グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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意外と早くまとまったので投稿しましたが、少々追加点があったので再投稿します。

少し短かった気もするし、次の決戦での冒頭もこちらに付け加えた方がいいと思ったので、すみませんm(__)m


襲来!ミレディザラック

 あれから一週間、亮牙一行は迷宮に挑戦してはスタート地点に戻されるのを繰り返す事七回、現在は八回目の挑戦の最中だ。だがその全てが無駄と言う訳ではなく、ミレディ曰くランダムとなっているこの迷宮の構造変化も、マーキングを刻んでいる内にある程度規則が見られる事が判った。

 そんな中、五人は珍しく罠も何も無い部屋で仮眠休憩を取り、今は亮牙が見張りで起きてる最中だ。彼の隣では、壁にもたれ掛かったハジメにもたれ掛かる形でユエが座っており、スラッグは大の字で横になりながら、三人ともすやすやと寝息を立てていた。そしてシアは、亮牙の上着を毛布代わりに被りながら、彼の右腕を枕にして眠っていた。可愛らしい寝顔で眠る彼女を見てると、思わず頭を優しく撫でてあげたら、頬が僅かに綻んでいた。

 シアとスラッグが旅に同行するようになって約半月、事ある毎にシアが送ってくるラブコールを軽く流してきた亮牙だが、彼とて思う所が無い訳ではなかった。

 

(まさかこの歳になってな…)

 

 そう、思う所がある。正直言ってシアが自分を異性として見てくれていることが嬉しかったのだ。それまで人間の女性を見ても特に何も感じてこなかったのだが、彼女を見てるとどうしても心が騒ついて来てしまう。おまけに無意識なのか狙っているのか、胸を押し付けたりパンチラしたりするなどの彼女の誘惑には、時々理性が吹き飛びそうになってしまう。

 

(気持ちは嬉しいし、応えてやりたいんだが…)

 

 そう思いつつも、亮牙はそう簡単に応えられない理由があった。まず自分とシアとでは、種族と年齢がかけ離れ過ぎている。彼女はまだ16歳と若く人間とほぼ同じ存在だが、自分は今は人間の姿になれるとはいえ、明確には元野生動物の金属生命体だし、実年齢も彼女の曽祖父より年上の爺さんなのだ。

 おまけに、自分には遥か昔の話だが妻子がいた。しかし夫として、父親として、家族を守る義務を果たせなかった挙句、何千万年経った今もこうして生きながらえている駄目な男だ。そんな自分が、辛い想いもしながらも懸命に生き抜き、そして家族のためなら我が身を危険に晒すのも厭わない、目の前の強き少女に相応しい男とは思えなかった。

 

(俺は、どうすれば良いんだろうな…)

 

 亮牙がそう思い詰めていると、傍でシアがだらしない笑顔で、

 

「むにゃ…あぅ…亮牙しゃんのエッチぃ〜♡そんなぁダメですよぉ~、こんな所でぇ~////」

 

などと寝言を言い出した。そんな彼女に呆れながらも、おかげで少し気が楽になった亮牙は、今は迷宮攻略に集中しようと気を引き締め直すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び嫌らしい数々のトラップとウザイ文を菩薩の心境でクリアしていった亮牙達は、一週間前に訪れてから一度も遭遇することのなかった部屋に出くわした。最初にスタート地点に戻して天元突破な怒りを覚えさせてくれたインフェルノ達の部屋だ。だが今度は、封印の扉は最初から開いており、向こう側は部屋ではなく大きな通路になっていた。

 

「またここか…。包囲されても面倒だな」

「だね、扉は開いてるんだし一気に行こう!」

「んっ!」

「はいです!」

「俺スラッグ、了解!」

 

 そう言うと、亮牙達は部屋へ一気に踏み込んだ。中央に差し掛かると案の定、「ごっつんこ!」と聞き飽きた声と共にインフェルノ達が両サイドの窪みから飛び出してきた。出鼻を抉いて前方のインフェルノ達を蹴散らしておき、そうやって稼いだ時間で更に加速した彼らは、包囲される前に祭壇の傍まで到達した。インフェルノ達が猛然と追いかけるが、亮牙達が扉をくぐるまでには追いつけそうになく、逃げ切り勝ちだと五人とも確信した。

 だがそうはいかなかった。何と、インフェルノ達も扉をくぐって追いかけてきたからだ。しかも…

 

「はぁっ⁉︎天井を走ってる⁉︎」

「…びっくり」

()だからってそれ()()かよ…」

「俺スラッグ、駄洒落かい?」

「言ってる場合じゃないですよぉ〜!重力さん仕事してくださぁ~い!」

 

 そう、追いかけてきたインフェルノ達は、まるで重力など知らんとばかり壁やら天井やらを、「ごっつんこぉ〜!」と叫びながら走っているのである。いくら蟻に変形するとはいえ、これには流石の亮牙達も度肝を抜かれた。ハジメは咄嗟に通路を構成する鉱物を調べるが、重力を中和したり吸着の性質を持った鉱物等は一切検知できなかった。

 

「駄目だ!材質に特殊な性質は見られない!」

「クソ、どうなってやがる⁉︎」

 

 ハジメの答えを聞き、亮牙の口からそんな呟きが思わず漏れた。そして再度、背後の人造トランスフォーマーをチラリと振り返って、更に度肝抜かれることになった。

 天井を走っていたインフェルノの一体が、走りながら尻をプロペラのように展開すると、「ごっつんこ〜!」と叫びながら、まるでミサイルのように凄まじい勢いで頭を進行方向に向けたまま宙を飛んできたのである。

 

「そんなの()()かよ⁉︎畜生!」

 

 ハジメは驚愕の声を漏らしながらドンナーを連射し、放たれた弾丸は閃光となって飛んできたインフェルノの頭と肩を破壊した。インフェルノは「ごっつんこぉ〜⁉︎」という悲鳴と共に頭部と胴体、更にドリルを装備した両腕が分かれた。だが、それらは地面に落ちることなく、そのまま亮牙達に向かって突っ込んできた。

 

「回避しろ!」

「了解!」

「おう!」

「んっ」

「わきゃ!」

 

 亮牙達は猛烈な勢いで迫ってきたインフェルノの頭部、胴体、ドリルを屈んだり跳躍したりして躱していった。彼らを通り過ぎたインフェルノの残骸は、そのまま勢いを減じることなく壁や天井、床に激突しながら前方へと転がっていった。

 

「何だ?さっきと様子が…」

「俺スラッグ、あいつ、死んだのかな?」

「いや、あれはまるで…」

「ん、落ちたみたい…」

「重力さんが適当な仕事してるのですね、分かります」

 

 まさしくユエやシアの言葉が一番しっくりくる表現だった。どうやらインフェルノ達は重力を操作できるらしい。何故前回は使わなかったのかは不明だが、もしかすると部屋から先の、この通路以降でなければならなかったのかもしれない。

 そんな推測も、インフェルノ達がこぞって亮牙達に落下してきたことで中断された。中にはドリルを回転させたり、ビーストモードに変形して顎をカチ鳴らしながら迫ってくる猛者もいた。ハジメとユエは銃撃や破断で遠距離攻撃しつつ、接近してきた者は亮牙・スラッグ・シアが打ち払い、足を止めることなく先へ進んでいった。暫くすると、彼らは先の方に何かの気配を感じた。

 

「畜生、再構築しやがったか…」

「まぁそうなるわな…」

「は、挟まれちゃいましたね」

 

 そう、先へと落ちていったインフェルノ達が落下先で再構築して、隊列を組んで亮牙達を待ち構えていたのだ。ご丁寧に二列に並び、一列目の者達は亮牙達に背を向けると、プロペラ状の尻を盾代わりにしながら壁を作り、二列目のインフェルノ達は盾役の者を後ろから支えていた。おそらく、一列だけではパワーで粉砕されると学習したのだろう。

 

「俺スラッグ、面倒だから片付ける!」

「スラッグ、援護するよ!」

 

 スラッグが苛立ったように唸ると、額に電気を集中させ始めた。ハジメも呼応すると、ドンナー・シュラークを太腿のホルスターにしまい、宝物庫から新たな武器「オルカン」を取り出した。

 この武器は手元に12連式の回転弾倉が取り付けられた長方形型のロケット&ミサイルランチャーで、全長30cm近くあるロケット弾の破壊力は通常の手榴弾より高くなっていた。更に弾頭には纏雷を付与したことで常に静電気を帯びた鉱石が設置されており、着弾時弾頭が破壊されることで燃焼粉に着火する仕組みだ。

 ハジメはオルカンを脇に挟んで固定すると口元を歪めて笑みを作った。スラッグも頭上に集中させた電気を巨大な球を形成していた。

 

「皆、耳塞いどいて!ぶっ放すよ!」

「おう、ぶちかませ!」

「ん」

「えぇ~何ですかそれ⁉︎」

 

 初めて見るオルカンの異様にシアが目を見張り、ユエは走りながら人差し指を耳に突っ込み、亮牙は聴覚回路をオフにした。

 シアのウサミミはピンッと立ったままだが、お構いなしにハジメはオルカンの引き金を引いたので、亮牙が彼女の耳を押さえた。

 

激力雷電(ギガライディーン)!」

「吹っ飛べ!」

 

 二人はそう叫ぶと、スラッグの頭から強力な電撃と、バシュウウという音と共にロケット弾が発射され、狙い違わず隊列を組んで待ち構えるインフェルノ達に直撃した。

 次の瞬間、落雷のような轟音と大爆発が発生し、通路全体を激震させながら凄絶な衝撃を撒き散らした。インフェルノ達は直撃を受けた場所を中心に、両サイドの壁や天井に激しく叩きつけられ、原型をとどめないほどに破壊されていた。「ご…ごっつ…ん。こ…」と未だ掠れたような声がするものの、再構築にもしばらく時間がかかるだろう。

 亮牙達は一気にインフェルノ達の残骸を飛び越えて行った。兎人族は亜人族で一番聴覚に優れた種族である故に、耳を塞ぎ忘れていたシアは今頃なら悶絶していただろうが、亮牙が咄嗟に彼女の両耳を塞いだことで難を逃れていた。

 

「り、亮牙さん////くすぐったいですよぉ〜」

「お前なぁ、言ってる場合か…」

「…ホント、残念ウサギ…」

 

 亮牙とユエが呆れた表情でシアを見るが、シアは耳がくすぐったくて気がついていなかった。

 再び落ちて来たインフェルノ達に対処しながら、5分程駆け抜けると、遂に通路の終わりが見えた。通路の先は巨大な空間が広がっているようで、道自体は途切れており、10m程先に正方形の足場が見えた。

 

「ようし、飛ぶぞ!」

 

 亮牙の掛け声に皆頷くと、背後から依然落下してくるインフェルノ達を迎撃し躱しながら、通路端から勢いよく飛び出した。

 身体強化された今の五人の跳躍力はオリンピック選手のそれを遥かに凌ぎ、世界記録を軽々と超えて眼下の正方形に飛び移ろうとした。

 だが、この大迷宮が思った通りに進める筈がない。放物線を描いて跳んだ亮牙達の目の前で、正方形のブロックがスィーと移動し始めたのだ。

 

「嘘だろォォォ⁉︎」

 

 亮牙はこの迷宮に来てから何度目かの叫びを上げた。目測が狂いこのままでは落下してしまう。チラリと見たが下は相当深い。ハジメが咄嗟にアンカーを撃ち込み、皆に自分に掴まるよう指示を出そうとした時だ。

 

「来翔!」

 

 ユエが風系統の魔法を発動させ、上昇気流で自分達の跳躍距離を延ばしたのだ。一瞬の効果しかなかったが十分だった。未だに離れていこうとするブロックに追いつき何とか端に手を掛けてしがみつくことに成功した。亮牙とスラッグが剣を突き立ててぶら下がると、ハジメ・ユエ・シアもしがみついた。

 

「ナ、ナイス、ユエ」

「すまん、助かった」

「ユエさん、流石ですぅ!」

「俺スラッグ、今のはヤバかった…」

「…もっと褒めて」

 

 四人は墜落せずに済んだことに思わず笑みを浮かべながらユエを賞賛し、ユエも魔力の消費が激しく少々疲れ気味だが得意げな雰囲気だ。

 

「ごっつんこ〜!待つでありんす!」

 

 だが、そんな和やかな雰囲気はインフェルノ達の叫びによって遮られた。そう、インフェルノ達も尻のプロペラを展開して飛んできたのだ。スラスターがない代わりに、おそらく重力を制御して落下方向を決めているのだろう。凄まじい勢いで未だぶら下がったままの亮牙達に急速接近してきた。

 

「畜生!皆、早く登れ!ハジメは援護してくれ!」

「了解!」

 

 亮牙の指示を受け、ハジメは空かさずドンナーを抜いて迫り来るインフェルノ達に連射した。スラッグはユエとシアを抱えてブロックの上に登りきり、亮牙もハジメを抱えたまま倒立する勢いで体をはね上げてブロックの上に移動した。直後、彼らがぶら下がっていた場所にインフェルノが凄まじい勢いでドリルを突き刺し、一瞬、技後の影響で硬直したところをハジメが頭上から銃撃し撃ち落とした。

 

「くそっ!こいつら、重力操作かなんか知らないけど、動きがどんどん巧みになってきてるね…」

「…たぶん、原因はここ?」

「俺スラッグ、多分そう思う…」

「あはは、常識って何でしょうね。全部浮いて…ますよ?」

 

 シアの言う通り、亮牙達の周囲の全ては浮遊していた。

 彼らが入ったこの場所は超巨大な球状の空間で、直径2km以上ありそうだ。そんな空間には、様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊して不規則に移動しているのだ。完全に重力を無視した空間である。

 だが、不思議なことに亮牙達はしっかりと重力を感じており。おそらくこの部屋の特定の物質だけが重力の制限を受けないのだろう。

 そんな空間をインフェルノ達が「ごっつんこ〜」と叫びながら、羽蟻のように縦横無尽に飛び回っていた。やはり落下方向を調節しているのか方向転換が急激であり、有機生命体なら凄まじいGで死んでいてもおかしくないだろう。

 

「連中、ここに近づくにつれて動きが細やかになってたな。多分、ここに女王蟻に相当する奴がいるぞ…」

 

 亮牙の推測に四人とも賛同するように表情を引き締めた。インフェルノ達は何故か、ハジメ達の周囲を旋回するだけで襲っては来なかった。

 取り敢えず彼らは、何処かに横道でもないかと周囲を見渡した。ここが終着点なのか、まだ続きがあるのか分からないが、間違いなく深奥に近い場所ではあるはずだ。インフェルノ達の能力上昇と、この特異な空間がその推測に説得力を持たせていた。

 ハジメが遠見で、この巨大な球状空間を調べようと目を凝らした次の瞬間、シアの焦燥に満ちた声が響いた。

 

「逃げてぇ!」

「「「「ッ!!?」」」」

 

 亮牙達は何が?と問い返すこともなく、シアの警告に瞬時に反応し弾かれた様に飛び退いた。運良く、ちょうど数m先に他のブロックが通りかかったので、それを目指して現在立っているブロックを離脱した。

 直後、下から巨大な何かが現れた。金属で出来た生き物の顎のようなものが、今の今まで亮牙達がいたブロックを直撃し木っ端微塵に粉砕したのだ。その謎の物体は、ブロックを破壊すると勢いそのままに通り過ぎていったのだ。

 亮牙達の頬に冷や汗が流れた。シアが警告を発してくれなければ確実に直撃を受けていた。亮牙やスラッグはともかく、今は防御系の魔法が使えないハジメやユエはもしかしたら即死していたかもしれない。感知出来なかったわけではなく、シアが警告をした直後に気配を感じとったのだが、攻撃速度が早すぎて感知してからの回避が間に合ったとは思えなかったのである。

 

「助かったよシア、よくやった」

「うん、ありがとう」

「ん、お手柄」

「俺スラッグ、あんがとさん」

「えへへ、未来視が発動して良かったです。代わりに魔力をごっそり持って行かれましたけど…」

 

 どうやらハジメの感知より早く気がついたのは、シアの「未来視」が発動したからのようだ。彼女自身が任意に発動する場合、彼女が仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだが、もう一つ、今回のように死を伴うような大きな危険に対しては直接・間接を問わず自動発動して見えるようになるのだ。つまり、直撃を受けていれば少なくともシアは死んでいた可能性があるということだ。

 改めて戦慄しながらも、亮牙は襲撃犯の正体を確かめるべく、ブロックの淵から下を覗いた。すると、下の方で何かが動いたかと思うと猛烈な勢いで上昇してきた。それは瞬く間に彼らの頭上に出ると、その場に留まりギンッと光る眼光をもって亮牙達を睥睨した。

 

「此奴も、オスカーの人造トランスフォーマーか?」

「おいおい、嘘でしょ?」

「…すごく、大きい」

「お、親玉って感じですね」

「俺スラッグ、女王蟻だからもっとデカいごっつんこ野郎かと思ってた」

 

 それぞれ感想を呟く亮牙達。若干、ユエの発言が下ネタ気味な気がするが、気のせいだろう。

 彼らの目の前に現れたのは、宙に浮く超巨大な金属の巨人だった。どことなく女性らしいスラっとした意匠も見られるが、少なくとも身長20m以上と、グリムロックやスラッグのロボットモードに匹敵する巨体だ。両腕を見ると、手首はまるで蟹や蠍の鋏脚のようになっており、これで先ほどブロックを握り潰したのだろう。右手にはそこまで長くないものの禍々しい槍が握られ、左手にはまるで鋏のようなクロー付きの盾を装備している。

 

「ごっつんこ!女王蟻様の見参でありんす!女王蟻様、万歳!」

「「「「「ごっつんこ!!!」」」」」

 

 亮牙達が謎の巨体トランスフォーマーに身構えていると、周囲のインフェルノ達がそう叫びながら飛来し、彼らの周囲を囲むように並びだした。整列したインフェルノ達はまるで王に敬礼する騎士の如く、胸の前で腕のドリルを剣のように立てて構えた。まさに、女王蟻に仕える兵隊蟻の姿であった。

 すっかり包囲され亮牙達の間にも緊張感が高まった。辺りに静寂が満ち、まさに一触即発の状況だ。動いた瞬間、命掛けの殺し合いが始まる、そんな予感をさせるほど空気が張り詰めていた。

 

 

 

 

 

「やほ~、はじめまして~!みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~!」

 

 

 

 

 

「「「「「……………は?」」」」」

 

 だがそんな緊張は、巨大トランスフォーマーの巫山戯た挨拶によって破られ、思わず五人はキョトンとなるのだった。

 凶悪な装備に身を固めた眼光鋭いトランスフォーマーのやたらと軽い挨拶に、五人とも何を言っているか分からず、包囲されているということも忘れてポカンと口を開けた。頭がどうにかなる前に現実逃避しそうだった。

 そんな硬直する五人に、目の前のトランスフォーマーは女性の声で不機嫌そうに話し始めた。それも、道中散々見てきたウザイ文を彷彿とさせる、実に腹立たしい口調と仕草で。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は…。もっと常識的になりたまえよ」 

 

 それに対していち早く正気に戻った亮牙は、イラッとしつつも口を開いた。

 

「…悪いがここに到達するまで非常識の連続で、今も見た目と声がアンバランス過ぎる奴を目にしてるんだ。冷静でいろって言う方が無理だ。…だが、お前はミレディ・ライセンと名乗ったが、そいつは人間でとっくの昔に死んでいるはずだ。何故オスカーの創造した人造トランスフォーマーのお前が、その名を名乗ってる?」

 

「ん、オスカーにトランスフォーマー?もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略し、神代魔法を手にした。番人であるモンストラクター達も倒してな」

「あのモンちゃんを…。と言う事は、君は…」

「ああ、俺はプライム達が招集したダイナボット指揮官グリムロックだ。今は灘亮牙の名で通してる」

 

 そう言うと、亮牙はグリムロックとしての姿に戻った。その姿に、目の前のトランスフォーマーは感慨深そうな表情となった。

 

「そうか、君が…。遂に彼らの召集してくれた援軍が来たのか…。う〜ん、ミレディたん、感動のあまり涙腺崩壊しちゃうよ〜!」

「色々あってだいぶ遅れたがな…。それで、お前はミレディ・ライセン本人だとしたら、その姿はオスカーやプライム達の言っていた、概念魔法の力によるものか?」

「いやいや、これは違うよ。神代魔法の一つを使ったものさ。如何にも、そうです私が解放者の一人『ミレディ・ライセン』だよ!この姿の秘密はさっき言った通り神代魔法で解決さ!」

「成る程な…。で、それはいったいどんな魔法だ?プライム達が言っていた魂魄魔法か?」

「おうおう、食いついてくるねぇ君…。でも、それはまだ教えられないね。攻略前に情報をあげるなんて甘やかしするわけないじゃん。もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ!って感じかな」

 

 そう言うと目の前のトランスフォーマーは、鋏のような手でメッ!の仕草をした。中身がミレディ・ライセンというのは頂けないが、それを除けば愛嬌があるように思えてきた。

 

「よぉ〜し!今度はこっちの質問に答えてもらうよ」

 

 最後の言葉だけいきなり声音が変わり、今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びていた。その雰囲気の変化に少し驚く五人だが、亮牙は表情に出さずに問い返した。

 

「なんだ?」

「目的は何?何のために神代魔法を求める?エヒトとメガトロナスのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな?オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」

 

 嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ミレディはふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけてきた。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。

 思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者として、自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は何百年も意思を保持して待ち続けただけあって、凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。

 亮牙は、ミレディの眼光を真っ直ぐに見返しながら嘘偽りない言葉を返した。

 

「確かに、俺の目的はメガトロナスとエヒトをぶっ殺すためだ。だが、生憎俺はお前ら解放者達ほどお人好しじゃあないからな。神代魔法で世界征服するつもりはねぇが、邪魔する奴は情け容赦なく潰していくつもりだ…。それに俺は元々別の世界に飛ばされたんだが、エヒトの余興で無理矢理トータスに連れてこられたんでな。概念魔法を早く手にして、早く親友を故郷に帰らせてやりてぇんだよ…」

「…そっか」

 

 ミレディは暫く亮牙を見つめた後、何かに納得したのか小さく頷き呟いた。そして次の瞬間には、真剣な雰囲気が幻のように霧散し、軽薄な雰囲気が戻る。

 

「なるほどねぇ~、友人のためねぇ~。うんうん、青春してるねぇ~。よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

 

「…唐突だな。まあ、最初っからそのつもりだが…。つまり、お前がこの迷宮の最後の番人って事でいいんだな?」

「そうだよ~。無論このボディ、ミレディザラックの強さはモンちゃん並み!見事勝利できれば、豪華賞品をプレゼント!OK?」

「OK‼︎」

 

 そう言うと同時に亮牙は人間態に戻ると、後ろに控えていたハジメとスラッグが、オルカンと激力雷電をぶっ放した。

 

「「Jackpots‼︎」」

 

 ミサイルと電撃がミレディザラックに殺到し直撃すると、ズガァアアアン!と空間全体を振動させる轟音と共に爆炎と爆煙が立ち込めた。

 

「やりましたか⁉︎」

「…シア、それはフラグ」

 

 先手必勝ですぅ!と喜色を浮かべたシアに、ユエがツッコミを入れた。彼女の予想通り、煙の中から槍を持った右手がボバッと音を立てながら現れると横薙ぎに振るわれ煙が吹き散らされた。

 煙の晴れた奥からは、大した損傷のないミレディザラックが現れると、近くを通ったブロックを引き寄せて砕き、僅かに損傷した箇所の材料にして再構成した。

 

「ふふ、先制攻撃とはやってくれるねぇ~、さぁ、もしかしたら私の神代魔法が君のお目当てのものかもしれないよぉ~、私は強いけどぉ~、死なないように頑張ってねぇ~」

 

 そう楽しそうに笑うミレディザラック。だが、亮牙とスラッグ、それにハジメは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

「ハジメ、アレのお披露目だ!スラッグ、お前は元に戻って思う存分暴れろ!」

「了解!」

「俺スラッグ、待ってたぜぃ!ウォオオオオオオオッ!!!」

 

 二人はそう叫ぶと、スラッグは人間態から瞬く間にビーストモードに戻り、宣戦布告するかのように雄叫びを上げた。

 一方、ハジメも宝物庫からある切り札を取り出した。それは人型で、身長6m程とダイナボット達に比べたら小柄だが、背中にはオルカンを装備し、両腕の拳にはナックルダスターのような意匠が施されていた。そのアーティファクトの胸部が開くと、ハジメはその中に入り、まるで鎧のように纏うと、片腕をブラスターに変形させて戦闘態勢の構えを取った。

 そう、ハジメの試作機第一号、アイアンフィストである!

 

「えええっ、もう一人いたの⁉︎それにそっちの子も人造トランスフォーマー使うの⁉︎ミレディたん聞いてないよ!!?」

「敵に自分の持ち札明かすわけないでしょ。さあ、鉄拳制裁タイムだ!」

「俺、スラッグ、お前ぶっ壊す!覚悟しろ、()()()()()()()()()!!!」

「ってコラー‼︎私はミレディ・ライセンだよ!そんなお腹の下った、太めの人が好きみたいな名前じゃないからね!てか伝説の戦士の癖に、女の子に向かって失礼でしょ⁉︎」

「ウルセェ、俺スラッグ、ババアの指図なんか受けない!」

「ムキー‼︎永遠の乙女ミレディたんに向かってなんて失礼な‼︎」

 

 驚愕するミレディだが、スラッグに滅茶苦茶失礼な名前の勘違いをされた挙句、ババア呼ばわりされた事が悔しかったのか、思わず余裕を崩してしまう。

 

「よく言ったスラッグ!ようしお前ら、あのゲスの極みババアをぶっ飛ばすぞ!」

「あいよっ!」

「んっ!」

「了解ですぅ!」

「俺スラッグ、ババア覚悟しろよ!」

「だからババアって言うなぁ〜!」

 

 亮牙の掛け声と共に、七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮最後の戦いが始った。

 

 

 

 

 

 

 




ミレディザラックについての解説は、次回までお待ちください。


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