グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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タイトルはG1の「引き起こされた戦争」のオマージュです。

異常なまでの狂信ぶりで実質人族を支配していたエヒト様大好き老害ことイシュタル。原作では混乱を避けるためとはいえ、名誉の死を遂げた事にされたのには納得できなかったので、本作ではしっかり制裁を加える予定です。

それまでエタらないよう頑張りたいです。


巻き込まれた戦争

 眩い光に包まれながらも、亮牙は目を瞑らず周囲を見回した。光が晴れると、彼の視界に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。その壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が、背景の草原・湖・山々を包み込むかのように両手を広げた姿で描かれていた。

 多くの人がこの壁画を見たら素晴らしい芸術だと称賛するだろうが、亮牙にとってはかつて同族を滅ぼしたあの自称創造主を思い出させ、虫唾が走るだけだった。

 どうやら自分達は大きな広間にいるようだ。大理石製の大聖堂、その最奥の台座、そして跪く複数の僧侶らしき格好の連中。その中から、リーダー格と思われるジジイが近づいてきた。亮牙は咄嗟にハジメ(とついでに近くにいたあの教師)の前に出ると、警戒心を露わにしながら睨みつけ問いかけた。

 

「動くな、お前は何だ。ここは何処で、俺達に何をした?」

 

 するとジジイは好々爺とした表情で答えた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様にご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 本能的に亮牙はイシュタルから危険性を感じ取った。このジジイはあの自称創造主やメガトロナスと同じ類の奴だ、信用出来ないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま10mはありそうな机の並ぶ大広間に案内された。普通なら混乱するところだが、クラスの大半から盲信されている光輝が纏め上げた。亮牙やハジメもまずは状況を確認する必要があると、この場は彼に従った。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 このジジイの話を要約するとこうだ。この世界はトータスと言い、人間族・魔人族・亜人族の三種族による均衡が保たれていたが、最近魔人族が魔物というある種の災害を使役し始めて均衡が崩れたため、創造神エヒトが勇者の召喚を行うと神託を下した。あなた方の世界はこの世界から見て上位に存在するのでこの世界では強者、魔人族との戦いに力を貸してほしいと。

 亮牙達と共に飛ばされた女教師、畑山愛子は真っ先に抗議した。言葉では綺麗な事言って、結局はこの子達を戦争に徴用するつもりじゃないか、早く私達を元の世界に戻してほしいと。だがジジイはこれはエヒト様のお力で自分達人間の力では出来ない、あなた達の帰還はエヒト様次第ですと返答する。そう言われた愛子は言葉を失い、生徒達も口々に騒ぎ出した。

 

 亮牙はこのイシュタルというジジイに激しい嫌悪感を抱いた。こいつはその神とやらからの託宣を受けた事が余程嬉しかったらしく恍惚とした表情をしていたが、心底気色悪くて吐き気がした。まあ、いい歳こいた老人の恍惚した顔など誰が見ても気持ち悪いに決まっている。

 それに何よりこいつの態度が気に食わない。自分達の世界の問題に関係ない俺達を巻き込んだ癖に罪悪感を全く感じてないどころか、自分達の神に選ばれたのを名誉に思えないのかと侮蔑の表情を見せていた。

 彼はトランスフォーマー時代に多くの敵と対峙した実体験、育ての父・啓治から生前聞いたジャーナリストとしての体験談から、この老害が狂信者とすぐに見抜けた。この手の類の奴は、自分が神に選ばれた存在だと盲信し、神の名の下にどんな非道な事も行う。それに対する罪悪感など微塵も感じないだろう。

 もしこの場にいたのが自分だけだったなら、直ぐにでも殴り殺してやりたかったが、今下手に動けばハジメを危険に晒しかねないと、殺意を抑えた。隣にいる親友の顔を見ると、どうやら彼もこのジジイを信用していないようだ。

 

 暫くすると案の定、ジジイの言葉を鵜呑みにした光輝が、自分達は力があるんだからこの世界の人々を救おうなどとほざき出した。次いで龍太郎が何時もの腰巾着ぶりを発揮して追従、雫は彼ら二人だけじゃ心配だからと渋々ながらも賛同し、香織も雫がやるならといつも通りに考えなしで賛同した。

 スクールカーストのトップ4人が参戦を表明した事で、クラスメイト達も先程までとは一転、愛子の制止も聞かず参戦の流れになり、ハジメが内心まずいぞと思った時だ。

 

 

 

 

 

「巫山戯るなよ、馬鹿どもが」

 

 

 

 

 

 そう亮牙の声が響き渡り、皆が静まり返り彼を見る。ハジメは亮牙の顔を見た。どうやら相当御立腹のようだ。確かにこのまま参戦はまずいが、今の親友はかなり頭に血が上ってる。どうなるか不安だ。

 

「寝言は寝て言えよ。戦争ってのは、お互い命を奪い合うって事だぞ。害虫を潰すのとは訳が違う。さっきそのジジイは魔人族とやらを害獣みたいに言ってたが、文明を持つ知的生命体、つまり人間と対等の生物を殺さねばならない。早い話殺人をするのと同じだ。お前らは、特にそこの四人はその覚悟が出来てんのか?」

「そ、それは…だけど、この世界の人々を救うためには!」

「人間なんぞ地球にも腐る程いるんだ。世界を救うとほざくなら故郷に戻ってからやれ。そもそも何でそのジジイの言う事鵜呑みにしてるんだよ。其奴とはたったさっき会ったばかりで、言ってる事全てが真実かは分からんのだぞ。なのにあっさり自分達の運命握らせるなんて、振り込め詐欺に騙されるのと変わらねえじゃねえか」

「っ、屁理屈ばかり言うな!お前は怖くて戦いたくないだけだろう!」

「じゃあお前は自分や大事な友人が傷つき死ぬのが怖くないのか?剣道やってたら恐怖なんて感じなくなったとでも?俺は事実を述べたまでだ。戦うってのは命の奪い合いだぞ。先人達の犠牲の下に築かれた平和な世界で過ごして、そうした血みどろの世界とは無縁だったのに、力があると分かった途端スーパーヒーロー気取りか?つくづくおめでたい奴らだな」

「っ、お前はこの世界の人達の事を何とも思わないのか!」

「当然だ、見ず知らずの奴らのために自分だけでなく友人の命まで賭ける義理はない」

「困っている人に手を差し伸べる、人として当然だろ!」

「自分達の問題を他人に丸投げして、自分達は安全圏にいて何もしない癖に、罪悪感すら感じない連中の言いなりになる事がか?それじゃ奴隷と変わらんだろうが」

 

 遠慮なく正論を突きつける亮牙だが、自分を絶対的な正義と盲信する光輝は聞き入れない。ハジメと愛子も亮牙と同じく戦争には反対なので、オロオロしながらも亮牙に自然と近づき賛同する。

 

「せ、先生も戦争は反対です!灘君の言った通り私達は過去の悲惨な歴史から学んで得た平和な世界で暮らしてきたんですよ!教師として、あなた達の命を危険に晒すわけにはいきません!」

「ぼ、僕も亮牙や先生と同感だよ。そりゃ天之河君とかは武術の経験があるけど、大半がそんな経験なんてないし、殺し合いなんて尚更だ。ここは年長者の先生に従うべきだよ…」

「南雲まで、困っている人達を見捨てるつもりか!君といい灘といい、心が痛まないのか!」

「だからやりたきゃやりたい奴らだけか、最悪お前ら四人だけでやれよ。望んでない奴らまで巻き込むな」

 

 両者一歩も譲らない中、ジジイが割り込んできた。

 

「勇者様方、お話中ですかな?そろそろ王宮に案内したいのですが」

 

 これ以上口論を続けられないと判断したのか光輝が黙って歩き出し、他の面々も続いていく。雫だけは申し訳なさそうに亮牙の方を見ていたが、やがて彼女も皆について行った。残ったのは亮牙とハジメ、愛子の三人だけだった。

 

「うう、私は駄目な教師です。灘君の言ってることを私が伝えられたら良かったのに…」

「せ、先生。そう気を落とさないで…」

「無理だな。あいつら全員、先生の事なんざ見た目通りのガキとしてしか見られないんだろう」

「ちょ、亮牙!」

「いいんです南雲君。私に威厳さえ有れば、そもそも皆ちゃんづけで呼んだりしませんし…」

「…まあこうなったら仕方ない。ハジメ、先生。取り敢えず今晩、三人で今後の方針について話し合わないか?」

「うん、その方がいいかも。先生は宜しいですか?」

「…そうですね、取り敢えずは今晩落ち着いてから、どうすれば日本に帰れるかも含めて考えましょうか」

 

 そう話し合うと、彼ら三人も皆の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 亮牙達は聖教協会本山である神山の麓にあるハイリヒ王国の王城に移動することになり、建物から外に出た。外は高山のようで雲海が広がっている。そのまま歩いていき、円形の柵に囲まれ魔法陣が描かれた白い台座に皆で乗り込んだ。ジジイが如何にも狂信者らしい臭い言葉を唱えると魔法陣が輝き、台座はそのまま地上に向かい斜めに下っていく。だが亮牙やハジメから言わせれば、芝居がかった臭い演出にしか思えなかった。

 初めて見る魔法に殆どの生徒たちははしゃぐ中、亮牙・ハジメ・愛子の表情は険しかった。第二次世界大戦前の日本を含め、政治と宗教の密接な結びつきは、数多くの悲劇を招いてきた事を彼らは知っていた。脳味噌空っぽの龍太郎やマイペースな香織などはともかく、優秀なはずの光輝や雫すらその事に気付いていない様子には、つくづく呆れるしかなかった。

 雲海を抜けハイリヒ王国の王宮に辿り着いた彼らを出迎えたのはこのハイリヒ王国の国王、エリヒド・S・B・ハイリヒ、王妃のルルリアナ、第一王子のランデル、王女のリリアーナだった。ここで問題なのは国王が玉座に座らず、立って待っていたことだ。ジジイが隣に進むと国王はその手を恭しく取り、軽く触れない程度に口づけし、この国の力関係がどうなっているのかを示した。亮牙はこの瞬間、国王をジジイの傀儡、頼りにならないバカ殿と結論づけた。

 夜になると晩餐会が開かれたのだが、その際ランデル王子が香織に一目惚れしたのか積極的に話しかけてきて、彼女がチラチラ見つめる先にいるハジメを睨みつけていた。当のハジメは亮牙の側に付き添い、二人の視線に無視を決め込んでいたが。

 

 その後王宮では皆の衣食住が保証され、訓練における教官たちの紹介もされた後、各々部屋を与えられ休む事になった。同部屋を与えられた亮牙とハジメは、そこで愛子と話し合う事にした。

 ハジメはあまりにも怒涛の一日に、張り詰めたのが少し解けたのか眠気に襲われていた。気を遣った亮牙は自分だけで先生と話すから先に休むかと言ってくれたが、大事な話なんだから自分だけ休むわけにはいかない、と答えた。

 暫くしてドアをノックする音と共に愛子の声がした。亮牙達は彼女を迎え入れたが、愛子の側には招かれざる客がいた。この世界の戦争参戦の流れを作った迷惑カルテットの一人、八重樫雫であった。

 

「あ、あれ、八重樫さん?なんで先生と?」

「その、少し話がしたいと…」

「俺達が呼んだのは先生だけだ。呼ばれてもない奴はとっとと出てけ」

「よしなさい灘君!八重樫さんも今後の方針について相談したいとの事だったので、私が連れてきたんです。そんな事言わないで下さい」

「そうだよ亮牙。確かに予想外だったけど、八重樫さんなら力になってくれそうだし」

「ったく、分かったよ…」

 

 二人にそう言われた亮牙は、渋々ながらも雫の同席を許可した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人は雫を交えてこの世界が如何に歪であるかについて語り合った。

 そもそも勇者か必要ならばそいつ一人だけを召喚すれば良い話なのに、何故かクラス全員が巻き込まれた。おまけに召喚されたのが筋肉モリモリマッチョマンといった如何にも頼りになりそうな奴ならともかく、戦争の何たるかも理解してない女や若造ばかりだというのに、教会連中だけでなく王族・貴族までもが救世主だと信じて疑っていない。

 何よりそのエヒトとかいう神も信用ならない。このトータスの創造主だというなら、全ての生命を平等に扱い、自分の世界の問題を自力で片付けるはずだ。なのにこの神は一切何もせず、他所の世界の人間に自分の世界の命運を託してる。そんな事せずに自分が干渉した方が早く解決するというのに…。

 

「それなのにお前ら四人ときたら、考えなしに問答無用で参戦を決めたんだ。軽率にも程がある。何かあったらどう責任を取る?面倒ごとは全部先生にでも押しつけるつもりだったのか?」

「灘君!言い過ぎです!」

「…ごめんなさい」

「また謝罪か、謝って済む問題じゃねえだろ」

「まあまあ亮牙。問答無用で奴隷同然に扱われなかっただけでも幸いだよ。兎に角今は情報だね。戦争に参戦するか否かは今はおいといて、情報収集に専念すべきだよ」

 

 ハジメのその考えで満場一致し、その晩の話し合いは終わった。自室に戻る際に雫は、幼なじみ三人には自分からさりげなくその事を伝えておくと言ったが、どうせあの三馬鹿トリオには無駄だろうなと亮牙は考えていた。

 

 

 

 

 




原作読んだ時、今の日本は戦争の悲惨さを学んだからこそ平和な生活が送れるというのに、この時のクラスメイト達は一切自覚してなかったのには呆れましたね。ハジメが突き落とされた後や、屑二人が王都襲来で死んだ後も、その事自覚してたのか分かったもんじゃないし。

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