グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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前回のアンチもまた好評だったので安心しました。

今年は各地で恐竜展が中止されて辛い…。


仲間

 亮牙達三人が準備を終えて迷宮攻略に動き出したあと、十階層ほどは順調よく降りることが出来た。元々亮牙とハジメのコンビでも充分強かったが、新たに仲間となったユエの魔法が凄まじい活躍を見せたというのも大きな要因だ。

 そんな彼らが降り立ったのが現在の階層だ。百足やトレントの階層のように何故か此処もジャングルだったが、以前の階層ほど蒸し暑くはなかった。彼らが階下への階段を探して探索していると、突然地響きが響き渡り、爬虫類の魔物が現れた。

 亮牙はその魔物を見て、一瞬驚いた。何せその魔物は彼のかつての姿、ティラノサウルスそっくりだったからだ。但し、なぜか頭に一輪の可憐な花を生やしていたが…。

 

「…ギャグ漫画かよ」

「可愛い…」

 

 あまりにシュールな姿にハジメはツッコみユエは微笑む中、亮牙はグリムロックの姿に戻ると、同族のそっくりさんから花を引き抜いた。

 ティラノモドキは急にハッとしたようにキョロキョロと辺りを見回すと、グリムロックが投げ捨てた花を忌々しそうに何度も踏みつけた。

 ティラノモドキが満足すると、グリムロックは咆哮とは違う、何処か語りかけるような唸り声を上げた。

 

「グルル?グオッグオッグオッ」

「ガウ?グアアグアア!」

「ガウウ。グォルルルル」

 

 ティラノモドキは一瞬ビックリした表情になるも、直ぐに落ち着きを取り戻し、親しそうに唸った。それから二体は唸り声の会話を続けた。

 

「成る程、これが獣語理解の技能か」

「…え?亮牙、魔物と話せるの?」

「ユエ。気持ちは分かるけど、そこは気にしたら負けだよ」

 

 その姿にユエがまた驚きハジメが宥めていると、グリムロックは納得したように頷き、ティラノモドキは感謝の言葉のような唸り声を上げて去っていった。その後ろ姿にグリムロックは一瞬残念そうな顔をしつつも、直ぐに二人に向き直った。

 

「二人共、彼奴によるとあの花は寄生植物らしい。この階層の殆どの魔物がその植物の支配下に置かれているそうだ」

「成る程。そう言えば亮牙、さっき何処か悲しそうだったけど、どうしたの?」

「ああ…。かつての同族に似ていたからまさかと思ったんだが、やっぱり俺の種族とは違う生物みたいでな。6600万年ぶりに仲間に会えた気がしたが、ぬか喜びだったよ…」

「そう…」

 

 どうやら親友はかつての仲間を思い出していたようだ。前に聞いた話では、同胞から裏切られたユエとは違い、彼は妻子を含めた同族を理不尽に皆殺しにされ失っている。かつての仲間とそっくりな魔物に、何千万年も昔に滅びた仲間を思い出したのだろう。

 微妙な空気になる中、ハジメが場を和ませようと話題を変えた。

 

「そ、そう言えば亮牙、今のが獣語理解の技能みたいだけど、今までの魔物の言葉は理解できていたの?」

「ん?ああ、まあな。大概は『野郎ぶっ殺してやらぁ』とか『ザッケンナコラー』とかそんなのばっかだったから、無視して仕留めてきたがな」

「何で魔物がヤクザスラング使ってんだよ…」

「凄い…」

 

 空気が再び和んでくると、ハジメの気配感知に続々と魔物が集まってくる気配が捉えられた。グリムロックも匂いで察知したようだ。

 現れたのは全長約2m程のラプトルに似た魔物で、全部で十頭程いた。やはり、頭頂部からさっきのティラノモドキと同じ花が生えていた。

 

「どうやら親玉に気づかれたようだな。二人共、俺の肩に乗れ。彼奴から聞いた親玉のところに向かうぞ」

「了解!」

「ん、分かった」

 

 そう頷いた二人がグリムロックの左肩に飛び乗ると、彼らは歩き始めた。ラプトルモドキの群れは彼らに飛びかかる前に、グリムロックがドラゴントゥースメイスで吹き飛ばした。

 グリムロックがその巨体で木々をへし折りながら道をつくると、その道を進もうと寄生された魔物達が集まってきた。しかしそれは悪手だった。ハジメがドンナーをぶっ放し、ユエは炎の槍を放つ魔法「緋槍」を放つ事で魔物達を仕留めていった。

 大概の魔物はグリムロックに飛びかかるも、彼の金属の肌には牙も爪も通用しなかった。彼は肩に乗せた二人を振り落とさないよう蹴り飛ばしたり踏み潰す事で、魔物達を蹴散らしていった。

 

「アハハハ!見ろ、魔物がゴミのようだ!」

「おい、ハジメ。俺はラ○ュタのロボット兵じゃねえぞ」

「良いじゃん。ム○カの台詞言ってみたかったんだ」

「ん、疲れた。ハジメ、吸わせて」

「おいユエ。俺の肩の上でまで発情するな」

「いや違うでしょ亮牙!いいよユエ」

「ん、ありがとう」

 

 ハジメが何処かの悪役みたいな台詞を吐き、ユエが魔力が切れる度にハジメから吸血して回復し、グリムロックが二人にツッコむ。

 そんな何処か呑気な雰囲気で、三人は寄生植物の本体を探して突き進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 彼らが樹海を抜けると、草むらの向こう側にみえる迷宮の壁の中央付近に縦割れの洞窟らしき場所が見えた。

 

「着いたぞ二人共。彼奴によると、この洞窟の中に親玉がいるみたいだ」

 

 そう言ってグリムロックは二人を肩から降ろした。

 縦割れの洞窟は大の大人が二人並べば窮屈さを感じる狭さで、ラプトルモドキでも一体ずつしか侵入できなさそうだ。

 彼は亮牙としての姿に戻ろうとしたが、それにハジメが待ったをかけた。

 

「待って亮牙。ここは僕とユエに行かせて」

「ん、何でだ?多分階下への階段も此処にあるかもしれん。なら三人で行った方が手っ取り早いだろ」

「それもそうだけど、これまで大抵の魔物は亮牙が倒してきたからさ。たまには僕も役に立つところ見せたくてね」

「ん、私も亮牙に任せっぱなしは嫌。それにハジメの勇姿、見たい」

「それに親玉倒すまで、魔物達もどんどん湧いてきて僕ら二人じゃキリがないからさ。一番のパワーを誇る亮牙に殿を任せたいんだ。いいかな?」

「ったく、分かったよ。但し油断するなよ」

 

 ハジメとユエは頷くと、洞窟に入っていった。それを見送ると、グリムロックは洞窟の前に立ち塞がった。やはり寄生された魔物達がわらわらと集まってきた。

 

「まあ此処に来るまで暴れ足りなかった気もしたからな」

 

 そう言うと彼は背中からドラゴントゥースメイスを取り出して構えると、昔ハジメと見た特撮番組の主人公の台詞を言ってみた。

 

「荒れるぜ、止めてみな」

 

 其処からは最早戦いとは言えない一方的な蹂躙だった。

 ドラゴントゥースメイスの一振りで魔物達は挽肉に変えられていき、横薙ぎに振るえば何体もの魔物が遥か彼方に吹き飛んで行った。

 数の少ないティラノモドキは仲間に似ていたので抵抗があったが、圧倒的な数の暴力で攻めてくるラプトルモドキに対して彼は容赦しなかった。現在のライオンとハイエナなどの敵対関係から分かるように、ティラノサウルスだった彼にとってラプトルというのは害獣でしかなかった。見ているだけで不愉快なため、ラプトルモドキは徹底的に排除した。

 暫くすると、突如魔物達の頭頂部の花が萎れ、目がやや虚だった魔物達が正気を取り戻した。どうやらハジメとユエが親玉を倒したようだ。

 

「グオオオオオオオオッ!」

「「「「「ッ⁉︎ギャアアアアアアアッ!」」」」」

 

 操られていない以上、もう戦う必要もないだろう。そう判断したグリムロックは、失せろと言わんばかりに咆哮を上げた。魔物達はハッとなると、その唸り声に怯えて蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

 ふんと鼻を鳴らすと、彼は亮牙としての姿に戻り、洞窟に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 亮牙が薄暗い洞窟をしばらく道なりに進んでいると、やがて大きな広間に出た。広間の奥には更に縦割れの道が続いており、もしかすると階下への階段かもしれない。

 広間の中央にはハジメとユエがおり、彼らの足元には寄生植物の親玉らしき緑色の人間の女に似た魔物の死骸が横たわっていた。

 

「お疲れさん、無事仕留めたようだな」

「あ、亮牙。うん、何とかね…」

「で、ユエは何むくれてるんだよ?」

 

 亮牙の言った通り、ユエは頬を膨らましてそっぽを向いていた。その姿にハジメが苦笑いする。亮牙はますます訳が分からなかった。

 

「何やったんだよハジメ。この前の俺みたいにババアだとか言って揶揄ったのか?」

「…私、ババアじゃないっ!亮牙もハジメも知らないっ!」

「アハハ…。これには色々あってね…」

 

 苦笑しながらハジメは事の顛末を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメとユエが警戒しながらこの広間の中央までやってきたとき、全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできた。二人は一瞬で背中合わせになり飛来する緑の球を迎撃したものの、その数は優に百を超え、尚且つ激しく撃ち込まれてきた。ハジメは錬成で石壁を作り出す事で防御し、ユエの方も速度と手数に優れる風系の魔法で迎撃していった。

 しかし一瞬の隙を突かれたのか、ユエの頭からお似合いなくらい真っ赤な薔薇が咲くと、ハジメに攻撃し始めた。どうやらこの球が魔物達の頭に花を咲かせ操った正体らしい。

 当初は亮牙がティラノモドキから花を抜いた時の様子や、操られたユエのすまなそうな態度から、寄生されても体の自由を奪われるだけで意識はあり、花を潰せば解放できる事も分かっていたので、ハジメはドンナーでユエの花を吹き飛ばそうとした。だが操っている者は寄生した魔物達を介してハジメの戦闘スタイルなどを学んでいたらしく、ユエを操って花を庇うような動きをしたり、接近して切り落とそうとすればユエの方手を動かして彼女の顔に近づけ、彼女自身を自らの魔法の的にすると警告してきた。

 幾らユエが不死身に近いとは言え、最上級の魔法ですらノータイムで放てる彼女なら自分自身を一瞬で塵にしてしまうし、それでもなお再生できるかと言われれば否定できず、特攻などできない状況に追い込まれた。

 

 ハジメが迷っていると、奥の縦割れの暗がりからRPGによく出てくるアルラウネ等によく似た魔物が無数のツルをうねらせて、醜悪な顔に不気味な笑みを浮かべながら現れた。この通称「似非アルラウネ」は、悔しさに震えるユエを盾替わりにしながら緑の球をハジメに打ち込んできた。この球は潰れると一種の神経毒である胞子をばらまき、他の生物に花を寄生させて操る能力を持っていた。

 しかし魔物を食べ続けたことで毒耐性の技能を持つハジメには効かず、彼は球をドンナーで撃ち落としながらも自身の幸運に気づいた。似非アルラウネもそれを悟ると笑うのをやめ、不機嫌そうにユエに命じて魔法を発動させたが、操る対象の実力を十全には発揮できないらしく同じ技しか使ってこなかった。不幸中の幸いだったが、避けようとするとこれみよがしにユエの頭に手をやるので、ハジメはその場に留まりサイクロプスより奪った防御特化の技能「金剛」により耐え凌いだ。

 ハジメがこの状況をどう打開すべきか思案していると、ユエはこれ以上彼の足手纏いになりたくないと覚悟を決め、悲痛な声で自分に構わず撃てと叫んだ。普通なら、ここで熱いセリフが飛び出てヒロインと絆を確かめ合うシーンとなったはずだったが、どこかぶっ飛んだ親友と共に冒険し続けたせいか、今のハジメは躊躇わなかった。

 

「OK!」

 

 彼はそう言ってユエの薔薇を撃ち落とし、一瞬唖然としながらも直ぐに睨み直した似非アルラウネを射殺した。

 

「大丈夫かいユエ?違和感とかない?」

 

 ハジメは気軽な感じでユエの安否を確認した。

 ユエは目をパチクリさせながら両手で頭頂部をさすっていた。既に花はなく、代わりに縮れたり千切れている自身の金髪があり、ジトっとした目でハジメを睨みつけた。

 

「…撃った。躊躇わなかった…」

「え⁉︎だって撃っていいって言ったじゃん。あの状況なら亮牙だって同じ判断下したよ」

「…ちょっと頭皮、削れた、かも…」

「いや。それくらいすぐ再生するでしょ。我慢してよ…」

「うぅ~…」

 

 確かに撃てと言ったのはユエ自身であり、足手纏いになるぐらいならと覚悟を決めたのも事実だ。しかし彼女とて女、惚れた相手なんだからせめてちょっとくらいためらって欲しかったのだ。いくらなんでも、あの反応は軽すぎると不満全開で、ハジメのお腹をポカポカと殴って八つ当たりした。

 ハジメとしては、操られた状態では上級魔法を使用される恐れが低いとわかった時点で、ユエは安全だと判断し、早く解放するために撃ったのだ。だから、その辺は仕方ないとして妥協して欲しかった。そんな彼の様子にユエはますますヘソを曲げ、プイッとそっぽを向いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってな訳で、こんな状況になってます…」

「成る程な…」

 

 そう言ってハジメは内心溜息を吐きながら、どうやってユエの機嫌を直すか思案し始めた。

 亮牙もユエの気持ちは分からないでもないが、自分でも同じ選択をしただろうから、ハジメだけを責める事も出来なかった。

 よく考えれば自分も恐竜時代は妻に頭が上がらず、機嫌を損ねた時は大変だったなと、親友二人の姿に昔を懐かしむ亮牙であった。

 

 

 

 

 




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