ご回答して頂けると幸いです。
あと今回、マイケル・ベイ顔負けの下ネタがあります。ご了承下さい。
助けたと思ったら、めちゃくちゃ図々しい事言われた。ウサ耳少女の言葉を聞いた三人の感想は、それで一致していた。
面倒な事になったなと思いつつ、亮牙は取り敢えずその少女、シアに尋ねた。
「助けろって、此処に住んでるんじゃないのか?それに家族ってお前の子どものことか?」
「こ、こんな場所になんか住んでませんよ!それに私はまだ独身ですぅ!」
「亮牙、流石にこんな所住む奴は居ないって…。にしても何で彼女が子持ちだなんて思ったのさ?」
「いや、だってお前ら哺乳類って我が子に授乳するために乳房がデカくなるんだろ?此奴ユエより乳房がデカいし、家族なんて言うから子育て中なのかと思った…」
「ふえぇぇぇっ///どこ見てるんですかぁ⁉︎私まだおっぱいなんて出ませんよぉ〜‼︎」
「どういう理屈だよそれ⁉︎元恐竜だからって、哺乳類について誤解し過ぎだよ‼︎巨乳=子持ちなわけじゃないからね‼︎」
「ハッ!つまり私もハジメとの子を身籠れば、授乳するために巨乳になる…⁉︎」
「ユエも真に受けないで‼︎僕はありのままの君が大好きだから‼︎」
「ハジメ…///」
「おいコラ馬鹿ップル、またイチャついてんじゃねえよ」
「誰のせいだ誰の‼︎」
元恐竜故か、哺乳類について間違った解釈をしていた亮牙は、平然とセクハラ発言をした。養子故に授乳して貰った経験もないことや、人間の性知識に殆ど興味がなかったこともあり、乳房のデカい哺乳類は子持ちで母乳が出ると、本気で思っていたのだ。
亮牙って頭は良いのに、こういうところはズレてるんだよなぁ…。ハジメはそう感じながら盛大にツッコみ、更にその解釈を鵜呑みにして自身の胸元を摩るユエの誤解を解こうとした。
一方、シアは顔を真っ赤にしてその豊満な胸元を隠していた。スタイルには自身があったが、まさか子持ちの母親と勘違いされるとは思いもしなかったのだ。やがて落ち着いた彼女はプンプンと可愛げに怒りながら、亮牙に文句を言った。
「ちょっと貴方!助けてくれたのには感謝しますが、いきなりこんな美少女になんてエッチなことを聞くんですか‼︎私怒りましたよ!お詫びに私の家族も助けてくだ、ふみゃあっ⁉︎」
「調子に乗るな…。まあ俺も少々デリカシーがなかったようだし、まずは話だけでも聞かせてくれ。どうするかはそれから考えさせてもらう」
「うぅ〜、分かりましたぁ…。実は…」
自分で自分の事を美少女と自画自賛する、目の前の少女の残念さに呆れていた亮牙は、更に調子に乗って家族を助けろと言い出した事に少しイラッとして、彼女のおでこを軽くデコピンした。
しかし、さっきの自分の発言は失礼だった気もするし、ハジメとユエには迷惑かもしれないが、話だけでも聞いてやるか…。
そう思いながら、彼は彼女の事情を聞く事にした。
話によると、シアは兎人族のハウリアという部族で、他の亜人族と同様にハルツィナ樹海にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。彼女達兎人族は聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低く突出したものがないので、亜人族の中でも格下扱いされている。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。また、総じて容姿に優れており、森人族のような美しさとは異なった可愛らしさがあるので、帝国では愛玩奴隷として人気が高い。
そんなハウリア族の中から16年前にシアが生まれたのだが、彼女は異常だった。兎人族なら基本的に濃紺の髪の筈なのに、彼女は青みがかった白髪だった上に、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、魔力操作やとある固有魔法まで使えたのだ。
当然、亜人族として有り得ない子が生まれた事に、一族は困惑した。この子の存在が樹海深部に存在する亜人族の国「フェアベルゲン」に発覚したら、間違いなく処刑されるだろう。亜人族は不倶戴天の敵である魔物は勿論、被差別種族故に魔法を振りかざして迫害してくる人間族や魔人族も忌み嫌っており、国の規律で魔物は見つけ次第できる限り殲滅しなければならないと定められ、樹海に侵入した魔力を持つ他種族は総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。
しかし、シアが生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。故にハウリア族は彼女を見捨てる事なく隠し、16年間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまい、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出た。行く宛もない彼女達は未開地ではあるが、人間族に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだと考え、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。
しかし樹海を出て直ぐに運悪く、巡回中だったのか訓練だったのかは分からないが、ヘルシャー帝国の一個中隊規模と出くわしてしまい、シア達は南へと逃げるしかなかった。女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。
全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いたシア達は苦肉の策として、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうと考え、峡谷へと逃げ込んだ。ほとぼりが覚めて帝国兵がいなくなるのと魔物に襲われるのと、どちらが早いかという賭けだった。
だが予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはせず、小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、シア達が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。そうこうしている内に案の定魔物が襲来し、観念して帝国に投降しようとしたが、魔物達も獲物を逃がすものかと回り込んで追い立ててきて、シア達は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。
「…気がつけば、60人はいた家族も、今は40人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」
シアは最初の残念な感じとは打って変わって、悲痛な表情で懇願した。どうやら彼女は亮牙達と同じく、この世界の例外というヤツらしい。特にユエと同じ、先祖返りと言うやつなのかもしれない。
話を聞き終わると、まず亮牙が口を開いた。
「…まず聞かせろ。そのお前の持つ固有魔法ってのは何だ?」
「え?あ、はい。『未来視』と言いまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか?みたいな…あと、危険が迫っているとき勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど…。そ、そうです!私、役に立ちますよ!『未来視』があれば危険とかも分かりやすいですし!今回貴方達に会ったのもこれのお陰でして、少し前に貴方達が私達を助けてくれている姿がも見えたんです!実際、ちゃんと貴方達に会えて助けられました!」
そう言って、シアは必死に自分の有用性をアピールする。こう聞いてくると言う事は、恐らく彼は自分達を助けるか考えてくれているのだろう。このチャンスを逃すわけにはいかない。
そう考える彼女に、更に亮牙が問いかけた。しかし今度は、何処か彼女を見極めるようであった。
「お前の力は分かった。最後に聞かせろ…。お前はその力を悪用し、祖国や国民達に何か仇をなすような真似をしたか?」
「─────⁉︎」
亮牙のその問いかけに、シアは息を飲んだ。彼の燃え盛る炎のように赤い瞳が嘘は許さんとばかりに見据え、彼女はゴクリと唾を飲むと口を開いた。
「そ、そんな事はしてません!一族の名誉にかけて!」
「そうか…」
真っ直ぐにこちらを見てそうはっきりと答えたシアを、亮牙はジッと見つめ返すと、彼女の額に己の額を近づけてくっ付けた。傍目から見ればキスを迫るような行動に、シアは顔を赤らめてドキッとする。しかし亮牙はただ目を閉じ、まるで何かを聞いているかのようだった。
やがて亮牙は目を開けてシアから額を離すと、ハジメやユエに向き直り視線を向けた。二人とも彼の言いたい事が理解できており、安心しろと言わんばかりに答えた。
「僕らのリーダーは亮牙だ。君の判断に任せるよ」
「ん、私もハジメに同意…」
「悪いな、二人とも…」
二人にそう告げると、亮牙はシアに向き直った。
「いいだろう。力を貸してやる」
「ほ、本当ですかっ⁉︎」
「ああ、だがこちらも訳ありでな。悪いがタダ働きと言う訳にはいかん。報酬に………おい、なんで胸を隠したりする?」
亮牙の返答にシアは顔を輝かせたが、その後に続いた「報酬」と言う言葉に顔を赤らめながら、その豊満な胸を隠す様に自身を抱き締めた。
「だ、だって報酬って、やっぱあれですよね?さっきも私のおっぱいがどうのこうのと言ってましたし、身体で払えってことですよね…?い、いえ‼︎この際、背に腹は変えられません!みんなを助けられるのならば私の純潔など、ってあいたぁっ⁉︎」
「見くびるな。そこまで堕ちちゃいねえよ。それに話は最後まで聞くもんだ」
早とちりするシアに呆れ、再びそのおでこを軽くデコピンした亮牙は、「父様にもぶたれたことないのにぃ〜」と何処かで聞いたことのあるような彼女のぼやきをスルーし、話を続けた。
「俺達三人は今、とある目的のために旅をしていてな…。ここに来たのもその目的のために樹海を探索するためだ。だから助ける報酬として、お前達一族に樹海の案内を頼みたい。それでどうだ?」
予想外の答えにキョトンとした様子で亮牙を見つめていたシアだったが、やがてその顔にパァッと笑顔が咲き、ぐしぐしと嬉し泣きした。
「は、はいっ!それで大丈夫です!ありがとうございます!うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~!」
「すまんな二人とも。言ったそばから余計な事に首突っ込んじまって…」
「気にしないでよ亮牙。さっきの問いかけとかで、彼女が嘘ついてないって悟ったんでしょ?」
「ん、ハジメの言う通り…。それに、樹海の地理は知らないから、丁度良い…」
「ありがとよ、それじゃ行くか」
話が纏まると同時に、亮牙がグリムロックに戻ろうとすると、シアが彼らに問いかけた。
「あ、あの、宜しくお願いします!そ、それで皆さんのことはどう呼べば…?そこの貴方は、グリムロックさん…でしたか?」
「ああ、そう言えば名乗ってなかったな…。俺は灘亮牙、グリムロックは昔の名前でな。今の名前の方が気に入ってるが、好きな方で呼べば良いぞ」
「僕は南雲ハジメ。ハジメでいいよ」
「…ユエ。何れは南雲ユエになる」
「分かりました!亮牙さんにハジメさん、そしてユエちゃんですね!」
「…さんを付けろ。残念ウサギ」
「ふぇ⁉︎」
「見た目で判断するもんじゃないぞ。ユエは御歳300歳を超える婆───」
「亮牙…」
「…お姉さんだ。かく言う俺も6000万歳を超える爺さんだがな」
「え、ええええええっ!!?」
思い掛けない事実に、シアの驚愕の声が再び峡谷に響き渡った。
「え、それじゃあ、皆さんも魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると…」
「うん、そうなるね」
「…ん」
「俺グリムロック、この姿は魔法じゃないぞ」
シアがユエに年下扱いした事を土下座して謝罪した後、一同は再び変身したグリムロックの頭上に乗り、他のハウリア族の居る所へ向かった。因みに乗っている順番は後ろからハジメ、ユエ、シアの順だ。ユエは元々ハジメの前に陣取っていたので特等席を譲りたくなかったのと、シアが先頭の方が見つけやすいだろうと考慮してだ。
シアは初めての体験におっかなびっくりしつつも、グリムロック達のことを質問していたのだが、彼らが自分と同じく魔力操作や固有魔法が使える事を知ると、彼女はいきなり涙目になっていた。
「俺グリムロック、どうした?目に砂埃が入ったか?」
「あ、いえ…。一人じゃなかったんだなっと思ったら…何だか嬉しくなってしまって…」
ここしばらくフェアベルゲンではシアみたいな忌み子は生まれておらず、その所為か例え家族の皆が良くしてくれても一人になった時など、ふとした時に孤独感を味わうことがあり、本当の意味で自分と同じ境遇の彼らと出会えた事が嬉しかった様だ。
そしてそんなシアの様子にユエは、魔力の操作に自分だけの特別な力という共通点故に、彼女と自分の境遇を重ねていた。だが、周囲の人が愛してくれたかどうかという点で、二人の境遇は異なっていた。シアの方は同族の全てが変わらず愛してくれたが、ユエの方は危険視の果てに封印された。プライム達から真実は違うと言われたものの、三百年間孤独という地獄を味わったが故に、今でも信じる事ができない。
そのためおのずと俯きがちになっていたユエだが、それを察したハジメは、もう一人じゃないよと言わんばかりに、無言のまま彼女の頭を優しく撫でた。ユエは少し寂しげながらも笑みを浮かべ、甘えるように彼に背を預けた。
「あの~、お二人とも私のこと忘れてませんか…?ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは?」
「え?だからこうして慰めてるでしょ…。ユエを」
「それ普通、私にしてくれる流れですよね⁉︎なんでいきなり二人の世界を作っちゃってるんですか⁉︎」
「俺グリムロック、ハジメもユエも色々辛い思いしてきた。だからこれくらい大目に見てやって欲しい…」
「そ、そうなんですか…。亮牙さんって達観してますね…」
どこか達観した対応をするグリムロックに、シアも何かを察したような声を出した。
「あ、何か判った気がします!そりゃこんな光景何時も見せ付けられてたら、幾ら亮牙さんでも欲求不満になっちゃいますよね!だからスタイル抜群な美少女の私を見て、思わずエッチなこと口走っちゃったんですね⁉︎」
「…俺グリムロック、しつこいぞ。それに俺、妻と子ども、いたぞ…」
「ええっ⁉︎奥さんとお子さんが⁉︎」
また出会った時の事を蒸し返すような事を笑顔で言うシアに少々イラッとしたグリムロックは、誤解を解こうと自分がかつて妻子持ちだった事を明かし、更に彼女を驚愕させる。
暫くすると自分達の世界から戻ってきたハジメが、ふと何かを思い出したかのようにシアに質問した。
「あ、そう言えばさ、未来が見えるなんてすごい固有魔法持ってたのに、何でバレたのさ?危険を察知できるなら故郷の連中にもバレなかったんじゃないの?」
「うっ…」
そう聞かれたシアは言葉を詰まらせ、その視線を泳がせ始めた。
「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて…」
「つまりバレた時には既に使った後だったのか…。でもさ、一体何を視たの?」
「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして…」
「「「馬鹿じゃないの⁉︎」」」
「うぅ~猛省しておりますぅ~」
あまりにも下らない理由に、三人とも流石にフォロー出来ず盛大にツッコみ、シアはシュンとなった。
だがその時、何かの鳴き声が響き、彼女はハッと顔を上げた。
「っ⁉︎亮牙さん!もう直ぐ皆がいる場所です!あの魔物の声…ち、近いです!父様達がいる場所に近いです!」
「俺グリムロック、確かにシアに似た匂いと、別の生き物の匂いする。それに声も聞こえる…。三人とも、しっかり掴まってろ!」
そう言うとグリムロックは三人を振り落とさないよう気を付けながら峡谷を駆け抜け、最後の大岩を迂回した先に、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達を見つけた。岩陰に隠れているのだが、長い耳だけが隠しきれずにちょこんと出ていた。
そんな彼らに襲いかかっているのは、奈落の底でも滅多に見なかった飛行型の魔物だ。全長3〜5m程でワイバーンに似ているが、長い尾の先端は先史時代のアルマジロ、ドエディクルスのようなモーニングスター状となっている。全部で六匹おり、地上の獲物を品定めするように上空を旋回していた。
「ハ、ハイベリア…!」
シアが震える声でその魔物の名前を口にする。次の瞬間、一匹のハイベリアがその尾で彼らの隠れている岩場を砕くと、数人のハウリア族が悲鳴を上げて這い出してきた。狙い通りと言わんばかりに彼らの傍に着地したハイベリアは、新鮮な獲物を踊り食いしてやろうと、動けなくなった少年とそれを庇う父親の二人目掛けて口を大きく開けた。
しかしそうはさせまいと、空かさずハジメがドンナーをドパンッ!と発砲し、眉間を貫かれたハイベリアは頭部を爆散させ、這い出たハウリア族の脇に墜落した。
「な、何が…」
突然の出来事に、状況を把握しきれないハウリア族は皆一様に呆然とした。
「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」
「「「「「「「「「「シア⁉︎」」」」」」」」」」
「シア⁉︎それに、あの獣は…⁉︎」
その時、聞き覚えのある声に兎人族達がその方向に目を向けると、そこには見た事もない巨大な生き物の頭上に乗り、こちらに手を振りながらピョンピョンと跳ねているシアの姿が映った。その光景に彼らは驚愕するが、そのうちのリーダーらしき者はグリムロックの姿に何か別の意味で驚いていた。
しかし彼女は嬉しさのあまり、後ろに狙撃手がいるのに前方でピョンピョンと跳ね回り、流石のハジメも狙いが定められない。
「ちょっ、邪魔だって!ああもう!…ごめん亮牙、後は頼める?」
「俺グリムロック、任せろ」
そう言うとグリムロックはハイベリア達に向けて、その外見に相応しい雄叫びを響かせた。
遥か昔、生態系の頂点に君臨していたティラノサウルスである彼にとって、狩りだけでなく、他の捕食者から獲物を奪うのは日常茶飯事だった。あの程度の小物など朝飯前だ。
失せろ、此奴らは俺のものだ!
「ゴガアアアアアアアッ‼︎」
「「「「「ッ⁉︎ギャアアアアアアッ⁉︎」」」」」
「どひゃあああ〜!!?」
新鮮な獲物達を前に狂喜乱舞していたハイベリア達だったが、突然一匹が頭を吹き飛ばされ、何事かと思い振り向くと初めて見る巨大な捕食動物がこちらに向かってきた事に、獲物のことなどすっかり忘れ、恐怖で身体が凍りついていた。グリムロックが大きな咆哮を上げた事でようやく正気を取り戻し、こんな化け物に敵うわけないと言わんばかりに、五匹とも大慌てで飛び去っていった。
一方、頭上にいたハジメとユエは何をするか分かっていたために耳を塞いでいたが、無事家族に会えた事に夢中になっていたシアはそうはいかなかった。至近距離で凄まじい雄叫びを聞いてしまい、ただでさえ人間族より聴覚が優れているために、「耳が、耳が〜!」と言いながら目を回していた。
お騒がせな奴だなと呆れつつも、グリムロックはしゃがんでハジメとユエ、そしてようやく落ち着きを取り戻したシアを降ろすと、亮牙としての姿に戻った。その光景にハウリア族達は更に驚愕していたが、やがて危険が無くなったことを察したのかぞろぞろと出てきた。真っ先に声をかけてきたのは、さっきのリーダー格らしき濃紺の短髪にウサ耳を生やした初老の男性だった。
「シア!無事だったのか!」
「父様!」
どうやら彼がシアの父親のようだ。親子の再会ということで、亮牙達は何も言わずに二人の会話が終わるのを待ち、話が終わるとシアの父親が亮牙達に近づいてきた。
「亮牙殿で宜しいか?私はカム、シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか…。父として、族長として深く感謝致します」
そう言ってカムは深々と頭を下げ、後ろにいる他のハウリア族も同じように頭を下げた。
どうやらシアはお姫様的ポジションだったみたいだ。その事実に亮牙達は内心驚きながらも口を開いた。
「気にするな。お前の娘に話した通り、樹海の案内が引き換えだ。にしても、随分とあっさりと俺たちを信用するんだな?亜人は他種族にはいい感情など持ってないと思ってたが…」
「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから…」
その言葉に亮牙達は呆れ半分、感心半分だった。シア一人のために一族ごと追放を故郷を出ていくのだから情が深いと思っていたが、警戒するべき他種族相手にこれは人が良すぎるぐらいだ。奴隷関係で一番被害を受けているのは他でも無い兎人族だと言うのに、流石に心配になる。
だがそれは一先ず置いておこう。今はそれより聞きたい事がある。
「族長、それとは別に聞きたい事がある」
「聞きたい事、ですか…?一体何でしょう?」
「ああ。俺達が現れた時、お前だけ俺の姿に他の者達とは別の意味で驚いていた気がする。…もしかして、俺のような金属の肌を持つ生き物を見た事があるのか?」
目を細めて尋ねる亮牙にハジメ達はえ?と首を傾げる。シアも同じ様子だが、カムは理解したかのように答えた。
「はい…。実は私達が住んでいた樹海にも、貴方と同じように金属の肌を持つ、巨大な生き物が住み着いておりまして…」
「えぇ⁉︎亮牙さんと同じ存在が⁉︎父様、そんなこと私知りませんよ⁉︎」
「シアが知らないのも無理はない。あの生き物はお前が生まれたのと同じ年に、突如として樹海に現れたのだが、長老衆から干渉しないよう言われてきたのでな…」
16年間暮らしてきた故郷に隠された秘密に、シアは驚愕した。まさか自分が生まれた年に、亮牙と同じような存在が来ていたとは思いもしなかった。
一方亮牙は納得すると同時に、何処か期待のこもった声でカムを問いただした。
「やっぱりそうか…!それで、そいつはどんな奴なんだ⁉︎姿形は分かるのか⁉︎」
「え、ええ…。その生き物は貴方の変身した姿よりは小柄ですが、それでも周辺の魔物より遥かに大きく、頭には三本の角と襟巻きのようなものが生えています」
三本角に襟巻きのようなものがある頭部、と聞いてハジメとユエはあ!と声を漏らした。亮牙やプライム達が見せてくれた、ダイナボットの一人と同じ特徴だ。
それを聞き、確信に至った亮牙は歓喜の声を上げ、シアの両肩を掴んだ。
「やったぞ!間違いなくスラッグだ!まさかこうも早く再会出来るとはな!シア、お前のおかげだ!ありがとう!」
「ふぇっ⁉︎わ、私のおかげ⁉︎そ、そんな〜、照れちゃいますよぉ〜///」
亮牙にそう言われて驚いたシアだが、満更でもないのか照れ臭そうに顔を赤らめながら微笑んだ。ハジメやユエも、こんなにも早く亮牙の仲間の手がかりが掴む事ができ、嬉しそうだ。
「まさに『情けは人の為ならず』だね。…にしても何で彼女にも教えてなかったんですか?それに、魔物を嫌ってるのに干渉しないよう定められてるって…?」
「確かに最初はその生き物が現れた時、フェアベルゲンでも魔物として恐れ、討伐するか否かで議論となったのです。しかし彼は見た目に反して植物食なようで、樹海の奥深くに留まって生い茂る植物を食べるのみで、フェアベルゲンの領域には近寄ったりもしませんでした。ですが一度、土人族が長老であるグゼ様の指揮の下、その身体を覆う金属を手に入れんと襲撃したのですが、彼は圧倒的な力を以て土人族の精鋭達を殲滅してしまいました…。その時は皆流石にまずいと危惧したのですが、彼自身はまるで纏わり付くハエを追い払った程度だったらしく、フェアベルゲンに報復したりしなかったので、最終的には森人族のアルフレリック様の主張した、干渉せずに放っておくという方針で落ち着きました。だから多くの部族では、子どもたちが好奇心からちょっかいなど出さぬよう、敢えてその事は告げておりませんでした…」
「…運が良かったな。彼奴は俺の仲間でも一番好戦的な奴だから、下手に討伐なんてしようものなら間違いなく滅ぼされてたぞ。まあ、元々植物食だから、喧嘩売らない限りは大人しいからな」
ドキュメンタリー番組とかで見たけど、植物食の動物が恐ろしいのはどの種族も同じか…。亮牙の言葉を聞いて、改めてそう感じるハジメであった。
「よし、取り敢えずスラッグがいると分かっただけ朗報だな。それじゃあ出発するか」
はい、最初のダイナボットはスラッグです。ですが、彼の登場はまだ先となります。
土人族がスラッグに喧嘩売って返り討ちにされたという設定は、『ホビットの冒険』のスマウグのオマージュのつもりです。Slugには鈍重やナメクジといった意味があり、実写映画でもスマウグへの悪口に使われています。
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