オリジナル展開となります。
ハジメがユエに満足するまで吸血させ、漸く彼女の機嫌が直った後、亮牙達は特に何事も無く階層を突き進み続け、遂に二人が目覚めた地点から百層目に到達していた。
そのまま突き進んでも良かったが、次で恐らく最後の階層となるため、どんな危険が待ち受けているか分からないこともあり、手前の階層で入念な準備を行った。なお、見張りは亮牙が行っており、ユエは相変わらず装備の確認と補充を行うハジメの姿を見つめていた。そして準備が完了すると、三人は百層目へと下っていった。
その階層は無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径5mはあり、一つずつ螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られ、規則正しく一定間隔で並んでいた。天井までは30mはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らになっており、明らかに人工としか考えられない空間だった。
「如何にもって感じだね…」
「だな、二人とも気を抜くなよ」
「ん、分かってる」
聞いた話ではオルクス大迷宮は全百層からなる大迷宮の筈だが、何時かトラップで飛ばされた場所も同じ二十階層だったと仮定しても、この時点で既に百階層を超えている。
つまり途中からは一般的に認識されていない未開の階層だったと言う事だ。そして上も百層で一区切りとし、亮牙達が目覚めた場所が未開部分の第一階層と仮定すれば、節目である百階層目に何かあると警戒するのは当然である。そして今まで迷宮とは明らかに違う様子にその警戒が間違いでない事を三人は悟っていた。
やがて、三人の来訪を察知したかのように柱が淡い輝きを放ち、まるで彼らを誘導するかのように手前側から順番に奥へと照らしていった。三人はしばらく警戒していたが特に何も起こらないため、感知系の技能をフル活用しながら歩みを進めた。
200mも進んだ頃、前方に全長10mはある巨大な両開きの扉が見えた。これもまた美しい彫刻が彫られており、特に七角形の頂点に描かれた何らかの文様と、まるで何かを警告するように書かれた謎の文字列が印象的だ。
「…こりゃまた凄いな。もしかして…」
「…反逆者の住処?」
いかにもラスボスの部屋といった感じだ。実際、感知系技能には反応がなくともこの先はマズいと、ハジメの本能が警鐘を鳴らしていた。ユエも同じなのか、うっすらと額に汗をかいていた。
しかし、亮牙は違った。彼は扉に刻まれている文字列を見て驚愕していた。それは彼のよく知る文字だったからだ。
「馬鹿な…⁉︎あり得ない…!」
「どうしたの亮牙?あの壁の文字に何か?」
「ん、あんな文字、私の時代にもなかった…。亮牙は知ってるの?」
「ユエが知らなくて当然だ。あれはトータスのものじゃない。遥か昔、サイバトロン星で使われていた文字だ…!」
「「ええっ⁉︎」」
それを聞いてハジメもユエも驚くと同時に困惑した。何故このトータスに、それも反逆者の住処に、他の惑星の種族が使っていた言語が書かれているのか。全くもって理解できなかった。
「な、何でそんな文字がトータスに、それも大迷宮の奥底に…⁉︎」
「亮牙、じゃああの文字、読めるの?」
「ああ、あれは俺が暮らしていた時代に使われていたからな。直訳するとこうだ…」
『此処は最後の試練の間、オスカー・オルクスと相見えたくば、最後の番人達を打ち負かし、その力を証明せよ』
「「……。」」
三人とも押し黙る。この門の先に反逆者の住処があるのは間違いなさそうだが、やはり簡単には通れなさそうだ。
しかも、門に書かれたサイバトロン文字も気になる。何故他の惑星の文字が反逆者の拠点に刻まれていたのだろうか。流石の亮牙も一抹の不安を感じ、二人に話しかけた。
「二人とも下がっていろ。これまでの迷宮とは明らかに何か違う。俺が元の姿に戻って蹴散らすから…」
「それは無しだよ、亮牙」
ハジメがそう言って言葉を遮った。亮牙は親友の顔を見た。その表情は覚悟を決めたのか、今までよりも一層逞しく感じるものだった。ユエも同じ表情で扉を睨みつけていた。
「ここまで来た以上、覚悟は出来てるよ。それに、もう君だけに頼りっぱなしが嫌だから、僕は今日の今日まで自分を鍛えてきたんだ。何が来ようが、打ち負かすだけだ!」
「ん!私も、自分だけ、隠れてるつもりはない!」
仲間達にそう言われ、亮牙も腹を括り、力強く答えた。
「野暮な質問だったな。じゃあ行くぞ!」
そして彼らは、三人揃って扉の前に行くために、最後の柱の間を越えた。その瞬間、彼らと扉の間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。
ハジメと亮牙はその魔法陣を見て、奈落へと落ちたあの日に自分達を窮地に追い込んだあのトラップを思い出した。だが、眼前の魔法陣は直径30mとその時の三倍もある上に、構築された式もより複雑で精密なものとなっていた。とてもベヒモス程度の敵が出て来るとは思えなかった。
その光景にハジメが警戒を露わにして顔を引きつらせ、ユエは決然とした表情でハジメの裾を握み、亮牙はグリムロックとしての姿に戻り身構えた。
魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放つと、三人は咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにした。光が収まった時そこに現れたのは、四足歩行に六つの頭と長い首、鋭い牙に赤黒い眼を持つ、全長30mにもなる大蛇のような魔物だった。地球の伝承で例えるなら、ギリシャ神話で英雄ヘラクレスが戦ったヒュドラだろう。
「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」
不思議な音色の咆哮を上げながら、ヒュドラは六対の眼光でグリムロック達を睨み付けた。その瞬間、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が彼らに叩きつけられるが、三人は決して臆さない。
赤い紋様が刻まれた頭部が口を開くと、もはや炎の壁とでも形容すべき火炎放射を放った。しかし、ハジメとユエは瞬時に飛びのいて回避した。一方グリムロックは避ける必要などないと言わんばかりに、そのまま真っ向から炎の壁に突っ込んだ。二人とも彼なら大丈夫だと分かっていたので取り乱す事もなく、ハジメが即座にドンナーで赤頭を吹き飛ばした。
「まず一つ‼︎」
そうハジメがガッツポーズをとっていると、白頭が咆哮を上げたと思ったら、たちまち吹き飛んだ赤頭が見る見るうちに再生し復活した。それと同時にグリムロックが右拳をモーニングスターに変形させながら、炎の壁を突き破って飛び出した。
「亮牙!白いのが回復役だ!」
ハジメの言葉にすぐに頷いた亮牙は、白頭に向かって右腕を振りかぶった。緑頭がそうはさせまいと言わんばかりにグリムロックに攻撃しようとするが、ユエの氷弾で吹き飛ばされた。
白頭がすぐに再生させようとするが、それより先にグリムロックが右ストレートをお見舞いする。しかもただのストレートではなく、拳のモーニングスターが手首から離れてフレイルのようになり、さながらロケットパンチのようだ。
その間に盾役であった黄頭が割り込み、頭を一瞬で肥大化させて淡く黄色に輝いた。しかし、それは誰にも気付かれることはなかった。グリムロックの拳は容赦なく黄頭を貫き、そのまま後ろの白頭まで容赦なく吹き飛ばしてしまったからだ。
残った頭は信じられない光景に唖然としたが、その隙をついたハジメがフラム鉱石を用いた焼夷手榴弾を投げつけた。グリムロックが右拳を引き戻した直後、焼夷手榴弾が爆発して摂氏3000度の炎がヒュドラを襲い、更にユエが容赦なく巨大な竜巻を発生させる風魔法「嵐帝」を放つと、その場に巨大な炎の竜巻が発生した。呑み込んだすべてを焼き尽くす様な業火の嵐にさらされ、残った頭部が絶叫を上げ、胴体ごと消し炭になっていった。
炎の竜巻が消失した頃には、ヒュドラは全身のほとんどが焼け爛れており、頭部は全て焼き尽くされてどれがどの頭か判別がつかなくなっていた。
「…勝ったのかな…?」
「…ん、恐らく…」
ハジメとユエが恐る恐ると言うように呟く。グリムロックは油断なく睨みつけていたが、ヒュドラはピクリとも動かなかった。
自分達の勝利を確信すると同時に、ユエは満足げに息を吐き、ハジメもサムズアップしながら彼女の元に歩き出した。
「ハジメ!」
だが次の瞬間ユエが叫び、ハジメが思わずと言うように彼女の視線を追うと、胴体部分から銀色に輝く七つ目の頭が音もなくせり上がり、そのまま口を開いて二人を飲み込むように極光を放とうとした。
「グルアアアアアッ‼︎」
グリムロックは唸りながら瞬時にドラゴントゥースメイスを取り出し、そのまま銀頭に目掛けフルスイングした。グシャアッっという轟音と共に銀頭は吹き飛ばされ、血と肉片が周囲に飛び散った。ヒュドラの巨体は今度こそぐらりと傾ぎ、地響きを上げて地面に崩れ落ちた。
その轟音にハジメとユエはようやく状況を把握し、そんな彼らにグリムロックが語りかけた。
「二人とも、怪我はないか?」
「あ、ありがとう亮牙、助かったよ…」
「…ごめんなさい。私が油断したばっかりに…」
ユエがしょぼんとした様子で謝り、ハジメもバツが悪そうに頭を掻いた。しかし亮牙はまだ警戒を緩めていなかった。
「構わん。それよりまだ気を抜くな。扉に書いてあった通りなら、まだ戦いは終わってないぞ…」
そう言われた二人は直ぐに体勢を立て直し、身構えた。
確かに扉には番人達と書かれていた。今倒したヒュドラは複数の頭を持っていたが、それを複数としてカウントするなら、扉は開いてもおかしくない筈だ。しかし扉は開く様子はない。となると、まだ番人がいるという事になる。
三人が警戒する中、空間の中央付近に再び魔法陣が出現した。今度の魔法陣はベヒモスのものの1.5倍ぐらいの大きさで、ヒュドラのものに比べると小さかった。
しかし三人は気を抜けなかった。何故ならその魔法陣は全部で六つも現れ、そこに書かれている構築式には、扉に書かれていたものと同じく、サイバトロン文字が刻まれていた。
「「「「「「グオオオオオオッ!!!」」」」」」
そして六つの青い光が輝くと、そこから六つの人影が現れた。しかしそれは人間ではなく、身長15m近くにもなる金属の巨人であった。
普段のハジメならその光景にオタク魂を刺激され興奮していただろうが、流石の彼も今はそんな気にはなれなかった。六体の巨人は親友よりは小柄だが、毒々しいカラーリングや刺青のように体に刻まれたサイバトロン文字が、近寄りがたい不気味な雰囲気を醸し出していたからだ。
「…お前ら、サイバトロン人なのか⁉︎何故こんな所にいる⁉︎」.
グリムロックは警戒しながらも、その六体に問いかけた。ハジメもユエも警戒する。
その問いかけに対して、六体の巨人は片言な喋り方で応答した。
「我ら、生まれはサイバトロンに非らず。我、スラッジ」
「我、ブリストルバック」
「我、ワイルドフライ」
「我、バードブレイン」
「我、アイスピック」
「我、スカウル」
「「「「「「「我ら、オスカー・オルクスより生み出されし、最後の番人なり。挑戦者達よ、力を示せ」」」」」」
そう言うと彼ら六体は人型からそれぞれ、金属のパーツを寸断・組み替えながら変形していった。
初めて見るその光景にハジメとユエが驚愕し、グリムロックがドラゴントゥースメイスを構えて警戒する中、六体は金属の獣へと変身を遂げた。その姿は、今まで彼ら三人が見てきた魔物達に似た者もいれば、全く見たことない魔物の姿をした者もいた。
しかし、六体は攻撃的な姿になったのに飛び掛かろうとせず、三人は疑問に感じた。しかし、それは間違いだった。
「「「「「「我ら、六つで一つの存在、個を超越せし存在なり」」」」」」
再び六体の体が変形を始めたが、今度はまた違ったものだった。アイスピックとスカウルが屈強な両脚に、バードブレインが堅牢な腰回りに、ブリストルバックとワイルドフライが逞しい両腕に、そしてスラッジが禍々しい顔つきの頭部と強固な胸部となり、轟音を立てながらまるで積み木を組み合わせるように合体していった。
そして全て行程が終わった時、そこにはグリムロックよりも巨大な、身長40mはありそうな金属の巨人が現れた。両肩にはブリストルバックとワイルドフライの翼がまるで鎧の装飾のように逆立ち、口からは無数の乱杭歯が剥き出し、両腕の脇にはスラッジの腕がまるでもう一対の腕と言わんばかりに動いていた。
「我らこそ、最後にして最強の守護者!この、モンストラクターこそが!!!」
オルクス大迷宮最後にして最強の番人、モンストラクターが今、グリムロック達の前に立ち塞がった。
オリキャラ解説
・魔獣合体兵モンストラクター
反逆者の一人オスカー・オルクスが、六人の協力者達の助力のもとに生み出した、トータス初にして唯一の人造トランスフォーマー六体が合体した姿。
団結の意味合いを込めて合体能力を加えたが、意思の統一を図るために知性を大幅に犠牲としており、片言でしか喋る事が出来ない。
モデルはG1期のプリテンダーモンスター六体が合体した「モンストラクター」。日本国内では『トランスフォーマーV』放送時に、アウターシェルをモンスターからサイボーグ恐竜に変えた恐竜戦隊/ダイノキングとして発売された。
そのためか近年ではダイノボットの新キャラの名前に使われる事が多く、『ロストエイジ』での玩具限定キャラのスロッグが有名。
本作ではIDWパブリッシングのアメコミでの狂戦士というキャラクター像をベースに、スロッグの名前をスラッジ(G1のスラージ)に変えたキャラにしてみました。
外見は、国内未発売のIDWコミック終盤でのモンストラクターをイメージとしています。
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