わんが、案外充分動けるものだな」

「…は?か…身体を借りる…?」

「やはり、此奴に目をつけて正解だった。此奴の憎しみを増長させたグリムロックには感謝せんとな」

「お前…白崎さんじゃ…ないな…」

「さてと小僧、貴様とは初対面だが、エヒトルジュエが随分と貴様らに怯えていてな。貴様らには俺の手駒も消されている以上、報いは受けてもらうぞ」

「手駒…⁉︎お前、まさか…!!?」

 

 その言葉に、ハジメは香織が操られている事、そして操っている者の正体を悟り、戦慄する。一方の香織はもう片方の手をファクシミリ達の残骸に手をかざすと、その体を構成していた金属を錬成して即席の槍を作り出す。

 敵が何をしようとしているかを悟ったハジメは、咄嗟に「金剛」を発動して、全身を防御する。本来なら銃で反撃したいが、首を締め上げる凄まじい力を少しでも抑えるため、両手で相手の腕に掴みかかり抵抗しなければならない。

 

グサッ!!!

 

「ぐあっ…!!?」

 

 次の瞬間、香織は錬成した槍を握りしめ、ハジメの腹に深々と突き刺した。「金剛」を使っていれば並大抵の攻撃は防げる筈だが、この一突きはそれを凌駕する威力で、容赦なくハジメの腹に貫通した。

 思わず苦悶の声を上げるハジメ。常人なら即死していたが、奈落の底でのサバイバルで肉体が強化されていた事が幸いし、何とか致命傷には至らなかった。

 

「ほう…これを食らいながらも生きているとは「ダメェェェ!」…喧しいな」

 

 腹を刺し貫かれながらも耐えるハジメに、香織は感心したようだが、突如聞こえてきた叫び声に、苛立たしげに声のする方を睨み付ける。

 叫んだのは優香だった。彼女も香織の豹変ぶりに硬直していたのだが、ハジメが槍で刺されたのを目の当たりにし、なりふり構わず突っ込んできたのだ。

 優香にとって、ハジメは何度も自分達を助けてくれた恩人だ。彼に抱く感情は、単なるクラスメイトから大きく変わり、大切な存在になりつつあった。そんな相手が、目の前で殺されかけている。そんな光景を前にして、冷静でいられる筈などなかった。

 香織は冷酷な瞳で優香を睨み付けると、ハジメを貫いた槍から手を離し、突進してくる彼女へとかざす。何か恐ろしい事をするつもりだと悟ったハジメは「止めろ…!」と叫ぶが無駄だった。

 

「死ね」

 

ゴォオオオオオオオッ!!!

 

「ああああああああッ!!?」

 

「「優香(っち)!!?」」

「園部さんッ!!?きゃあっ!!?」

「「「「「ワドルナッケングラー!」」」」」

 

 次の瞬間、香織の手からグリムロックにも匹敵する業火が発生し、優香へと襲い掛かった。避ける事も出来ず炎に飲み込まれた優香は、全身を焼かれてその場に崩れ落ちた。

 親友が焼き殺された光景に、宮崎と菅原が悲鳴を上げる。リリアーナや遠藤達男子も動揺し、その一瞬の隙をついたファクシミリ達が障壁を破壊、再び彼らを取り押さえる。

 

「こ…の…クソッタレがぁ…!」

 

 惨劇に激怒したハジメは、残る力を振り絞ってドンナーを取り出し、香織へゼロ距離で発砲する。光輝がこの期に及んで「止めろ南雲!」と叫ぶがお構いなしだ。

 しかし、多くの敵を滅ぼした弾丸は、確かに香織の体を貫くものの、忽ち凄まじいスピードで傷が治癒してしまい、効果をなさなかった。悪態をつく彼に香織は再び視線をやると、血の気が引くような悍ましい笑みを浮かべて告げる。

 

「…さてと、次はお前だ。精々苦しめ」

 

 そう冷酷に告げると、香織は再び槍を手に取る。今度は余計な抵抗をさせぬよう、サイコキネシスでハジメの動きを封じる。

 目に見えぬ力に押し潰されるような感覚と、更に身体へ深々と突き刺される槍に、苦しそうに顔を歪めるハジメ。その場にいる誰もが彼の死を予感するが…

 

 

 

 

 

「南雲君!!?」

 

 

 

 

 

 そこへ、ハジメ達のよく知る一人の女性の叫び声が響き渡る。その声に皆が振り返る中、ハジメは口から血を流しながらも安堵の笑みを浮かべる。

 彼らの視界に現れたのは、血の気の引いた顔で目を見開く愛子、ティオ、ストレイフに…

 

 

 

 

 

 同じく目を見開きながらも、これまでにない憤怒のオーラを放つ亮牙であった。

 

 

 

 

 




〜用語集〜
・アポミネーション
 ショックウェーブが変成魔法を使い作成したウイルス兵器。投与した生物の遺伝子を変化させる特殊なウイルスにより、肉体・細胞レベルでその生物を本来より強化させる。檜山とレイスが投与されたのもこれ。
 当初は原始的な姿へ退化させる「デジェネレーション」も考えており、その際は居残り組と龍太郎に投与させて猿にするつもりだった。

・二重面兵ブラックウィドー
 恵里が密かにショックウェーブから受け取っていたアポミネーションを自身に投与し、変貌した姿。
 クロゴケグモに因んだ名前通り、背中から蜘蛛に似た四本の節足が生えており、戦闘時には槍の如く繰り出す。更には蜘蛛のように複数の眼、毒牙を備えており、その毒は常人を数秒で死に至らしめる。
 由来は『ビーストウォーズ』のブラックウィドーから。





感想、評価お待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。