グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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タイトルどおり、遂にあの能力の復活です。

やはりオリジナル展開、戦闘描写は難しい…。


トランスフォーム

「ゴガアアアアッ!!!」

 

 広場にモンストラクターの雄叫びが響き渡った。その禍々しさは、最初の番人であるヒュドラとは比べ物にならなかった。

 そしてこの合体戦士は拳を三人目掛けて振り下ろした。身長40m近い巨体から放たれる一撃は、グリムロックの腕力を凌ぐのは明らかであった。

 

「ッ⁉︎二人とも、避けろ‼︎」

 

 グリムロックはハジメとユエにそう叫んだ。しかし、二人は動けなかった。

 無理もなかった。此処に来るまで彼らは、どんな困難も乗り越えてきた。故に彼らは自分達なら何でも出来るという傲慢さを抱いていた。

 しかし、目の前の金属の巨人の姿に二人は悟った。所詮自分達は狭い世界で強者を気取っていた、井の中の蛙に過ぎなかったと。

 グリムロックは舌打ちすると、二人を掴んでその場から離れた。直後、モンストラクターの豪腕が先ほどまで彼らがいた場所に振り下ろされ、周囲に衝撃と轟音が響く。

 

「ボサッとするな!死にたいのか⁉︎」

「ご、ごめんなさい…」

「あ、ありがとう亮牙…!」

 

 グリムロックの叱責を受けて二人は漸くはっとなり、身構えた。モンストラクターも体勢を立て直すと、握り締めていた拳を広げた。すると細長い金属が展開していき、その身の丈に匹敵する長大な柄を持つポールアックスが現れた。

 そのポールアックスを握り直したモンストラクターは、挑戦者達目掛けて振り下ろした。グリムロックもすかさずドラゴントゥースメイスを取り出し、その凶刃が仲間達に振り下ろされるのを防がんと振りかぶった。

 

 ガキィン‼︎

 

 金属同士の叩きつけ合う凄まじい轟音が響き、両者一歩も譲らず鍔迫り合いとなる。グリムロックは体格で劣りながらも互角に張り合うが、やはり体格で勝るモンストラクターの方が力が上のようで、徐々に押されていく。

 

「亮牙から離れろ‼︎」

 

 そうハジメが叫び、ドンナーを連射した。今まで多くの魔物を仕留めてきたハジメの相棒だったが、モンストラクターの外装は頑強で、僅かな擦り傷をつけたに過ぎなかった。

 クソッ、とハジメが悪態をつくと、モンストラクターは彼を睨みつけ、グリムロックを蹴り飛ばした。不意の蹴りにグリムロックは大きく吹き飛ばされ、近くの壁に轟音を上げて激突した。

 モンストラクターはハジメに向き直るとアックスを放り投げ、代わりに両腕の前腕から新たな武器を展開させた。それは、まるで軍艦にでも装備されていそうな、巨大な砲塔だった。

 それを見てハジメは血の気が引いた。ゲームやアニメでロボットの持つ銃火器を見て格好良いと思った事は何度もあったが、今目の前に立ちはだかる敵の銃口は明らかに自分に向けられている。何が飛び出すか分からないが、あんな巨大な砲塔から出てくるものが直撃したら、只では済まないだろう。

 

「ハジメ、逃げて!」

 

 ユエが叫び、ハジメは縮地でその場から離れるとほぼ同じタイミングで、モンストラクターの砲塔から攻撃が放たれた。

 放たれたのは砲弾でもレーザーでもなく、液体であった。但し、巨大な砲塔から放たれるだけありその量は膨大で、まるで消防車の放水のようであった。しかも唯の液体ではなく、先程までハジメがいた地点に降り注ぐと、ジュワアアアという音を上げて硬い岩盤すら溶かしていった。

 

「酸か⁉︎もしあんなの喰らってたら…!」

 

 一歩逃げ遅れてたら間違いなく自分は跡形も無く溶かされていただろう。そう考えたハジメは身震いした。

 そこへ体勢を立て直したグリムロックが、モンストラクターへラグビー選手のような強力なタックルを喰らわせた。体格で勝るモンストラクターだったが、突然の不意打ちに体勢を崩して倒れた。

 

「今だ二人とも!俺ごと此奴を攻撃しろ!」

「ッ⁉︎でも亮牙、そんな事したら…!」

「俺に構うな!急げ!」

「…ハジメ、やるしかない…!耐えて、亮牙…!」

「クソッ、死なないでよ…!」

 

 ハジメとユエはグリムロックの指示に従い、モンストラクターへ集中攻撃を喰らわせた。ドンナーの銃弾やユエの魔法がまるで暴風雨の如く襲い掛かる。

 しかし三人はモンストラクターの巨体と強さに気を取られ、この巨人が合体戦士である事を忘れていた。

 

「モンストラクター、セパレート!」

 

モンストラクターはそう叫ぶと合体を解除し、たちまち禍々しい六体のトランスフォーマー達へと戻った。それによりグリムロックが体勢を崩すと、六体の中でも巨体を誇るスラッジとバードブレインが飛び掛かり、ビーストモードの鋭い牙で噛み付いた。流石のグリムロックも苦悶の呻き声をあげて振り払うが、二体はうまく受け身を取ると、小柄故の素早さでグリムロックを翻弄していく。

 ハジメにはアイスピックとスカウルが、それぞれ腕から棍棒や戦槌を展開させて飛び掛かった。ハジメは金剛で防御力を上げて挑むが、両者共に今までの魔物とは比べ物にならない怪力で、似非アルラウネの時のように耐え続けることは難しそうだ。

 そしてユエにはワイルドフライとブリストルバックが襲い掛かった。この二体は飛翔型のビーストモードに変形したため、狭い環境ながらも巧みに飛び回りながら攻撃を仕掛け、流石のユエもうまく狙いを絞ることが出来なかった。

 

「クソ!合体時でも厄介なのに、一体ずつでも強すぎる!」

 

 ハジメが皆の気持ちを代弁するかのように悪態をつく中、再び六体は合体してモンストラクターへと戻った。

 

「諦めるな!合体時は神経や痛覚が共有している!頭か胴体を破壊すれば、六体まとめて倒せる筈だ!」

 

 そう叫ぶグリムロックに、今度はモンストラクターが彼にタックルを喰らわせて押し倒した。すぐに立ち上がろうとしたグリムロックだが、モンストラクターの巨大な足で踏みつけられ、身動きが取れない。

 

「「亮牙‼」」

 

 ハジメとユエが叫び、彼を助け出そうと再びモンストラクターに攻撃を加えた。しかしモンストラクターは鬱陶しそうに二人を睨みつけると、口を大きく開けた。

 

「マズい!逃げろ!」

 

グリムロックが叫んだが遅かった。モンストラクターは口から大量の酸を吐き出し、ハジメとユエを飲み込んだ。

 

「ハジメ!ユエ!」

 

 グリムロックは二人の名を叫びながらモンストラクターの足をどかそうとするが、この合体戦士は更に体重をかけて踏みつけてくるため、中々抜け出せない。

 やがてモンストラクターが口を閉じて酸の放出が治まると、二人の姿が現れた。

 

「ぐ、くぅ…!」

「う、うぅぅ…!」

 

 結論から言うと二人は生きていた。モンストラクターの酸を浴びせられる直前、ハジメはユエを庇うように立ちはだかると錬成で地面の岩盤を操り、咄嗟に障壁をつくることで身を守ったのだ。

 しかし、先程の攻撃から判るようにモンストラクターの酸は強力で、たちまち障壁は溶かされてしまった。ユエは自動再生能力で回復しつつもダメージは酷く、ハジメに至っては金剛を使ったものの、顔の右半面を含め体の大部分が酷い火傷のような状態となっていた。

 そんな二人の姿に、モンストラクターは勝利を確信したような禍々しい雄叫びを上げた。

 

 

 

 

 

 親友達の無残な姿に、グリムロックの脳裏にあの日の記憶が蘇った。6600万年前、あの忌々しい創造主が起こした恐竜絶滅の日だ。

 自分達は平穏に暮らしていただけなのに、理不尽にその日常を奪われ、気づけば自分は異形へと変えられサイバトロン星へと連れて行かれた。今でも忘れられない屈辱だが、それよりも彼が忘れられないのは妻と子ども達の最期だ。まだ子ども達は幼かったが、創造主は容赦なく彼らを虐殺した。変わり果てた三頭の遺体の姿に、家族をこんな目に遭わせた創造主、そして何より家族を守れなかった自分が許せなかった。

 そして今、人間の姿になって初めて親友となり、兄弟同然に育った少年が、この世界で最初の友人となった少女とともに、傷つき倒れている。だというのに、自分はその下手人に無様に踏みつけられたまま、何一つ出来ない始末である。

 何が伝説の戦士だ!また大切な者達を守る事も出来ず、無様を晒すだけなのか⁉︎

 巫山戯るな!あんな思いは二度としない‼︎

 グリムロックは怒りに身を震わせた。その憤怒の炎は、檜山に奈落へ突き落とされた時より、更に燃え上がっていた。全身から怒りが具現化したかのように蒸気が噴き上がり、彼は渾身の力を込めて、地震を踏みつけるモンストラクターの足を持ち上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モンストラクターの雄叫びを聞き死を覚悟していたハジメとユエだったが、突如として敵の体が揺れたのでその足下を見ると、踏みつけられていたグリムロックが凄まじい形相で、彼自身を踏みつけていた足を持ち上げていたのだ。その姿に、二人は体が痛むのも忘れて驚愕していた。

 

「ゴガアアアアッ‼︎」

 

 グリムロックは唸り声を上げながらモンストラクターの足を持ち上げると、そのまま力任せに投げ飛ばした。流石の巨人も堪らずひっくり返り、そのまま合体を解除して元の六体に分離してしまった。

 

「俺の仲間は、もう二度と、誰にも奪わせねぇ‼︎仲間を傷つける奴は、俺が許さねえ‼︎」

 

 彼は凄まじい形相でそう叫んだ。だが、それだけでは終わらなかった。

 

「グリムロック 、変身(トランスフォーム)‼︎」

 

 そう叫ぶとグリムロックは、地面を殴りつけるかのように腕を振り下ろした。すると、彼の全身は寸断・展開を繰り返していき、元の騎士の甲冑のようなフォルムから大きく変形していった。

 やがて全ての変形が終わった時、彼の外見は大きく変貌していた。地面に振り下ろした両腕は力逞しい後脚となり、巨体を支えていた両足は長い尾と新たな胴体の一部へと変わり、小さいながらも鋭い鉤爪のある前足が生えていた。更に頭部には西洋のドラゴンのような一対の角が生え、巨大な口には刀剣のような鋭い牙が無数に並んでいた。

 ハジメはその姿に恐竜の王ティラノサウルスを思い出した。図鑑や映画で何度も見た事があり、似非アルラウネの階層ではそっくりな魔物も見た。しかしそれらより桁外れに大きく、優に全長40mに達しているだろう。ユエも初めて見る巨大な金属の竜の姿に、茫然としていた。

 ダイナボット騎士団グリムロックが、遂に本来の能力を取り戻したのである!

 

「グオオオオオオオオ!!!!」

 

 まるでモンストラクターへの意趣返しと言わんばかりに、グリムロックは怒りの咆哮を広間全体に響かせた。その声に、六体の番人は一瞬恐怖で体を震わせたが、直ぐに冷静さを取り戻し、飛び掛かった。

 まず先程と同様に、ビーストモードになったスラッジとバードブレインが襲い掛かったが、グリムロックは強靭な尾で二体を薙ぎ払った。二体は苦悶の声を上げながら壁まで吹き飛ばされた。

 続いてアイスピックとスカウルがロボットモードになり、それぞれ武器を手に取るとグリムロックに殴りかかった。今度は攻撃は当たったが大したダメージとならず、グリムロックはアイスピックに噛み付いて振り回し、スカウルに投げつけた。

 ワイルドフライとブリストルバックは空中からの攻撃を仕掛けようとするが、グリムロックはそうはさせんと言わんばかりにレーザーファイヤーをお見舞いし、二体を撃ち落とした。

 単体で挑むのは不利と判断した六体は、再びモンストラクターへと合体すると、腕から砲塔を展開して酸を放出した。しかしグリムロックも口からレーザーファイヤーを放ち、自身に直撃する前に相殺した。

 モンストラクターは忌々しそうに唸りながらグリムロックを殴りつけるが、グリムロックも負けじと片腕に食らいつき、酸を放出出来ないよう砲塔を噛みちぎった。両者一歩も譲らず、戦いは激しさを増す一方であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが、亮牙のもう一つの姿か…」

「凄い…」

 

 モンストラクターの酸により深傷を負ったハジメとユエは、焼けるような痛みを味わいながらも、その戦いに魅入っていた。圧倒的な力同時のぶつかり合い、轟音が響き渡り、まるで神話のようだ。あれを見たら、改めて自分達が井の中の蛙だったと痛感した。

 

「ハジメ、今のうちに…」

「あ、ありがとう…」

 

 そう言ってユエはハジメに神水を飲ませた。幸いにもモンストラクターはグリムロックとの戦いに集中し、自分達の事など眼中にない。悔しいが、回復するには今しかなかった。

 ユエの怪我は再生能力で元に戻りつつあったが、ハジメは重傷であった。ダイナボットの祝福と金剛の技能がなければ、如何に魔物を食べて強化された肉体とはいえ、間違いなく死んでいただろう。

 ハジメは神水を飲み、徐々に回復していった。しかし彼はふと、視界の違和感に気付いた。

 

「クソ、酸が少し右目に入ったか…!」

 

 どうやら顔に酸を浴びた際、僅かに目の中に入ってしまったらしい。技能のおかげで失明には至らなかったようだが、視界がぼやけてしまっている。

 それでも立ち上がり戦いに戻ろうとするハジメだが、ユエが優しく静止する。

 

「ハジメ、無理はしないで…。悔しいけど、あれは強過ぎる…。ここは亮牙に任せよう…」

「ユエ…」

 

 ユエとて我が身可愛さにこう言ってる訳ではなかった。彼女にとっては亮牙も自分を受け入れてくれた大事な友人であり、その彼に任せっぱなしでいる自分が情けなくて堪らなかった。しかし、あのモンストラクターという化け物にはどうしても勝てるビジョンが浮かばなかった。

 ハジメもそれが解るために、反論もできず悔しそうに俯いた。あの怪物の強さは桁外れであり、亮牙が今の姿となっても尚互角に渡り合っている。あんな苛烈な死闘に入り込める自信がなかった。

 ここはいつものように、亮牙に賭けるしかない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでいいのかよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、ハジメの脳裏にそんな考えがよぎった。

 確かに亮牙は強い。今でも自分の一歩先を進んでいる。だが、彼はそれでも自分を見下したりなどせず、いつも自分の才能を認め、信じてくれてきた。なのに自分は、今日の今日までその才能を活かし、彼に報いた事があっただろうか?

 そもそも、檜山によって奈落に突き落とされた事件自体、元はと言えば白崎香織の事を自分がしっかり拒絶しておかなかった事も悪いんじゃないだろうか?もっと自分がはっきり彼女を拒絶しておけば、自分の巻き添えで亮牙までもが謂れのない中傷を受ける事も、あんな目に遭わされる事もなかった筈だ。自分が落ちたのは亮牙を助ける為だったが、亮牙自身は自分を巻き込んでしまったと、今でも己を責めているのは分かっている…。

 共に此処から脱出すると誓ったあの日、もう親友の足手纏いにはならないと決めたのに、親友が命がけで戦っている中、自分はまた何もせず見ているだけなのか?

 いや駄目だ!例えどんな奴が相手だろうが、亮牙が更に強くなろうが関係ない!もうただ後ろで守ってもらうだけなんて御免だ!本当の親友なら、どんな時であろうと支えてあげるべきだろう、南雲ハジメ‼︎

 

「「ゴガアアアアアアア‼︎」」

 

 ハジメはグリムロックとモンストラクターを見た。両者ともに凄まじい雄叫びを上げながら、その巨体をぶつけ合っている。

 その姿に本能的な恐怖を抱きつつも、彼は立ち上がり身構えた。

 

「…ユエ。僕は、亮牙の援護に行くよ…!」

「ッ⁉︎ハジメ、でも…⁉︎」

「分かってる…。あのモンストラクターって奴は強いし、今でも怖くて堪らない。ここは亮牙に任せたほうが良いのかもしれない…。でも、僕にとって彼は、たった一人の大切な親友なんだ…!今まで彼のおかげで何度も助けられてきたし、今もこうして守られてるのに、僕はまだ何一つその恩に報いることが出来てない!親友が命懸けで戦ってるのに、これ以上頼りっぱなしなんて男が廃る!ここで逃げるわけにはいかないんだ‼︎」

 

 そう叫びハジメはモンストラクターを睨みつけた。その顔は子どものものから、覚悟を決めた戦士のものへと変身していた。

 惚れた男の覚悟を決めた姿に、ユエは見惚れつつも自問自答した。

 確かにあの巨人は恐ろしい。恐怖を感じるなと言う方が無理だろう。ハジメとて今なお恐れているのが分かる。

 しかし、彼はそれでもなお、大切な親友の為に勇気を奮い立たせている。なのに自分は逃げるのか?惚れた男の覚悟に泥を塗るつもりか?それに今戦っている亮牙だって、自分を助けてくれた恩人で、大切な友人だ。

 なら逃げちゃ駄目だ!女だからって、見てるだけじゃ何にもならない!

 

「…なら、私も戦う。私にとっても、亮牙は大切な友達。私の命、ハジメと亮牙に預ける!」

「ッ、ありがとう…!僕に作戦があるんだ。力を貸してくれる?」

 

 そう言ってハジメは自分の作戦をユエに伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、グリムロックは苦戦していた。ビーストモードに戻ってからは互角に渡り合えているが、この合体戦士を倒すにはまだ決定打に欠けていた。

 レーザーファイヤーだけでは致命傷とはならないし、頭を噛みちぎろうにもその豪腕で尽く防がれてしまう。しかし六体に分離されてから倒すのは厄介なので、合体時のまま一気に止めを刺すしかない。

 その時、広間にハジメの大きな声が響いた。

 

「亮牙!下がって!」

 

 その声にグリムロックは一瞬驚いたが、ハジメがこんな時に意味もないことを指示するとは思えない。何か策があるのだろうと考え、彼は言う通りにした。

 モンストラクターはその後を追いかけようとしたが、急に体勢が崩れた。

 

「グ、グオオオオオッ⁉︎」

 

 驚いて足下を見ると、地面が大きく崩れて、その巨体の半分が地中に埋もれていた。近くではハジメが地面に手を触れながら、してやったりと言わんばかりの表情を浮かべていた。

 そう、ハジメはモンストラクターの身動きを封じんと、自らが最初に持っていた最初の技能である錬成を使い、巨大な落とし穴を掘ったのだ。作戦は上手くいき、モンストラクターは下半身が地中に埋まい、この状態なら少なくとも下半身の三体は分離しても出られない筈だ。

 しかし、彼の作戦はこれだけではなかった。

 

「今だユエ!分離できないように凍らせて!」

「ん!凍柩!」

 

 ハジメの号令とともに、ユエは体に残る魔力を使い切る勢いで凍柩を放った。モンストラクターは逃れようと暴れるも、下半身が埋まった状態では上手くいかず、地上から剥き出しになった上半身がたちまち凍り付いていった。

 それでもなお、口から酸を吐いて氷を溶かすことで頭部までの凍結は防ぎ、忌々しそうにハジメとユエを睨みつけた。しかし、二人は怯まなかった。ハジメはシュラーゲンを撃ち、ユエは緋槍を放つことで、正確無比にその禍々しい両眼を撃ち抜いた。

 

「グギャアアアアアアッ!!?」

 

 両眼を潰され、モンストラクターの悍しい悲鳴が響き渡った。最早この怪物は、周囲の状況を見渡すことが出来ない筈だ。

 

「亮牙、今だ!止めを刺して!」

「ん、亮牙!お願い!」

 

 そうハジメが叫んだ。自分達ではこの怪物に致命傷を与えられない。なら、持てる限りの力を以って、その動きを封じる。全ては亮牙が止めの一撃を放つために。

 そして今、後退していたグリムロックは二人の奮闘を見守っていた。二人とも持てる魔力の全てを注ぎ込んだらしく、相当疲弊しており息も絶え絶えだ。

 ここまでお膳立てしてもらった以上、ここで決める!

 グリムロックは全身のエネルギーを口へと巡らせていった。膨大なエネルギーが溜まっていき、口から炎が漏れ出す。そしてその強靭な後脚で地面を蹴り上げ、彼はモンストラクターの喉元に喰らい付いた。

 

大炎爆発(ビッグファイアボム)‼︎」

 

 その瞬間、グリムロックを中心として大爆発が起き、周囲に爆風が吹き荒れた。ハジメとユエはお互いの手を繋ぎながら、ハジメが咄嗟に作った障壁に隠れ、吹き飛ばされないようにした。

 やがて爆風が止み、二人は恐る恐る爆発の中心地を見た。徐々に土煙が収まっていき、戦いの結末が明らかとなった。

 そこにはバラバラに吹き飛ばされたモンストラクターの死骸が横たわり、その頭の残骸をグリムロックが誇らしげに咥えていた。彼は敵の首を吐き捨てると、その胴を片足で踏み付け、勝利を宣言する雄叫びを上げた。

 

「グルォオオオオオオオオオッ!!!」

 

 その姿にユエと共に目を奪われつつも、ハジメは彼らしくもない不敵な笑みを浮かべながら呟いた。

 

「やっぱ凄えよ亮牙は…。だけど、必ず追いついて見せる!」

「ん、ハジメ、その意気…!」

 

 決意の籠もった瞳でそう呟くハジメの姿を、ユエは頼もしそうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 




モンストラクターの酸はテックスペックとアメコミから、武器のポールアックスはアニメでのダイノキングの武器を参考にしました。

スカウルとアイスピックの武器も、『アドベンチャー』のスカウルとアニメ版のゴウリュウのオマージュです。

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