グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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前話がお気に入りが一気に四人も減って、少しショックでしたが、応援してくださる方々が大勢いらっしゃり、大変嬉しいです(泣)

遂にミレディ戦となります。結構難産でした…(苦笑)


決戦!ミレディザラック

 亮牙の掛け声を合図にしたかのように、待機状態だったインフェルノ達が一斉に動き出した。通路でそうしたのと同じように「ごっつんこ〜!」と叫びながら、ドリルやビーストモードの牙を亮牙達に向けて一気に突っ込んできた。

 だが五人も黙ってはいない。亮牙のスルトとユエのウォーターカッターが横薙ぎに振るわれ、インフェルノ達をぶった斬った。

 

「あはは、やるねぇ~!でも総数50体の無限に再生する兵隊蟻ちゃん達と私、果たして同時に捌けるかなぁ~?」

 

 嫌味ったらしい口調で、ミレディザラックは鋏のような手を突き出すと、仕込みになっていたのかロケットパンチのように射出され、巨大な魔物の顎のように襲い掛かった。

 大きく跳躍したシアは上方を移動していた三角錐のブロックに飛び乗り、スラッグは頑強な頭を突き出して、豪速で迫る拳に突っ込んだ。早豪速で迫るモーニングスターに直撃した。ガキィィィン!という金属のぶつかり合う轟音が響き。軌道がスラッグから大きく逸れた。

 同時に、上方のブロックに跳躍していたシアがミレディザラックの頭上を取り、飛び降りながらドリュッケンを打ち下ろした。

 

「見え透いてるよぉ〜」

「くぅ、このっ!」

 

 そんな言葉と共に、ミレディザラックは急激な勢いで横へ「落ちる」形で移動した。目測を狂わされたシアは歯噛みしながらも、手元の引き金を引きドリュッケンの打撃面を爆発させた反動で軌道を修正し、三回転しながら遠心力もたっぷり乗せた一撃をミレディザラックに叩き込み、ミレディザラックも咄嗟に尾を伸ばしてガードした。凄まじい衝突音と共に左腕にダメージを負うも、ミレディザラックは気にせずそのまま腕を振るい、シアを横薙ぎにした。

 

「きゃぁああ⁉︎」

「シア!」

 

 シアは悲鳴を上げながら吹き飛ばされるも、何とか空中でドリュッケンの引き金を引き爆発力で体勢を整えると、更に反動を利用して近くのブロックに不時着した。

 一瞬動揺した亮牙も、浮遊ブロックを飛び移りながら戻ってくる彼女の様子を確認し、安堵と共に感心した。

 

「良かった。ユエの鍛錬のおかげだな」

「…ふっ、どういたしまして」

「ようし、僕も負けてられないな!」

 

 そんな中、自分達のブロックに殺到してきたインフェルノ達に向け、ハジメは両拳を変形させ始めた。

 

部分武装化(アームズアップ)!レック&ルール‼︎」

 

 そう、グリムロックと同じ部分武装化である。しかしアイアンフィストの場合は、毎分12,000発の弾丸を放つガトリング砲「メツェライ」が展開される。彼は威勢よく叫ぶと、ドゥルルルルル!と六砲身のバレルの回転する射撃音を響かせながら、宙を舞うインフェルノを尽くスクラップに変えて底面へと叩き落としていった。回避または死角からの攻撃のため反対側に回り込もうとする者もいたが、亮牙とユエの斬撃や、スラッグの口から放たれる火炎放射により、やはり尽く殲滅されていった。

 

「「「「「ごっつんこぉ〜!!?」」」」」

 

 瞬く間に40体以上のインフェルノ達が無残な姿を晒しながら、魔の抜けた悲鳴と共に空間の底面へと墜落していった。時間が経てばまた再構築を終えて戦線に復帰するだろうが、この女王を仕留めるまで暫く邪魔が入らなければそれでいい。

 

「ちょっ、なにそれぇ⁉︎そんなの見たことも聞いたこともないんですけどぉ!」

「はっ!地球舐めんなよ、オバさん!」

「コラァ‼︎オバさんって言うなぁ〜‼︎」

 

 ミレディザラックの驚愕の叫びに、ハジメはそう言い返すと、メツェライを収納し、今度は両腕をドンナーの上位互換の性能を誇るブラスターへ変形させた。そして彼はオプティックを凝らした。これの性能もパーセプターと同じく、魔力そのものを見通す事が出来る。

 

「皆、奴の核は心臓と同じ位置だ!あれを破壊すれば僕らの勝ちだ!」

「でかした!ハジメ!」

「んなっ⁉︎何で、分かったのぉ⁉︎」

「はっ!うちの技術者舐めんじゃねえぞ、ババア‼︎」

 

 まさか核位置を見抜かれるとは思わなかったミレディは再度、驚愕の声をあげた。目の前の敵を倒すセオリーである核の位置が判明し、五人とも眼光が鋭くなった。

 周囲を飛び交うインフェルノ達も今は10体程度、五人で波状攻撃をかけて、ミレディの心臓に一撃を入れるのだ。

 

「俺スラッグ、一番槍!」

 

 スラッグはそう叫ぶと、突進しながら一気に跳躍し、ミレディザラックの核をその自慢の角で貫かんと接近を試みた。だが、そう甘くはいかなかった。

 

「そうはいかないよ〜、ミレディザラック、変身〜!!!」

 

 ミレディザラックはそう叫んだかと思うと、その巨体とは裏腹に素早い変形を遂げた。その姿は、インフェルノと同じ蟻ではなく、巨大な蠍であった。

 そのままビーストモードとなった彼女が尾をかざすと、頭上の浮遊ブロックが猛烈な勢いでスラッグへと迫った。

 

「何ぃ⁉︎」

「操れるのがインちゃん達だけとは一言も言ってないよぉ~?」

「くそ、この性悪ババア!」

 

 ミレディのニヤつく声音に舌打ちしながらも、スラッグは空かさず人間態となり、ダグザを手に取って飛来してきた浮遊ブロックをすんでの所で、野球のボールのように打ち返した。ドゴンッ!という音と共に浮遊ブロックを退けた彼は、近くにあった浮遊ブロックに飛び乗った。

 当然ミレディザラックはスラッグの足場を落とそうとするが、いつの間にか背後から迫っていたシアが、強烈な一撃を彼女の頭部に叩き込もうと跳躍した。だがそれに気がついていたのか、ミレディは跳躍中のシアを狙ってインフェルノ達を突撃させた。

 

「女王蟻様には指一本触れさせないでありんす!」

 

 そう叫びながらインフェルノ達が、宙にあって無防備なシアに迫るが…

 

「「させない‼︎」」

「ごっつんこ〜⁉︎」

「流石、ハジメさんにユエさんです!」

 

 ユエを左腕に抱えたハジメが、破断を放つ彼女と共にブラスターを連射し、シアを襲おうとしていたインフェルノ達を殲滅していった。

 シアは二人に感謝の言葉を叫びながら、障害がいなくなった宙を進み、極限まで強化した身体能力を以て大上段の一撃を繰り出した。

 

「パワーでこのミレディザラックは負けないよぉ〜!変身!」

 

 ミレディザラックは自身の言葉を証明してやるとでも言う様に空かさずロボットモードに変形し、巨大な拳をシアに目掛けて真っ直ぐに振るった。

 

ドォガガガン!!!

 

 ドリュッケンと豪腕が凄まじい轟音を響かせながら衝突し、発生した衝撃波が周囲を浮遊していたブロックのいくつかを放射状に吹き飛ばした。

 

「こぉのおお!」

 

 それでも突破できないミレディザラックの拳に、シアは雄叫びを上げて力を込めたが、流石の彼女も体格差からくる膂力には敵わず、振り切られた拳に吹き飛ばされた。

 

「きゃあああ‼︎」

 

 悲鳴を上げるシア。飛ばされた方向に浮遊ブロックはなく、このまま墜落するかと思われたが、予想していたようにユエがハジメの腕から飛び出し彼女を抱きとめ、一瞬の「来翔」で軌道を修正しながら、眼下の浮遊ブロックに着地した。

 

「中々の連携だねぇ~」

「当然だ馬鹿野郎」

「え⁉︎」

 

 余裕の声で見下ろすミレディザラックだが、そこへ予想外に近い場所から声がかかり、驚愕しつつも声のした方向に視線を転じた。

 すると、いつの間にか懐に潜り込み、ボディに片手の爪を立てて体を固定しながら、もう片方の手にそれぞれ炎と電気を纏った剣を握り、心臓部に突き付けている亮牙とスラッグが其処にいた。

 

「い、いつの間ッ⁉︎」

「「ブレイジングスラスト!!!」」

 

チュドォオオオオオオン!!!

 

 ミレディの驚愕の言葉はシュラーゲンの発する轟音に遮られた。ゼロ距離で放たれた炎と電撃の剣の一撃は、ミレディザラックを吹き飛ばすと共に胸部の装甲を木っ端微塵に破壊した。インフェルノ達の装甲が普通の状態の剣でも容易に貫けたので、同じ材質に見えるミレディザラックの装甲も少し分厚くなっているだけなら、自分達の属性を纏った攻撃なら十分に破壊できると踏んだのだ。

 ミレディザラックは胸部から煙を吹き上げながら弾き飛ばされ、反動で後方に飛ばされた亮牙とスラッグも、それぞれ近くの浮遊ブロックに空かさず飛び乗り、敵の様子を観察した。ユエとシアもハジメに抱えられて近くの浮遊ブロックに飛び乗ってきた。

 

「…いけた?」

「手応えはあったが…」

「これで、終わって欲しいですぅ」

「俺スラッグ、これで腐ったガスも抜けた気がする」

「いや、アレ多分ガスは詰まってないよ…」

 

 ユエが手応えを聞き、シアとスラッグが希望的観測を口にした。

 だが、胸部の装甲を破壊されたままのミレディ・ゴーレムが、何事もなかったように近くの浮遊ブロックを手元に移動させてきた。破壊された胸部の装甲の奥には漆黒の装甲があり、それには傷一つ付いていなかったからだ。ハジメと亮牙には、その装甲の材質に見覚えがあり、思わず顔をしかめた。

 

「いやぁ~大したもんだねぇ、ちょっとヒヤっとしたよぉ!」

「畜生!アザンチウムの二重装甲か…!」

「トータス最高硬度の鉱石か、道理で耐えられる筈だ…」

「おや?知っていたんだねぇ~。ってそりゃそうか。オーくんの迷宮の攻略者だものねぇ、生成魔法の使い手が知らないわけないよねぇ~、さぁさぁ、程よく絶望したところで、第二ラウンド行ってみようかぁ!」

 

 ミレディは砕いた浮遊ブロックから素材を奪って表面装甲を再構成すると、ビーストモードに変形して尾をかざした。

 

「上だ!避けろっ!」

 

 亮牙がそう叫ぶと同時に散開すると、再び彼らのいた足場が落下してきた何かに破壊された。けれど今度はミレディではなく。彼らの立ってた足場の上に浮いていた足場だった。二つの足場はぶつかり、共に粉々になった。

 

(今まで浮いてた足場が落ちてきた?一体どんな…)

 

 ミレディの魔法をハジメが分析していると、今度は彼の真横から足場が迫ってきて、それを身体を捻り辛うじて避けた。

 

「横からっ⁉︎重力を無視し過ぎ………いや、そうか!」

 

 宙を浮くゴーレムや足場、浮いたかと思ったら落ちてきた足場、そしてさっきのまるで横から落ちて来たかのような足場に、遂にハジメは結論を見出した。

 

「皆、こいつの神代魔法は恐らく重力だ!動く足場も浮いてるアリンコ共もそれで説明がつく!」

「おや、意外と早く気がついたね。そう、重力を操れば、こ~んな事もできるんだよぉっ!」

 

 そう言ってミレディは重力で自らをを横に落とすと、鋏のような腕がフレイルのように伸びきり、まるで大蛇の顎のように亮牙達に襲い掛かった。

 

「「舐めるな‼︎」」

 

 亮牙とスラッグはそう叫ぶと人間態のまま、突進してきた鋏脚を真正面から受け止めた。

 

「むむっ、流石伝説の戦士、やるねぇ〜」

「そりゃどうも。だが俺達ばかり気にしてて良いのか?」

「えっ?」

 

 亮牙のその一言にミレディがキョトンとする中、シアがミレディの腕を伝いながら駆け抜け、彼女の頭上へと迫った。

 

「くたばれですぅっ!」

 

 そう叫ぶと共に、シアはミレディザラックの顔面に向かってフルスイングを食らわせ、完全に不意を突かれたミレディザラックは吹っ飛ばさながらも変形し、後ろのブロックの上にのし掛かった。

 

「や、やるじゃない…!けど、そんなハンマーじゃあ、私のアザンチウム製の装甲は砕けないよぉ~」

「そんなのは百も承知ですよ!ハジメさん、ユエさん、今です!」

「ん!破断!」

「了解!撃つべし撃つべし!」

 

 先程と同じ口調で余裕を崩さないミレディザラックに、ユエの凛とした詠唱とハジメの唸りが響き渡り、幾筋ものウォーターカッターと弾丸の嵐がミレディザラック背中や足、頭部、肩口に殺到、着弾して各部位の表面装甲を切り裂いた。

 

「こんなの何度やっても一緒だよぉ~、両腕再構成するついでに直しちゃうしぃ~」

「そいつはどうかな?ユエ!」

「ん、凍って!凍柩!」

 

 ユエの声がトリガーとなり、ミレディザラックのボディが氷に閉ざされ始めた。

 

「なッ⁉︎どうしてここで上級魔法が使えるのさっ⁉︎」

「ネタバレするわけないでしょ、オバさん!」

「ん、してやったり…」

 

 驚愕の声を上げるミレディに、ハジメがしてやったりと言わんばかりに言い返した。ユエも得意げな顔をしている。

 ユエが上級魔法である氷系統の魔法を使えたのは、単純な話だ。破断と同じく元となる水を用意して消費魔力量を減らしただけである。あらかじめミレディザラックを叩きつけるブロックを決めておき水を撒いておくと、隙をついてミレディ・ゴーレム自身の背面にも水を撒いておく。最初の破断はそれが目的だ。

 それでも、莫大な魔力が消費され、ユエが所持している魔晶石の全てから魔力のストックを取り出す羽目になった。肩で息をする彼女を片手に抱えたハジメは、近場の浮遊ブロックに退避した。

 

「ユエ、お手柄だね!」

「…ん、ハジメも」

 

 亮牙達三人も合流し、代表してハジメはミレディの核の位置にブラスターを突き付けた。

 

「チェックメイトだよ、オバさん。この状態じゃ、再生も身動きも出来ないでしょ?」

 

 いつもははしゃぐ様な物言いをしているミレディだったが、ハジメの宣言に対して不気味なぐらい無言だった。

 こんな状況でもまだ手を用意してあるのか?そう判断し、ハジメはミレディにトドメを刺すべくブラスターを放とうとした。

 だが、それよりも先に青ざめた顔をしたシアが叫んだ。

 

「皆さん、避けてぇ!降ってきます!」

「「「「ッ!!?」」」」

 

 それを聞いた亮牙達は、シアの固有魔法が発動したのだと悟った。そしてそれは、彼女にとって死に繋がるほど危険性の高い何かが起こるということを示していた。皆、何が起こっても対応できるように身構えた。

 その直後、それは起こった。空間全体が鳴動したかと思うと。低い地鳴りのような音が響き、天井そのものが落下しようとしているのだ。

 亮牙がふとミレディザラックを見ると、その機械の眼光が今までにないぐらい輝いてた。

 

「テメェ、まさか!!?」

「ふふふ、お返しだよぉ。インちゃん以外は同時に複数を操作することは出来ないけど、ただ一斉に『落とす』だけなら数百単位でいけるからねぇ~、見事凌いで見せてねぇ~?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!ゴバッ‼︎

 

 直後、彼らのいる空間、その天井の全てのブロックが彼ら目掛けて落ちてきた。

 のんきなミレディの言葉に苛立つが、そんな事に気を取られている余裕はなかった。この空間の壁には幾つものブロックが敷き詰められているのだが、天井に敷き詰められた数多のブロックが全て落下しようとしているのだ。一つ一つが軽く10t以上ありそうなブロックが豪雨の如く降ってくるのだ。

 

「スラッグ、元に戻るぞ!三人は俺達のもとに来い!」

「俺スラッグ、分かった!」

「了解!」

「ん!」

「はい!」

 

 亮牙はそう叫ぶと共にグリムロックの姿に戻り、同じくロボットモードになったスラッグ、ユエとシアを抱えたハジメと合流した。

 ミレディザラックは、その間もずっと天井を見つめたままだ。おそらく彼女の言葉通り、インフェルノ以外の操作は一つ二つが限度なのだろう。落とすだけとは言え、数百単位の巨石を天井から外すのには集中がいるようだ。

 

「俺とスラッグの下にいろ!耐えろよ!」

「んっ!」

「うんっ!」

「はいですぅっ!」

「俺スラッグ、守りも天下一品!」

 

 今回ばかりは自力で回避しきるのは不可能だと判断したグリムロック は、スラッグと円陣を組むような形となって、その下にハジメ達を潜り込ませた。自分達の頑強な巨体を盾がわりにすると、お互いドラゴントゥースメイスとトレイルカッターソードを振るい、ブロックの大雨を避け続けた。

 しかし次第にその密度は増し続け、流石の二人も避けられなくなり、遂に五人はブロックに埋もれてしまった。やがてミレディを封じていた氷は砕け、彼女はその巨体を起こす。

 

「ミレディザラック、復活〜!」

 

 そして、目の前の亮牙達が埋もれてるブロックの山に目を向けた。悪あがきをしていたようだが、流石にあの大質量は凌ぎきれなかったかと、僅かに落胆した。

 ブロックの山に変化は無く、五人は圧死したか良くて重傷で気絶してるとミレディは判断した。

 

「う~ん、流石にちょっとやりすぎちゃった?やっぱり、無理だったかなぁ~。でもこれくらいは何とかできないと、あのクソ野郎共には…」

「俺グリムロック、勝手に決めるな」

「えっ?」

 

 突然、何処か片言な声が聞こえ、ミレディはキョトンとする。

 

「ゴガアアアアアアアッ!!!」

「なぁっ⁉︎」

 

 凄まじい雄叫びとともにブロックの山が吹き飛ばされ、それと同時にビーストモードに変形したグリムロックが飛び出してきた。

 

爆炎壁攻(ボルケーノバースト)‼︎」

 

 その勢いのまま、彼はミレディ目掛けて火炎放射をお見舞いした。流石の彼女もこれにはたまらず、思わずのけぞって後ろのブロックに倒れ込んだ。

 

「アチャチャチャチャッ‼︎焼き蠍になっちゃう〜……ってざんね〜ん!その程度じゃこのアザンチウム鉱石の装甲は溶かされないよぉ〜!フフフ、無駄な足掻きだったね」

 

 が、それでもミレディの余裕は崩れず、グリムロックの背中にブロックをぶつけようと再び重力を魔法を発動させようとするが、当の彼はしてやったりといった表情だ。

 

「俺グリムロック、これは目眩しだぞ、ババア」

「へっ?」

「スラッグ、ハジメ!今だ!」

「「おうよ‼︎」」

 

 グリムロックがそう叫んで飛び退くと、彼の背後からロボットモードのスラッグが飛び出してきた。だがその手に握られていたのは、トレイルカッターソードでもダグザでもなく、まるで自動車がそのまま変形したかのような巨大なブラスターだ。

 これこそがハジメがグリムロック達との連携として考案した、アイアンフィストの究極形態「アライアンスフォーム」である。ロボットモードとビークルモードに加え、更に簡易ではあるがガンモードに変形し、彼の纏雷を動力に装填された世界最高重量かつ硬度の杭杭を射出するパイルバンカーとなるのだ。

 この迷宮では魔力が分解されてしまい纏雷が使用しづらい環境なのだが、生憎このチームには生体電気を自在に操れるスラッグがいる。彼が自身の電気をチャージする事で、二人の身体は金色のスパークを放ち、中に装填されている杭が拘束で回り始め、時々大筒と擦れて火花を散らしていた。

 

 

「「Wreck and rule! You spawn of a glitch(腐れバグの落とし子め)‼︎」」

 

ゴォガガガン!!!

 

「ぐぬぬぅぅぅっ!!?」

 

 二人がそう告げると、凄まじい衝撃音と共にパイルバンカーが作動し、漆黒の杭が吸血鬼を仕留めるかの如くミレディザラックの絶対防壁に突き立った。胸部のアザンチウム装甲に一瞬でヒビが入り、杭はその先端を容赦なく埋めていった。

 あまりの衝撃に、ミレディザラックの20mもの巨体が浮遊ブロックを放射状にヒビ割りながら沈み込み、浮遊ブロック自体も一気に高度を下げた。

 だが、高速回転による摩擦により胸部から白煙を吹き上げながらも、ミレディザラックの目から光は消えなかった。

 

「ハ、ハハハ…。どうやら未だ威力が足りなかったようだねぇ?だけど、まぁ大したものだよぉ?四分の三くらいは貫けたんじゃないかなぁ?」

 

 流石のミレディもコレには内心冷や汗を掻いたが、杭はコアには到達していなかった。尤も、ミレディ自身は知りえないことだが、初めての合体技ということもあり、スラッグはハジメの身体に負担がかかり過ぎないよう電力を少し抑えていたため、その貫通力は減少していた。フル稼働の状態であれば、今頃コアも打ち砕かれていただろう。

 

「俺グリムロック、それはどうかな?今だ、シアっ!」

「なっ!!?」

 

 亮牙達とてそれは承知しており、念には念を押していた。

 彼の言葉にミレディが気づいた時には、既にシアがドリュッケンを振りかぶり迫ってきていた。狙いは勿論、今なおミレディの胸に刺さっている杭だ。

 それを悟ったミレディは、今度こそ焦ったようにその場から退避しようと自分が固定されている浮遊ブロックを移動させようとするが、猛スピードで落下してくるシアに間に合わないと悟り、諦めたように動きを止めた。

 シアはそのままショットシェルを激発させ、その衝撃も利用して渾身の一撃を杭に打ち下ろした。ドゴォオオ!という轟音と共に杭が更に沈み込むが、まだ貫通には至らず、彼女は内蔵されたショットシェルの残弾全てを撃ち尽くすつもりで、引き金を引き続けた。

 

「あぁあああああ‼︎」

 

 シアは大声を上げ、これで決めて見せると強烈な意志を全て相棒たる大槌に注ぎ込んだ。衝撃と共に浮遊ブロックが凄まじい勢いで高度を下げていき、遂に轟音と共に浮遊ブロックが地面に激突した。その衝撃で遂に漆黒の杭がアザンチウム製の絶対防御を貫き、ミレディ・ゴーレムの核に到達した。先端が僅かにめり込み、ビシッという音を響かせながら核に亀裂が入った。

 地面への激突の瞬間、シアはドリュッケンを起点に倒立して宙返りをすると、身体強化の全てを脚力に注ぎ込み、遠心力をたっぷりと乗せた蹴りをダメ押しとばかりに杭に叩き込んだ。杭は更にめり込んで核の亀裂を押し広げ、遂に完全に粉砕、ミレディザラックの目から光が消えた。

 シアはそれを確認するとようやく全身から力を抜き安堵の溜息を吐いた。それと同時に、ハジメとユエを抱えたグリムロックとスラッグが降り立った。彼女が四人に向けて満面の笑みでサムズアップすると、四人ともそれに応えるように笑みを浮かべながらサムズアップを返した。

 亮牙一行が二つ目の七大迷宮、ライセン大迷宮の最後の試練が確かに攻略した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 




〜用語集〜
・ライセン大迷宮守護女帝ミレディザラック
 ミレディがオスカーに頼んで作ってもらった大型人造トランスフォーマーで、巨大な蠍に変形する。インフェルノ達の女王蟻的ポジションとして、彼らを従えている。
 ロボットモードでは槍と盾を使う他、両腕はグリムロックのモーニングスターナックルのようにチェーン付きで射出され、大蛇の顎の如く敵に喰らいつく。更にインフェルノと同様、感応石で構成されたボディのおかげで破損部位を素早く再構築できる。
 身長はグリムロックと同じく25mに達するが、ミレディのセンスで女性らしいボディラインとなっている。
 モデルは勿論、『ザ☆ヘッドマスターズ』の恐怖大帝メガザラック。アメコミではグリムロック達ダイノボットのライバルとして登場しており、ボディが要塞サイズではないのはそれも基になっている。

・アイアンフィスト究極形態「アライアンスフォーム」
 ハジメがグリムロックとの連携を考えて考案した、アイアンフィストの第三形態。原作ハジメのパイルバンカーに相当する。
 モチーフはマイクロマスターのウェポンモードと、シーコンズの手足担当組のガンモード、『ダークサイド・ムーン』のヒューマンアライアンスシリーズから。

・Wreck and rule(レック&ルール)
 アメコミにおけるオートボットの特殊部隊レッカーズの決め台詞。ロックンロールの造語で、「ぶっ壊して支配しろ」という意味らしい。
 元ネタは『ラスト・スタンド・オブ・レッカーズ 』からで、同作に登場するアイアンフィストの好きな言葉でもある。

・spawn of a glitch
 アメコミにおけるトランスフォーマー達のスラングで、サイバトロン星版サノバビッチ。子どもの蔑称であるspawnと故障を意味するglitchを合わせた造語。
 レック&ルール同様、『ラスト・スタンド・オブ・レッカーズ』より引用。




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